強権的な徴税強化をすすめる「税務共同化」の強行はやめ、住民の暮らしに寄り添った税務行政を-「税務共同化」についての日本共産党府会議員団の見解-
2009年6月2日
日本共産党京都府会議員団
1、住民不在の強引な「税務共同化」はいったん中止を
いま、京都府は、京都市を除く25市町村とともに、「税務行政の共同化をはかる」として、広域連合・「京都地方税機構」を今秋にも設立し、2010年1月から徴収業務を開始すると強引に推し進めています。
しかし、この「共同化」しようとする税務行政は、市町村行政の根幹をなす問題であり、国保税(料)も含め、住民の暮らしに直結する問題です。にもかかわらず、住民には内容がまったく知らされておらず、住民的議論は始まってもいません。
こうした現状にかかわらず、6~7月の府・市町村議会で規約の議決を得て、総務省へ設立許可申請を行い、今秋にも「広域連合」を設立しようというのです。そして「住民への説明」は、「今後、ホームページを開設することとされており、十分に周知を図っていく」としているとおり、事前に住民の意見を聴くことは全く考慮されていず、事後の「周知徹底」で済まそうというのです。
まさに、住民不在の強権的な運営方法であり、こうしたやり方は許されません。山田知事が「住民参画・住民協働」というのなら、出口を先に決め、住民をこれに従わせるやり方は中止し、まずなによりも住民への説明会の開催、意見の聴取など、住民参加を保障する措置をとることを強く求めるものです。
2、「税務共同化」は、住民の暮らしの実態に背を向け、強権的な徴収業務への道をすすもうとするもの
「税務共同化の目的・効果」として第一に挙げられているのは、「税務行政の充実と徴収率の向上」であり、そのために「滞納者に対する効果的な処分」「断固たる滞納処分の実施」が挙げられています。これは住民の営業や暮らしの実態を無視した「徴収強化」で、悲惨な結果を招きかねません。
とりわけ2007年3月の「地方税の徴収対策の一層の推進」を求める総務省通知が出されて以降、深刻な事態が相次いで発生しています。大阪市では、3月23日 固定資産税滞納の納付を強権的に迫られ、自ら命を絶つ事件や、昨年5月には、熊本県で固定資産税滞納を理由に営業用の車をタイヤロックして差し押さえられ、子供も含む7人が一家心中をはかり、6人が死亡するという痛ましい事件も起こっています。京都府でも自動車税の滞納者に対し、「差し押さえ禁止財産」である「出産一時金」が納入された預金を差し押さえ、住民が「病院への支払いができない」状況に追い込まれる事態も生まれています。
「税金を納めなければ」と思っても、様々な事情により税金が納められなくなった納税者には「納税の猶予」「徴収の猶予」の措置があり、さらには、「滞納処分を行う財産が無い場合」「滞納処分を執行すれば滞納者の生活を著しく窮迫させる恐れがある場合」などは「滞納処分の停止」を行うこととされ、「差し押さえ禁止財産」も示され、納税者の営業と暮らしを守る措置も示されています。
これらは憲法が保障する生存権を守り、「応能負担の原則」を税徴収制度として具体化されたものです。ところが今日、負担能力を超える課税や経済状況の急激な悪化を考慮せず「滞納は、税の公平に反する」「徴収率の向上」を錦の御旗に強権的な徴収が行われてきているのです。
また政府は、すでに年金生活者の個別の事情を全く考慮することもなく、介護保険料、国保料を年金から天引きし、さらに本年10月からは住民税も年金から天引きするようにしました。しかも、介護保険料などは年金額の半分を超えて天引きしてはならないとされていましたが、住民税は必要な額すべてを徴収することができるとされています。まさに年金生活者の生活実態は全く無視したものです。
今回の「税務共同化」は、納税者の生活を守り、権利を保障する税務行政の本来の姿を後景に押しやり、「滞納者等に対する効果的な処分」「断固たる滞納処分の実施」など、住民の暮らしが見えない「税機構」の職員による強権的なやり方で徴収率向上を図ろうとするものです。
京都府はこうしたことを招かないようにすると答弁していますが、どのようにしてそれを保障するのか、全く明らかにしていません。反対に「かって『納税者に優しい税務行政』を掲げていたが徴収率が全圃都道府県40位台に低迷した」と「納税者の暮らしや権利を尊重していては、納税率は上げられない」との立場を表明しているのです。これは、納税者の暮らしや権利よりも「徴収率向上が第一」とするものです。
3、税務行政を市町村から切り離すことは、住民の暮らしを守る総合行政の機能を失う危険
地方自治体とりわけ市町村は、住民にとって最も身近な住民の暮らしを守る組織です。それだけに、あらゆる行政が住民の暮らしに直結しており、それら全体を通じて住民の暮らしを守ることが求められています。ところが、今回の「税務共同化」で、税務行政、徴収業務だけが切り離された場合、なにがおこるのか、慎重な検討が必要です。たとえば、税の滞納だけでなく、国保料や保育料も滞納している場合、「税の徴収さえすればよい」として、徴収できたとしても、その結果、国保料や保育料の滞納が増え、「資格証明書の発行」で医療を受けられない事態や保育に支障を招くことがあってはなりません。市町村が一人一人の住民の暮らしに寄り添い、「滞納整理」だけでなく、福祉や医療など総合的な対策を講じて暮らしを守ってこそ、その役割を果たせるのです。これをばらばらにすれば、住民の暮らしを守る組織としての自治体の役割を果たすことが困難になることは明らかです。議会答弁で「派遣職員は各市町村職員の身分を持つたまま広域連合に派遣されることもあり、福祉部門との連携など、各市町村との連携についてはこれまで通り行っていくことになる」としていますが、「税機構」に移った職員が出身市町村の徴収業務の担当になる保証は何もないなかで、これはその場しのぎの答弁で言い逃れようとするものです。
さらに、18市町村の「国保税・料の徴収」も「共同化」することとされていますが、いま国保料が高すぎて払えない世帯が増え続けており、督促状の送付や電話による督促だけでなく、面談による状況把握などに努力されているところです。ところが「税機構」では、こうした時間外の訪問など丁寧な対応ができる体制は保障されていません。しかも、国保税・料の滞納の場合は、その実情によって「短期証」や「資格証明書」の発行となり、医療を受けることすら制約される事態を招くだけに、住民の実情把握が極めて重要です。「断固たる滞納処分の実施」「効率化」をめざす「税機構」が、こうした対応ができないことは明らかです。
4、本当に「効率化」できるのか。市町村には新たな財政負担
「税務共同化」の目的の一つに、「効率化」がかかげられています。たしかに「定型的事務」を大量に反復する作業は、スケールメリットで効率化が図れるものです。しかし、それならば府内の6割の納税者がある京都市が加入しなければその効果は小さいといわなければなりません。
そして、当初、「府や市町村から税務課がなくなる」とまで、その「効果」を語っていましたが、いまでは「市町村に税務の窓口が残され、丁寧な対応ができます」と言わざるを得なくなっています。その結果、税務担当職員が3人しかいない町が、「税機構」に2人の職員派遣を言われ、困惑する事態が生まれたり、「徴収は嘱託職員でやっている。機構には正規職員を派遣しなければならなかったら、正職員を増やさなければならない。これでは効率化どころではない」との発言など、矛盾も明らかになっています。
議会答弁でも「共同化に伴う人員削減効果、コスト削減効果については、広域連合固有の業務が発生することもあり、徴収業務の共同化だけではさほど大きくないものと考えている」と言わざるをえない事態です。
さらに、新しい電算システムの開発に10億円余が必要であり、そのうえ市町村のシステムを広域連合のシステムに接続するための新たな経費が必要となっています。このように「税務共同化」は「効率化・コスト削減」ではなく、財政困難な市町村に新たな負担を求めるものとなっています。
5、「地方分権」というのなら、「住民自治の拡充」こそ求められている
「税務共同化」推進の理由に、「地方分権を進めるために税財源の移譲が必要であり、市町村が納税率の向上など税務行政を充実させることが求められている」としています。しかし、これは「市町村合併」押し付けと同様の論理です。「地方分権のため」と言って、やったことは合併による「住民自治・地方自治の後退、破壊」でした。「地方分権」というのなら、こうした地方自治破壊、後退の道ではなく、地方自治の拡充、税務行政を一層充実させるために必要な体制の強化や財政的支援こそ求められています。
日本共産党府会議員団は、住民の暮らしを守り、地方自治を発展させるために、住民のみなさんと力を合わせて頑張ります。