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議会を終えて(談話)

9月定例議会を終えて

2009/10/15 更新
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2009年10月15日
日本共産党京都府会議員団
団長 新井 進

 9月24日から開かれていた定例議会が10月9日閉会した。今定例議会は、8月に行なわれた総選挙で、構造改革路線を進めてきた自公政権に国民的な審判が下った新しい情勢のもとで行なわれた。
 わが党議員団は、山田府政が構造改革路線を持ち込んできた結果、府民生活のあらゆる分野で深刻な事態が広がっている事実を明らかにするとともに、府民的運動と結び、新しい政治を前にすすめ、府政転換を求める攻勢的な論戦を行なった。

1、本議会には、一般会計補正予算案をはじめ20議案が提案された。わが党議員団は第8号議案「府立勤労者福祉会館条例一部改正の件」、第13号議「一級河川畑川総合開発工事請負契約締結の件」及び第19号議案「京都地方税機構と京都府との間の公平委員会に係わる事務委託に関する協議の件」の3議案に反対し、他の議案には賛成した。
 第1号議案「平成21年度京都府一般会計補正予算」には、私立高校生の授業料減免制度の拡充、新型インフルエンザのハイリスク患者受け入れ設備整備、インフォメーションセンター開設などの対策、要介護状態になる可能性の高い高齢者の住宅改修助成、緊急雇用対策などが盛り込まれた。
 中でも、特定高齢者を対象とした住宅改修助成制度は、これまで多くの関係者が求めてこられた住宅改修助成制度につながるもので、本格的な実施を求める運動が引き続き重要である。
 年末を控え、中小零細企業、商工業者に対する緊急支援として家賃やリース代など固定費への助成の実施や、私学助成の交付税措置上積み分を授業料助成として反映すること。など今議会でかかげた府民的要求について引き続き実施を求めるものである。
 第13号議案「一級河川畑川総合開発工事請負契約締結の件」は、畑川ダムの本体工事の契約案件であるが、①人口予測に基づく水需要増の予測が過大であり、とくに開発団地の人口増予測は杜撰であること、②事業所等の水需要予測も、希望水量の計画がきわめてあいまいであること、③将来にわたる水道料金の住民負担増となること等、多くの問題点があるにもかかわらず、総選挙さなかの8月24日にかけこみ入札を行なったものであり、畑川ダム事業は一旦凍結し再検討すべきとの立場から反対した。
 税務共同化の推進にかかわる一般会計補正予算中の地方税機構分担金、第8号議案「府立勤労者福祉会館条例一部改正の件」、及び第19号議案「京都地方税機構と京都府との間の公平委員会に係わる事務委託に関する協議の件」は反対した。地方税機構分担金の財源が経済対策のための地域活性化・経済危機対策臨時交付金が当てられたことは道理が全くなく、また府立城南勤労者福祉会館の一部を地方税機構の事務所に供することは、勤労者や地域住民の福祉の向上をはかるという福祉会館設置目的にも反するものである。

2、国民による構造改革路線ノーの審判と、新しい政治の変化に背を向ける知事の姿勢が浮き彫りとなった議会であった。
 代表質問で、構造改革により府民生活があらゆる分野でズタズタにされている実態を明らかにし、知事に対し「小泉構造改革に同感」「民間活力・地域活力を利用して活力を取り戻そうというのは同感」と規制緩和に賛成し、京都府にその路線を持ち込んできたことへの反省を求めた。しかし知事は「地域の活力を取り戻そう、ということは反対するような話ではない」とすり替え、全く反省の態度を示さなかった。
 さらに、地域を疲弊させた市町村合併の強引な押し付けについて「提案したのは市町長、決めたのは議会」と、責任逃れの答弁に終始した。これらは、国民が一番嫌う「結果に責任を取らない。自分の間違いを正そうとせず、言い訳に終始する官僚」の姿である。
 また、わが党が本会議質問で、温暖化防止のためのCO2排出量について、京都府の基本計画に「30%の意欲的な目標を掲げるべき」との質問に、知事は25%削減する国際公約について、「評価する」といいながら、「アメリカや中国の参加を前提にしたもの」「25%も真水部分をどう設定するかわからない」として、COP15の様子を見るとして消極的姿勢を示した。さらに、CO2削減に逆行し、860万トンのC02を排出する舞鶴石炭火力発電所の建設について2号機の建設中止、1号機の稼働停止を求めたのに対し、関電まかせの態度を表明した。
 ダム建設の中止、見直しが求められているとき、畑川ダム建設を8月24日に駆け込み入札したことに加え、国交省が見直し対象にあげている天ヶ瀬ダム再開発も「必要」「推進を求めていく」と、無駄と環境破壊のダム建設は見直そうとの新しい政治の流れに背を向けた。
 舞鶴港への核搭載可能米艦船の寄港について、核密約が明らかになる中、これまでの「事前協議がないから核は積載されていないと信用している」という京都府の立場が崩れているにもかかわらず、知事は「国において一元的に対処されるもの」と港湾管理者としての責任を放棄する態度を表明した。
 同時に、政権を退場に追い込まれた自民党は、代表質問で「反省」を囗にはしたものの、大敗の原因を「首相や大臣の問題発言」という程度であり、民主党の掲げるマニフェストの問題点を指摘したが、子ども手当や農家への個別所得保障を「蜷川府政の京都食管と同じばらまき」と筋違いの攻撃を行ない、さらに、日米FTAについても批判したものの、農産物の輸入自由化を進めてきた自公政権の責任にはふれられず、これまでの構造改革路線に対する反省がないため、批判や攻撃にならない矛盾を抱えていることも浮き彫りとなった。
 わが党議員団は、府民公募型公共事業の改善と小規模工事希望者登録制度の実施、千葉県野田市で全国初実施となった「公契約条例」を京都府で実施することなど、地元建設業者への仕事おこしを行なうこと、京都市内の夜間定時制高校の募集定員増や国民健康保険の一部負担金減免制度の実施への支援策等、府民的要求の実現を求めた。

3、代表質問で府営水道問題を取り上げたことに続き、10月8日に「府営水道料金の値上げを抑え、府民の暮らしを守るための提案」とする見解を発表し、知事に申し入れを行なった。これは、来春の宇治・木津・乙訓系の3浄水を接続する広域化事業にともない、大幅な水道料金上げが懸念される問題について、①耐震化工事など府民の安全確保のための事業であり、一般会計からの繰入れを行なうこと、②過大な人囗予測にもとづく水需要予測の見直し、天ヶ瀬ダム再開発からの撤退、水利権の放棄を行なうこと、③市町へのカラ水量の押しつけを見直し、年18億円の府民負担の軽減を行なうこと、を実施し水道料金の値上げを抑えることを求めたものである。

4、今後の京都の教育をめぐっても重要な局面に入っている。子どもの貧困対策については、府民的な運動の中、この間リストラ・倒産による家計急変世帯への臨時・緊急の奨学金制度や高校生通学費補助制度の拡充など緊急対策が実現してきた。一方で、学校の序列化や競争教育については、「平成20年度包括外部監査報告書」で、「非効率な学校運営をもたらす総合選抜から、学校間に競争原理を持ち込む単独選抜への移行を検討すべき。総合選抜を廃止することで柔軟に府立高校の再編が検討できる」「北部地域の全日制高校17校中10校の募集定員が200人以下であり、計画的かつ早急に再編整備を進める必要がある」とのべた。代表質問では、包括外部監査報告書にもとづく効率最優先、競争激化、学校統廃合をすすめるべきではないと求めたが、知事はその方向について否定をしなかった。今後、府民的運動がいよいよ求められる。

5、関西広域連合について、8月4日の関西広域機構分権改革推進本部第5回本部会議で、当初計画していた今年11月の設立が見送られ、奈良、福井の県知事は「メリットが見えない」と広域連合に消極的で、三重県は態度を保留した。さらに広域連合には積極的な兵庫県知事も「道州制には反対」と述べるなど、設置目的や考え方が全くバラバラであることを代表質問で指摘し、府民と議会を置き去りにした関西広域連合ありきの議論を中止するよう厳しく求めた。その後開かれた関西広域連合(仮称)特別委員会でも、民主党委員から「道州制か、広域連合か、先が見えない」、自民党委員も「府県は補完的な役割を担うのに、その上にさらに広域連合をつくるのがなぜ必要かわからない」など意見が噴出した。我が党議員団は、引き続き関西広域連合の準備作業を進めないよう求めるものである。

6、今議会には、生活保護の母子加算の復活を求める請願をはじめ10件の請願と、給付制奨学金の創設を求める陳情をはじめ9件の陳情が提出され、わが党議員団は、新しい政権の下で、府民的要求を前にすすめ実現するため奮闘した。
 京都府学生自治会連合の学生のみなさん、私学関係者のみなさんらが、各会派を回り、「給付制奨学金の創設を求めることに関する陳情」「学業と両立できる就職活動のルールづくりを求めることに関する陳情」及び「国際人権規約社会権規約第13条第2項(b)及び(C)の留保撤回を求めることに関する陳情」3件が提出された。我が党議員団との懇談では、「奨学金を借りて、卒業時に350万から500万にもなり、就職も厳しく将来が不安」「経済的な負担のため、バイトばかりで大学の研究が空洞化してしまう」
など深刻な実態が語られた。我が党議員団は、これに基づき「給付制奨学金の創設を求める意見書案」「学業と両立できる就職活動のルールづくりを求める意見書案」「国際人権規約社会権規約第13条第2項(b)及び(C)の留保撤回を求める意見書案」を提案した。
 また、新日本婦人の会のみなさんが乳幼児を連れて府議会に「細菌性髄膜炎ワクチン接種への公費助成を求める請願」を提出された。我が党議員団との懇談の中では「4回の接種に3万円かかる」「ほかの自治体ではすでに公費助成している」など出され、それに基づき、「細菌性髄膜炎ワクチン接種への公費助成の実施を求める決議案」を提出した。
 さらにわが党議員団は、提出された請願等にもとづく意見書「日米核密約の全容解明と非核三原則の遵守を求める意見書案」「後期高齢者医療制度の廃止を求める意見書案」「生活保護の母子加算の復活を求める意見書案」「生活保護の老齢加算の復活を求める意見書案」「借入金返済猶予制度の創設を求める意見書案」「日米FTA(自由貿易協定)に反対する意見書案」及び「私学助成の充実を求める決議案」を提案した。
 ところが、民主党議員団は、後期高齢者医療制度の廃止や生活保護母子加算復活等、「すでに新政権で具体化に入っている」と述べ反対した。さらに、「学業と両立できる就職活動のルールづくりを求める」等の陳情にもとづく意見書案にも反対した。一方、景気・雇用等の緊急の経済対策が着実に推進されるよう、今年度及び来年度以降の財源確保に万全を期すことを求めた「地方における経済対策の着実な推進を求める意見書案」には反対するなど、オール与党の枠内にとどまるのかどうか、矛盾と混迷に陥っている。

 来春の京都府知事選挙まであと半年となった。議会閉会日に開かれた「府民大集合」には5000人の参加があり、府政転換を求める共感が強く寄せられた。我が党議員団は、門祐輔さんを先頭に、府民のみなさんと力合わせて、ひと・いのちが大切にされる京都府政の転換と府民生活の再生のために全力を尽くすものである。

9月定例議会を終えて[PDFファイル 223KB]