資料ライブラリー

議会を終えて(談話)

2009年11月定例議会を終えて

2009/12/21 更新
この記事は 10 分で読めます。

2009年12月21日
日本共産党京都府会議員団
団長 新井 進

 決算特別委員会にっづき、11月30日から開かれていた11月定例議会が12月16日に閉会した。
 今議会は、厳しい不況の影響を受け、高い失業率に加え、失業給付の打ち切りなど、昨年末を上回る深刻な雇用や営業、暮らしをめぐる事態の中で行われた。
 わが党議員団は京都府に対し、昨年の「年越し派遣村」が起こるような事態が生まれないよう、府民生活と雇用、営業を守るため、国や市町村、関係機関と連携し、万全の対策をとるよう論戦した。

1、本議会には9月提案の決算認定議案5件、人事案件2件を含む17議案が提案された。わが党議員団は、9月定例会提案の第20号議案「一般会計および特別会計歳入歳出決算を認定に付する件」、第22号議案「平成20年度京都府水道事業会計決算を認定に付する件」および、11月定例議会提案の第3号議案「職員の給与等に関する条例等の一部を改正する条例」の計3件に反対し、他の議案には賛成した。
 第1号議案「平成21年度京都府一般会計補正予算」には、「生活・就労年末緊急ワンストップ相談窓口」(12月29日、30日の二日間)の設置、「高校新卒未就職者緊急支援対策」を含む緊急雇用対策事業費や、生活福祉資金枠の拡大、新型インフルエンザ対策事業費など、わが党が府民のみなさんと求めてきたものが盛り込まれた。
 引き続き、職や住居を奪われている人たちへの住居の確保と生活支援、職業斡旋などのワンストップサービスの継続的な実施、新規高卒者が全員就職できる万全の対策、利用しにくい生活福祉資金の生業資金貸付の改善や中小零細企業への固定費助成などの直接支援、「私立高校生授業料全額免除化緊急制度」等の府外私立高校生への適用拡大など、今議会でかかげた府民要求の早急な実施を求めるものである。なお、1号議案には「京都地方税機構分担金」7690万円が含まれており、しかもその財源に地域活性化臨時交付金を当てていることは認められないため、この部分については反対した。
 第3号議案「職員の給与等に関する条例等の一部を改正する条例」については、①8月の人事院勧告、そして、政府と人事院に追随した府人事委員会勧告に基づき府職員給与等を一人あたり17万円、総額77億7千万円もの減額を押し付けるもので、家計にも、府職員に準拠する公務・公共労働者や民間労働者、さらには地域経済に与える影響が計り知れないこと、②基本給引き下げは、民間実態を正確に反映しておらず、さらに4月にさかのぼり賃下げすることは不利益不遡及原則を踏みにじること、③労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度がゆがめられていること、から反対した。

2、第20号議案「平成20年度一般会計及び特別会計歳入歳出決算を認定に付する件」については、第1に、「難病患者療養見舞金」、「小児慢性特定疾患患者見舞金」や府外の私立高校に通学する生徒への私学助成について、当事者の意見を全く聞かずに「外部仕分け」によって廃止するなど、府民に対し「自立・自助」「受益と負担」を押し付ける一方、派遣切りを行ったジヤトコに3億6千万円もの「京都産業立地戦略21特別対策事業補助金」を交付した上に、雇用を守る責任を取らせていないなど、府民のくらし、雇用、経営を守る姿勢に立てていないこと、第2に、同和奨学金の返済肩代わりの「高等学校奨学金償還対策事業費」や、過大な水需要予測にもとづく畑川ダム建設への支出、過大な貨物取扱量予測に基づく舞鶴和田ふ頭建設、巨大貯留菅方式による「呑龍」の建設、京都市内高速道路など、不要不急な事業を引き続き継続していること、第3に、市町村の総合行政を弱め、税の強引な取り立てにつながる税務共同化推進事業や、給与費プログラムに基づく、府職員の削減、非正規への置き換えなど、地方自治体としての役割を後退させていること、から反対した。
 また、第22号議案「平成20年度京都府水道事業会計決算を認定に付する件」は、過大な水需要予測にもとづく設備投資のつけを乙訓2市1町に、さらに高い水道料金を府民に押し付けるものであり反対した。この間題では審議を通じ、水道会計から一般会計へ、平成17年度に10億円、19年度に3億5千万円。そして、20年度に5億2 5 0 0万円と、合計約19億円も貸し付けていること、さらに、昭和54年当時の借入金約11億円も水道会計から一般会計に返済しており、ここ数年で計約30億円近いお金が一般会計に移っていることが明らかとなった。これは、府営水道会計が安定的に推移していることを示しており、市町や府民の負担をできるだけ軽減する努力こそ求められている。

3、府民の運動と議会論戦を結んで取り組む中、新しい政治を前へすすめる変化も作り出している。
 わが党議員団が求めた失業給付の全国延長給付の発動について「国に求めていきたい」と答え、年末のワンストップサービスの継続実施と充実を求めたことに対し、「生活福祉部門も含む関係機関と連携して定期の開催に向けて検討していきたい」とし、中小企業固定費についても「(今議会に)固定費も含め幅広く支援する新たな事業を提案」したと述べるなど、事実と道理ある追及に、背を向けることができないことを示した。
 また、耐震改修助成制度について、部分改修も補助対象にするよう求めてきたが、今回「耐震ベッドなど対策を講じたい」とし、来年度から実施の方向を示した。また、建設業登録をしていない小規模な業者への仕事おこしとして、「全国ですすんでいる小規模工事希望者登録制度」の実施を求めてきたが、今回「緑の工務店」制度の対象を小規模業者に拡大する方向を示し、一歩前進した。さらに、下請け・労働者保護のために公契約条例の制定を求めてきたが、今回新たな入札制度の見直しとして①工事請負契約書等に、労働関係法令順守項目の明記と是正指導・報告義務を追加する、②最低制限価格制度及び低入札価格調査制度の価格算定基準の引き上げ、について見直し、1月4日から実施する方向を示した。
 これらは、知事選挙を前に府民の要求と運動に応えざるを得なくなったものであるが、部分的な改善にしかなっておらず、住宅耐震改修の促進、小規模工事希望業者登録制度、公契約条例の制定を強く求め、実現のために全力を尽くすものである。
 トステム綾部工場閉鎖問題については、わが党議員団は9月議会、決算総括質疑に続き代表質問や委員会審議でも、雇用と地域経済に打撃を与える撤退を許さず、社会的責任を果たさせるよう求めるとともに、誘致してきた責任を果たすよう知事に迫ってきた。
 「工場閉鎖の撤回をトステムに求めるべき」とする代表質問に対し、知事は「工場閉鎖の再考」と「雇用の確保への十分な配慮」としか述べず、しかも「状況が悪化している中で、厳しい見通し」と企業説明をそのまま示したうえに誘致してきた府の責任については答弁しなかった。このためわが党議員団は、最終本会議でも「トステム綾部工場閉鎖の撤回を求め、雇用と地域経済を守る決議案」を提出するなど、攻勢的に論戦した。
 こうした中、最終本会議の翌日、12月17日にはトステム本社への申し入れ、18日には綾部市で200人以上が参加する市民集会が開かれたが、これらの運動に押されて、知事も17日にトステム本社に申し入れざるを得なくなった。引き続き、工場閉鎖を食い止め、雇用を確保するために奮闘する。

4、今議会中(12月13日)に、第1回京都地方税機構議会が開催された。わが党からは、府議会前窪義由紀議員、宇治市議会水谷修議員の2名が地方税機構議会議員として選出されているが、予算関係議案、1月実施に関する議案、労働条件等に関する専決承認議案には討論し反対した。
 そもそも税務の共同化は、①福祉や医療などと税業務を切り離し、市町村の総合行政を弱体化させること、②市役所や、町村役場から遠く離れた地方事務所に事務が移され、住民へのきめ細かな税務相談等が出来にくくなること、③徴収率98%を目指し、「断固たる滞納処分」など強引な税金の取り立てにつながる危険生があること、④国民健康保険料(税)を対象にしたことで社会保障としての国民健康保険制度を揺るがす可能性があることなど、重大な問題をはらんでおり、強引、拙速にすすめるべきでないと求めてきた。税務行政は、地方自治の根幹をなす業務であるとともに、住民の暮らしや営業にかかわる重要な問題である。ところが、電算システムの立ち上げ等が極めて遅れ、税機構で働く職員の労働条件すら労働組合と基本合意ができていないにもかかわらず、何が何でも1月からスタートさせることは、重大であり、これら問題点について質疑、討論を行った。
 関西広域連合(仮称)については、今議会で、知事部局から広域連合のメリット・デメリットが報告された。すでにこの問題では、与党会派からも「同床異夢」とする意見が出されてきたが、今議会では誰一人発言することなく、議会として事実上無視する状況となった。現在「3空港などの共同管理を広域連合で、ドクターヘリ、海岸漂着物での連携などを広域連合で」などの動きがあるが、これらは広域連携ですすめることができるものである。山田知事は、「税機構」や「広域連合」を「地方分権」の受け皿として推進しているが、これは「分権」の名による地方自治を壊すものである。

5、今議会には、「子どもと教育・文化を守る京都府民会議」等から3件、計73,815筆にのぼる請願をはじめ、請願5件と陳情4件が提出され、わが党議員団は府民要求にこたえその実現のために奮闘した。
 請願提出に先立ち、30人学級を進める会、子どもと教育・文化を守る京都府民会議、障害児・者の生活と教育を豊かにする会のみなさんが各会派に要請された。わが党議員団は「教育格差をなくし、子どもたちにゆきとどいた教育を求めることに関する請願」「障害のある子どもたちの放課後活動の制度化を求めることに関する請願」「給食調理・スクールバス添乗は民間委託ではなく正規職員の配置を求めることに関する請願」について懇談し紹介議員となった。その中では、「自主運営の学童でお世話になっているが、費用負担も親の当番に入るのも大変。」「(給食調理員とバス介助の)民間委託方針の発表は許せない」など、深刻な実態と切実な要求が語られた。こうした声を無視した八幡支援学校の給食調理とスクールバスの民間委託強行は断じて許されない。また、わが党議員団は、「雇用保険の全国延長給付発動を求める意見書案」「戸別所得補償制度に関する意見書案」「現行保育制度の堅持・拡充を求める意見書案」「トステム綾部工場閉鎖の撤回を求め、雇用と地域経済を守る決議案」等7意見書案と2決議案を提案したが、切実な要求の込められた請願にも、わが党提案の意見書案及び決議案にも、自民党、公明党に加え、民主党もそろって討論にも立たず反対の態度をとったことは、マニフェストにも府民の願いにも背くもので全く道理がない。
 弁護士会等の請願による「改正貸金業法の早期完全施工等を求める意見書案」など計意見書案11件、決議案2件についてはすべて賛成した。

6、鳩山政権が進める課題について、それぞれ論議となった議会であった。
 「事業仕分け」について、自民党は、国の事業仕分けについては批判的に述べたものの、知事に対しては、京都府の事業仕分けについて「内容、趣旨とも異なると考えるがどうか」と質問するにとどまるなど、矛盾に満ちたものとなった。民主党は事業仕分けについて「誰が事業を主体的に担うかを議論するためのツールに過ぎない」と弁解し「国と地方の財政構造改革」を知事に求めた。
 ガソリンの暫定税率の廃止について、自民党から「コンクリートから人へというが、コンクリートの先には人がいる」として、「全国一律に道路整備予算を削るのではなく、道路が必要な地方では道路を整備すべき」と求め、公明党は「国の編成作業の遅れと京都縦貫自動車道をはじめとする公共事業の削減方針が、来年度予算及び将来の京都に影響がでる」と指摘した。その結果、自民、民主、公明、創生が共同し「京都縦貫自動車道の全線開通に向けた着実な事業推進を求める意見書案」を提案した。
 これらは、総選挙後の新しい政治に対する世論の反映とともに、一方で知事選挙への相乗り批判の高まりの影響がある。その結果、代表質問でも決算議案を含む最終本会議議案討論でも、他会派から知事に出馬要請を一言も述べることができず、知事自身も知事選挙出馬については全く語れなかったことは、知事も与党も混迷していることを示したものである。

 いよいよ知事選挙まで4ヵ月を切った。わが党議員団は、年末を控え、極めて深刻な府民生活を守るために全力を挙げるとともに、門ゆうすけさんを先頭に、広範な府民との共同の力で府政転換を勝ち取り、府民の暮らしの再生をはかるため先頭に立つものである。

2009年11月定例議会を終えて[PDFファイル 252KB]