府政報告 1964 10年2月定例会 一般質問 新井・前窪・迫
●2010年2月定例議会で日本共産党の新井進議員、まえくぼ義由紀議員、迫祐仁議員が行った一般質問の大要と、他会派議員の一般質問項目を紹介します。
もくじ
新井 進 一般質問・・・・ 1
まえくぼ義由紀一般質問・・・・ 6
迫 祐 仁 一般質問・・・・11
他会派議員一般質問項目・・・・17
2月定例会 一般質問
新井進(日本共産党、京都市北区) 2010年2月12日
「関西広域連合」設立推進は、議会無視ではないか
【新井】日本共産党の新井進です。先に通告しています数点について、知事並びに関係理事者に質問いたします。まず、仮称ですが「関西広域連合」設立についてです。
この関西広域連合については、府議会でも昨年来、特別委員会を設置し、議論しているところです。ところが、昨年3月26日に行われた関西広域機構・分権改革推進本部会議では「2009年中の『関西広域連合』設立をめざす」「『関西広域連合』への参加については、次回本部会議において、知事・市長としての意向を明らかにする」と申し合わせました。これに対し、6月議会の特別委員会では、議会が議論を始めたばかりで、しかも異論や疑念も多く出されているもとで、知事としての意向を明らかにすると決めることはどういうことか。議会軽視ではないか。こういう批判の声が多数だされ、政策企画部長も「府議会の理解を得てすすめていくもの」と答弁されました。
そして9月議会の特別委員会でも、私どもは、「これだけ意見が出されている以上、いったん作業をストップすべきだ」といい、自民党の委員からは「大阪の知事や関西経済界が勝手にやっている。」こうしたものは「支持しません」と言われ、民主党の委員からも「根本的な議論をもう一回すべきだ」と言われているのです。そして、知事も前窪議員の質問に「議会はもとより府民の皆様の理解を得て進めていきたい」と答えておられるのです。さらに、11月議会の特別委員会では、理事者は「設立案」作りを進め、報告しましたが、これは議会の議論をまったく踏まえないものとして、委員は誰も質疑せず、事実上無視されました。ところが、1月8日の山田知事も参加した関係府県知事による「関西広域連合設立準備部会」で、「設立案」が決められ、「年内までの適切な時期」に設立を決定するとしました。しかし、今申し上げた経過をみると、これは住民不在どころか、議会無視ではないかと言わざるをえません。
知事は、議会での議論がこういう状況にあるのに、なぜ、「設立案」を決定し、今年中に、設立決定するという「スケジュール」を決められたのか。
また特別地方公共団体とはいえ、地方公共団体を新たに一つ作る、こういう重要な問題を、住民のなかでも、議会でも、十分な議論を抜きに、関西経済界が描いた構想、一部の知事が決めたスケジュールで、住民と議会に追認させるやり方でいいと考えておられるのか。まずお答えください。
奈良・三重・福井県、政令市が入らないなど、破たんは明白
【新井】次に、関西広域連合そのものについてです。
私は、この関西広域連合づくりは、すでに行き詰まり、破たんしていると考えます。なによりも、関西と言いながら、その一員である奈良県がこの連合には入らないとの態度を表明し、これまで連携を進めてきた、福井県や三重県も留保するとなっています。これだけでも破綻は明白です。
そして、「広域的行政」として、観光や防災が重要課題に挙げていますが、観光であれば、奈良県抜きに意味があるのか、京都市や神戸市が参加しなくて広域観光が取り組めるのか、それでもつくる必要はどこにあるのか。また防災についても、すでに政令市も含めた自治体間での応援協力協定ができています。また政令市のもつ消防力抜きには広域防災は成り立ちません。
「広域連合」をつくり責任主体をはっきりさせるといいますが、奈良県や政令市が参加しない広域連合の方が、責任が果たせないのではありませんか。
さらに、国の出先機関の権限の受け皿を作るとしています。しかし、その国の出先機関が所管する範囲と今回、奈良や福井、三重などが参加しない。そして四国の徳島や中国地方の鳥取が参加する組織で、その受け皿になりうるのか、国の出先機関の人員を広域連合が受けるなら、財政はどうするのか、府県はどうなるのか。さらに国、広域連合、府県、市町村といった四層制にするのか、それとも京都府など府県をなくした三層制をめざすのか、こうした根本的なことの議論を抜きに、とにかく「広域連合」をスタートさせるとしたやり方が行き詰まり破綻しているのです。
また、「道州制」についても、大阪の橋下知事は「道州制への起爆剤に」といい、兵庫県の知事は「道州制に行かないためのもの」という、まったく反対の説明をしています。
ではなぜ、いま広域連合なのか。関西財界と大阪の橋下知事などはあけすけに、まず「関西広域連合」からスタートして「関西州」へすすみ、大阪湾のベイエリア再開発など、大阪中心の開発構想を示しています。大阪府がつくった「関西州のイメージ図・関西の夢」で書かれている地図には、丹後半島も紀伊半島も書かれていません。交通体系は大阪中心にした関西大環状道路の整備計画であり、河川管理では、淀川流域だけで、由良川流域などは書かれていません。関西が一つになることで、大阪湾の再開発プロジェクトや空港、港湾整備などに資本を重点的に投資できる仕組みを作り、関西の浮上を図ろうというものです。これはなにも、橋下知事が勝手に言っているのではありません。関経連の構想であり、関西広域機構会長の秋山氏が議長をしている協議会が策定した国土形成計画・近畿広域地方計画に盛り込まれているものです。知事は、いろいろ言いつくろいながら、こうした動きに迎合しようとしていますが、それが通用しなくなっているのです。
知事、このように、行き詰まりと破たんが明白になっているこの関西広域連合作りは中止すべきです。また、そのための関西広域機構への職員配置は、ただちにやめるよう求めますがいかがですか。お答えください。
【知事】関西広域連合については、当初から申し上げているとおり、府県をこえた大規模災害や、ドクターヘリによる広域医療など、住民の安心安全や福祉の向上を図るために、関西が何ができるのかを一生懸命話し合いながら、進んでいるもの。関西広域連合は、府県、政令市、経済団体のオール関西で構成する関西広域機構に、分権改革推進本部を設置し、検討を進めており、近畿ブロックの知事会議においても議論している。地方自治法上の特別地方公共団体の設立は、あくまで府県自身が決定していくものであり、府県の主体的な議論抜きに決定されるものではなく、規約の策定等基本的な事務も兵庫県を中心に行なっていただいている。
設立の時期については、先般、本部会議の設立準備部会として関係府県の知事会議が開催された。早期の成立を主張される知事に対し、主に私と滋賀県が、議会を含めさらに住民の理解を求める慎重議論を提起していく中で、スケジュールを決定することを避け、あくまで府県間で足並みをそろえるための一つの努力目標として設定したという経緯をご理解いただきたい。
当初はオブザーバーとして参加する県は、過去の歴史や地理的事情など県内事情により、当初は様子を見るとしているもの。政令市は、現段階における広域連合の事務が都道府県事務であるためにオブザーバーになっているもの。また、国の出先機関の所轄事務を受ける場合には、もう一度全体的な議論をするため、新たな段階に進む際には、組織や規約等の全面的な見直しを行なうことを知事間で確認した。先般の代表質問で答えたように、関西広域連合は、現行の府県制度の中で地方自治法の広域連合制度を活用し、広域的な課題に効果的に対応するもの。現行の市町村、都道府県という体制を変えるものではない。また、分担金や規約の議決など、実質的には構成団体のコントロールの下に置かれた特別地方公共団体であり、道州制のように統治機構の抜本的な変革を行なうものではない。
私は今後とも、住民の代表である議会において、しっかりと議論いただくことが重要と考えている。府議会の皆様のご意見をお聞きし、協議しながら進めていきたい。
【新井】一点は、広域的な行政をやっていくための組織として作るという答弁だが、たとえば、奈良県の知事は議会に対して、「広域連合をつくらなくても、連携で対応できるものばかりがいま上がっている」と言っている。三重県の知事も、「広域連合を設立するまでもなく、従来の広域連携で対応できるものが多い」と答えている。まさに、広域連携でできるものをわざわざ広域連合にしなければならない理由というのは、これらの県から言えば何もないということになっている。ですから「広域連携のためだ」と知事はいわれるが、これらの知事の見解が示しているように、広域連携でできるものをなぜやらないのか、このことを答えるべきだ。
もう一点は、今後についても「議会、住民の理解を得て」と言われたが、現実にはこの間の議会の議論は、広域連合をつくっていく方向に進むについては、様々な懸念がある、それらを明確にしていくことが必要だという議論がされている。このことについて、明確になっていない段階で、広域連合の設立案をつくり、今年中に決めていこうというスケジュールを決めたこと自身が問題だと指摘しているのだから、これに答えていただきたい。
もう一つは、道州制について決めたものではないと言われるが、この広域連合をつくって、関西州をつくっていこうというのは、テーブルを一緒にしている関経連の会長も、大阪の橋下知事も言って、それが事実上通っている。知事が「そういう方向に進むのではない」と言うならば、大阪の知事にこういう発言を止めさせるべきだ。関経連に、そういうことについては変更すべきだと求めるべきだ。そうでないのに、この事態をどんどん進めていくこと自身は、関経連や大阪の知事に結局は引っ張られていくのではないかという危惧はぬぐえない。それについてはもう一度お答え下さい。
【知事】設立案もなければ明確な議論もできないと思う。明確な議論をしていくためにも設立案を考えた。新たな段階に進むときには、必ず構成団体の議会の議決を得ていくということを前回の本部会議で私どもは主張し、それが了承された。それ以上でも以下でもなくしたので、私どもの主張は十分通っていると考えている。
【新井】関西州にいくのかどうかという点は、答弁が漏れた。知事は、新たな段階にいくのは、これからの議論でと言われたが、広域連合のスタート自身がそのための起爆剤だと橋下知事は言っている。そのことがいま問題になっているのだから、「関西州にいくかいかないかは今後検討する」ということははじめから書いているが、そういう流れに進むこと自身が、結局都道府県の廃止といった方向に進むというのは、明らかだと思う。私は、今回の問題について、すでに指摘した点を含めて、「そういう意見があったとしてもスタートさせるんだ」というやり方は止めることを強く求める。
深刻な現状にある林業の振興に府は積極策を
【新井】次に、林業振興策についてお伺いします。
今日、森林を守り育てることは、国土を守るにとどまらず、地球環境保全への大きな貢献となります。また、林業は、何よりも地域に根ざした地場産業であり、製材から、住宅・家具などの木材利用まで広い裾野を持った産業であり、バイオマス燃料などこれからの低炭素社会に向けた大きな可能性を持った産業として注目されています。また、林業振興は農山村の再生に欠かすことはできません。
しかし、現状はきわめて深刻です。府内の素材生産量は1994年には11万7600m3、生産額は35億3600万円余でしたが、一昨年には12万2300m3、11億6200万円余と、生産量はベニヤなど合板の増加で若干増えても、価格は大幅な下落で、生産額は3分の1以下です。伐採してももうけにならない、こういうことから、人工林でも、その3分の1,4万5千ヘクタールもが放置林となっているのです。そして、山林労働者数も、この15年間で1617人が684人へと減り、60歳以上が3分の1を超えています。
府内産・国内産木材活用計画をつくり、需要拡大を
【新井】こうした事態をどう打開するか、このことがいま求められています。
そのための対策として、まず木材需要を拡大する対策です。これまでの外材依存から、国内産材への転換が求められています。
府内の人工林は、10齢級以上の伐期を迎えているのが50%を占め、10年後には74%が利用可能となります。これらの木材の需要を拡大し、林家の安定した所得となるよう対策を講じ、持続可能な林業経営へと転換を図ることが求められています。私はこれまでから、学校など公共施設に積極的に府内産木材を活用するよう対策を求めてきましたが、政府も2020年には木材自給率を、現在の24%を50%に引きあげるとし、公共施設への木材活用を義務付ける「公共建築物木材利用促進法案」を通常国会に提出すると表明しました。本府として、法制定をまたずに、公共施設等への府内産木材の活用を積極的にすすめるべきと考えます。
そのために第1点は、公共施設での府内産木材、国内産木材の積極的な活用計画を策定することです。とりわけ府として既存の学校の床や壁を板張りにするなどの改修、学校の木造化をすすめることです。すでに、文部省は、1985年に「暖かみと潤いのある教育環境づくりが期待できる」として「学校施設における木材使用の促進について」の通知も出しています。児童のけがや事故を防ぎ、情緒安定効果をもたらすことも明らかになっています。こうした活用が進めば、間伐材が所得になる展望が開け、地元製材業者や建築業者の仕事おこしともなります。まさに、一石3鳥にも、4鳥にもなります。市町村とも協力して、学校の改修や建設に府内産材を積極的に活用する計画を立てることを求めますがいかがですか。
また、そのためには、国や府の支援はかかせません。府内産や国内産木材を活用した場合の、補助金の上乗せなど必要経費への助成拡大を国に求めるとともに、本府としても具体化すべきと考えますがいかがですか。この点で、本府の『京の木の香り整備事業費』が、今年度4億1700万円余であるのが、来年度予算案では、半分以下の2億円に減らされています。これでは、需要拡大に逆行するのではありませんか。お答えください。
第二点は、公共施設建設に府内産木材を安定的に供給し、活用できる仕組みを作ることです。公共施設の建設等の場合、一時に大量の木材が必要になり、また、乾燥等の処理の時間も必要です。そのためには、森林組合や素材生産業者と協力してストックヤードをつくり、安定的に供給する仕組みづくりと、さらには公共施設建設の大量発注の際には、発注は第一年度に行い、実際の工事は第2年度に行う2段階発注方式の採用など改善が必要です。そうした仕組みづくりを積極的に検討すべきではありませんか。
【農林水産部長】学校施設における府内産木材の活用について。府立学校においては校舎の大規模改修にあわせ、府内産木材を活用しており、今年度は東稜高校体育館の改修等、できる限り取り入れたところ。市町村においても、木質化が取り組まれており、22年度には亀岡市や長岡京市の小学校の校舎改築に当たり、府内産木材が利用された。今後とも計画的に木材が利用されるよう、校舎改修にあわせ、利用拡大に努めるとともに、国に対する学校施設整備にかかる助成の拡充についても、引き続き求めていきたい。
今年度創設した「京の木の香り整備事業」について。学校をはじめ植物園など、身近な府民利用施設の木質化を進め、来年度については、骨格的予算の中で、計画的に実施する治山ダムでの木材活用など、安心安全の確保を目的に、公共事業での利用にかかる予算をお願いしている。府民利用施設については、今後予算化を検討するとともに、さらに庁内にプロジェクトチームを設置し、部局横断的に木材利用の取り組みを強化するなど、利用拡大を総合的に推進していきたい。
公共施設建設等における府内産木材の調達について。ウッドマイレージCO2認証制度に参画する府内200をこえる木材関連団体で構成する京都府産木材認証制度運営協議会において、業界内にストックされている府内産木材の流通をより効率よく実施できるよう、検討が進められており、その中で公共建築に関する情報の共有化を図り、安定供給体制の強化に努め、木材の再利用使用にも応えていくこととしている。
磨き丸太生産基盤は崩壊の危機。府市協力して再生緊急対策を
【新井】第三点は、本府の伝統工芸品に指定されている北山磨き丸太についてです。その生産量は、1994年には17万本余、生産額にして25億9千万円であったのが、2008年には4万本、2億2500万円と、生産量にしてわずか4分の1、生産額で10分の1にまで落ち込んでいます。このままでは生産基盤そのものが崩壊し、すぐれた技術も継承できなくなります。それだけに特別の対策が急がれます。
私は、これまでから北山磨き丸太は、いまの「緑の交付金事業」では「事実上対象にならない」と改善を求めてきましたが、なぜ改善が進まないのかお答えください。
北山林業の再生は、京都の景観と鴨川の治水のためにも、極めて重要です。その再生のため、京都市と協力し、「北山林業地再生緊急対策」を実施するよう求めるものです。需要拡大のために、北山磨き丸太を活用すれば、奨励金や現物給付を行う制度や、磨き丸太の新用途開発の系統的研究、ハウスメーカーや設計者、工務店等への磨き丸太活用や加工技能講習などの支援策、さらには、文化的遺産でもある北山の景観を維持するため、市民ぐるみの支援策など、具体化を図るべきです。いかがですか。
【農林水産部長】北山磨き丸太と緑の交付金制度について。この制度の趣旨が、広く府内産木材の利用拡大を図ることであるので、磨き丸太の利用も進むよう、リフォームなどの小規模な事業への支援、交付先である緑の工務店の対象の拡大を検討するとともに、京都市や生産者団体と連携し、床柱以外でも利用が広まるよう、内装や装飾品等、新たな用途開発や支援のあり方について、引き続き研究していきたい。
北山の景観維持について。手入れが行き届く、整然と立ち並ぶ北山杉による独特の景観保全を目的に、京都市が進めている国道162号沿線での北山杉の枝打ちや間伐に対し、ふるさと雇用再生特別事業により、支援している。
森林組合支援の大幅拡充で、持続可能な林業へ
【新井】林業振興策の2点目は、木材価格の大幅な下落で、所有者が山を守りたくても守れない事態にあるだけに、林業の生産活動そのものを支援することで、持続可能な林業へと転換を図ることです。日吉町森林組合は、小規模分散型の山を、森林組合が「森林プラン」を作り、請負、集団化し、安全な作業路の高密路網、機械化による省力化で採算が取れるようにし、全国から注目されています。同様のことが岡山県の西粟倉村では、村と山林所有者が、管理協定を結び、団地化し、山林所有者の負担なしで山を管理しています。こうした経験が示すように、地域の実情に応じた集団化、団地化、積極的な作業道の整備、適切な効率化、機械化の推進が必要となっており、これらを進めるため、森林組合への支援策を大幅に拡充すべきではありませんか。
【農林水産部長】森林組合への支援策について。すでに、渓谷と林業のための道づくりや、高性能林業機械の操作技術を習得する研修に取り組んできた。さらに、仮称だが、林業トレーニングセンターを設置して、森林の未来を担う人材を育成するとともに、森づくり加速化事業により、道路網の整備や機械の導入を支援する予算を今議会でお願いしている。
山林労働者への支援で、後継者ができるように
【新井】次に、山林労働者の問題についてです。
山林労働者をどう確保するかは、今後の林業振興に欠かすことはできません。ところが、この山林労働者の京都での賃金は、相場が12000円、ボーナスは夏冬5万円程度の寸志です。年間の仕事量は150日前後がほとんどで、年収にすれば150万円から200万円あまりです。これでどうして後継者ができるでしょうか。山仕事で生活できるように支援することが求められています。
そのため、一つは、林業、治山の公共事業の労務単価を本府は、普通作業員の13500円としていますが、山林労働者の場合チエンソーや動力草刈り機を使って仕事をするわけで、国土交通省も「免許、資格および技能講習の終了を必要とせず、運転および操作に比較的熟練を要しないものを運転または捜査して行う作業」は、特殊作業員としており、本府でもこれを適用し単価15800円とすべきです。
二つ目は、現在、山林労働者の社会保険料掛け金助成の適用年齢は59歳までで、事実上60歳定年です。しかし年金は65歳にならないともらえず、しかも、山仕事は森林組合作業班をやめたあとも、臨時や一人親方として、しています。社会保険料掛け金助成の年齢制限を引き上げ、定年の延長を図るよう指導すべきです。
また、一人親方や臨時雇いの労働者もあって山仕事が維持されています。ところが、これらの人たちは、いまの社会保険料掛け金助成も、林業退職金制度も対象外となります。こうした人たちも、社会保険制度に加入できるよう、また退職金制度に加入できるようにすべきです。
とりわけ、公共事業の場合、林業退職金共済制度の掛け金は、管理費に積算されています。ところが事業を請け負った事業者が、一人親方や臨時雇いの労働者をやとった場合は、証紙は、ほとんどが張られていません。林退共の証紙が適正に張られているのか点検されているのですか。お答えください。
三点目は、労災保険についてです。山仕事は、労働災害保険の掛け金率が高く、事業主負担も大変です。多くの府県で、この労災保険の事業主負担への助成が行われていますが、本府では行われていません。早急に助成措置を行うよう求めるものですが、いかがですか。
林業振興対策について、いくつか提案しましたが、積極的な答弁を求めて、質問を終わります。
【農林水産部長】府の発注する公共事業における労務単価について。採用内容によって、全国統一的に適用区分が定められており、これに従い、機械を使用した作業については、特殊作業員の単価を適用している。また、従来より、改正森林法をはじめ、各種労働関係法令の遵守を指導してきた。今年の1月からは、下請業者を含め、これら法令遵守を工事請負契約書に追加した。
社会保険料について。年齢59歳以下、年間就労日数200日以上の労働者を対象に、市町村を通じた掛け金助成を行なっており、森林の維持管理を担う森林組合の恒常的な雇用関係にある基幹的作業班員の確保、定着をはかることを目的に、きわめて低かった林退や健康保険の加入率の向上を重視した支援を行なっている。なお、定年延長については、各事業者の経営方針などにより、判断されるものと考えている。
社会保険や退職金制度への加入について。一人親方や臨時雇いの方についても、それぞれ加入はできるが、現実の各種制度加入に必要な要件の具備や各人の負担が大きいなどの障害がある。このため、府としては、長期就労を奨励することを目的とした林業退職金共済制度、掛け金助成などの支援を行なっている。林業退職金共済制度は、労働日数により、日々の掛け金を事業主が証紙を購入して貼る退職金制度であり、工事請負契約時に、請負業者に対してその証紙の貼付を指導している。
社会保険等の事業主負担について。京都府では健康保険、厚生年金や府独自の退職金事業の保険料の助成を行なうなど、トータルとして、事業主や労働者の負担の軽減を図っている。
まえくぼ義由紀(日本共産党、宇治市及び久御山町)2010年2月15日
【まえくぼ】日本共産党の前窪義由紀です。数点について知事並びに関係理事者に質問します。
永住外国人の地方参政権
地方参政権を付与していないのはOECD加盟国のうち日本だけ
知事は、国に対し法整備等を求めるべき
【まえくぼ】まず、永住外国人の地方参政権、職員採用の国籍条項撤廃の問題についてです。
私は、永住外国人に地方参政権を付与することは、当面の急ぐべき課題だと考えます。現在、日本には、60万人を超える永住外国人がおられます。これらの人々は、さまざまな問題を通じて地方政治と密接な関係を持ち、日本国民と同じように、地方自治体に対して多くの意見や要望を持って暮らしておられます。
地方政治は、本来、すべての住民の要求にこたえ、住民に奉仕するために、住民自身の参加によってすすめなければなりません。外国籍であっても、日本の地方自治体で住民として生活し、納税をはじめ、一定の義務を負っている人々が、住民自治の担い手となることは、憲法の保障する地方自治の根本精神とも合致するものだと考えます。
最高裁も、永住外国人に地方参政権を保障することは「憲法上禁止されているものではない」との判決を95年2月に出しています。また、国際的にもOECD加盟の30カ国で、二重国籍も認めず、かつ外国人に地方参政権を付与していないのは日本だけになっています。
日本共産党は、すでに、1998年11月法案要綱を発表し、①日本に永住資格、特別永住資格を持って在住する20歳以上の外国人に対して、都道府県及び市区町村の首長・議会議員についての選挙権を付与する。②これに該当する外国人が、日本国民の有する被選挙年齢に達した場合、当該被選挙権を付与する。③具体的な選挙資格については、外国国籍であることを考慮し、個々人の意思を尊重して、選挙資格を取得する旨の申請を行ったものに対して付与する。④地方参政権の取得に伴う選挙活動の自由は、日本国民に対するものと同様に保障する。⑤地方自治体における条例制定など直接請求権、首長・議員リコールなどの住民投票権も同様に付与することを提案しています。
今国会でも、永住外国人への地方参政権の付与について、法案提出の動きが出ています。この問題は地方自治に深く関わるものです。だからこそ国任せにするのではなく、地方から積極的に国に法整備等を求めるべきと考えます。永住外国人に、速やかに地方参政権を付与することについて、知事の見解をうかがいます。
さて、本府では、「京都府外国籍府民共生施策懇談会」を設置し、府政への参加を推進し、外国籍府民とともに生きる京都府づくりを進めるため、諸問題や取り組むべき課題について意見を求めています。すでに09年2月に報告書も出されています。永住外国人の地方参政権問題等も課題となっていますが、府政にどう反映されるつもりなのか。お答えください。
【知事】永住外国人の地方参政権の問題ですが、京都において、府民として暮しておられる外国籍府民の皆様のご意見を伺うことは、府政を担うものとして大変重要なことと考えている。このため昨年度より、京都府外国籍府民共生施策懇談会を開催し、外国籍府民に関する諸問題やとりくむべき課題についてお伺いしてきた。
また、その中で税金や年金も支払っており、在住外国人で永住者に対しては地方参政権を与えてもよいのではないかというご意見や、一方で、在住外国人は日本国籍はないので、選挙権はなくてもよいが、さまざまなことに対する協力参加や議論をする権利も必要と思うので、そうした声を反映させる仕組みづくりが必要といったご意見もお伺いしている。
この問題は、国民主権という大変国家的な大きな、また、骨格にかかわる非常に大きな論点を含んでおり、その中で国の立法政策に委ねられている事柄である。ただ、現状においては、いかなる制度とするのか、仕組みや考え方についてもまだこれからという段階であるので、さまざまな問題点を国民的な議論として展開するべきだと思っている。
例えば、先の代表質問で、かみね議員が地方公共団体も国の防衛問題について主体的に行動すべきと述べられました。私は、防衛問題は、地域主権の問題とは異なる問題であるので、かみね議員と前窪議員の質問から、防衛問題についても参政権を外国人に与え、参加させるというのが共産党の立場ということになるのかどうか。こうした問題点についても、私は、地方分権のあり方を踏まえてしっかりと検討するし、また、そういう表明の中でこそ初めて議論していくべきだと考えている。
それなきからずして、マルバツを述べるという問題ではないと思っている。
なお、懇談会でいただいたご意見への府政への反映については、今年度の懇談会において特に在住外国人への情報伝達を充実すべきとのご意見があったので、リーフレットによる病院・警察・消防、安心安全にかかる基本的な生活情報等の提供を行なうとともに、さらに効果的な外国人ホームページづくりについて検討を進めるなど、具体化に向けてとりくんでいきたいと考えている。
府職員採用における国籍条項の撤廃
一般職への国籍条項は、撤廃すべき
【まえくぼ】次に、府職員採用における国籍条項の撤廃について伺います。
この問題でも歴史的経過があります。1953年に出された内閣法制局見解は「法の明文規定が存在するわけではないが、公務員に関する当然の法理として、公権力の行使または国家意思の形成への参画にたずさわる公務員となるためには、日本国籍を必要とするものと解すべきである」とし、いわゆる「当然の法理」として、国家公務員、地方公務員ともに、定型的な職務に従事する職を除き、採用試験の受験資格につき日本国籍が必要とされました。
その後、1970年代から阪神地域の一般市で国籍条項が撤廃されるなど全国的な広がりを見せ、1996年、当時の白川自治大臣は、「採用は各自治体の判断にゆだねる」「外国人の採用機会拡大に努力いただきたい」との談話を発表し「当然の法理」よる排除論を否定し、「条件付き撤廃」を容認しました。
また、東京都に採用されていた在日韓国人職員の、管理職への昇任試験を都が拒否した問題の裁判で、1997年11月東京高裁判決は、「国籍条項は外国籍職員が管理職に昇進する道を一律に閉ざすもので、職業選択の自由と法の下の平等を保障した憲法に違反する」としました。
裁判は最高裁まですすみ、2005年1月の最高裁判決は、高裁判決を破棄したものの、外国人であっても地方公務員法において、一般職への採用は認められるとしました。
現在、大阪府、滋賀、奈良、三重、鳥取県など11府県が、また、京都市を含む15政令市、さらに一般市などでの広がりを見せています。一般職の国籍条項を撤廃する、これは時の流れであります。
このような状況を、知事はどう認識していますか、際化が進展する中、永住外国人の職業選択の自由の保障について、どのように考えておられるのか、一般職への国籍条項は撤廃すべきと考えますが、知事の見解を伺います。
【職員長】職員採用における国籍条項についてですが、京都府では、学術的、技術的職種を中心に28の職種で国籍を外している。
一般行政職員については、現在、11の府県や政令市において国籍要件を撤廃しているが、いずれの団体も、公権力行使に該当する職や公の意思形成への参画に携わる職への任用制限を設けており、できる限り職種の内容・範囲等を拡大することが外国籍の方の安定した身分保障につながることを考慮すれば、現状では国籍要件を外すことに、いろいろ問題が残っているのも事実であると考えている。
また、平成17年最高裁判決においても、国民主権の原理に基づき、国籍要件の制約について合理性を認めている。
いずれにせよ、この問題は、国民主権、国家主権の根本に関わる問題であり、本来、統一的な取り扱いを国民の意思である法律で規定すべきものと考えているが、今後とも、国・他府県の動向等も十分注視し、検討していきたいと考えている。
なぜ、国に対し「地方参政権の法整備が必要」と言えないのか
【まえくぼ】私は、地方参政権というのは、こう考える。知事は、国が決めてからいろいろ意見を言うべきだというが、地方参政権というのは、地方自治に深く関わる問題なのです。ですから、府民を代表する知事として、国に積極的に自分の意見を上げていく。こういうことが今必要ではないでしょうか。
舞鶴港へのアメリカ艦船の入港に際しても、外交問題として何も国に言わない。あるいは先日の沖縄の米軍基地の負担軽減についての朝日新聞のアンケートにも、いろいろ15知事が意見を言っておられる。これは、全国で配慮していかなければならない。こういうことを言っておられるのに、知事は思いきった発言はされない。こういうことであります。
地方自治に関わる問題なのに、地方参政権の問題について、なぜ知事は自分の意見を言わないのですか。再度、答弁ください。
それから、地方参政権の付与について、韓国民団の新年の交歓会で、強い意志が表明されました。今年は、植民地政策により韓国を併合してから100年になる、そういう年であります。在日の皆さん方の苦難の歴史を想うとき、人権問題としても看過できない問題であります。なぜ、法整備が必要だということ、こういうことすら、知事は国に言えないのですか、はっきり答弁してください。
【知事】私が申し上げているのは、今の段階で簡単にマルバツというような話ではない。さっき言ったように、しっかりとして問題点を国民的議論として、これを踏まえた形で行なっていくべきであり、まさに私が先ほど指摘しました点についても、まえくぼ議員は全く答えられない現状の中で、我々は議論をするというのは、非常に難しいことではないかと、思っている。そういった議論をしっかりと踏まえて、我々の意見を述べていかなければならないと考えている。
職員採用の国籍条項の撤廃問題でも門戸を閉ざすのか
【まえくぼ】職員採用の国籍条項の撤廃問題でも門戸を閉ざしています。
京都市では、平成13年度から撤廃をし、採用試験の応募書類に国籍記入欄はありません。これまで3人の合格者を出しております。大阪府では平成11年度から撤廃をし、16年から21年度の直近5年間で、38人が応募、合格者は2人となっている。
知事として、実際、府政の中に生かして、それをどう国民にあるいは全国に発信しないのですか。これではとっても国際派知事とはいえないと思います。再度、知事自身の答弁を求めます。
【職員長】やはり、二重の制約がかかる職員の任用、これについてはいろいろ問題が残っているのも事実であると考えているので、今後とも検討していきたいと考えている。
「国に対して意見を言えない知事」が明らかに
【まえくぼ】知事に再答弁を求めましたが、「国に対して意見を言えない知事」このように感じました。地方自治の問題、あるいは地方主権という問題をさかんに言われますが、これは、言葉だけの問題。行動で是非示していただきたいということを求めておきたいと思います。
京都府南部地域の医療体制
医師確保・夜間・休日救急の「輪番制度」再構築のために
府がリーダーシップを発揮すべき
【まえくぼ】次に、京都府南部地域の医療体制について質問します。
京都府北部地域と並び南部の医療体制も危機的な状況が続いています。救急現場の実態ですが、昨年11月28日に、宇治市で開かれた、「京都南部の医療を考えるシンポジウム」では、パネラーの宇治徳州会病院の末吉副院長が、山城北地域の救急の現状について報告されました。
末吉副院長は、「山城北は、少ない医師数だが、何とか救急医療を維持している。昨年の受入れ状況は、徳州会病院6000件、きづ川病院3400件、第2岡本病院3000件と集中して受け入れている。救急搬送医療機関の数は減少傾向にある」。そして徳州会病院では、救急受け入れは広域にわたり、遠距離では寝屋川、大津、天理、大和郡山などに及び、その膨大な救急を、救急対応の4~5人をあわせ当直の12人の医師が、「特攻精神で」と表現されていましたが、いつ崩壊してもおかしくない状況で対応されているということでした。
また、小児医療の問題は、時間外対応の施設が減少しており、「1日で220人の小児科の時間外診療」があることも含め「小児科では勤務時間外の医師を呼び出すことがくり返され、小児科医が疲弊している」と深刻な状況も報告されました。
主に救急の問題についてふれましたが、城陽市で出産できなくなるなど産科の深刻な状況も変わりません。このような事態は、小泉構造改革による社会保障費の毎年の2200億円削減、診療報酬の相次ぐ引き下げ、医師は足りていると医師の養成を縮小してきたために起こったものであります。知事も、この国の動きに、「医療改革に単に反対しても何も解決しない」と言って追随され、リハビリ医療の拠点であった府立洛東病院を廃止し、「京都では医師は足りている」「病院の責任で医師確保を」と言って、当初、必要な対策を講じられませんでした。
そこでお聞きします。深刻な事態と府民の批判を受け、本府は、これまで一定の医師確保対策を講じ、来年度当初予算案でも、救急勤務医・産科医等確保支援事業費を盛り込んでいますが、現場の実態に十分応える事になっているのでしょうか。
先に紹介した末吉副院長は、「救急二次輪番病院への年間補助金は、宇治徳洲会のように6千人受け入れても70万円、例えば第2日赤の救命センターは1億6000万円になっている」と指摘し、市町村からの補助が、3次医療の救命救急センターへの補助と比べ、あまりにも低いと言っておられました。
05年度以降、輪番制補助事業は、一般財源化され、国・府の補助は廃止されていますが、一方、私立病院協会は、来年度府予算に対し、「小児科の二次輪番制度の拡大に向けた体制整備と一般救急の二次輪番制度の継続のための財政措置」を要望されています。
広域の救急医療を支えるこれらの医療機関に対し、府として新たに助成を行うことや、一部の救急病院に受け入れが集中し、医師に過剰な負担が集中しないよう、地域の病院と開業医等の夜間・休日診療の「輪番ネットワーク」を再構築するために、府がリーダーシップを発揮し、本格的に取り組むことが喫緊の課題だと考えますが、いかがですか。
さて、今年度初めての開催となる京都府医療対策協議会が、前回からほぼ1年経過した2月5日ようやく開催されました。この医療対策協議会では、新年度の府の医師確保対策に対し、「若い医師のために住居を用意してやるのも選択肢」「府がコ―ディネータとなり、京都市内の病院へ医師を振り分けるシステムをつくるべきだ」等の意見が相次いだといいます。
知事は、これほど医師不足と地域医療が深刻な事態となり、関係者の智恵を集めた対策が必要なのに、なぜ、来年度の予算編成前に、協議会を招集され意見を伺わなかったのですか。南部の医師確保対策、救急体制の確立等の問題も含め、府の医療対策協議会で検討を進めるべきではなかったのですか、お答え下さい。
府医療対策本部にこそ、専任職員を配置し、医師が地域で意欲をもって診療できるシステムづくりのため実効ある対策を
【まえくぼ】また、私ども議員団は、本格的な医師確保対策を推進するために、知事を本部長に選任職員も配置した緊急対策本部の設置を提案してきました。1月に入り「府医療対策本部」が急きょ設置されましたが、その構成は庁内部局と府立医大のみので、「オール京都」の体制には程遠く、専任職員も配置されていません。
府は、先に述べた医療対策協議会で、今月中に協議会に医師会、京大や日赤など構成団体の参加を得てワーキンググループを設置し、「中長期的に検討すべき事項」や「今後新たに取り組むべき課題」を検討し、「今後の医師確保関係予算の検討に反映する」と公表されています。
そこで、緊急医師確保・派遣対策の実施や救急体制の確立などの問題についても、「オール京都」で取り組むために、府の医療対策本部にこそ、専任職員を配置し、医師会、私立病院協会、京大病院、日赤などからの参加を得て、緊急医師確保・派遣対策の実施。医師確保体策の検証、南部地域も含めた拡充策の検討。臨床研修指定病院への指導医の派遣や子育て環境の整備、住宅確保等医師が地域で意欲をもって診療にあたれるシステムづくりの実施のための実効ある対策を講じるべきと考えます。お答えください。
【健康福祉部長】京都府南部地域の医療体制についてだが、本年度6月補正予算で創設した救急勤務医・産科医等確保支援事業については、京都府独自に単費加算を行なった上で、本年度は救急、分娩、産科後期研修の3種類の手当ての延べ数で40を上回る医療機関に対して助成することにしているが、来年度も引き続き、関係医療機関に十分周知を図り、出来る限り多くの医療機関に利用いただけるよう取り組んでいく。
2次救急医療体制については、輪番制の実施主体である市町村とも連携し、役割分担する中で、京都府としては、救急医療に従事する医師・看護師の確保や専門性の向上、小児救急医療体制の整備など必要な支援を行なってきた。また、現在、救急病院を対象に患者数や診療体制などについてお聞きするなど、京都府における救急医療体制全般の整備のあり方について検討を進めているところであり、今後、その検討結果を踏まえ、輪番制など2次救急を含む救急医療体制のいっそうの充実を図っていくこととしている。
京都府医療対策協議会については、今年1月初旬に開催し、来年度の医師確保対策事業等についてご検討をいただいたところであり、その中で、京都府自身で他府県の医科大学に在籍されている方のネットワークづくり等のご提案をいただき、その内容も踏まえて、総額18億円に上る総合医師確保対策予算案を計上させていただいている。
医療対策本部については、医師会や私立病院協会、大学、公的病院等の医療関係者や市町村代表など、幅広い機関から参画いただいている医療対策協議会の事務局的機能を担う京都府としての取り組みを全庁的なものとして強化するため、庁内の部局横断的な組織として設置したものであり、今後とも、医療対策協議会でのご議論を支える実行部隊としての取り組みをいっそう強化していきたいと考えている。
「輪番制」の再構築と本府の財政支援、小児科・産科の医師確保を
【まえくぼ】医師確保の問題ですが、民間移管された男山病院では、関西医大からの医師の出向が今年度末で終わるということになっているようです。4月以降の診療体制が、心配であります。とりわけ小児科医あるいは産科医の確保ができるかどうか。目途が立っていないという状況であります。このことに、いち早く支援していくことが求められていると思います。また、昨年6月から八幡中央病院の小児科が休診になっています。こういった地域性もあります。是非、力を入れていただきたいと思います。
そこで、私が思うのは、徳州会病院のように「たらい回しはしない」「重症、周産期、小児など、あるいはまた、ときには心肺停止の患者などを受け入れている。実質的に、救命センターの役割を果たしている」。こういった状況もあるわけで、京都府がコーディネートして、こういったところをしっかり援助していくということが求められていると思います。輪番制の再構築、本府の財政支援について、再度答弁を求めます。
【健康福祉部長】救急医療体制の件だが、現在、その実態をお聞きするなど京都府における救急医療体制全般の整備のあり方について、検討を進めている。その検討結果を踏まえていっそうの充実について努めていきたいと考えている。
城陽の山砂利問題
産廃の撤去計画、再発防止対策をしっかり示せ
それがない限り、残土等の搬入事業は一時凍結すべき
【まえくぼ】次に、城陽の山砂利問題についてです。
城陽の山砂利採取地に、約3万㎥の産業廃棄物を含む約16万㎥の建設汚泥処理土が持ち込まれた問題で、本府が立ち上げた「再生土問題に関する検証委員会」は、08年2月、知事、城陽市長に対し、報告書を提出しました。報告書を受け取った当時の猿渡副知事は、尚、当初の覆土方針を示し、一方、城陽市長は、撤去方針を強調しました。現地の考えも斟酌しないこの副知事の姿勢には、市議会・市民から厳しい不信の声が上がりました。
報告書は、「撤去指導には違法性がある」「撤去費用が莫大になる」、撤去する場合、「6000台のダンプが往復し、環境に悪影響がある」などと述べ、撤去を求める市民の願いを逆なでし、本府の覆土方針を追認するものでした。
そして、知事の意向を受けて、現地に乗り込み指揮をとった当時の副知事のもとで、本府は撤去に消極的な姿勢を取り続けました。2年経過した現在、撤去されたのはわずか55台分に過ぎず、撤去計画すら提出されていません。
山砂利採取地は、約420ヘクタールと城陽市の面積の8分の1を占め、埋め戻し事業の完了に必要な土量は、926万立方メートルで、現在の進捗率が41%、残りの土量は、546万立方メートルにのぼります。これまでの実績を踏まえると、この事業はなお20年もの長期にわたり続くことになるわけであります。
このままでは、地下水の汚染、環境破壊を止めることが出来ないのではないかと、住民の不安は高まるばかりです。現に、山砂利採取地整備公社の地下水モリタニング調査では、採取地内の事業所で基準値を超える水銀・ヒ素が検出。昨年12月の調査では、基準値の1.7倍のホウ素が初めて検出されました。住民団体の調査でも、地下水に水銀やヒ素が検出されています。住民の飲み水の80%を依存している地下水が心配です。
このような事態が引き起こされているもとで、はたして埋め立て事業の安全がどこまで確保できるのか、「地下水保全が第一義的」とされてきた埋め立て事業そのものの、安全性・信頼性が揺らいでいるのです。
知事、あなたの在任中に起き、いまだに放置されているこの問題をどうされるのですか。3期目に臨まれる決意を表明されましたが、少なくとも、山砂利採取地をめぐる問題の解決へ、産廃の撤去計画、再発防止対策について、しっかり方向性を示し、住民への説明責任を果たすべきではありませんか。
また、そのことがハッキリしない限り、残土等の搬入事業は、一時凍結すべきと考えます。合わせてお答え下さい。
【文化環境部長】城陽の山砂利問題についてですが、京都府は産業廃棄物の不法投棄は許さないという方針の下、本件事件に関しても直ちに刑事告発を行なうなど、厳しく対処してきた。
なお、本件の再生土の生活環境保全上の影響に関しては、約1年間にわたって開催をされた「再生土問題に関する検証委員会」において、各専門家からの慎重な調査検討の結果、周辺環境に影響を及ぼすことはほとんどないとされたところである。
また、地下水問題についても、「同検証委員会」において再生土と地下水汚染とは直接の因果関係はないものとされたが、引き続き、城陽山砂利採取地整備公社の「土壌・地下水の保全に係る審議会」において専門家の意見を求めながら、原因究明及び必要な調査等が継続実施をされており、さらに、城陽市においては市民の皆様から希望のあったすべての井戸について水質検査を行ない、井戸水の安全性について調査をされたところである。
再生土については、その後、近畿砂利協同組合が、城陽市の要請に応じ、「産業廃棄物として疑義のある再生土分」について、自主撤去を表明されたところであり、京都府では、これを踏まえ、城陽市とともに、近畿砂利協同組合や城陽山砂利採取地整備公社からなる「対策検討会議」を設置し、その中で、公社等に対する再発防止の対策の指導及び組合に対する自主撤去の働きかけを継続して行なってきている。今後とも、城陽市と連携を図り、不適正な埋立て等の再発防止の徹底と自主撤去の促進に取り組んでいきたい。
また、残土等の搬入に関しては、城陽市が策定をされた「城陽市東部丘陵整備計画」に基づき、山砂利採取地の修復整備事業の一環として実施されているものだが、この計画の実施に当たっては、関係者とともに監視体制の強化を図り、生活環境の保全と地域住民の皆様の安心・安全の確保に今後とも努めていく。
撤去に向けての知事の強い意志表明されず
【まえくぼ】山砂利撤去の問題は、京都府が撤去させるという強い意志、これがあるのかということを私は疑うわけです。そういう撤去に向けての強い意志が表明されないという答弁でした。知事の姿勢を私は厳しく批判しておきたいと思います。これで、私の質問を終わります。
迫祐仁(日本共産党、京都市上京区) 2010年2月16日
【迫】日本共産党の迫祐仁です。通告しています数点について、知事並びに関係理事者に質問いたします。
地球温暖化問題
日本こそ京都議定書を踏まえ、それを発展させる責任
【迫】まず地球温暖化問題についてです。昨年12月コペンハーゲンで開催された国連気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)は、京都議定書に続く「新たな枠組み」について、全会一致の採択ができず、「留意」する合意に留まりました。それでも土壇場で決裂が回避されたことは、温暖化を許さない国際世論の強さを証明したものでした。いま必要なことは、会議終了で一段落するのではなく、実質的な交渉を進め、本年11月にメキシコで開かれるCOP16で拘束力ある合意が得られるように努力を始めることです。
今回のCOP15では、京都議定書を採択した京都会議の議長国でもある日本こそ、議定書を踏まえ、それを発展させる責任がありました。ところが、政府は25%目標を出した時は世界で歓迎されましたが、COP15では存在感はありませんでした。歴史的な責任を負っている「先進国」と「途上国」との違いを無視し、中国にはものを言うが、先進国で最大の排出国である米国にはものが言えない、京都議定書を欠陥条例として「これが続くなら、日本政府は帰国すべきだ」と圧力をかける財界の言いなりという態度を取り続け、全会一致の合意形成に大きな障害となりました。
地球温暖化を抑えるという全人類的課題の解決に、地球上のすべての国、地域が全力を注ぐ必要があることは当然ですが、産業革命以来の歴史的な責任を負っている「先進国」と「途上国」とを同一にすることはできません。京都議定書では「共通だが差異ある責任」と区別されています。先進国は、野心的な中長期の法的拘束力のある削減目標を掲げ、他の国はどうあれ、それを自らの責任として実行することが必要です。また、途上国にたいして、同じ道をたどることなく経済成長ができるよう技術・資金援助を行う、という「二重の責任」を果たすことが求められています。
25%削減 中期削減目標を前提なしに責任を負う態度が必要
【迫】先進国である日本が果たさなければならない役割は明確です。国連で約束した2020年までに25%削減という中期削減目標について、他の国がどうであれ前提なしに責任を負う態度を確立するとともに、産業界との公的協定などその裏付けとなる総合的な対策をもって、この問題に取り組むことが求められているのです。
ところが、1月26日、鳩山内閣は、2020年までの削減目標を25%とすることを条約事務局に申告しましたが、「削減目標はすべての主要排出国の参加が前提」との条件を付け、実質的前進を阻む態度に固執しています。
知事も9月議会で「米国や中国の参加を前提にしているものであります」と答弁されましたが、参加の前提が満たされなければ日本は25%削減しなくてもよいと考えておられるのですか。お答えください。
産業界と削減目標を担保する公的な削減協定の締結を
【迫】日本は京都議定書で第1約束期間(08~12年)に6%削減を義務づけられていますが、07年度温出効果ガス排出量は、90年比プラス9%と削減どころか「増加」しています。この主要な原因は、総排出量の8割を占める産業界の削減をもっぱら財界の"自主努力"まかせにしたためです。ここに踏み込んだ対策がとれるかどうかが、日本政府の削減対策が真剣であるか否かの試金石があります。
気候ネットワークの調査で、産業界の排出は、特定の大口排出事業所に集中しています。日本の大手製鉄所や火力発電所などわずか166事業所で日本のCO2の50%が排出されていることが明らかにされました。産業界は他国に比べて対策にコストがかかり、「国際競争力」がなくなる。また日本のエネルギー効率は「世界トップクラス」だとして、排出削減に抵抗してきました。しかし、最大の排出源である発電所については発電量あたりの排出量は、07年ではOECD(経済協力開発機構)加盟30カ国中20位であり、鉄鋼、セメント、化学など産業界には大幅な削減対策ができる余地は十分にあります。
政府は、財界まかせの姿勢を改め、政府と超大口排出施設をかかえる産業や企業との間で削減の期限と目標を明らかにした公的協定を結び、排出量の大部分を占める産業界の削減計画を明らかにすべきです。
ヨーロッパの主要国では、政府が、温室効果ガスの削減目標を達成するために産業界との間で公的な協定を結んでいます。ドイツの産業界は当初、2012年までに21%削減という自主目標による自主規制方式を採ってきました。しかし環境保護団体などの強い批判で、2000年に政府と19の産業団体の間で協定が締結されました。協定は、自主目標に上乗せした削減目標を打ち出しています。
イギリスの気候変動協定の場合、政府と50以上の産業分野ごとに結ばれ、約6千の企業が参加しています。高い削減目標を持ち、GDP(国内総生産)を増大させながらCO2の排出を減らす実績をあげています。
このような産業界と公的な削減の協定を結ぶことを政府に求めるとともに、京都府としても府条例で削減計画の策定と報告が義務付けられている企業と削減目標を担保する公的な削減協定を結ぶべきです、お答え下さい。
舞鶴石炭火力発電所 関電まかせの態度ではなく運転中止を強く迫るべき
【迫】この際あらためて関電の問題について伺います。発電所のCO2発生量は急増し、日本全体の三分の一を超えています。各電力会社が燃料費の安い石炭火力発電所を増やした結果であり、舞鶴石炭火力発電所はその象徴です。コストを下げるため石油を使っていた新宮津火力発電所を廃止し、CO2排出量の多い舞鶴石炭火力発電所に転換したのです。1号機はすでに稼動し年間430万㌧、近く運転開始する2号機を合わせれば年間860万㌧、日本全体のCO2排出量を0.6%も増加させる舞鶴石炭火力発電所の2号機建設中止、1号機も稼働を停止するよう関電に求めることが必要です。
日本全体の削減計画達成にも重大な影響を与えるこの問題を看過することはできません。9月定例議会で、わが党のかみね議員の質問に、知事は「ベストミックスというのを、関西電力で実現していただく」と関電まかせの態度でした。知事は関電に運転中止を強く迫るべきです。いかがですか、お答え下さい。
府の環境基本計画 野心的削減目標を掲げるべき
【迫】府の環境基本計画についてお聞きします。2月3日に京都府環境審議会の新・京都府環境基本計画(仮称)の中間素案が発表され、2050年までに温出効果ガス排出量を1990年比80%削減する目標が明記されましたが、2020年までの中期目標はしめされていません。今必要なことは、長期だけでなく中期の削減目標を明確にすることです。京都府は、政府の議定書に基づく6%削減目標に呼応し、2006年に制定した「京都府地球温暖化対策条例」で、2010年度までに90年比で10%削減する高い目標を掲げました。京都議定書採択の地として、30%削減あるいはそれ以上の野心的削減目標を掲げるべきではないでしょうか?お答えください。
【知事】地球温暖化対策について、昨年12月のCOP15では、京都議定書後における法的拘束力のある新たな枠組みの合意には至らず、先進国間の主導権争いや、先進国と途上国のこの問題をめぐっての厳しい対立を改めて実感したところです。地球温暖化問題は全人類が自らの生存をかけて取り組んでいかなければならない世界共通の課題であります。その意味で、わが国が一定の前提はあるとしましても25%削減という高い目標を掲げることは有意義なことと考えており、その中で世界核国が、それぞれの立場の違いをこえて地球温暖化対策に取り組んでいく大きな流れをつくりだすことが重要だと思っております。前提の話は、これは政府の方針でありますけれども、確かに米国や中国の参加がなければ、この枠組みというのは絵に描いた餅になってしまうのは事実であると私は思います。それだけに、この方針が貫かれるよう、京都府においては、去る2月14日に京都地球環境の殿堂や環境文化学術フォーラムを開催したところでありますが、こうした取り組みを通じて京都議定書誕生の地、京都から地球温暖化対策の新たなうねりを生み出していかねばならないと考えております。
温室効果ガスの削減目標については、現在、環境審議会において京都府の新しい環境基本計画の策定に係るご議論を頂いているところです。その中で、長期的な視点に立った2050年頃の京都府の社会増として、温室効果ガスが約80%削減された低炭素社会を描き、その現実にむかって京都府として取り組むべき中長期的な目標や施策の展開方法についての議論が行われているところです。
私は、京都府としても、環境先進地にふさわしい高い目標を掲げるべきであり、具体的な数値目標については、環境審議会において国で検討中の削減目標25%を実現するための具体的な施策内容やCOP15以降の国際社会の動きなどを見据えながら検討が進められているところでありますが、当然そうした数値以上の努力を京都はしていくべきだと考えております。その議論をふまえつつ京都市とも連携しながら対応してまいりたい。
【文化環境部長】温室効果ガスの削減について、京都府においては既に地球温暖化対策条例に基づき、事業活動に伴うエネルギー使用量が原油換算1500kl以上の大規模排出事業者等を対象に、温室効果ガス排出量の削減計画書及び報告書の提出を義務付けているところです。その結果、対象の約280事業者において平成19年度には17年度比4.5%削減、20年度には前年比6.7%削減と着実に取り組みが進んできているところです。京都府としては、国に対して低炭素社会実現の基盤となる新たな制度整備について要請を行ってきているところですが、今後、国内排出取引制度、キャップアンドトレード等の検討状況を見極めるとともに、環境審議会における新しい環境基本計画の策定や地球温暖化対策条例の見直し等の議論もふまえ、府の対策について積極的に検討を進めてまいりたいと考えています。
舞鶴火力発電所については、これまでからお答えしているように、国のエネルギー政策の一環として安定的な電力供給のための電源構成の多様化を考慮されたものであり、また、他の発電施設に障害が発生した場合に府民生活の安心安全を確保するという観点からも考えるべきものであると思っています。
京都府としては、これまでから関西電力に対して、舞鶴火力発電所におけるCO2削減対策とあわせ、会社全体としての電機排出係数の制限を強く要請してきているところであり、引き続き、舞鶴火力発電所はもとより、関西電力の発電事業から排出される温室効果ガス総量の削減対策を一層強化するよう働きかけてまいりたいと存じます。
京都府も削減協定締結の方向へ向かうべき
【迫】アメリカが参加するということが前提だとおっしゃったと思いますが、実際に今の温暖化対策をしっかりとやっていくという点で、日本の果たすべき役割というのは本当に大切だと言うことを府が国にしっかりと求めていくべきだと思います。
これまで通りの答弁を繰り返されましたが、舞鶴火力発電所の問題ですが、知事が、CO2の最大の発生源であり、関西電力に対して、石炭火力発電から自然エネルギーへ転換を求めて行くことが必要だということを指摘しておきます。
それから、京都の大手企業が成果をあげているとおっしゃっていましたが、企業が自主目標を設定し、それを達成しているだけです。実際に今、ヨーロッパをはじめとして流れている削減目標を達成していく自主目標まかせではなく、限界があるということで、公的削減協定をしっかりと締結していく、そういう動きを、自治体として東京都が温室効果ガス排出量の総量削減を義務付けていくという努力も始めていますので、京都府も方向性をしっかりと、削減協定の方向へすすむべきです。ご答弁をお願いします。
【文化環境部長】公的な温室効果ガス削減協定について、イギリスの例などをみますと、キャップアンドトレードによる排出量取引制度と税制などを有機的に関連をする制度となっており、基本的には、先ほども申し上げましたが、国において新たな制度整備の一環として検討を十分にされるべきだと考えております。
【迫】温暖化対策は人類共通の緊急課題だと知事もおっしゃっています。今の知事の答弁を含め、温暖化対策を本当に京都府が真摯になってすすめていくということが必要だということを指摘して次の質問に移ります。
鳥獣被害問題
被害額は近畿でトップ 被害は深刻
【迫】次に鳥獣被害の問題についてお聞きします。私は昨年6月定例議会でこの問題を取り上げましたが、さらに被害は拡大する一方です。あらためて具体策を提案し、対策の強化を求めます。
農林水産省は昨年12月、2008年度の鳥獣被害による農作物への被害を発表しました。京都府全体の被害金額は、7億4400万円、被害面積830㌶にもおよび、03年に比べ被害額では85%も増加し全国5位、近畿地方ではトップとなっています。
農家のみなさんの被害の深刻さを訴える声も切実です。「イノシシの群れに入られて一反の稲を一晩でやられた」「谷筋では何を植えてもあかん、荒地ばかりだ」「やる気がなくなってしまう。このままでは農業を続ける人がいなくなる」と営農意欲を奪われている声が各地から寄せられています。
また、宮津市世屋では「イノシシの捕獲数が今までは300頭ほどだったが、昨年、一昨年は1000頭を超えた」、「最近はシカが昼間から歩いている。明らかに増えている」など各地でシカやイノシシなど急増している状況が報告されています。
農業だけではありません。生態系にも重大な影響が出ており、美山町芦生の京大演習林では、下草がほとんど食べつくされ、貴重な生態系破壊の状況が報告されています。
個体数が急増し、被害がますます拡大し深刻化している。京都府の鳥獣害対策を抜本的に強化することが強く求められています。
現在、対策に従事されている府や市町村の職員、関係者の方は大変なご苦労をされていると思います。しかしなぜ被害の広がりを押さえられないのか。そのことが真摯に検討され、組織的にも財政的にも対策が前進する保障を作り上げることがどうしても必要です。
農業・農村地域の重大問題としての位置づけを明確にし 総合的対策を
【迫】まず鳥獣害対策をどう位置づけるのかの問題です。
京都府の鳥獣害対策が、被害の深刻さに比べて兵庫、奈良などの他県より遅れているのは、これが林業の問題とされ、森林保全の問題とされてきたところにあります。その結果、農業・農村地域の重大問題として取り組む総合的な体制が取られず、森林技術センターに獣害対策の専門研究員が配置されたのは、昨年4月から、しかも1名です。また広域振興局に対策チームを置き、農業普及員を含めて研修を始めていますが、現場での深刻な事態に対応しきれていません。
また、鳥獣害対策の特別措置法によって、鳥獣害対策は市町村の事業とされ、被害の実態の把握や対策がほとんど市町村の現場の努力に任されている状況です。生息数調査などを糞塊や糞粒などのモニタリング調査で行っていますが、そのデーターは府独自で解析できず、兵庫県の民間研究機関に依頼している状況です。
京都府域の約7割が中山間地域であり、京都の農業を継続していくためには鳥獣被害対策は「緊急かつ死活の問題」です。その認識を持って獣害対策を農業・農林の重大問題として根本的に強化していかなければならないと思いますが、知事の認識を伺います。
力の集中がはかれる総合的で実効的な鳥獣害対策の体制を作ることが必要です。長野県では平成19年に副知事を先頭にした「鳥獣害対策本部」を設置、奈良県でも、平成18年に県農林部鳥獣害対策本部を設置して地域での人材育成や野生鳥獣の生息環境に配慮した整備、被害の防除、個体数の管理など総合的な対策を実施しています。
京都府も総合的な対策を実施するために、環境、農業、林業、地域対策などを含めた全庁的な「対策本部」の設置を検討すべきです。いかがですか。
市町村任せにせずに、人的配置や財政的な保証、対策拠点の設置を
【迫】また、被害の広がりは広域的であり深刻です。府は、対策を市町村任せにせずに、人的配置や財政的な保証、対策の拠点を設置し対策の充実をはかることが必要です。
先日、私は兵庫県森林動物研究センターでお話を伺ってきました。ここには、兵庫県立大学の教員でもある研究員と野生動物の専門技術者である森林動物専門員など15名が配置され、県は人件費を除いて年間約8000万円を投入し、県・市町村が連携した鳥獣害対策センターとなっています。兵庫県の野生動物対策費は平成21年度で2億4136万円。京都府は22年度予算で6千万円増やしても1億4千万円です。
研究員によるデ―タ―の収集・分析により、施策提言、被害防除の地域支援活動を進め、森林動物専門員が地域の現場、実情に応じた地域支援活動や野生動物出没に対応、人材育成や普及啓発など非常にきめ細かな活動も特徴的でした。
被害実態の掌握でも、毎年、県内の3000の農業集落を対象に、被害アンケートを実施しています。府の広域振興局にあたる県民局や農林振興事務所には森林動物指導員、鳥獣担当、農業関係職員などを配置し、森林動物研究センター、市・町・村・住民・関係機関などが連携をはかりながら、地域の実情に応じた問題解決に取り組んでいます。
これに比べ府の体制は非常に遅れているといわざるを得ません。総合的対策を実施するためには、専門家の知恵と力を結集し、研究と対策が有機的に結合できる「拠点」が必要です。対策予算を拡充するとともに「鳥獣害対策センター」などの設置が必要だと思いますがいかがですか。
シカの「特定鳥獣保護管理計画」を再度見直すべき
【迫】具体的な問題で「京都府特定鳥獣保護管理計画」の見直しについてお聞きします。6月の私の質問後、府は計画を一部見直し、シカの捕獲数を9000頭に引きあげました。しかし、20年度のシカの捕獲数は10120頭、計画数を超えているのに被害は減少していないのです。保護管理計画では平成17年度の生息数を36000頭と推定し、計画通り実施すれば22年度には半数になるとしていますが、このままでは18000頭になるとは考えられません。増えすぎたものは調整を行なうことが当然であり、現状の正確な把握を行うこと、適正な頭数と分布目標の設定を行い、みなさんが、「シカが少なくなった」と実感できるように「京都府特定鳥獣保護管理計画」を再度見直すことが必要です。いかがですか。
狩猟免許取得の助成や猟銃の保管に対する助成など直ちに具体化すべき
【迫】駆除の問題ですが、狩猟者の高齢化や銃刀法の改正による銃所持の条件の厳格化、保険や保管などの負担の増大などがあいまって、銃による駆除が困難になっています。富山県魚津市などでは、消防署や農林水産課の職員など公務員ハンターの育成に乗り出すほど深刻な事態です。府は緑の公共事業アクションプランで有害鳥獣捕獲班の組織体制の整備、拡充を掲げていますが、具体策が予算化されていません。狩猟免許取得への助成や猟銃の保管に対する助成など直ちに具体化すべきです。いかがですか。
狩猟期間 近隣府県にあわせ延長を
【迫】狩猟期間の問題ですが、近隣府県の滋賀、奈良、兵庫(本州)、大阪は、11月15日から3月15日までと延長しています。本府のみが11月15日から2月15日であり、近隣府県とずれが起こっており、その間に京都府内に獣が入り込んでくる可能性があります。これでは効果的な対策とはなりません。猟友会とも協議し、直ちに他府県と連絡を取り合い、実情を把握し、狩猟期間を改めることが必要だと考えますがいかがですか、お答え下さい。
【農林水産部長】鳥獣害被害についてだが、深刻化する被害は農家の経済的危害損失だけでなく、集落の存続にも関わる重大な問題であり、このたびの緑の公共事業アクションプランを改正し、野生鳥獣被害に強い地域づくりを重点施策として、全力で取り組みを進めている。
鳥獣害対策の実施については、特定鳥獣保護管理計画の策定やアライグマの防除対策などにおいてすでに部局をこえて連携して対応しているが、現地対応の重要性に鑑み、各広域振興局ごとに府や市町村職員などによる野生鳥獣被害対策チームを設置して、地域ぐるみの防除対策の徹底をはかるとともに、市町村をこえて、猟友会や農林関係団体、行政などによる広域捕獲協議会を設置し、効果的な捕獲を行なうなど一丸となり進めている。
研究と対策の拠点においては、農林水産技術センターの研究員と普及指導員で構成するタスクチームが専門家の助言も得ながら、農地にえさを残さない対策や防護柵の適切な維持管理の方法などを取りまとめた「集落点検マニュアル」を活用して、現地に入って直接普及指導を行なっている。
特定鳥獣保護管理計画については、毎年モニタリング調査を実施しており、特にシカではその結果にもとづき、地域ごとの年間捕獲目標や一日あたりの捕獲数を、昨年秋見直したが、さらに今年度取り入れた、全ての糞を数える調査方法により、生息数の正確な把握につとめ計画に反映することとしている。
22年度当初予算では、防護柵の設置や捕獲個体の処分経費など、有害捕獲の推進のための施策が、切れ目なく充分に対応できるように積極的な予算を今議会にお願いしている。
狩猟免許取得や猟銃の保管への助成などについては、アクションプランに掲げているところであり、すでに市町村や警察OB、猟友会とも相談を始めており、実現に向けてつとめてまいりたい。
狩猟期間の見直しについては、捕獲をコントロールできる有害捕獲がより有効であると考えているが、すでに実施中の府県をまたがる広域捕獲の成果や隣接府県の延長状況をふまえて、専門家や猟友会、市町村の意見を聴取し判断してまいりたい。
【迫】努力をしているとご答弁されましたが、昨年の被害額は最大になっています。被害地域も広がっています。解決のための最大の問題は、京都府が他府県に比べて施策が本当に遅れているという事にあります。農山村の農業・地域をどう守るかの問題として、人も予算も体制も抜本的に拡充して、農業、林業、環境、地域対策などを含めて全庁的、総合的な対策を講じるように強く求めておきます。
《他会派一般質問項目》
2010年2月12日
■多賀 久雄(自民・宮津市及び与謝郡)
1 地産地消について
2 学力向上について
3 医療体制の拡充について
4 介護施設の整備について
■林 正樹(公明・京都市山科区)
1 高齢者・介護に関わる諸問題について
2 小児がんに係る諸問題について
3 ホームページにおける外国語情報の内容充実について
■村田 正治(自民・宇治市及び久御山町)
1 府営水道事業について
2 国際化について
3 J R奈良線について
4 交番について
■中島則明(民主・舞鶴市)
1 京都舞鶴港の利用促進及び活性化について
2 医療問題について
3 警察署等の再編整備について
2010年2月15日
■上田 秀男(創生・南丹市及び京丹波町)
1 明日の京都について
2 農政問題について
3 米飯給食等の推進について
■上村 崇(民主・京田辺市及び綴喜郡)
1 あんしん医療制度構築プロジェクトについて
2 地域力再生プロジェクトについて
3 ITガバナンスの構築について
■前波健史(自民・京都市伏見区)
1 農業農村整備について
2 未収金問題について
3 地震防災対策について
4 動物愛護について
2010年2月16日
■北岡千はる(民主・京都市左京区)
1 生涯学習の推進について
2 子育て支援(妊産期のサポート)について
■諸岡 美津(公明・京都市右京区)
1 留学生支援について
2 京都エコポイントモデル事業について
3 子育て支援について
4 女性のがん対策について
■尾形賢(自民・京田辺市及び綴喜郡)
1 市町村への権限移譲について
2 関西文化学術研究都市について