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本会議質問

2010年11月定例会 梅木・上原代表質問

2010/12/08 更新
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●2010年11月定例議会が11月29日に開会しました。12月2日に梅木紀秀議員、12月3日に上原ゆみ子議員が行なった代表質問と答弁の大要、他会派議員の代表質問項目、開会本会議で前窪義由紀議員が行った議案討論を紹介します。

 

もくじ
梅木 紀秀代表質問・・・・ 1
上原ゆみ子代表質問・・・・ 7
他会派議員代表質問項目・・19
前窪義由紀議案討論・・・・20

11月定例会 代表質問

梅木紀秀(日本共産党、京都市左京区) 2010年12月2日

知事は京都の大企業に内部留保の府民への還元を強く働きかけよ
労働者派遣法の抜本改正による正規雇用の拡大、雇用のルール確立、下請保護強化を国に求め、府としても体制強化せよ

【梅木】日本共産党の梅木紀秀です。日本共産党府会議員団を代表して、知事に質問します。
民主党政権は数々の公約違反で、国民の支持を失い、内政でも外交でも、混迷を深めています。この混迷を打開するためには、財界中心、アメリカいいなりのこの政治を転換することが必要です。そのことを念頭におきながら、経済問題を中心に質問いたします。
10月26日付の経済雑誌「エコノミスト」に、新日鉄系のシンクタンクのチーフエコノミストである北井義久氏が、「日本経済の最大の問題点は、賃金が上がらないことである」「賃金を上げることが、経済成長を実現するための必須条件である」と書いておられます。まさにその通りで、政府統計によれば、民間平均給与は、1997年の467万円から、2009年には406万円へと12年間で、年61万円、月にして5万円も下がっています。これでは、経済が落ち込むのは当たり前です。97年の橋本内閣以来、自公政権がすすめた派遣労働の拡大や規制緩和、市場原理優先の「構造改革」で、急速に貧困と格差が拡大しました。その結果、消費が落ち込み、日本のGDPは、97年の515兆円から、09年には474兆円へと、12年間に41兆円も下がっています。日本は、成長どころか、GDPが衰退する世界に例のない国になっているのです。
一方でこの間、大企業の内部留保は、97年の142兆円から09年には244兆円と12年間に102兆円も増えています。高度成長時代には、企業がもうかれば、労働者の賃金が上がり、庶民の生活が豊かになるという「トリクルダウン」の理論が一定通用しましたが、「構造改革」路線の下でこの理論は、もはや通用しなくなっていることは明らかです。
日銀の白川総裁は国会答弁で、「大企業、大銀行の経営者からも『お金が余って仕方がない』『使い道がなくて困っている』という話を聞く」と答弁していますが、大企業の内部留保の244兆円の1%、2兆4千億円を取り崩せば、年収400万円の労働者を60万人雇用することが可能なのです。そして、その2兆4千億円が国内需要として循環、波及拡大し、GDPを押し上げる効果があることは明らかです。企業が貯め込んだ内部留保を下請企業に、また労働者の賃金として、社会に還元することが、日本経済を再生する道です。

北井氏は、さらに「個々の企業が剰余金を貯め込むのは合理的な選択だ。しかし、企業セクター全体がこのような選択をしているために、合成の誤謬が起きて、最終需要が増えない。」「賃上げをしないと、結局企業も損をする。」「このような状態を『市場の失敗』と呼ぶ。まさに政府の出番だ」と述べています。
統計によると京都府の府民雇用者報酬は97年の5兆4600億円から、07年には5兆円に、10年間で4600億円も減っています。その一方で、京都府内の大企業の「利益剰余金」は、今年9月時点で、上位10社だけでも5兆円を超えています。京都においても同じことが言えます。
貯め込んだ内部留保を、下請単価の引き上げ、新規採用枠の拡大、賃上げなどで、中小企業や労働者に還元するよう、知事が京都の経済界に強く働きかけるべきです。また、「市場の失敗」をただすために、労働者派遣法の抜本改正で正規雇用を拡大すること、新卒者の雇用促進やリストラ・解雇の規制強化など雇用のルールを確立すること、下請保護の強化などを国に求めるとともに、京都府としても雇用のルールを守り、下請を保護するための体制強化を図るべきです。知事のご所見をうかがいます。

中小企業支援、中小企業振興基本条例の制定について

【梅木】次に、中小企業支援について質問します。
政府はエコカー減税、家電エコポイントなど、大企業中心の緊急経済対策を実施しましたが、その結果、先日発表のあった東証1部上場企業の9月中間決算は、経常利益が前年同期に比べて、約2.4倍、13兆9千億円にも上ると報道されました。しかし、国民には経済が上向いたという実感はありません。一方で、この1年間に大企業の内部留保は11兆円も増えているのです。
さらに、今後の経済見通しについて、新聞では「下半期は円高の進行、エコカー補助金の終了、家電エコポイントの段階的縮小で、景気は減速の見込みで、多くの企業が海外展開をさらに加速し、海外生産の強化で円高に対する抵抗力を強める方針だ」と報道されています。日本電産の永守社長も、海外進出で円高対応をすすめていくと発言していますが、これでは、国内産業は空洞化し、ますます国内需要は細ってしまいます。高校、大学を卒業したけれど、就職先がないという状況がいっそう深刻になります。これでいいのでしょうか。
京都でも、綾部のトステムや舞鶴の日本板硝子関連企業の海外移転、グンゼの綾部工場の一部閉鎖など、海外生産にシフトする事例が相次いでいます。その中で、10月17日「京都府上海ビジネスサポートセンター」がオープンしました。京都新聞11月10日付の紙上で、知事は「普通の企業が中国に目を向ける時期が来ている」「中小企業も安心して(中国に)進出できる環境をオール京都でつくろうと考えた」「経済のグローバル化に真正面から向き合い」「地域間競争を勝ち抜きたい」と述べていますが、国内産業の空洞化、雇用の空洞化をすすめ、京都を衰退させる結果になるのではありませんか。京都の地域産業と経済を支え、京都のものづくりの技術を守るために頑張っている中小業者への支援をこそ強化すべきです。そのために、政府が今年6月に閣議決定した「中小企業憲章」を踏まえて、「中小企業振興基本条例」を制定し、中小企業の代表が入った「地域経済振興会議」を発足させ、学識経験者の協力を得て、地域経済活性化のための振興計画を作成するべきではありませんか。知事のご所見をうかがいます。

官公需の中小企業発注率をさらに高め、官公需適格組合への発注を高めよ

【梅木】次に、官公需と地域経済の活性化についてです。
政府の「構造改革」路線のもと、全国の自治体で民間委託、指定管理者制度、PFIなど公共サービスの「市場化・民間化」がすすめられました。京都府も、正規職員を大幅に削減し、委託先の低賃金労働者や臨時職員に置き換え、ワーキングプアを生みだしてきました。年収200万円以下の労働者が1000万人を超えるという「憂うべき日本の現状」を、国と自治体も率先してつくりだしてきたのです。その結果、地域経済を衰退させ、住民の担税力を奪い、自治体財政を悪化させてきました。この悪循環を断ち切る必要があります。
そして、民需が低迷している時だからこそ、国や地方自治体が官公需を活用して、地域の中小業者の仕事をつくり、地域経済を活性化させることが求められています。官公需法では、発注に際して「中小企業者の受注の機会の増大をはかるように努めなければならない」と国と地方自治体に努力を求めていますが、6月18日に閣議決定された今年度の「契約の方針」には、「ダンピング防止対策の推進」の項目が新たに盛り込まれました。また、役務分野についての実態調査を行うとともに、入札価格の内訳書の徴収を徹底し、労働基準法や独禁法に基づく違反がないかチェックをおこなう、としています。京都府においては、公共調達のあり方について一定改善が行われてきましたが、今年度の「契約の方針」に基づいて、具体的にどう改善されますか。特に、役務分野の実態調査を行う予定はありますか。また、官公需の中小企業発注率をさらに高めること、官公需適格組合への発注を高める必要があると思いますが、いかがですか。

府の仕事は京都の業者へ発注を
公契約条例を制定し、最低賃金の引き上げを

【梅木】京都の経済を温めるためには、京都府の仕事をなるべく京都の業者に発注すること、京都のお金を京都の中で回すことが大切です。地域外の業者に発注すれば経済効果は減退します。この点では、スクール・ニューディール事業で、学校の地デジ対応テレビが東京の大手商社に落札され、「緊急経済対策と言いながら、地域にまったくお金が落ちていない」と京都府電機商業組合はじめ業者団体から申し入れがあり、その後、地元業者に配慮した発注へと改善されましたが、「安ければよい」ではなく、地域経済に配慮した公共調達・公契約への転換が求められています。
そこで、具体的に1点うかがいます。ホームページや府民だよりの広告募集業務が福岡市の業者に委託されています。決算審議では、「入札で一番高い業者に委託した」ということでしたが、広告を出しているのはほとんどが京都の業者です。京都のお金が福岡に流れていることになります。電子入札で、どこからでも入札できるようになり、府外の業者がどんどん参入できるわけです。それだけに、京都の業者に発注し、京都の経済を活性化させるための努力と条例上の措置が必要です。そのためにも、中小企業振興基本条例を制定するべきです。知事の考えをお聞かせください。
京都府の公共工事や受託業務などで働く人たちの賃金を引き上げることは、京都の消費購買力を高めることになります。今年2月に全国で初めて公契約条例を制定した千葉県野田市では、公契約で働く人々の最低賃金がアップされましたが、それだけでなく地域全体の最低賃金を押し上げる効果があるとのことです。野田市に続いて、川崎市や東京の国分寺市が公契約条例を12月議会に提案する予定で、世田谷区や相模原市などでも、制定に向けて動きが広がっています。
先日、長岡京市の公共工事現場を訪問し、聞き取り調査を行いました。34歳、経験16年の型枠大工さんは、「手間賃は1日1万2千円で、多くて月20日、年平均では月15日程度しか仕事がない、これでは家族を養っていくことができない」とのことでした。ベテランの鉄筋工の方も同じでした。設計労務単価よりはるかに安い手間賃になっているのです。府の公共工事で働く人たちの賃金の「実態調査」をぜひ実施していただきたい。そして、京都府でも最低賃金を引き上げるために公契約条例を制定すべきです。いかがですか。
以上お答えください。
【知事】経済問題について、今の先行き不安定な状況、そして円高の状況などをふまえて、企業というものが将来の危機に備えている形ででておりますので、資本主義、自由主義経済のもとでは、こうしたものをどうやったら脱していくのかという成長戦略をもとにした改革でありますとか、税制の改革、こうしたものが前提になってくると思いますので、これは大変国の役割が大きいというふうに私は考えております。
 京都に対しましては、中小企業の投資拡大とか、さらには学研地域等の特色を活かした成長戦略等を示すことによって、内需を喚起してしっかりした形での投資がすすむようにしていきたいと思っています。
 これまでから、私どもは雇用につきましては、京都の雇用創出活力会議を通じまして、中小企業の支援に積極的に取り組んでまいりましたけれども、さらに、府内経済界に対する正規採用枠の拡大等の要請についても、京都労働局長や京都市長との連名で行ってきたところです。
 労働者派遣法については、これは社会保障国民会議等の場を通じて、その改正を強く求めてまいりましたけれども、未だに成立しないことは非常に残念だと思っているところです。非正規労働ホットラインの開設等の労働相談体制の強化も連携を強めてまいりました。
 下請取引につきましても、府の「京都産業21」に下請のかけ込み寺を設けまして、専門の職員を配置し、弁護士による相談等を行っている他、国に対しましても下請法に基づく指導の強化を要望しているところです。
 次に、「上海ビジネスサポートセンター」ですけれども、これは、中国がこれまでの製造拠点から新しい市場として著しい発展を続けているわけであり、京都企業が生き残るためのマーケットという形で有望と見込まれている。ですから6月補正予算においても委員会でも本会議でも全会一致の議決をいただき設置したものです。具体的には伝統工芸品や食品、生活関連用品、ハイテク製品等、京都の中小企業の市場開拓や販路開拓の支援、市場ニーズに基づく商品開発、観光誘客や企業誘致にも活用していきたいというものであり、京都は中小企業にとってはどれも重要なものだというふうに考えております。
 中小企業の振興に関する条例については、中小企業憲章の理念と方向性を同じくする「京都府中小企業応援条例」を平成19年度に既に制定をしております。本条例は、全ての府内中小企業を対象とし、中小企業の経営の安定及び再生、成長発展の促進、知的財産活用等の促進・支援、人材育成の4本柱を示しているところであり、具体的な施策を盛り込んだ先駆的なものであり、名前を変えても、別にそんなに大して意味はないと思っています。この条例に基づきまして、これからも私たちは、しっかりとした中小企業投資を中心として、中小企業の支援体制を、セーフティネット対策とともに取り組んでいまいりたいと思っています。
次に、ダンピング防止対策についてですが、公共工事の入札制度、総合評価、競争入札の導入や最低制限価格や低入札調査基準価格の最底水準の引き上げ等、今も評価をいただいたところであります。
また、お尋ねの役務分野への実態調査ですが、既にダンピング防止の観点から庁舎等の清掃等につきましては、契約前に提出を求める入札企画書によって、最低賃金が守られているか個別に確認しておりますし、契約書に労働環境条例の遵守を明記したとともに、人件費比率が高い草刈りなどの入札での最低制限価格を設定するなど、様々な措置を講じて、個別の契約ごとに実行性ある取り組みを進めているところであり、こうした取り組みをこれからもしっかりと進めていきたいと考えています。
仮に、不適正な事案がうかがえれば、それは実情を把握し、法令順守を求めることはもちろんでありますし、労働基準監督署への情報提供を行うなど、引き続き労働規約等の環境の万全を期してまいりたいと思いますので、こうしたことを通じ、実態の把握をしていきたいと考えております。
なお、官公需の発注については、これまでから毎年閣議決定されております、中小企業者に関する国等の契約方針を官公需庁内連絡会議など、様々な機会を通じて周知しており、府内中小業者への官公需発注促進や官公需適格組合の活用をしているところであり、引き続き府内中小業者への官公需発注につとめてまいりたいと考えています。
議員ご指摘の広告につきましては、あくまで、最も高額の広告料収入を京都府民にもたらす事業者と契約を締結したものであり、府民の税金がだされたものではなく、府民の収入をもたらすものであります。なお、先ほどお答えしましたが、府の中小企業応援条例に基づきまして、創設後間もない京都企業の製品を京都府が随意契約で購入できる中小企業チャレンジバイ制度を設けるなど中小企業の実態に応じたきめ細かな支援を展開し、京都の中小企業が厳しい受注競争に勝ち抜けるよう、これからも努めてまいりたいと考えています。
次に、公契約条例についてですが、やはり、賃金や労働条件に関する問題につきましては、基本的にはやはり、公契約のみならず私契約も含め、統一した見地からナショナルミニマムとしてつくっていくのが一番基本であろうと私は考えております。そうした面から申しますと、各地で今、統計がいくつか出てまいりました公契約条例についても、そういったものの効果とか、それはやっぱり見極めていくのが私は先だと思っておりまして、私どもとしてはあくまで主体的に事業者に対して入札参加制度の改善でありますとか、元請け、下請単価の適正化の指針を定めまして、その遵守を契約に明記するとともに、もしも問題があれば是正の措置を義務づけることを検討してまいりましたけれども、こうした下請へ発注するなかで適正な労働環境を確保する対策を進めていきたいと考えています。
なお、賃金の実態につきましては、京都府も協力し、毎年国におきまして公共事業の労務上の調査が実施されておりますので、その中で工事費の積算に使用する設計労務単価にも反映されていると考えております。
【梅木】中小企業憲章に基づいて、中小企業応援条例も、すべての中小業者が対象だとおっしゃいましたが、改めて、中小企業をしっかり地域の経済をまわしていく上で応援していくということを考えていく必要があると私は思うのです。私どもは中小企業振興基本条例をぜひもう一度検討していただきたいと思います。
 地元業者への応援をするということでは、スクールニューディールの問題で、大手に発注するということが問題になった。今までの、とにかく京都府の支出を入札で少なくする、それからさっきの広告で言えば高くするということで、府の財政からものを考えるというやり方を進めているわけですが、そこのところを、安ければいいだけではなくて、地域経済をどうやってしっかり回していくのかという、いわば地域内再投資力といわれますが、地域の中でお金が再投資され回って行く、そういうふうな形に、官公需を通じて高めていく必要があると思います。
 公契約条例については、やっぱりそこで働く人の収入を上げていって、全体に日本の労働者の賃金を上げていくという方向に行政が努力をしていくという意味があると思います。
 ちなみに設計労務単価が、デフレスパイラルみたいにだんだん下がって行くということで、悪循環になっておりますので、私は、充分に府としても公契約条例を検討していただきたいというふうに思います。

経済効果抜群の「住宅リフォーム助成」の実施を

【梅木】次に、「住宅リフォーム助成」について質問させていただきます。住宅着工件数が減り、住宅不況の中で仕事がなくて困っている地域の工務店や大工さんなど零細な業者への仕事おこしとして、「住宅リフォーム助成」の実施を繰り返し求めてきました。
知事総括質疑で、加味根議員の質問に、知事は「補助することによってリフォーム工事が増えたのかどうかが問題だ」と逆質問されましたが、秋田県では、総務省の「住宅・土地統計調査」との比較で、「建設投資額は2・5倍に、128億円から326億円に198億円も増えている」と議会で報告されています。リフォーム助成の効果は明らかです。11月末の申請件数は12832件で、月平均1500件のペースは衰えていません。
また、知事は「贅沢なリフォームまで助成して、府民の理解が得られるか」とも答弁されましたが、秋田県では、20万円という上限額が設定されており、けして贅沢なリフォームへの助成ではありません。何よりも、緊急経済対策として大きな効果を発揮しているからこそ、秋田県では県民の支持を得、すでに全国175の市区町村にひろがり、隣の岩手県議会、宮城県議会でも「実施を求める請願」が全会一致で可決されているのです。なぜ知事は、いろんな理由をつけて効果抜群の「住宅リフォーム助成」を実施しないのですか。逆に府民から疑問がでています。実施すべきです。
また、知事は「住宅リフォーム助成は、耐震改修、バリアフリーなどで実施している」と答弁されてきましたが、21年度にそれらの事業がどれほど進んだか、ご存知ですしょうか。高齢者のバリアフリーの住宅改修助成の21年度実績は、わずか5世帯17万5千円の補助です。耐震改修は、わずか57戸です。耐震改修のペースはあまりにも遅すぎるのではありませんか。京都府の「耐震改修促進計画」は、平成27年度までに耐震化率を90%に高めるとし、そのために、2万6千戸の耐震改修助成をすすめるという方針です。ところが、この3年間で進んだのは、たったの97戸です。あまりにも遅れています。
ここに、建設交通部が最近作成した耐震改修の事例集があります。表紙に「我が家の地震対策-リフォームの時こそチャンス!」とあります。「リフォームと合わせれば、解体費用も、工事期間も少なくてすむ」と耐震改修をすすめています。耐震改修をすすめるためにも、「住宅リフォーム助成」が有効だということではありませんか。緊急経済対策としても、遅れている耐震改修やバリアフリー改修をすすめるためにも「住宅リフォーム助成」を実施すべきです。お答えください。
【知事】住宅リフォーム制度についてですが、私は上限20万円でも、やはりお金持ちの贅沢なリフォームについて税金をつぎ込むということは、やっぱりちょっとおかしいなと思っております。
 経済効果の面につきましては、正に、積み重ねていく、行政目的を積み重ねていってこそ、やはり税金の使い方としては一番正しいのではないかと考えています。
 なお、耐震改修につきましては、秋田県がおこなったサンプル調査、700件おこなったそうですけれども、耐震改修の申請はなかったというふうに聞いております。私どもは、やっぱり今後とも、しっかりと税金の有効活用にむけて取り組んでまいりたいと考えております。
【梅木】住宅リフォーム助成ですけれども、秋田県は、耐震改修助成はまた別であって、それとは別に住宅リフォーム助成をやって、合わせてやっているわけです。だから、それは中に含まれていないということではないのです。秋田県の方を調べて頂いたようなので、さらに調べて頂きたい。特に30万円、特別に耐震改修の制度は国の今回の補正予算で組みましたね。そういうふうなものを活用しながら、そこにリフォーム助成を加えて、先ほどのパンフも含めて、経済対策として実施をする。実際に、21億円秋田は組んで、それで330億円近くの仕事がでるわけですから、ぜひともこれは実施をして頂きたいと思うのです。
 贅沢であるかどうかではなく、経済対策としてやるのかどうか、経済対策として効果があるのかどうか、そのことについて、どう考えているかお聞かせ頂きたいと思います。
【知事】経済対策として、私どもも正に耐震改修や太陽光発電、バリアフリーなど、そういったものと重ね合わせて出していくことをやっている。さらには、公募型公共事業とか、様々な経済対策と組み合わせてやっているところであり、そういった効果は総体として一番いい形でもっていくというふうにこれからも考えております。
【梅木】今日、質問をするのに、建築関係の方を昨日訪問して話をしてきました。保険料をはらうのも大変だ、税金を払うのも大変だ、本当に仕事が無くて困っているわけです。そういう方々に仕事を出すということでは秋田県の話や与謝野町の話を聞いているわけですね。期待をしている。緊急経済対策として、ぜひとも、私はやって頂きたいというふうに思います。エコカー減税とか、家電エコポイントをやったわけですね。経済対策として。足元から経済を温めていく。京都の経済を回していく。このために大変有効だと思いますので、強く、重ねて実施を求めます。

農業・雇用・経済に関わる大問題。知事はTPP参加反対の先頭に立て
生産者米価暴落に対する緊急支援策を国に求め、府としても実施せよ

【梅木】最後に、日本の将来を左右するTPP(環太平洋連携協定)の問題です。
農林水産省は、TPPへの参加で、農業生産額は4.5兆円減、食料自給率は40%から13%へ急落、農業の多面的機能は3.7兆円の喪失、GDPは8.4兆円の減、350万人の雇用が失われると試算しています。農水省の試算を京都にあてはめれば、TPPへの参加で、米で178億円減、乳製品等で59億円減ですから、京都府の農業生産額700億円の3分の1が失われることになります。中山間地はもとより、耕作放棄地が急速に広がり、農業・農村が壊滅的な打撃を受けることは明らかです。知事はどう考えておられますか。
先日の知事総括質疑で、加味根議員の質問に、知事は「政府もTPP参加を決めたわけではない」から「反対しようがない」と答弁されましたが、関係国との協議が、TPPへの参加が前提であることは明らかです。参加を決めてから反対したのでは、遅いのです。真正面からお答えください。
また知事は、「かなりの影響があることは間違いがない」が「自由貿易が日本の農業に与える打撃を回避し、地域農業が持続発展していけるよう万全の措置を講じるよう、国に提案している」と答えられましたが、TPPは第3条4項で「加盟国は付属文書で決めた日程に従ってすべて関税を撤廃すること」と定めています。知事は、すべての関税を撤廃するTPPへの参加と、京都の地域農業が両立すると考えておられるのですか。とするならば、その根拠をお示しください。
TPPに参加する9カ国のうち6カ国とは、日本は、すでにFTA・EPAを締結あるいは合意しています。アメリカとオーストラリアとは、農業問題でFTA交渉が行き詰っており、TPPへの参加は、そのアメリカとオーストラリアに農業の門戸を開くことがねらいなのです。輸出を拡大したい日本の自動車・家電などの大企業とアメリカの要求なのです。
TPPへの参加によって得られる実質GDPの増加は、内閣府の試算ではわずか0.48~0.65%で3兆円前後です。そのために、農業関連のGDP8.4兆円を失い、350万人の雇用を失うTPPを受け入れる必要があるのでしょうか。
さらにTPPへの参加は、金融、保険、公共事業の入札、医師、看護師、介護福祉士など労働市場まで開放し、賃金もアジア諸国の低賃金との競争にさらされます。
ある自動車メーカーは、海外の生産拠点からオーストラリアへの輸出拡大を図ることを表明していますが、TPPへの参加で、儲けるのは輸出大企業だけなのです。日本国内の雇用の空洞化と不安定雇用の拡大、低賃金化が一気に進む危険があります。知事は、日本の将来に関わる大問題であるTPPへの参加に断固反対し、府民の運動の先頭に立つべきです。いかがですか、お答えください。
日本の農産物の平均関税率は、すでに、これまでの輸入自由化で11.7%になっています。韓国の62.2%、EUの19.5%を下回っているのです。鎖国どころか、開かれています。その結果、日本の食料自給率は1965年の73%から、昨年度40%に減っています。これが13%になったらどうなるのでしょうか。一昨年の投機マネーの暴走による食料価格の高騰は記憶に新しいところです。「お金を出せば食料が買える」時代ではなくなっています。FAO(国連農業機関)が9月14日に発表した世界の慢性的な飢餓人口は9億2500万人に上ります。6秒に1人の子どもが餓死しているのです。昨年の食料サミットでは、「2050年には世界人口は90億人を超える。世界の人々に、食料を供給するためには農業生産を今より70%増加する必要がある」と強調しています。
世界経済が結びついて、貿易が拡大することを否定するわけではありませんが、「食料主権」を認めて各国の農業、食料を守ること、環境、労働などは市場まかせでなく、国際的な貿易のルールをつくることこそが必要なのです。この点についても、知事のご所見をうかがいます。
今年度、生産者米価が暴落しました。過剰米の緊急買い上げを実施するとともに、再生産が可能な価格保障、所得補償が必要です。地域農業が持続するために、来年度の再生産が可能な緊急支援を国に求めるとともに、京都府としても緊急支援を行うべきと考えますが、いかがですか。お答え下さい。
【知事】TPPですが、これは農林水産省の試算というのは、全世界を対象に直ちに関税の完全撤廃を行って、何ら対策を講じないという無策最悪の場合を想定したものでありますけれども、ともかく、何らの対策も実施せずにTPPに参加すれば、これは食料の自給率の低下だけではなくて、生産者の所得確保、さらには京都府の環境や地域社会にこれでは大変な被害がでるというふうに考えています。
 その一方で、TPPに参加しないことを想定した経済産業省の試算では、大企業が儲かるとかいう話ではなくて、GDPが10.5兆円減少して81.2万人の雇用が失われるというものであります。こういった視点からしますと、こちらでものづくり対策についても何らかの対策を講じなければ、これは海外への企業流出を招き、京都の経済を支える中小企業にも大きな影響を与える可能性があるというふうに考えています。中小企業などのものづくり企業と、京都の地域農業とがこの場合には、かなり利害相対する立場である中で、調和をいかに図っていくのかが今大きな課題となっていると思っています。
 このためにはまず、やはり国が日本の農業のこれからのあり方と振興策を示すということが、私は第一であると考えており、その観点から私も国に対して要望をおこなったところです。
 貿易のルールづくりは、まさに自国の農業、食糧を守り、環境労働基準も含め、先進国、新興国、また途上国がそれぞれの立場を主張し、関係国の合意で行っていき、それに対して国が責任をもって対応すべきものだと考えております。
 米の戸別所得補償モデル対策では、標準的な生産費と販売価格をもとに、交付金が支払われるとなっており、生産者の資金繰りが悪化しないように、既に支払いが始まっているところですけれども、これも米価下落に歯止めがかかる需給システムを構築するよう国に要望しているとことです。
 京都府としても特別栽培米や特A評価の獲得など、付加価値の高い売れる米づくりを進めるなど、農家所得の確保をこれからも図ってまいりたいと考えています。
【梅木】TPPについては、昨日、全国町村長会が特別決議をあげました。そして今日、全国農業会議所が会議を開いて反対の決議を上げると聞いております。ぜひとも、知事として、これは農業・農村を守るために断固反対するべきだということで、お願いをしておきます。

11月定例会 代表質問

上原ゆみ子(日本共産党、京都市伏見区) 2010年12月3日

【上原】日本共産党の上原ゆみ子です。私は議員団を代表して、通告にもとづき、知事に質問いたします。
 私はくらしと営業、雇用、社会福祉など府民がおかれている厳しい事態にふれ、京都府の果たすべき役割を中心に質問を行ないます。

年末に向けた生活支援について 

政治の助けを求める 悲痛な府民の声が寄せられている

【上原】最初に、年末に向けた生活支援の緊急対策についてお聞きします。
いま日本共産党は、府民のみなさんの要望やお困りごとをお聞きする様々な形のアンケート活動を行なっています。すでにアンケートは3000通を越え、わが党議員団にも連日回答が寄せられています。送られてきた一部を紹介しますと、ある67歳の女性は「主人は建築業でしたが不景気に悩み、くも膜下出血で亡くなりました。年金は年間70万円で介護保険料の通知が来て10月から倍となってびっくりしました。二人の子どもは障害があり将来面倒かけられない。政治で助けていただきたい」と悲痛な訴えをされています。
雇用の改善や医療、社会保障の充実など、多くの方がギリギリのところに追い込まれ、いのちと暮らしを守る対策を政治に求めているのです。

振興局単位にパーソナルサポーターを配置したワンストップサービスの常設を

【上原】そこでまず生活支援についてお聞きします。11月29日、わが党も要求してきた常設の生活と就労支援のワンストップサービス、「ライフ&ジョブカフェ京都」が京都テルサに開設されました。私も開設前に伺い、お話をお聞きしましたが、パーソナルサポーターさんは経験あるスタッフが揃い、相談者に寄り添い、ていねいに問題解決をはかるということです。開所式の挨拶では「生活保護の受給者がどんどん増え続けている」「ハローワークでは6000人の求職者に3000の求人しかない」などの深刻な実態が述べられました。いまの府民がおかれている厳しい事態から見れば、当面は府内一箇所の設置だけということでいいのかと考えます。少なくとも振興局単位にパーソナルサポーターを配置したワンストップサービスを常設することが必要ではないでしょうか。さらに生活保護の申請も可能なように、京都市や市町村とも協議すべきですがいかがですか。

失業者の生活安定のために国に対し、雇用保険給付期間の延長や対象の拡大を

【上原】雇用確保では、先日発表された総務省労働力調査で1年以上の長期失業者が完全失業者の4割以上を占め、過去最高であることが明らかになりました。一度失業したらずっと仕事を失ない、雇用保険の給付も切れ、生活がなり立たないのです。
わが党に寄せられた声でも、56歳の男性の方は「ハローワークの紹介で面接に行くがすべて断られ、金が底をついた」。44歳の男性は「毎日ハローワークにいってもダメ。仕事が無く人生がいやになった」と窮状を訴えておられます。また、わが党が取り上げたジャトコで派遣切りされた労働者やトステムの工場閉鎖で失業された方々など、多くの方が依然としてアルバイトなどで生活されているのです。
そこでお聞きします。失業者の生活安定のために国に対し、雇用保険給付期間の延長や対象の拡大を強く求めるべきです。また、雇用保険法第27条の「全国延長給付」の発動を図ることです。いかがですか。
また、中小業者に対する雇用調整助成金の給付期間を現在の3年間で300日からさらに延長を求めるとともに、適用要件の緩和など弾力的運用を求めることが必要です。いかがですか。

暮らしの資金への補助復活や生活福祉資金の改善を

【上原】さらに、本当に生活の資金繰りに困っている府民のために、府が廃止した市町村の暮らしの資金への補助を復活させることや生活福祉資金の緊急小口融資や、生業資金貸し付けを希望される方が受けやすいように改善を求めます。いかがですか。
また、国民健康保険の短期証の期日が12月29日になっている事例もお聞きしました。これでは、正月には医者に行くなと言うようなことではないでしょうか。短期証の発行自体が問題ですが、このようなことの無いように強く求めておきます。
【知事】厳しい雇用情勢の中、雇用対策を効果的に行なうためには、就職支援と生活支援を一体的に行なうことが求められておりまして、11月29日に京都ジョブパーク内に就労と生活支援を一体的に行なう「ライフ&ジョブカフェ」を開設したところです。これはまさに全国初めての試みであり、まずここをしっかりとしていくというのが私は先決ではないかなと思います。まだ始まったばかりの制度ですので、さまざまな問題点もあるでしょうし、さまざまな課題もあります。そういったものについて、しっかり検証した上で、この制度の優位性というものを広げていくことが、私は行政のあり方ではないかと思っております。
 同時に京都府内においては、地域に密着した生活就労支援ができるように今年度から新たに振興局やハローワーク、市町村等により地域生活福祉就労支援協議会を設置し、仕事や生活に関する相談を一体で行なうワンストップのサービスデイを実施、加えて京都ジョブパークも巡回相談を組み合わせることにより、府内各地のきめ細かな支援につなげていきたいと思っています。
 生活保護の申請についても、すでに京都市等と協議を行なっておりますが、福祉事務所と十分な連携をとって今は進めております。ワンストップ窓口の申請受付については、実施主体が責任を持って受け付ける必要があるという主張であります。すぐには移行できないとのことであり、今後の課題となっております。
 雇用保険の延長給付については、国が厳しい状況に適切に対応されるように、京都府の実情をしっかりと伝えてまいりたいと考えております。
 雇用調整助成金については、これまでからの急激な円高等をふまえまして、支給期間の延長を始め、支給要件の緩和等について国に強く要望してきたところであります。今回、国の補正予算においても、受給にあたっての売上高等の減少要件が緩和されたところであります。
 次に、くらしの資金貸付事業についてですが、昨年10月の生活福祉資金の制度改正に伴い、夏や年末だけではなく通年で借り入れることができる緊急小口資金を新たに実施しているところであります。生活福祉資金については、大幅な貸付件数の増加に伴い親切丁寧に対応ができるように今年度予算において相談体制の充実をはかりました。今後年末に向け、相談・申請が増加することが見込まれますが、緊急小口資金や生業資金を含め必要な貸付が迅速に行なわれるよう実施主体であります社会福祉協議会に対し、要請をしてまいりたいと考えております。

中小企業対策   

大企業の横暴な下請け泣かせのやり方に怒り

【上原】次に、中小企業支援の問題についてお聞きします。
私は先日、機械金属加工などの業者のみなさんからお話を伺いましたが、「1年以上仕事がなく貯金はゼロに。ようやく7月から仕事が来た。12月以降はまた無くなるのでは」と不安を募らせておられました。話を聞いた業者の方々は、大日本スクリーンやオムロン、ロームなど、いずれも京都を代表する電子部品関係企業の下請けですが、「三割、五割と徹底して単価をたたかれた。高度の技術が必要なものや急ぐものしか来ない。納期が迫られ、土曜日でも朝に仕事がきてその日中に納品させる」と下請け泣かせのやり方にも怒っておられました。

内需の冷えこみ、不況で苦しむ体力の無い中小零細企業にこそ支援を

【上原】さらに、仕事が中国など海外へ流出していることが大きな問題になっています。元請会社だけでなく、下請けも海外に移転を迫られ、ついていけない会社や零細な業者は切り捨てられるのです。ある従業員100人程度の工場の中国移転にともない、下請けの中小業者20社から30社が切られたとお聞きしました。また、いま多くの下請けの仕事が「コストが安い」中国に流れています。
内需の冷えこみ、不況で苦しむ体力の無い多くの中小零細企業は、海外に出て行くことなど到底できません。こういう中小零細業者を府が支援する必要があり、そのことは梅木議員が昨日指摘しました。実行を強く求めるものです。
長引く不況のもと、原油高騰、リーマンショック、そして円高、デフレと京都の中小企業は痛めつけられ、倒産や廃業に追い込まれ、激減してきました。さらに10月度の府内企業倒産は、市況悪化に伴う販売不振や受注減少など「不況型」が約95%を占め、個人経営や零細など小規模事業者に倒産が集中しています。さらに、先行き不透明感が増す中で、「年を越せない業者」が続発することが予想されます。

円高対策と年末に向けた資金繰り等の対策について

【上原】そこで、こういう中小企業支援の緊急策、特に円高対策と年末に向けた資金繰り等の対策についてお聞きします。
金融対策ですが、不況の中で資金繰りは大変です。その中で多くの業者が利用してきた「景気対策緊急融資制度」が来年3月で期限を迎えますが、府として国に延長を強く求めるべきです。いかがですか。
また、各種制度融資の返済据え置き期間を、現在の2年から3年に延長するとともに、実際に延長を運用させることが必要です。実態は金融機関や保証協会の判断だけで、返済据え置き期間が半年で打ち切られ、資金繰りが行き詰ってしまう例が多くなっています。据え置き希望者の要望に応え延長の効果をあげるためにも、金融機関に対し据え置き期間の短縮などをする場合は、京都府への報告を求め、府の意見が付与できる仕組みに改めることが必要です。いかがですか。

電気基本料金やリース料などの固定費の補助も緊急

【上原】また、電気基本料金やリース料などの固定費の補助も緊急です。機械金属加工などの業者さんは「新しい機械を入れないと仕事が来ない」と数千万円のNC旋盤を導入しています。私が聞いた方は「2500万円で購入、毎月30万円の返済でまだ半分残っている」と言われていました。リースでは毎月の支払いはさらに高額になります。その上、電力料金は使わなくても5万円かかります。仕事がなくても毎月これだけ出て行くのです。何とか持ちこたえていた業者もこのままでは行き詰ります。私が回った府内南部でも市内でも、「先月やめた」と言う話を聞きました。
そこで伺います。「京都産業21」の制度を使わずに機械設備を導入した業者も府のリース料助成の対象とするとともに、工場家賃や電力の基本料金などの固定費へも直接補助するなど、中小企業への直接支援を緊急に行なうことを求めます。いかがですか。
【知事】融資制度についてですが、国は景気対応緊急保証制度を終了し、対策の重点化をはかることを打ち出しておりますので、私どもとしては、経営状況が厳しい業種はセーフティネット保証の対象とするなど、しっかりとした対策を今国に要望しております。
据え置き期間の延長については、結果的に月々の返済負担が増加するという課題もあるので、一律に考えるよりは実際の据え置き期間の設定にあたって金融機関と事業者との間で適切な期間が定められるべきと考えておりますが、制度上の据え置き期間内で中小企業等の実情を勘案したものとなるよう求めていきたいと考えております。
また、金融機関等に対しては、地域金融対策協議会などを通じ、資金繰り改善に向けた柔軟な対応を求めており、例えば返済期間等の条件変更については、前年度比1.6倍となっているところであります。
リース料に対する補助については、京都産業21の設備貸与を利用した企業リース料の軽減のほか、金融機関等に対し弾力的な運用を要請、また、リース料を含む固定費補助について、中小企業活路開拓緊急事業により中小企業の負担の軽減につながるよう幅広い支援を実施しております。

雇用と就職問題 

深刻な雇用 高校生や大学生の就職問題 日本の将来にも影響   

【上原】こうしたゆがんだ日本経済の深刻な影響を受けているのが雇用であり、高校生や大学生の就職問題です。今春、大学を卒業した学生の2割が進学も就職もしなかった「進路未定者」だったとの調査が報告されています。そして、来春卒業予定の大学生の就職内定率は、10月1日現在で前年同期に比べて4.9ポイント減の57.6%との調査結果が発表されました。京都でも10月1日現在の内定率は37.7%にとどまっています。
私は6月議会本会議でも新卒就職問題について質問をいたしました。この3月に大学を卒業した学生が3回生の夏から授業も受けずに1年間で80社就職試験を受け、心身ともにクタクタになりながら就職活動をした実態を紹介しました。ところが今年もなおいっそう深刻な状況となっています。この問題は看過できない国民的な重大問題であり日本の将来にも影響を及ぼしていく問題というのはいまや共通の認識ではないでしょうか。

一刻も早く是正のためのルールづくりが必要

【上原】日本学術会議の報告書には「今のような非正規雇用などの形態で、ひどい働かされ方をするのではなくて、教育システムのなかで培ってきた専門性や職業的能力を生かし、それをベースにしながら仕事の世界に移っていく仕組みをつくらなければいけない」とされ、議論のなかで「新卒者を3年間新卒扱いにすること」や「企業側は採用時期を見直す」など、社会と教育がともに変わり社会総がかりで取り組まなければならないと述べられています。
以前はあった就職ルールが今大きく崩されてきたもとで、新たな実効ある就職ルールづくりを企業、大学、国との三者がともに協議をおこなっていくことが緊急に求められます。
22日、文部科学省で「新卒者等の就職採用活動に関する懇話会」が開かれ、企業側、大学側、組合、就職情報誌と政府の代表が参加されました。就職活動について「就職協定のような、みんなが守れるルールをどう構築するか課題」など意見が交わされたとのことですが、一刻も早く是正のためのルールづくりが必要です。

派遣労働や非正規雇用でなく正規雇用を増やすことを府として求めていくべき

【上原】府として国にたいして強く求めていくとともに、本府としてもそれ待ちにならず学生の街にふさわしい全国に模範となるような大学と経営者協会との協定作りをするべきではありませんか。
また、府内企業上位10社の内部留保の合計は5兆円あり、そういった企業が雇用を増やす、派遣労働や非正規雇用でなく正規雇用を増やすことを府として求めていくべきではないでしょうか。
企業にとっても団塊世代の定年退職で技術の継承が困難な状況となっています。こういうことを繰り返さないためにも、新規雇用を増やすよう求めるべきだと思います。いかがですか。
今回補正予算で、「企業等公募型事業による新卒者未就職者対策」事業が提案されています。これは企業と未就職者のマッチングに重点を置いた企業内実践研修とされており、直ちに正規雇用というものではありません。常用雇用に結びつけていくだけでなく正規雇用につながるものにすべきと思いますがいかがですか。

厳しい状況が続く高校生の就職

【上原】同時に高校生の就職も厳しさが続いています。
高校生9月末の内定率は44.7%でしたが、地域に差があり府北部では9月末で就職希望者数は170人なのに対し求人数は57人、求人倍率0.34という状況です。
ある北部の高校ですが、35人が受験して13人が合格、22人が不調となりました。地元求人が減少し、生徒の希望する職種が少ない。不調の生徒に次に紹介する企業もなく本当につらいというのが先生の声です。
それでも経済的理由により進学をあきらめて就職したいという生徒が昨年よりも増加していることは生活が本当に苦しいことの表れです。
高校生の就職活動は、9月16日から解禁で一人一社しか受けられません。9月で不調に終わった場合は10月16日から2社うけることができる、こういった協定があります。大学生が何十社と受けるのとはまったく違っています。
これまでは、企業が地元高校生を積極的に採用するということがされてきましたが、いまの経済状況のなかで企業が即戦力を求める傾向がつよく、指定校推薦でも落とされ、良い生徒取りが行われています。そのため、男子がほしい、家庭調査や、求職・求人活動は直接生徒と企業がやらない仕組みになっているのに携帯番号の問い合わせなど違反事例も起こっていると聞いています。
就職試験から7日以内には結果を連絡することになっていますが、昨年11月に福知山でハローワークと府の合同就職説明会に参加した生徒が出願をしましたが、試験が行われたのは1月で結果がきたのは2月でそれも不採用だったのです。こういうことをくりかえさせてはいけません。

地域経済を守るためにも地元高校生の採用拡大を企業に対して協力を求めよ

地元企業への誘導策や職業訓練など 行政が総がかりの対策の実施を
【上原】まず、企業に高校生の就職活動のルールを理解していただいて、そして地域の経済を守るためにも地元の高校生の採用を広げるということを企業に対して協力を求めるべきですがいかがですか。
そのために、地元の企業が地元の高校生を雇用した場合、企業にたいして人件費補助などの誘導策をおこなうべきではないかと考えますがいかがですか。
また、技能や資格取得のための職業訓練や、高等技術専門学校に新卒者優先枠をつくるなど総がかりの対策を考えるべきですがいかがですか。
11月補正予算で府の「新卒高校生の緊急支援事業」を今年も引き続きおこなうとされていますが、場所は京都市と福知山市の2ヶ所です。前回は「遠くて通えない」こういった声もありました。網野から2時間かけて毎日通った生徒もいたとのことですが、特に厳しいと言われている北部対策として宮津・丹後地域に1カ所会場を設置すべきだと思いますがいかがですか。
【知事】大学生の就職活動についてですが、来春卒業予定者の就職状況が昨年に引き続き厳しい状況にある中、企業の採用時期が長期化しており、私は学業の影響を是正するためにも、これは国、経済界を上げて取り組むべき改善すべきものと考えており、このため京都労働局や京都府・市教育委員会と連名で府内の経済団体等に対し、この採用活動時期の適正化等を要請しているところであります。さらに京都市長とも連名で国に対して経済団体等への働きかけを要請することにしているところであります。
ただ、京都独自のルールというお話がありましたが、例えば京都だけで独自のルールをつくっているときに、大阪や東京でどんどん内定が出ていくといったことになったときに、これはどういう問題が起きるのだろうということも私は考えていかなければならないのではないかなと思っております。
就業機会の確保については、これまでから京都市、京都労働局、労働者団体、経営者団体などで、京都雇用創出活力会議を開催し、こうした会議を通じてオール京都で雇用問題に積極的に取り組んでおりまして、府内経済界に対し活力会議のメンバーが連名で正規雇用の安定等就業機会の創出確保等の要請を行なっているところであります。
企業等の公募型事業による新卒未就職者対策については、新卒未就職者と人材確保に意欲的に取り組む中小企業とのマッチングをはかり、常用雇用の継続に使うことを採択要件とする考えでありますが、ここを通じて出来る限り正規雇用につなげていきたいと考えております。また、この事業は高校生を含めた未就職者と地元中小業者等も対象としており、実習研修期間の経費については、企業に対して人件費だけではなくその他の経費も対象としており、単なる人件費助成よりも手厚い制度になっておりますので、しかもマッチングが出来るということで雇用の安定にもつながるので、私は大変優れた制度になっていると考えております。
高等技術専門校では、本年4月からより実践的な技能取得を目指し、訓練科目の再編を行ない、すでに今年度の施設内訓練校の入校生の約4割が新規学卒者となっており、今後も雇用状況を十分にふまえて訓練を実施していきたいと思います。
新卒高校生の緊急支援事業については、京都ジョブパークと京都サテライトに京都府の高校生の緊急支援センターを設置しております。これは研修内容の充実ということも十分に考えていかなければなりませんので、そうした点も含めて私どもは給与を支給しながら早期就職に向けた研修や企業実習を実施しており、北部地域について通勤が困難な場合には住宅を確保するなど、研修等に支障が出ないように対応しているところであります。
【教育長】高校生の就職活動についてですが、就職にかかる推薦や選考日程等は、国において全国一律の取り扱いがなされているところであります。高校生が適切な職業選択と円滑な就職ができるよう、教員が助言・援助しながら、学校が窓口となって職業紹介を行なっているところであります。採用選考は、ご紹介のとおり9月16日からいわゆる一人一社制により開始されますが、近年の雇用状況等の悪化による求人数の減少を受けて高校生の労働機会を広げることを目的として、関係団体により組織された京都府高等学校就職問題検討会議において、平成18年度から10月16日以降は、一人二社まで応募可能とする申し合わせがなされたところであります。
企業に対しては、これまでから速やかな合否の決定など、適切な対応選考がなされるよう労働局や関係機関と連携して要請を行なっているところであり、今後ともこうした申し合わせ等が適切に実行されるよう労働局や関係機関と連携して、一人でも多くの高校生の就職が実現できるよう支援に努めてまいりたいと考えております。

生活福祉資金生業資金の改善を リース代補助の拡充を

【上原】生活福祉資金ですけれども、利用が急増しています。離職者支援資金では、昨年は823件の利用、今年は上半期だけで1110件ということです。臨時特例つなぎ資金、また、教育費も申し込みが増えています。ところが、生業資金の昨年度の利用はたった4件ということで、「申し込んでも借りられない」と多くの声を聞きます。借りやすい制度にしていただきますようこれは強く要望しておきます。
 中小零細業者対策ですが、私の地元の方ですが、「リース代の支払いのために障害のある父親が家を売却して乗り切った」こういう話を聞きました。2500万円のNC旋盤は融資だと月30万円の返済、リース料だと約47万円にもなります。町工場の皆さんは必死なのです。こういう業者が府内にもたくさんあるわけで、知事はこういう方たちを見捨ててもいいと思われるのでしょうか。「京都産業21」制度以外のリース補助の拡充を求めます。再度お答えください。

府は不安定雇用をやめよ 高等技術専門学校の高校生枠の新設・定員増を

【上原】就職問題ですけれども、そもそも非正規雇用が自治体でも広がっている、正職員の数も減ってきています。市町村合併により公務職員が削減をされ、幼稚園・保育園の合併や民営化によって保育士さんの半数が非正規雇用になり、また、給食調理員は民間委託されています。地方での就職先というのは、その地域の保育園や学校や役場関係など公務職場が重要な就職先の一つとなっていました。そこが減らされてきているのです。本府も不安定な雇用はやめるべきだと思います。
 高校生の就職問題ですが、技術を持たない高校生に技能の習得をさせ、就職につながるよう支援をすべきです。高校技術専門学校の倍率は1.68倍、ハローワークで紹介される民間の技能習得の学校は2.2倍という倍率です。非常に厳しい状況で多くの方に入港していただきたいと思いますが、高校生の枠を別枠で考えていただくとともに、高校技術専門学校の定員そのものを増やすことも是非検討していただきたいと思います。その2点再度質問させていただきます。
【知事】リース料に対する支援については、京都産業21設備貸与についてはご指摘の通りでありますけれども、そうした他に金融機関に対しても弾力的な運用を要請しております。
また、中小企業活路開拓緊急事業など中小企業の負担軽減につながるような幅広い支援をこれからも積極的に行なってまいりたいと考えているところであります。
高等技術専門学校は、本年4月から訓練科目の再編を行ないましたが、すでに本年度の施設内訓練入校数の約4割が新規の学卒者となっておりまして、こうした状況も十分にふまえながら今後とも訓練を実施してまいりたいと考えております。
【上原】中小企業支援ですが、仕事がなくても払わなければならないリース料や固定費、ここを支えることが府内の経済の下支えにもなる。私は強く要望します。
高校生ですが、地元で働けるように技術を身につける、緊急にもこの高等技術専門学校での高校生枠を考える必要があります。新卒4割と言われましたが、4割というのはいろいろな形の新卒が入っているわけで、特に高校生を対象とした別枠をお願いしたいということで質問させていただいております。強く求めまして次の質問に入ります。

社会保障・福祉・医療について 

矢継ぎ早に社会保障の仕組みを変えようとしている民主党政権

【上原】次に社会保障や医療制度が大きく変えられようとしている問題についてお聞きします。いま、民主党政権は来年春をメドに、介護保険法の見直し、後期高齢者医療制度にかわる「新制度」の確立、国民健康保険の広域化、現行の保育制度にかわる「子ども・子育て新システム」の導入など、矢継ぎ早に社会保障の仕組みを変えようとしています。小泉構造改革による社会保障の切捨て、格差と貧困の広がりに対する国民の怒りの中で誕生した民主党政権ですが、外交、内政あらゆる分野で、「自民党時代と同じじゃないか」と失望が広がっています。さらに国民の願いを踏みにじろうとしているのが一連の社会保障の改定であり、さらなる福祉の切捨てか、それとも憲法25条を生かした社会保障かが問われる重大な局面になっています。
そこで、いま検討されている問題についてお聞きします。

介護保険  

介護を必要とする人たちを切り捨て、負担は増やす
介護保険を利用できなくする「見直し」

【上原】まず介護保険についてお聞きします。
政府は介護保険制度から10年たった来年、制度を見直すとし、社会保障審議会介護保険部会で検討がされていますがその内容が先日報道され衝撃が走りました。
保険料の全国平均が5200円との試算に、とても払える額ではないと悲鳴があがりました。
要支援者はサービスから外し市町村の「地域支援事業」に移すとされますが、現在おこなっている地域支援事業に、要支援者が増えると市町村の財政が大変になり希望通りできるか厳しいとの現場の声です。サービスの利用者負担は現行1割を年間所得200万円以上の高齢者は2割にする。要支援者と軽度要介護者も2割負担の検討が必要だとされています。特養ホームの居住費負担、相部屋はこれまで費用は要りませんでしたが今回は月5000円を例にあげています。また、ケアプラン作成も1ヶ月1000円、要支援は500円と有料にする案が示されました。
これまでも介護制度の改悪がされてきましたが、今回の見直しはさらに介護を必要とする人たちを切り捨て負担は増やす、これでは益々介護保険を利用できなくするのではないのでしょうか。やるべきことは減らされた国庫負担を増やすことであってこのような検討はやるべきではないと国に言うべきだと思いますが知事の考えをお聞きします。

府内の介護の実態も深刻 悲鳴に近い声が寄せられている

【上原】10年たった現状は深刻です。介護保険料は高く利用料の負担も重く、特別養護老人ホームの待機者が全国で42万人。介護のために仕事を辞める人14万人。老老介護、認認介護、介護心中未遂、介護殺人と心痛む事案も起こっています。
本府でも深刻な実態があります。 
要介護3の認知症の義母を抱えながら受験生の子どもをもつ女性は、「自分も働きにでないと生活が苦しいのに介護に手をとられて仕事もままなりません。身体をこわし、介護ウツを発症しても薬を飲みながら介護、仕事、子育てをこなしていかなければならず、このままでは共倒れになりそうです。主人は毎日サービス残業で寝る時間もほとんどなく不況で収入は減るばかりで、先が不安です。」
60歳代の女性は「96歳の義母と同居しています。認知症が出てきて家を留守にするのが心配です。ショートスティにお願いしようにも空きがありません。ケアーマネージャーの方も大変そうです。日本は長寿国で益々老人が増えてくると思います。家で介護する人はストレスが溜まり病気になっています。特別養護老人ホームが増えていつでも入所ができますようお願いします。」
これは私どもがお聞きした府民の切実な声の一部です。

待機者を解消するための施設整備 保険料の減免や利用料の軽減を

【上原】本府においては特養ホーム等の施設整備が足らず多くの待機者がおられます。ある特養ホームでは150人の入所定員に対し、2000人も待機者がおられます。
待機者を解消するにための施設整備が必要ですが現在の府の待機者数と対策、解消にむけての今後の計画はどうなっていますか状況をおききします。
市長会が求めている基盤整備にあたり京都府の補助金が平成23年の期限付きということで24年以降も継続・拡充を要望しておられます。引き続き補助は必要ではないでしょうか。
また、利用料が払えず5~6割の人が認定の限度額までサービスを利用していません。保険料の減免や利用料の軽減を本府としておこなうべきだと思いますがいかがですか。
【知事】介護保険制度は、介護を社会全体で支えるという趣旨を踏まえつつ、高齢者の経済的負担が過度とならないように配慮するなど、利用者本位の安定した制度とすることが何よりも重要と考えている。こうした観点から、これまでから国に対し、公費負担のあり方や保険料の設定方法をはじめ、制度の抜本的な見直しを行なうよう要請してきた。今後とも市町村、関係団体等の意見を聞くなど、地域の実態を踏まえ、給付と負担のバランスがとれた制度の見直しが行なわれるよう、引き続き提案、要請していきたい。
特別養護老人ホームの待機者については、昨年6月に入所申込者の状況を調査したところ、実申込者数は約2700人。今期の高齢者福祉計画において特別養護老人ホームの整備に加え、グループホームや在宅サービス等の組み合わせ等も含め、総合的に対応し、解消する計画になっている。こうした中で、特別養護老人ホームについても、現在すでに、必要整備枠を超える整備が見込まれている。
市長会から要望のあった施設整備の補助については、制度の充実や事業の延長・継続について、機会あるごとに国に要望している。
保険料や利用料の軽減について、従来から低所得者対策の充実をくり返し国に提案・要望するとともに、府としても市町村に対し、積極的に助言・要請を行なってきた結果、すべての市町村において保険料の区分が国の区分以上に細かく設定され、利用負担の軽減についても、すべての市町村で社会福祉法人による利用軽減措置が実施されている。

後期高齢者医療と国保広域化 

後期高齢者医療制度「新制度」は「姥捨て山」と言われた現行制度と変わらず

【上原】次に後期高齢者医療制度と国保についてです。
政府は後期高齢者医療制度の廃止は2013年度に行うと、国民の「ただちに廃止してほしい」の願いを先延ばしにし、廃止後の新たな制度の検討をしています。「新制度」ではほとんどの人が国民健康保険に加入するとされていますが、75歳以上の高齢者の国保は「都道府県単位が運営主体」にすることとされ別勘定にされます。これでは見た目は変えても後期高齢者医療制度と同じ扱いです。
後期高齢者医療制度は人間の尊厳を踏みにじり、別勘定でお年寄りを差別し医療を制限するものだと国民の怨嗟の声があがりました。それを別勘定は残すという古い「新制度」では「姥捨て山」と言われた現行制度となんら変わりありません。
民主党は昨年の総選挙マニフェストで後期高齢者医療制度の廃止を掲げ、選挙公約の医療政策では「高齢者の保険料負担は現行水準の維持・軽減」と明記されていました。今回の検討は公約を裏切るものではないかと思いますが 知事はどう思われますか。

社会保障を投げ捨てる「国保一元化」はやめるべき

【上原】この7月に、国民健康保険法等の一部を改正する法律が決められ、このなかで「都道府県 国民健康保険 広域等支援方針」の策定を都道府県に求めています。
まず、さきに述べた75歳以上の医療保険を国保にして都道府県化するこれが第一段階。第二段階としては全年齢を対象にした国保の一元化をすすめるとされているのです。
国保は市町村ごとに運営されおり一般会計からの繰り入れや基金のとりくずし、給付状況など様々です。しかし厚生労働省は国保一元化に向け、一般会計の繰り入れ、累積赤字、前年度繰り上げ充用は段階的に解消を求めています。
こういったことを前提にした一元化は、それぞれの市町村が保険料をなるべく押さえようとしている努力をなくしてしまうことになり、そうすれば住民に負担が押し付けられることになります。
「持続可能な制度」のためと言われますが、 保険料を無理やり平準化の名により多くのところで値上げし押しつけ、その上繰り入れをなくせば1世帯1万円近い値上げとなり、給付や保険料軽減は切り捨てられることになります。
いまでさえ大変な国保財政がさらに大変なことになります。困難な市町村がいくら集まっても保険財政のなかだけで囲ってしまえばさらに崩壊の道をたどることになります。
後期高齢者医療制度は、見た目を変えて延命し、さらに国保一元化を推し進め将来には一体化しようとするもので、その目的は医療費の削減が狙いなのです。これでは国民の願いを奪い住民のいのちを守るという地方自治のありかたを放棄することになります。
国保財政の根本問題は国庫負担を減らしてきたことであって、一元化は国の医療費負担の責任を逃れようとするもので免罪することになります。国保制度が大変だから市町村が赤字だから、このことを逆手に持続可能にするとしながらさらなる国民負担を進めようとしているものです。
国保は、憲法25条の理念に基づき誰もがお金のあるなしにかかわらず医療を受けることができる、国民の命と健康を国や自治体で守るセーフティネットであり社会保障であるということです。
国保の一元化はやめるべきだと考えますがですがいかがですか。
【知事】後期高齢者医療制度について、現在示されている厚生労働省案については、全国知事会として意見をとりまとめ、75歳で年齢区分を設ける点、財政スキーム等の点で、現行と大きく変わることがなく、現行制度の修正で対応は可能ではないか、また保険料の負担については、被保険者間での不公平感が生じるといった課題がある、短期間での新制度への移行には、国民の理解はもとより、システム構築や制度の周知に関わるコストも考えれば、大きな障害が予想され、現行制度を廃止し、新制度に移行しなければならない積極的な理由がないのではないか、という疑問を呈した上で、国が財政面でよりいっそうその責任を果たすなど、都道府県が運営に主体的に関わっていくための諸条件を今回国に提示したところです。
この背景としては、市町村の国保については、市町村による運営は間違いなく限界にむかっている。上原議員の質問は矛盾に満ちたところが随分あって、ナショナルミニマムであって、全部同一の、どんな地域であっても同じ保険料で医療が受けられなければならない、しかしいまは市町村毎に行なっているために、保険料がばらばらになっています。我々はこれを統一していかなければ、ナショナルミニマムとは言えないといっているのであって、ナショナルミニマムといっているのに、その保険料がバラバラである現状をどういうふうにとらえるかというのは、全く矛盾する話です。さらに、「市町村の繰り入れをやめてしまうと住民の負担になる」に至っては、市町村の負担というのは住民の負担ですので、同じ財布の中で話をしているのに、全く矛盾した話。そのあたりの整合性がないようです。
私はそうした中で、国に対して、しっかりとした財政負担を設ける中で、都道府県も役割分担して、これからの国保財政、国保運営が安定的になるようにしなければ、これからの府民生活を守れるような保険制度にはならないということで、国に対し、必要な制度の改正を求めているところです。

保険の財政の中でやろうとするから無理が 国保は社会保障として運営すべき

【上原】国保の一元化について。保険の範囲内でやろうとするから、それで維持しようとすれば、保険料が値上がりする。この中で払えない人も出てくるということで、排除される人も出てくるわけです。いまでも資格証の発行がされていますが、こういう人がますます増えていく。そして徴収強化がさらに強まることが予想されます。これでは、国民が安心して医療を受けることができなくなるわけです。国保は、互助や共助や助け合いではありません。憲法25条に基づいた「国民皆保険」であって、社会保障なんです。保険の財政の中でやろうとするから無理が出てくる。国保は社会保障として運営すべきであって、一元化の内容はこれに反するものだと指摘しておきます。

国費を増やさず、高齢者の生活に負担を押し付ける検討 
国民への約束を裏切るもの

【上原】介護ですが、民主党は昨年の総選挙で、「生活第一」「医療・介護の再生」を掲げ、介護保険への国費投入を「8000億円程度」増やすと公約されていました。それなのに、国費を増やさず、高齢者の生活に負担を押し付ける検討は、国民への約束を裏切るものです。いまの検討案はやめるように、強く意見を述べていただきたいと思います。
本府ですが、施設整備と利用については、実態に見合った支援をするべきです。特別養護老人ホームの建設については、グループホームだとか、在宅介護だとか、総合的にやっていくとおっしゃいましたが、特別養護老人ホームを作ってほしいんだというのが、府民の願いなんです。いま府民がどういう状況におかれているか、先ほど紹介しましたが、介護利用者の声をぜひ実態調査していただきたいと思います。答弁を求めます。
【知事】国民健康保険としても社会保障としても、国費も入っており、府費も入っていますから、それは本当は割合の問題です。だから、社会保障制度として一元化を図っていくという話ですと、私どもが言っている都道府県がしっかり役割を果たした形に近いことをおっしゃったというように、私は理解しています。
特別養護老人ホームの待機者については、昨年6月に入所申込者の状況調査をして、それを踏まえた形で計画を立てているところです。
【上原】私は、介護現場の、サービスを受けておられる方のいろんな困難があるから、その実態調査を府として1回やっていただきたいということを質問したのです。事業所の方の声だけでなく、利用者の方の話も一度直接聞いていただいて、どんなことで困っておられるのか、こういうことをしてほしい。実態調査をすることを強く求めておきます。

保育問題

待機児童の解消は待ったなしの問題

【上原】次に保育所問題ですが保育所の待機児童問題は全国的にもますます深刻になり、本府でも待機者が増えており待機児童の解消は待ったなしの問題です。
 「住んでいる近くの保育園に入れず他の行政区の保育園まで0歳から6年間通っている。母子家庭なので働くには保育園に預けるしかなく遠くても入れるしかない。月曜日はお昼寝用のお布団を持って電車に乗っていかなければならず大変だった。」私の地元の方の声です。近くの保育園が満杯で遠くまでかよっておられます。福祉事務所に行って空きがないと言われて入園を諦めている方も多くあります。
 本府の待機児童数は今年4月で宇治市105人、木津川市28人、京都市236人、合計386とお聞きしていますが、8月におこなった聞き取り調査では宇治市191人、木津川市69人、長岡京市11人と待機児童が増えています。これは定員を越える入所の受け入れをしているのに、なおこの待機児童数です。
決算委員会での答弁で「いまたてている計画を実施すれば、押し並べて待機児童は解消できる。」と、答弁されましたが、遠くの保育所に通えと言っていることに等しいわけで実際は解消されません。私の地元伏見区でも醍醐地域は定員割れ、久我・神川・羽束師地域は待機児童があります。しかし、東西につながる公共交通機関がなく通えるものではありません。これでいいとされるのですか。必要なところに作ってこそ解消できるわけです。いかがですか。

保育所新設の設置者負担軽減を 国に補助率増など予算と対策を求めよ

【上原】この間、国は待機児童が増え続けているのに必要な保育所をつくらず、子どもを詰め込み、認可外の施設を受け皿にする「お金をかけない」やり方をしてきています。
 また、2004年には地方交付税を大幅に減らし、公立保育所の国庫負担金を廃止して、一般財源化したことも地方自治体の保育所整備を遅らせることになりました。
 保育所の新設は本府では「こども未来基金」を活用しての施設整備をしていますが、国の基金が積み増しされました。また、市長会から独自の府の補助制度を要望しておられます。保育所の新設は待機児童の解消のみならず、その地域の雇用促進になり経済の支えにもなります。府として認可保育園の建設を進め待機児童の解消を早期に行うこと、建設が進むよう設置者の負担を軽減する、そのために国に対して補助率2分1を3分の2に増やすなどの予算と対策を求めるべきではありませんか。いかがですか。
【知事】保育問題について。待機児童問題については、京都府に聞かれても困る質問をされましたが、市町村の計画に基づいて市町村がしっかりとその責任を果たしていく形でやっていく。我々はそれを、こども未来基金を活用して、確実に整備していくことを応援していくという立場。こういう中で京都は、平成21年度、22年度の2ヶ年で、約1500人の待機児童の解消に向けて、支援を行なっているところ。さらに支えるためにも、平成23年度もこども未来基金を積極的に活用して施設整備を推進していきたい。なお、施設整備に係る国庫補助の充実を従来からくり返し要望している。設置者の負担軽減について、引き続き要望していきたい。

公的責任放棄、福祉の観点・子どもの視点をなくす「子ども・子育て新システム」

【上原】次に国の保育制度についてです。
いま政府は「子ども子育て新システム」の検討を始めていて、来年3月には法案を提出しようとされています。「新システム」は、現行の保育制度を見直して保育園と幼稚園の一体化をすすめていくとされています。「介護保険のように認定を受け利用が可能か決められる」「保育園の申し込みは保護者が『自己責任』で事業者を選んで直接契約する」「保育料は時間に応じて増える応益負担となり、お迎えが遅れたら全額実費負担」となります。
大きく変わるのは「市町村の保育実施義務がなくなること。現在は児童福祉法で市町村に実施義務があり、「保育に欠ける」子どもに保育を提供しなければならないことになっています。保育の供給は、現在認可制ですが、株式会社などの参入を促進し、基準を満たせば参入も撤退も自由という事業者指定制度を導入します。公的責任を放棄して福祉の観点や子どもの視点がなくなってしまいます。
保育関係者からも、「本当に支援を必要としている人が入れなくなる。新システムと介護保険制度は同じく応益負担。若い夫婦が高い保育料を払えるでしょうか」「新システムの最大のねらいは保育制度解体だ」と反対の意見が出ています。
このような新システムは子どもの成長や発達を保障するものでなく福祉から切り離されてしまいすすめるべきではありません。

知事は「義務付け・枠付け見直し」の名でナショナルミニマムを放棄するのか

【上原】関連して、全国知事会の地方分権推進特別委員会が11月中旬に、国が法令で定める福祉施設の最低基準の見直しのため、構造改革特区を連名で国に提案しました。その中には、保育所の面積・保育士・運営基準を「参酌すべき基準」とし、その権限を市町村に移譲するよう要望されています。
現在の保育園の最低基準は一人当たり面積でいえば世界でも最低ランクです。スウェーデンの最低基準は子ども一人当たり7.5㎡なのに対して、日本は0~1歳児で一人3.3㎡、2歳児以上で1.98㎡です。「遊ぶ、寝る、食べる」すべてが子どもの健やかな成長・発達を確立していくものであるのにそのスペースがこれではあまりにも狭い基準だと言わざるをえません。これをもっと広く改善してほしいが現場の声であって国が責任を持って改善すべきですが、この基準をさらにさげてもいいと思われるのですか。
また、3歳未満の私立保育園給食の外部搬入の容認をも求めています。これらの要望は子どもの利益を最大に考えなければならないのにこれを放棄するものではありませんか。
「義務付け・枠付け見直し」の名によるナショナルミニマムの放棄をやれということなのでしょうか。お答え下さい。
【知事】「義務付け・枠付け見直し」ですが、極端なことばかりおっしゃっているが、我々は市町村がいろいろと工夫する余地があると思います。たとえば、面積について、すぐに最低基準を下げるようなことを単純に考えている市町村はありませんよ。たとえば、昼間は空いている、一定期間だけ空いている、そのときにそれを使うようなことはできないかとか、運営とかそういうものを組み合わせて、保育の環境を維持しながら、工夫するようなことがあっていいんじゃないか。ですから、ナショナルミニマムを市町村に任せたら破壊してしまうというのは、変な話で、国保の話とは随分違った話を展開されているんですが、一貫性がないんですが、我々は市町村が、これから(行なう)一生懸命待機児童解消に向けた努力、そして運営に対する知恵というものを信用してもいいのではないかと思っているところ。そうした観点から、今回の構造改革の特区、それをたとえば議会に、条例に任せていく、こういう形をとっているわけです。たとえば、議会に任せると、その部分が破壊されてしまうという議会が本当にあるのかなという感じがしている。そうした点についても、ぜひ理解を頂きたい。
具体的に、国の基準がおかしいというのがたくさんあります。保育ママについても、専用面積で9.9㎡なければいけない、そこにタンスとか何かがおいてあっても、9.9㎡あればいい。お父さんの部屋であって、帰ってくるとお父さんが使う部屋、これは駄目、こういう硬直的な基準ではなくて、実態に合わせた基準を市町村でやって、ナショナルミニマムとしての水準を保てるようにしていく。水準を決めるのはもちろん国だと思いますが、それを保てるようにしていくというのが構造改革の特区の提案です。

構造改革特区は基準を下げるために出されたもの

【上原】保育所の面積ですが、構造改革特区を23出されたということで、この中で保育所、また障害者施設の面積について、私はとくに関心を持ったわけです。いまこれを出さなくても、国の基準から広くするというのは、市町村独自ですでにできるわけです。広くしないで、基準を下げるために、構造改革特区を国に出されたと私は理解しています。広げるのだったら、いまの状況でできるわけです。待機児童の解消のためには、規制緩和でなく、保育所そのものの設置を進めるべきだと思います。保育所建設、1カ所100人規模、かなり大きな規模ですが、費用は3億円程度。国も府もやる気になればできる。設置をぜひ増やしていただくよう要望します。

府営住宅の集約団地のあり方とエレベーターの設置について

府営住宅バリアフリー 住民の意見を聞き速やかに改善を

【上原】次に、府営住宅のバリアフリーについてです。府のストック計画に基づいて、バリアフリー化に取り組まれています。片側廊下で1棟40戸5階建て以上の棟についてエレベーターの設置。この条件には合うものの、未設置はまだ49基残されているとのことで早期の設置が待たれています。まず、この設置見通し、完了はいつになるのかお聞きします。
地形との関係で構造上設置が難しい棟の対策や、今後は40戸以下の団地でも階段室型住戸であっても設置の検討していく必要があるのではと考えます。
階段室型のエレベーター設置では長崎県が多く実施されていますが全国的にも公営住宅での設置が行われています。府営住宅の住環境の整備は必要であり府の責任です。検討すべきですがいかがですか。
ストック計画の中で「集約団地」がありますが、「集約」は他の団地と将来統合するということでエレベーター設置の計画はありません。
伏見の集約団地に住む高齢の方は、5階に40年以上住んでおられます。「5階まで上がるのに3回は休むと言われます。「エレベーターを付けないということは聞いている。でもこんなつらい思いをしていることを府はわかってほしい」と訴えておられます。階下の部屋に移るという相談もできるのですが、同じ団地の1階や2階の空き家は全くありません。近くのアパートといっても家賃が高くなります。移れるところがないのです。住民は府から今後の住宅計画の納得のいく説明もなく、見通しのない不安な毎日を過ごしておられるのです。これでは「放置状態」になっているとしか言いようがありません。
決算委員会で住宅課長は、「今年が計画の中間年にもあたっているので、集約団地のあり方をどう整理すべきか、考えてみたい」と答えていただきました。一人ひとりの住民がどういう希望をお持ちなのか聞いていただいて速やかに改善をする必要があると思いますがいかがですか。
【知事】府営住宅について。エレベーターの設置はこれまでから府営住宅のストックの総合活用計画に定める基準にそって、入居者の同意等の整備環境が整ったところから、順次取り組んでいる。設置基準を満たす49基のうち、平成27年度までの設置目標38に対して、中間年にあたる今年度末での進捗率は24基、63%となる見込み。さらに計画期間中に残りの14基を設置する予定としており、まずはこれらをできる限り早期完成をめざして、優先して整備していきたい。
廃止することとしている集約団地についても、ストック総合活用計画において、平成27年度までの予定団地を定めているので、入居者については、廃止となることを周知し、移転先を斡旋していきたいと考えている。さらに、高齢者や障害をお持ちの方には、特定入居により優先的に低層階やエレベーターのある団地へ転居していただくなどの措置も講じている。
【上原】府営住宅ですが、5階に住んでいる高齢者が、病気やケガをしても病院に行かれないのです。普通でさえ3回休んで階段を上るのに、しんどくて、足や腰が痛くて、上にも下にも行けない。私の聞いた方は、部屋の中で転んでねんざし、治るまで湿布を貼って我慢したということなんです。お年寄りに優しい住宅を、団地のバリアフリーの政策を、もう一度良く検討していただくことを要望して、私の質問を終わります。

《他会派代表質問項目》

2010年12月2日

■村井弘(公明・宇治市及び久御山町)

1 平成23年度の予算編成方針について

2 雇用の創出拡大について

3 制度融資について

4 がん対策について

5 府営水道について

6 PFⅠ事業について

7 淀川水系の安心・安全について

■菅谷寛志(自民・京都市山科区)

1 雇用対策について

2 子ども手当の地方負担について

3 地域力再生支援プランについて

4 国際交流について

5 教員の免許更新制について

■中小路健吾(民主・長岡京市及び大山崎町)

1 京都府の人口変動について

2 関西広域連合について

3 児童ポルノ規制について

4(社)京都府森と緑の公社の経営問題について

2010年12月3日

■島田正則(自民・木津川市及び相楽郡)

1 関西文化学術研究都市について

2 TPP(環太平洋連携協定)について

3 農林水産物のブランド対策について

4 中小・小規模事業者への支援について

5 子育て支援について

■二之湯真二(自民・京都市右京区)

1 児童虐待対策について

2 森林整備について

3 知事の時代認識と危機感について

4 京都市との関係について

■上村崇(民主・京田辺市及び綴喜郡)

 1「明日の京都」推進に向けてのマネジメントシステムのあり方について

2 市町村未来づくり交付金事業のあり方について   

3 地域ドメインを活用した取り組みについて

11月定例会 開会本会議での議案討論

前窪義由紀(日本共産党、宇治市及び久御山町)2010年11月29日

第6号議案

「職員の給与等に関する条例等の一部を改正する条例」についての反対討論
【前窪】日本共産党の前窪義由紀です。議員団を代表して、ただいま議題となっています第6号議案 「職員の給与等に関する条例等の一部を改正の件」について、反対の討論を行います。
反対の理由は、第1に、この議案は、8月の人事院勧告、そして、10月の府人事委員会勧告に基づき府職員の給与等を大幅に引き下げることが主な内容となっています。これを実施すれば、職員一人当たりの年間給与は、昨年の17万円減額に続き、今年は9万5千円も引き下げになり家計への打撃は甚大です。同時に、一時金の0,20月分の引き下げは、47年ぶりに年間4カ月を下回るもので、職員の生活設計を根底から脅かすものであります。
また、義務教育等教員特別手当及び給料の調整額の引き下げについても、教職員の勤務実を踏まえない不当なものです。
今回の給与等の改定により、府職員全体で、30億1千万円もの賃金引き下げとなりますが、それだけにとどまりません。府職員に準拠する公務・公共労働者、さらには社会福祉施設や民間企業の労働者の賃金にも大きな影響を及ぼします。
地域経済に与える打撃もはかり知れず、家計収入の減少に伴う消費の後退は、リーマンショック以来の経済危機や円高不況に拍車をかけ、地域経済をさらに深刻化させるものです。輸出頼みから内需拡大による経済の立て直しが求められている時、これに逆行するものであります。
日経新聞は、「景気対策には公共事業だけではなく、公務員の給与引き上げを盛り込んではどうか」「人事院勧告はマイナス傾向が続いており、民間給与も減少が止まらない」、生活第一を掲げるなら「隗より始めよ」と書き、賃金引き上げでデフレ脱却をと指摘しました。いま必要なのはこうした方向への政策転換であります。

第2に、人事院勧告制度がゆがめられていることも問題です。菅首相が民主党の代表選挙において「人事院勧告を超える人件費削減を目指す」と言及し、閣僚などからも相次いで人勧を超えた給与削減が叫ばれました。勧告を上回る賃下げ反対の世論と運動の中、今回は断念させたものの「人件費を削減するために必要な法案を次期通常国会へ提出する」とした閣議決定を行ったことは重大です。政府自ら人事院勧告制度を踏みにじることは許されません。人勧制度を変えると言うのであれば、まず、争議権を含む労働基本権の全面回復で自律的な労使関係制度を確立することこそ必要です。
そもそも、2002年以来、小泉内閣が打ち出した総人件費抑制政策が、本来中立であるべき人事院にも押し付けられ、この間の勧告は、公務員の労働基本権を制約する「代償措置」としての役割を放棄し、ゆがめられてきました。このような政府・人事院に追随した府人事委員会勧告と、これに基づく今回の給与等の改定案には賛成できません。

いま、深刻な景気悪化の中で、国民の家計を応援する政治こそ求められています。民主党政権が、労働者派遣法の抜本改正を骨抜きにし、その上、労働者のふところを冷え込ませる賃金の引き下げを押し付けるのでは、国民の暮らしも経済の立て直しもできません。
本府の措置も、厳しさを増している京都経済に追い打ちをかけ、同時に、府民生活を守る第一線で日夜懸命に努力している職員、教職員、警察官、などの志気をもくじくものです。  
最後に、本府の給与費プログラムによる人件費・定数削減を見直し、異常な超勤の解消、メンタルヘルス対策の充実、非正規職員の処遇改善等をすすめ、府民のために安心して働ける職場をつくることも必要になっていることを併せて指摘し、反対討論を終わります。
ご清聴ありがとうございました。