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本会議質問

2010年11月定例会 西脇・前窪・迫一般質問

2010/12/10 更新
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●2010年11月定例議会で12月6日から12月8日に行った西脇いく子議員、前窪義由紀議員、迫祐仁議員の一般質問と答弁の大要、他会派議員の一般質問項目を紹介します。

もくじ
西脇いく子一般質問・・・・・ 1
前窪義由紀一般質問・・・・・ 6
迫  祐仁一般質問・・・・・11
他会派議員一般質問項目・・・16

11月定例会 一般質問
西脇いく子(日本共産党、京都市下京区) 2010年12月6日

障害者自立支援法

自立支援法の延命の余地残す、政府の「改正案」強行
府は、応益負担廃止など明確にした、新たな総合的障害者関連法制を求めよ

【西脇】日本共産党の西脇郁子です。先に通告していました数点について知事ならびに理事者にお伺いします。
まず、障害者自立支援法についてお聞きします。
政府は、昨年9月に障害者自立支援法廃止の大きな世論に押され、重い負担と苦しみと尊厳を傷つける障害者自立支援法の廃止を明確に宣言しました。
今年1月には自立支援法の違憲性を訴えた訴訟団と国は、「速やかに応益負担制度を廃止し、遅くとも2013年8月までに障害者自立支援法を廃止し、新たな総合的な福祉法制を実施する」ことを明記した「基本合意文書」を交わしました。
全国14の地方裁判所で争われていた同訴訟は、この基本合意に基づいて全て和解となり、長妻前厚生労働大臣は、「新法をみなさん一人一人の意見を聞いて、みんなで一緒により良いものにしたい」と約束しました。その後、本年6月には新法制定に向けた「第一次意見」が閣議決定されたのです。
同時に、障害者当事者や家族、関係団体のみなさんから、2013年8月を待たずとも早急に対応を要する4つの課題として、「利用者負担の見直し」、「法の対象となる障害の範囲の見直し」、「地域での自立した暮らしのための支援の充実」、「新法作成準備のための予算措置」が提案され、それらは政省令で解決可能であり、どうしても現行法の改訂が必要な場合には推進会議との十分な協議のもとで合意を図りながら進めることが必要だと提案されていました。
ところが、そうした議論の最中にもかかわらず、「補正予算を審議したいなら一言一句変更せずに改正案を上程せよ」という自民党の強硬な圧力に屈した民主党は、今国会に旧与党が立案した自立支援法改定案を、関係者への情報提供もなく上程しました。
この改正案の最大の問題点は、基本合意では2013年8月までに自立支援法廃止を約束しているにもかかわらず廃止が明記されず、自立支援法が延命する余地を残していることです。さらに現行法には明文化されていない「家計の負担能力」と「1割自己負担」が明記され、「障害は自己責任、家族の責任」という現行法の悪い本質がより鮮明になっています。
障害者自立支援法違憲訴訟全国弁護団事務局長の藤岡弁護士は、「本来、新法制定と制度移行に全力を注ぐべき時期に、自立支援法に基づく改正をその間に行うことは円滑な新法移行に対してかえって混乱を招くものとなる。私たちの声を聞こうとせずに一部与野党間で繰り返される政治の動きは、障害者自立支援法の延命を図るもの」と厳しく指摘されています。
しかしながら、連日、国会前に全国から集まっておられた障害者のみなさんの必死の抗議の声の中、改正案は、今国会において事実上の審議抜きで民主、自民、公明党、みんなの党などの賛成多数によって可決・成立させるという暴挙が行われました。当事者の声が無視され、改正案が政治の駆け引きの道具とされたことに対して、当事者や関係団体などの皆さんの怒りと失望の大きさは計り知れないものがあります。
そこで知事に伺います。障害者自立支援法違憲訴訟団と国との「基本合意」をふみにじり、障害者当事者を抜きにして決められ、可決された障害者自立支援法改正案についてどのように認識されていますか。
知事として、あくまでも応益負担廃止など国との「基本合意」と当事者も入った推進会議の議論を尊重した、新たな総合的な障害者関連法制となるよう国に強く求めるべきと考えますがいかがですか。
【知事】障害者自立支援法についてであるが、障害のある方々が、必要なサービスを受けることのできない状況が生じ、自立した生活を阻むことがあってはならないとの考えから、利用者負担の軽減につきましては、法施行前から、何度も国に対して要請するとともに市町村と協調して、京都府としては全国に先駆けて一定所得以下の方々を対象に、利用者負担の軽減措置を実施し低所得の方々には、応能負担となる制度を実施してきたところであります。
こうした動きを受けて、国におきましても色々と事業の手直しが行われてきましたけれど、今回、改正法案につきましては、先般国会におきまして圧倒的多数のもとで可決成立したところであります。
たぶん、この法案については平成24年に提出を目指すとされている障害者総合福祉法に対する、つなぎ法案としての位置づけとして出されているだけに、その面から、団体によって、そのあたりが確定していないままの改正法になっている点についての不安や、将来にわたっての問題点が提出されているのだと私は理解している。
それだけに、今後新たな障害者関連法案の制定にあたりましては、従来の経過を踏まえ、障害者の立場に立った検討がしっかり行われ、障害者当事者、関係者の意見をしっかり反映した上で、障害者のある方にとって真に利用しやすいケースとなるよう引き続き国に求めていきたいと思っておりますし、さらに障害をお持ちのみなさんが地域において、できる限り普通に暮せる社会をめざし京都府といたしましても総合的な施策を講じることとしているところであります。
【西脇】障害者自立支援法改正案だが、「つなぎ法案」と言いながらも自立支援法廃止とは全く明記されていませんでした。自立支援法の最大の問題の「応益負担」の現状も変わっていないということですので、今回の一部法改正によって事実上、自立支援法を延命させることがないよう、知事もおっしゃいましたが、あくまでも「基本合意」に基づいた新法となるよう、強く京都から声を上げていただくよう改めて求めさせていただく。

負担軽減策の期限と新法施行時期のタイムラグ対策を

【西脇】次に、2012年3月末日期限の特別対策の利用者負担軽減策や事業移行、時限措置である基金事業等についてお聞きします。
新法は2013年8月までに施行されるとすればこの間、約1年間のタイムラグが生じることになるわけですが、当然、当事者や家族・関係団体の皆さんからそのことについての不安の声をお聞きしています。仮に、国が時限措置等の事業を予定通り終了させるようなことになれば、障害者の生活はいったい誰が責任を持つことになるのでしょうか。絶対に新法制定まで空白をつくらないためにも国にこれまでの施策を新法ができるまで継続するよう求めていただくことと、あわせて、障害者の生活を少なくとも現状維持していくためにも京都府としてのこれまでの独自措置も継続するべきと考えますがいかがですか。
【健康福祉部長】障害者自立支援法の特別対策については、利用者負担の軽減措置や基金事業による事業所への支援など、障害がある方々に必要なサービスを提供するための必要な措置であることから従前から国に対しその実施期間の延長や恒久的な措置への移行等を要望しているところです。
また、府独自の利用者負担軽減につきましては、利用者にとりまして過度の負担にならないよう、市町村と協調して全国に先駆け実施してきたところでありますが、本来ナショナルミニマムの観点から国において措置されるべきものでありますので、引き続き国に対し、制度化を要望するとともに、市町村とも連携協議し、必要な対応を行ってまいります。

「介護保険利用が優先」とされる障害者支援の現場の実際
「一律に優先しない」厚労省通知を現場に徹底せよ

【西脇】次に障害者自立支援法に関わる介護保険優先の弊害についてお聞きします。
65歳になり、介護保険利用対象者になれば、基本的には、介護保険サービスの給付を優先して受けることされています。そのために、これまで障害者は、65歳になった途端に身体状況、生活環境は一切変わっていないのにもかかわらず、これまでの事実上の「応能負担」から介護保険の1割負担の応益負担が発生するために負担増やサービスが減らされる事態が相次いでいました。
そのような中、07年3月に、厚生労働省より都道府県に対し、「65歳以上の障害者がこれまで同様のサービスを希望する場合でも、その心身の状況やサービス利用を必要とする理由は多様であるため、一律に当該介護保険サービスを優先的に利用するものとはしない」という主旨の通達が出されました。
にもかかわらず、これまで、京都府内で、国の通達が適用されていないのではと思われる実態が起こっています。
府内のケアホームに入居しておられる68歳のYさんの場合、65歳までは障害者福祉サービスを利用してこられましたが、65歳になったとたん、従来金曜日まで利用していた生活支援事業は、週のうち2回は、介護保険優先としてデイサービスを利用するプランが立てられることとなりました。
Yさんの1ヶ月の収入は、障害基礎年金の8万600円と作業所の給料約4000円のあわせて8万4600円で、そのうち、ケアホーム家賃は6万円、作業所の給食費が5000円で65歳までは何とか1ヶ月の収入内で納まっていましたが、65歳になった途端に、それらに加えて、介護保険利用料が限度額いっぱい使って3万600円、介護保険事業所給食費が月8回分5840円で合計35、840円もの負担増となりました。さらにYさんは、65歳以降は、介護保険の利用プランが立てられた結果、人や場所などのサービスが日替わりで変わることとなり、これまでのような落ち着いた生活から一変せざるを得なくなりました。
また、自立支援から介護保険に移行したためにサービスが制限されることも起こっています。
京都市内にお住まいの一人暮らしの65歳のIさんは、介護度5、身体手帳1種1級です。自立支援時のサービスを同じように受けようとしても、介護保険では収まらなくなり、結局、床ずれ処置や摘便を含んだ週2回の訪問看護は週1回に、毎晩のヘルパーさんの食事準備と床ずれ防止のためのナイトケアも制限せざるを得なくなったのです。
そこで伺いますが、府として07年の「介護保険優先にかかる国の通達」についてどのように認識されていますか。
また、通達どおりに運用されれば、先のYさんやIさんのように、身体状況や生活環境は、変わっていないのに65歳になった途端、サービスの内容が後退したり変更せざるを得ないという事態は生じなかったと考えます。京都府として状況をつかみ、改めて通達を徹底させるべきではありませんか。
あわせて、障害者自立支援法訴訟団と国との基本合意文書において、介護保険優先の適用を撤廃するとされているように、京都府としても国に求めるべきではりませんか。
【健康福祉部長】障害者自立支援法に基づく自立支援給付と介護保険法との適用関係につきましては、原則介護保険を優先することになっていますが、平成19年3月の厚生労働省通知により、介護保険のみでは必要なサービスが確保できない場合等については障害者サービスの利用も可能となっており、市町村において、通知に沿った運用がはかられているものと考えている。
今後とも、事業の実施主体である市町村を通じて実態把握や周知に努めるとともに、新たな法律の制定にあたりましては、介護保険優先適用の撤廃の是非も含め障害当事者や関係者の意向を尊重した真に利用者にとって使いやすい制度となるよう求めてまいることといたしております。

厚労省の通知「まったく知らない」との声もある。
府は、市町村で適正に行われているか実態の把握を

【西脇】障害者自立支援法の介護保険優先問題ですが、現場では、ベテランのケアマネージャーさんでさえ、国の通達については全く知らなかったという声もありました。福祉事務所からも介護が優先の指導を受けてきたという声が多数ありました。府としてもやはり、市町村で通達が適性に適用されているかどうか、実態を良くつかんでいただきたい。

下京のまちづくり

七条警察署跡地には、高齢者福祉、子育て支援施設等、
府民・地元の願い生かした施設を

【西脇】次に下京区の七条署跡地に構想されています府民ステーションについてお聞きします。
現在、七条署跡地の利活用については「京都府民ステーション構想」に関する懇話会が設置され、これまで地元アンケート調査や、地元自治会等へのヒアリング結果をもとに公共機能について中間案概要として発表され、あわせて先日、府民の意見募集も行われたところです。
懇話会中間案では、運転免許の更新手続き窓口機能や地域防犯関連施設、総合的な困りごと相談機能が最優先的にあげられておりました。これらについては、私自身も地域の中などで、地域の安心面や利便性からも設置要望を多数伺っておりましたので、今後是非とも実現を希望するものですが、あわせて、パスポート発行窓口とともに子育て支援施設、高齢者福祉施設の機能についても優先度が上位にあがっていることに注目しています。
そこで、かけがえのない府民の財産である七条署跡地を文字通り、府民のために有効活用できるよう数点お聞きします。
まず、高齢者施設の設置についてですが、懇話会の今後の検討の方向性として「今後社会的ニーズが高まっていく分野であり、引き続き近隣ニーズの把握・検証が必要」だとされています。現在、他の行政区と比べて高齢化率の高い下京区において、特養施設などへの入所はほとんど期待できず、「老老介護」「認認介護」など深刻な事態が急速にすすんでいます。少しでも深刻な高齢者介護の事態を改善させるためにも不足しているショートステイ機能を是非とも設置すべきと考えます。
あわせて、元気な高齢者が生き生きと活動でき、子育て世代とも一緒に交流できる福祉センター的な機能も必要だと考えます。これらについて京都市も含めて検討をしていただくよう求めますがいかがですか。
3点目は、周辺の交通問題についてです。「京都府民ステーション構想」に関する懇話会中間案によれば、駐車場付置義務台数は44台とされていますが、本年6月に改訂された、京都市の駐車場施設に関する基本計画では、「街づくりの方針や立地条件を考慮した上で、公共交通利用促進策の計画・実施に対し付置義務の引き下げを図る」とされています。こういった京都市の計画を踏まえれば、今後、七条署跡地の駐車場については障害者などに限定したものとすべきではないかと考えますがいかがですか。
4点目は、景観規制についてです。七条署跡地は、景観規制の厳しいエリア内に立地していますが、懇話会中間案の「整備可能な施設規模の想定」のなかで、「今後も京都府においては京都市の景観政策や駐車場政策などの動向を踏まえ、施設規模や有効利用面積の拡大の可能性について検討していく」とされています。このことは、歴史的遺産のバッフアゾーンとして位置づけられている七条署跡地の景観規制を京都府自身が京都市と共同して取り払うことも視野に入れているということなのですか。お答え下さい。

地元の願いが取り入れられない、元府中小企業指導所跡地
京都市と話し合い、最大限の活用を

【西脇】次に元中小企業総合指導所と堀川署の跡地の利活用についてお聞きします。
まず、元中小企業総合指導所跡地についてです。この跡地は、長い間、放置されたままとなっていましたが、ようやく府有資産利活用推進プラン検討委員会のなかで、具体的な利活用の検討がされるようになりました。
現在、下京区には、京都市内の中心部に位置しながら図書館や公的なコミニュテイ施設が少なく、図書館については、現在区内の東側の修徳学区に1ヶ所のみで、七条学区や西大路学区など西側の地域からはとても利用しにくい状況となっています。さらに、区民のコミユニテイ施設も少ないため、京都駅前のキャンパスプラザや、梅小路公園内の「緑の館」の場合も数ヶ月待ちというのが当たり前となっています。また、特養施設やショートステイなどの高齢者福祉施設の増設も下京区においても、極めて切実な問題となっています。
 そのような中、これまで地元では、09年7月に「区民のための跡地利用を考える会」の皆さんが地元学区を中心にアンケートを実施され、214通もの回答を得ることができました。アンケートの結果は、既に京都府や京都市にも伝えられ、その後、跡地の利活用についての懇談や要望をしてこられました。
アンケート結果については、6割の方が図書館の設置を希望され、その他、高齢者福祉、子育て支援センター、地域コミニュテイ施設など、改めて地元中心の利活用を求める声が圧倒的だったことが明確となりました。
府有資産の利活用については、知事はこれまで「貴重な府民の共有財産を有効活用し、府民の福祉と文化の増進を図る」と代表質問でも答弁され、当時の大槻出納局長も「貴重な財産なので、十分府民にサービス還元できるような利用方法をできるだけ早く方向づけができるように努めていきたい」との答弁もありました。しかしながら、昨年12月に発表された「対象物件の方向性」において、元中小企業所跡地については、「既存建物を除去し、当面、エコモデルハウスの設置やカーシェアリング、電気自動車の急速充電等とコインパーキングを組み合わせるなど府の環境施策と絡めた事業等の暫定利用」とされ、これまで地元から出されてきた要望とは全く異なる利活用の方向性が打ち出されていました。
そこで伺いますが、元中小企業所総合指導所跡地の利活用について、行政評価委員会や府有財産活用部会検討委員会のこれまでの議論のなかで、地元でのアンケート結果や下京区の「区民のための跡地利用を考える会」との懇談の内容がどう検討されてきたのですか。お答え下さい。

堀川警察署跡地も府民・住民の声、生かした取り組みを

【西脇】堀川署跡地についても地元学区を中心に、身近な地域の安心のためには、七条署の跡地活用のように、何らかの警察機能は残してほしいという声や、地域のコミニュテイ施設など、地域密着の施設の要望の声が広がっています。これまで七条署跡地活用については、不十分ではありましたが京都府地元町内等へのアンケートなども含め、府民要望が生かされる取り組みが行われました。是非とも堀川署跡地の利活用についても、十分に地元の要望も把握して頂き、今後の利活用の検討に大いに生かしていただきたいと考えますがいかがですか。
以上、お答え下さい。
【政策企画部長】七条署跡地の利活用だが、京都市も参画する有識者懇談会において府民アンケートや地元ヒアリングなどを実施し、高齢者施設を含め跡地に整備することが望ましい公共機能について多角的に検討をいただき、高層中間案を取りまとめていただいています。
この中間案では、特に運転免許の更新窓口と交番等の警察機能を備えた地域防犯関連施設の2つの機能につきまして、府民ニーズや地元ニーズが非常に高く必要性や効果も見込まれることから優先的に整備することが望ましいと記されたところです。駐車場の設置については、同じく懇話会において京都市の駐車場政策の動向を踏まえ、京都駅前という立地から公共交通機関の利用を前提とした施設整備を行う方向で検討をいただいています。
なお、京都府福祉のまちづくり条例等をふまえ、障害者に配慮を踏まえることは当然のことと考えています。
景観規制について、懇話会においても、資産の有効活用を図る観点から高さ規制の緩和を止めるべきではないかという意見と、京都市の掲げる景観政策も十分に尊重すべきという意見の両方が出されており、中間案では市の景観政策の動向を踏まえ施設規模や有効利用面積の拡大の可能性について検討が必要との示されたところであります。
いずれにしても、京都駅前という好立地で非常に高いポテンシャルのある貴重な敷地でありますことから、構想の最終案に向け、さらに懇話会において議論いただき、地元の方々はもとより多くの府民の皆さんに喜んでいただける跡地の利活用に向けて取り組みを進めてまいりたいと存じています。
【総務部長】 元中小企業総合指導所跡地だが、地元アンケートや地元団体からの要望内容を踏まえまして、京都市をはじめ関係機関等にも利活用について照会を行った上で府有資産利活用推進プラン検討委員会において検討をいただいたもの。
その結果、引き続き利活用方策を検討することとされたものですが、今のところ関係機関から公共目的での具体的提案はないところでして、今後とも府としてふさわしい活用方策について検討していきたい。
また、堀川警察署については、敷地の4割が国有地であることや、また、形状が不成型であるなど七条警察署とは異なる事情を抱えておりますが引き続き関係機関等の提案も受けながら売却も含めた利活用方策を検討してまいりたいと思います。
【西脇】七条署跡地の景観規制の問題だが、歴史的な景観のバッファゾーンの中にあるにもかかわらず、行政自らが規制緩和するようなことになれば今後、他の地域への影響も非常に大きいと思います。これは決して規制緩和が進むようなことのないと感じておりますので、これは強く求めておく。
元中小企業総合指導所跡地の問題だが、地元のみなさんからも、多数要望が出されているように、京都市内にあっても府民共通の財産であることは間違いない。府民のために最大限使えるものにするのが大前提で、そのためにも、京都市とよく話し合っていただき、地元の要望が生かされるものになるようになるよう、重ねて要望しておきます。

11月定例会 一般質問
前窪義由紀(日本共産党、宇治市及び久御山町) 2010年12月7日

府営水道料金問題 

府は水道懇の提言・付帯意見、受水市町の声に応え、府の責任で料金引き下げを

【まえくぼ】日本共産党の前窪義由紀です。数点について知事並びに関係理事者に質問します。
まず、府営水道料金の見直しについて質問します。
11月5日府営水道事業経営懇談会は、「3浄水場接続後の供給料金の在り方について」の提言(第7次水道懇提言)を行いました。提言では、1トン当たりの基本料金を宇治系は1円引き上げ44円に、木津系は8円引き下げ78円、乙訓系は7円引き下げ80円に、従量料金は木津系を3円引き下げ(36円)、宇治系(19円)、乙訓系(36円)は据え置くとされました。
今回の料金見直しは、「地方公営企業としての原則を踏まえつつ、可能な限り府民負担の軽減が図られることを第一に審議してきた」と提言でも述べている通り、企業会計・独立採算に制約された中での検討結果であることから、新料金の算定に当たっては、府に、更なる努力を求めています。また、水源費の取り扱いや基本水量の在り方等についても、検討課題としています。
懇談会の最終審議で、宇治市長等から、「府に対し、さらなる府民負担軽減の努力を求めることを付帯意見として付すべき」との提案があり、懇談会は一致してこれを確認しました。水道料金をめぐっては、これまで高い府営水道料金の値下げを求め、ねばり強い住民運動が各地域で続けられてきました。また、わが党議員団も、昨年10月「府営水道料金の値上げを抑え、府民のくらしを守るための提案」を発表し、府民的討論を呼びかけてきました。
今回の提言は、これらを一定反映し、乙訓系、木津系では料金値下げを求めていますが、宇治系の値上げ等、問題を残しています。受水市町住民の水道料金の実質軽減をはかるためには、供給料金の更なる値下げが必要です。
そこで、わが議員団の提案も踏まえ、お聞きします。
まず、京都府の負担の問題です。
水道懇審議を経て、提言に「府民負担の軽減に向けたいっそうの積極的な支援の検討を進めるともに、できるだけ速やかにその具体化を図るよう強く要望する」と盛り込まれ、本府に一段の努力を求めました。真摯に受け止め、料金改定に反映すべきと考えますが、知事の所見を伺います。
今回の料金見直しで、負担増の要因とされてきた事業には、府営水道の3浄水場接続、宇治浄水場導水管更新、浄水場耐震強化対策等があります。これらの事業の中心は、災害時のライフラインの確保等に対応するために計画されたものであることから、公営企業会計のみに押し付け受益者負担とすべきではないと考えます。府は、これまでの答弁で一般会計からの繰り入れについて「繰り出し基準に基づき行っている」と答えておられますが、防災の観点から更なる繰り出しを行うべきではありませんか。  
また、水道懇が提言している「府の積極的な支援」とは、3浄水場接続等の新規投資にかかる経費に対して、府の負担を促しているのではありませんか、いかがですか。
この際、3浄水場接続後の広域的水運用についての考えも聞いておきます。今回の料金算定には、この影響が盛り込まれていません。本府は、災害時の緊急対応に加え、日常的な広域的水運用で経営の効率化やコスト削減を目指すとしてきましたが、広域的水運用の規模、コスト抑制の効果、料金への影響について、どのように見込んでいるのか、お答え下さい。
二つ目は、基本水量の問題です。
現行の供給水量は過大なもので、年々、供給水量と実際の使用水量の乖離が大きくなり、現状では、府営水全体の4割強が未使用となっています。今後も、人口減少、節水意識の向上、節水機器の普及、環境対策の強化などがいっそう進むことが予測されますが、このような社会的要因による使用水量の減少を、受水自治体だけの責任に押し付けることは納得できません。
そもそも京都府主導の水需要予測、ダム、浄水場等の計画だったわけですから、基本水量の見直しは府の責任でもあるはずです。水道懇の提言でも「社会動向の変化による影響から受水市町住民の生活を守るという視点も含め、今後、慎重に検討」とされているのです。基本水量の見直しについて、知事の所見を伺います。
三つ目は、水源費の問題です。今回の料金算定には盛り込まれていませんが、宇治系に係る天ケ瀬ダム再開発による毎秒0,6トン分の水利権については、本府が確保している水利権のうち、日吉ダムで0,285トン、比奈知ダムで0,3トンの未利用水利権を天ケ瀬ダムに振り替えれば、0,6トン分の新たな水利権の確保の必要性はなくなり、38億円もの水源費負担を軽減できることになります。すでに確保している水利権の有効活用を図り、今後、予測される多額の水源費負担を避けるべきと考えます。
知事は、水利権の振り替えについて、「国に河川管理の権限移譲を求めている、そうなれば実施できる」と答弁をしています。このことは振り替えの必要性を認めるが、制度上できないという意味なのか、改めて見解をお聞かせください。
天ケ瀬ダム再開発は、巨大放流トンネル建設、鹿跳び渓谷の開削、宇治川の掘削等が伴う大事業です。建設費用が水源費としてさらに水道料金に跳ね返り、多額の住民負担になります。水利権を振り替えればこの負担を避けることが出来ます。知事は、なぜその道を選択しないのですか。あくまで宇治浄水場系の宇治、城陽、八幡、久御山の住民に負担させるのですか。お答え下さい。
尚、大戸川ダム、丹生ダムの0,3トン分の水利権はすでに放棄しました。これは、過大な水需要計画を見直したもので当然であります。ただ、今後、事業費の清算や撤退負担金が見込まれるとされていますが、本府の予測の見込み違いによって生じる負担を、宇治系の水源費に加算すべきではないと考えますが、いかがですか。
四つ目は、府営水道の将来ビジョンについてです。提言では、府営水道の将来ビジョン(指針)を策定して、水源費・基本水量の方向性を明らかにしていくことが必要とされています。
将来ビジョンの策定については、安全で安価な水道水を安定的に供給するのは水道事業の使命であることを踏まえたものにすべきであり、その際、地下水の活用を含め2水源の確保等、受水自治体の取り組みを尊重することもしっかり位置づけることが必要です。府営水道の将来ビジョン策定について、今後の取り組み方針を伺います。
【知事】府営水道料金の見直しについては、村井議員の代表質問でもお答えしましたとおり、水道は府民生活を支える基礎的なライフラインでありますが、その料金につきましては、府民の公平性からいえば、基本的には受益と負担の関係を明確にしていくことが求められています。しかしデフレ経済下においては、府民がおかれている状況に配慮すれば、水道事業につきましては、府と受水市町が共に経営改善に向けた努力を尽くし、府民の負担軽減に向け力を合わせることが必要であり、そのことが受水市町以外の市町村に御理解いただく上でも不可欠と考えております。
 府の負担というのは、言い換えれば前窪議員が、宇治市民の負担ではなくて、京都市民や他の中・北部の方にも負担をしろと言っているに過ぎないわけであります。水道会計の場合には、補助金が入ってきませんから、私どもの財源は、府民からいただく税金か、府民の皆様が将来にわたって払っていただく借金、この2つしか財源がないわけです。府の負担というのは、そういうものであるということは御理解をいただきたいと思います。
 したがいまして、宇治市以外の方の負担も求めるには、それなりの御理解をいただくための努力が必要と考えておりまして、現在、受水市町は経営改善の取組を進めるための計画を提出していただいている最中です。ただ、こうした受水市町の努力というものは、成果となって還元される、すぐに実るものではない部分がありますので、京都府といたしましては、その問に府民にできる限り成果を早く還元できるようにするためにも支援をしていく必要があると考えており、私としては、その計画の状況を踏まえながら最終的に判断をしていきたいと、この前もお答えしたところです。
 先日は、新大山崎町長も挨拶にお見えいただき、上告を取り下げられました。これで法的に安定した形で私たちは市町村と府と協力して経営改善に取り組むという意向を示されましたのでネックは取り除かれたということは申し添えておきたいと思います。
 一般会計からの繰出につきましては、これは繰出基準に基づいて、3浄水場接続事業や耐震強化対策事業に対して、操出を行っているわけです。これも公営企業の原則、他の市町村との公平の観点からも操出基準にしたがったものが、私は適当であると考えています。
 また、水道事業の投資は、3浄水場接続事業に限らず、今般の宇治浄水場の導水管更新も含め、府民に安定的に水を供給するために行われるものでありまして、広域的水運用に係るコストも含め、水道懇審議の中でも当然、料金計算の基礎とされているところであります。
 なお、広域的水運用に係るコストは、水運用のパターンが多岐にわたることから、水運用の実施後、一定期間の実績を勘案した上で、負担を改めて考えることが適当とされておりまして、府としては、今後、市町とも連携しながら、少しでも低コストで広域運用できるよう努力をしていきたいと考えています。
 また、基本水量については、これまでから受水市町の要望に基づき進めてきたところで、整備計画の状況変化の中で変更し、基本水量の3分の1を料金化せず、受水市町の負担軽減に努めているところであります。
 基本水量につきましては、こうした状況も踏まえ、今回の水道懇提言の中でも「受水市町の自己水と府営水の配分割合なども考慮し、既投資部分の受益者負担という考え方を維持」するとされておりまして、今後もこの提言を踏まえて考えていきたいと思っております。
【文化環境部長】府営水道の水利権について、水道懇提言におきましても、天ケ瀬ダム再開発事業は、現に稼働中の宇治浄水場において暫定的に取水している水利権を安定化するものであり、近年の全国的な少雨化傾向に伴う淀川水系の渇水頻度の増加により、府営水道においても取水制限を余儀なくされる事象が発生しておりますので、府営水道全体としての水源の安定化を早期に図るべきとされているところです。
 水利権の振り替えについては、地域主権の観点から権限の移譲を求めていくこととしておりますが、水道懇の提言も踏まえ、府民の安心・安全の確保の観点から、天ケ瀬ダム再開発事業については、引き続き参画していくこととしております。
水利権の確保については、時代の変化に伴う市町の水需要の見通しや要望も踏まえ対処してきたところであり、利水撤退したダムの費用負担のあり方については、全国的なルールの中で応分に負担していく必要があると考えております。
府営水道の将来ビジョンについては、水道事業が府民生活の基礎的なライフラインであることを考慮し、受水市町と府が、一層、連携と協力に努め、信頼関係を強固にしながら、府民生活を守るという観点に立って、取り組んでまいりたいと考えております。

受水市町と対等な立場で協議し、住民負担軽減へ真摯な努力を

【まえくぼ】私は質問で、料金値下げへの府のいっそうの努力を求めましたが、少し気になることがあるので再質問します。
知事は10月27日の水道懇の最終審議が行われた翌日、28日の記者会見で、「宇治市長が我々の努力を求めるなら、我々も宇治市の努力を求める」と答え、また、「宇治市もきちんと努力をしてもらいたい」とも言及しておられます。多分、前日の水道懇で、宇治市長が、府の負担軽減への努力を求め、付帯意見を提案したことに対して、異常に反応したものと思われます。府の努力を求めるなら、自らの努力を示せとの発言は、水道懇に料金見直しの諮問をしている知事のいう言葉かと、私は耳を疑いました。
一連の発言は、府営水道の供給責任がある府の立場を超え、受水している市町の水道運営に露骨に手を突っ込むものです。市町が合理化を示さなければ、料金値下げへの府の努力はしないということですか。水道懇は、府の更なる努力を求めているわけです。このような居丈高な発言は撤回し、真摯な態度で料金値下げの検討をすべきです。いかがですか。
3浄水場の接続事業費は料金算定に盛り込みながら、コスト縮減の効果すら示さず、料金への算定を先送りするというのでは、納得できなません。工事も完了しているのですから、更なる料金値下げに反映させるのは当然ではないかと思いますが、再答弁を求めます。
府の負担・一般会計からの繰り出しについては、府民理解が得られないという趣旨の答弁ですが、国の繰り出し基準でも、「地方公営企業の実態に即した運営を」とし、地方の実態による繰り出しを排除していません。
水道とは別ですが、北近畿丹後鉄道、KTR、株式会社で本府も出資していますが、これに対しては、19年度4億6千万円、20年度5億2千万円、21年度6億2千万円、毎年運営支援金を出しています。全額赤字補てんとして支援しています。これに対し、赤字補てんの基準を私は聞いたことがありませんし、府民から「そんなことはするな」との声も聞いていません。赤字が増えれば補填して支援していく、本府のくらし、足を守る、こういう政策なんですよね。だから私は、3浄水場の接続等については、毎年度の支援ではない、公営企業の採算ベースに乗らない府の政策判断による事業ですから、国の繰り出し基準に該当しないと判断するなら、府の責任で十分、府民説明して対応すべきだと思います。再答弁を求めます。
水利権の振り替えは、乙訓系の日吉ダムに係る0,3トン分の水利権を木津系の比奈地ダムに振り替え、移転したではありませんか。今回も、余っている水利権の振り替えをなぜ選択しないのですか。このことを求めているんです。府民の税金を無駄遣いしないという点では、大いに国に対して申し入れし、協議の対象にしていくべきと思いますが、近畿地方整備局との協議は行なったのかどうか、この点についてお答え下さい。
【知事】まさにKTRも各市町村が一生懸命努力をして、赤字補填のためにも力を合わせているんです。ですから、こうした府営水道の料金についても、受水市町も努力をすべきだというのは、これは全く当たり前の話でありまして、それが何か府だけでやれというのは、これは今までの公平の観念からいっても全然当てはまらないことだと思います。
KTRの例をあげるならば、まさに京丹後市や宮津市、こうした市町村が努力をしてやっていることについて触れない、それを府だけがやっているようなことをおっしゃるのは事実と違いますし、だからこそ私は宇治市にも負担を求めているわけであります。その点はきちんと踏まえていかなければおかしい。KTRはしかも、兵庫県の方でもまた負担をする。みんな一人一人が、住民が支えていく中でやっているということでありますので、私は当然ながら受水市町に対してもそうした努力をして、そして京都府の努力と一体となっていくことによってはじめて府民の皆さんのために報いる水道料金が設定できる、そしてそれは国においても定められたきちんとした基準のもとでやっていかなければ、公平、公正の概念はできないということを申し上げたわけであります。
【文化環境部長】水利権の振り替えについては、近畿整備局とも以前から協議をしているところでありますが、水道懇においても専門的な観点から議論していただく中で、利水安全度も考慮し、現在工事が進められております天ケ瀬ダム再開発事業に引き続き参画し、府営水道全体としての水利権の安定化を早期に図るべきとの提言をいただいたことから、提言の考え方を尊重しながら進めてまいりたいと考えております。
【まえくぼ】私は、受水自治体も高い水道料金の上に、大きい水量を買って、本当に運営に努力してがんばっている。そういう首長が府に要望したことについて、逆なでするような言葉を知事として言うべきではないと指摘しておきたい。
本日の京都新聞には、こう書いてあります。大山崎町と府の協議について、「提訴前に町と協議していたときの府の対応も『常識外』だったとされる。机をたたく、椅子をける、怒鳴る...。複数の府の幹部の態度は、『府に盾突いた弱小自治体の悲哀』を象徴していた」と、書きました。
まるで大阪高検の検事が自白を迫るような取り調べを私は想定したわけですが、今後の市町との協議ではこんなことは絶対に繰り返さないよう猛省を促しておきたい。あくまでも対等の立場で協議し、結果、何よりも住民負担の軽減が大事ですから、そのような真摯な態度を知事に求めておきたいと思います。

天ケ瀬ダム再開発は中止・再検討が必要。大戸川ダムを治水専用ダムとして継続するのは大問題。知事はこれらの計画に、なぜ同意するのか

【まえくぼ】次に、淀川水系の河川整備計画について質問します。
今議会に、「天ケ瀬ダム再開発に関する基本計画の変更に関する意見について」及び「大戸川ダム建設に関する基本計画の廃止に関する意見について」の議案が提出されています。いずれも知事意見が求められている議案です。
この問題では、09年3月、国土交通省近畿地方整備局が、淀川水系河川整備計画を、諮問機関である淀川水系流域委員会の「ダムは不適切」とした意見書を無視し、一方的に決定しました。
当時、同委員会の宮本委員長は、「委員会の意見書、申し入れを無視したものであり、まことに遺憾、河川法の趣旨を生かさずに、かたくなに事業を実施しようとする整備局に対し強く抗議する」との声明を発表しました。マスコミも「踏みにじられた河川法」、「手続きは強引」と厳しく指摘し、異例の事態と批判しました。
最大の問題は、改正河川法で義務付けられた流域委員会の審議と意見を踏みにじって策定した河川整備計画を、関係府県に押し付け、追認させようとしていることです。
そこでお聞きします。まず、天ケ瀬ダム再開発についてです。
天ケ瀬ダムの放流量を、現在の毎秒900㌧から1,500㌧に増やす目的は、一つに、宇治川・淀川の洪水調節及び琵琶湖周辺の洪水防御、二つに、京都府の新規利水の確保、三つに、喜撰山発電所等の発電容量の増加、としています。
しかし、天ケ瀬ダムの1,500㌧放流は本当に必要なのか、おおいに疑問があります。これまでの工事で、河川環境や歴史的景観が大きく破壊され、昨年の宇治橋上流の河床掘削工事では、土のう流出事故が発生し、国の河川工事に対して安全性、信頼性が失墜しました。さらに宇治から槙島、向島に至る脆弱な宇治川堤防の決壊の危険性、ダム放流による低周波被害の拡大など心配されています。
「今でもダムの放流で宇治川の水位が上がれば、堤防の基礎から水が噴出してくる」、「1,500㌧を2週間以上も流せば、必ず堤防は切れてしまう。無茶苦茶な計画だ」というのが、宇治川とともに暮らしてきた地元住民の声です。
琵琶湖沿岸の浸水被害は、1兆9,000億円もかけた琵琶湖総合開発事業の完了で、ほぼ解消しているのに、なぜ琵琶湖の後期放流を増やすのか。ダムの放流量を1500トンに増やすのに、宇治地点での水位が、なぜ低下するのか。天ケ瀬ダムの直下やダムを支える岩盤にいくつもの断層帯があるのに、大きなトンネルを掘っても大丈夫か。など多くの疑問も出されています。
今回の変更案は、計画高水流量、トンネル構造形式の変更によるものですが、建設費用は330億円から430億円に膨れ上がっています。利水は先ほど指摘したように工夫すべきですし、発電容量の増大も、ダムの洪水調節能力を制限するもので、治水を犠牲にしてまで特に必要はありません。
このような疑問や問題を抱えたまま、天ケ瀬ダムの左岸に最大直径26㍍、延長600㍍、7階建てのビルがすっぽり入るような巨大なトンネルをつくる天ケ瀬ダム再開発は、中止・再検討が必要です。知事は、このような計画に対しなぜ同意するのですか。中止・再検討の意見こそ出すべきではありませんか、お答えください。
次に、大戸川ダムの基本計画の廃止についてです。
大戸川ダムは、1968年、治水、利水、発電を目的に計画されましたが、大阪府、京都府が相次いで利水から撤退したため、近畿地方整備局は、「治水単独目的の事業になり、治水分の事業費が増え経済的にも不利になる」として、05年7月に凍結方針を打ち出し、09年3月の河川整備計画で凍結を決めました。
この問題では、08年11月、京都、大阪、滋賀、三重の4府県知事合意があります。合意では大戸川ダムについて「一定の治水効果は認めつつ、施策の優先順位を考慮すると、河川整備計画に位置づける必要はない」と確認され、事実上、凍結・中止の見解。09年2月には、同じ内容で、京都府知事意見書が近畿地方整備局長に提出されました。
今回、大戸川ダムについての知事意見照会では、「特定多目的ダムの基本計画を廃止」という内容となっています。全利水者が撤退し、多目的ダムでなくなるため廃止するのは当然ですが、治水専用ダムとして河川総合開発事業で継続するというのは大問題です。このダムは、流水型・穴あきダムで計画し、総貯水量は3360万トンから2190万トンに縮小したものの、建設費用は逆に、740億円から1072億円に膨れあがります。
治水・利水の多目的ダムは廃止し、治水専用ダムはいつでも凍結解除し建設することができる。こんな勝手なことを許していいのでしょうか。「河川整備計画に位置づける必要はない」とした4知事合意、京都府知事意見書が無視され、まったく反映されていません。知事は、この意見照会に対し、なぜ無条件で同意するのですか。淀川水系流域委員会の意見書、4知事合意、京都府知事意見書を踏まえた回答をすべきと考えますが、いかがですか。
【建設交通部長】天ケ瀬ダム再開発について、天ケ瀬ダムの放流能力を増やすことにより、ダムで調節できる流入量を現状の毎秒1,360トンから毎秒2,080トンまで増やすことができ、より大きな洪水を調節することが可能となります。
 この再開発と下流宇治川の河床掘削や堤防強化などの河川改修を合わせて行なうことにより、宇治地点で水位が80センチから190センチ程度低下し、府域の安心・安全が大きく向上するため、早期に完成することが必要であると考えております。
 次に、大戸川ダムについては、四府県知事合意や京都府意見が反映され、河川整備計画においては「ダム本体工事については、中・上流部の河川改修の進捗状況とその影響を検証しながら、実施時期を検討する」こととなりました。その結果、宇治川をはじめ中流部の河川改修が、昨年度から目に見える形で始められたところです。
 事業費増額の主な理由は、天ケ瀬ダム再開発については、当初の想定より地盤が柔らかかったことに伴う施工方法や施工内容の変更などにより、また、大戸川ダムについては、計画時点より土地価格が高騰したことや耐震基準の見直しに伴って付替道路の構造の見直しなどにより、生じたものです。
これらのことから、天ケ瀬ダム再開発の基本計画の変更と大戸川ダムの多目的ダムとしての基本計画の廃止について、同意する旨の議案を提案しているところでございます。事業実施にあたりましては、引き続きコスト縮減を国に求めてまいりたいと考えております。

11月定例会 一般質問

迫 祐仁(日本共産党、京都市上京区) 2010年12月8日

介護保険制度について

【迫】日本共産党のさこ祐仁です。先の通告に基づき、知事と関係理事者に質問します。
まず、最初に介護保険制度について質問します。
 介護保険は制度開始から10年を経過し、施設をはじめとした基盤整備が圧倒的に不足していること、保険料の際限のない引き上げ、軽度者の排除等の問題が明らかになり、本格的な改善が必要なことは、代表質問で我が党上原議員が指摘したとおりです。
そこで私は、現実に起こっている「介護崩壊」ともいわれる深刻な事態とその改善について、京都市内でも高齢化率が東山区についで二番目に高い私の地元、上京区住民の方からの相談や現在日本共産党が上京区で行なっている「暮らしや高齢者の願いを聞く」アンケートに寄せられた声、また居宅支援事業や地域包括支援センターや介護事業所などでお話を伺った具体的な事例をもとに、数点伺います。

利用料減免制度の拡充を国に求め、府として市町村と協力し減免制度創設を

【迫】まず、利用料負担についてです。
 本年6月、我が党国会議員団による全国の介護事業所から集めたアンケートによると、原則1割の利用料や05年10月から導入された食費・居住費の全額自己負担化により、訪問介護、通所介護、居宅介護支援の3事業所で、「重い負担を理由にサービスを抑制している人がいる」との回答が7割を超えました。これは、低所得者の高齢者・家族に深刻な影響をあたえている実態があらためて浮き彫りになったものです。
 私がお聞きしたあるケアマネージャーさんは、「要介護認定が1から2に上がると、家族や本人も利用料の負担が増えるので困った顔をされる。サービスを増やすのにも円単位で計算して金額を提示している。介護者のことを思い、このサービスの組み合わせを行うことがベストと電卓をたたいてサービスの提供をすることが悲しい。」と言われました。
 ある女性は、要介護度2で、自宅での入浴が危険なためデイサービスを週4回利用し、デイサービスの利用料は月約14,000円でした。要介護度が4へ上がり、週4回デイサービスを利用すれば約18,000円へと4000円料金が上がるため負担できずデイサービスを2回に減らさざるをえなくなりました。要介護度が上がると、それに応じたサービスが受けられなければならないのに、利用料の負担ができないためサービスが使えず、状態が悪化しさらに介護度が上がるという悪循環を生みだすことまで起こっています。
 所得の低い人が、利用料負担ができないためにサービスを利用できない。このような介護保険では、必要な人がすべて介護をうけられると謳った制度の趣旨と矛盾しているではありませんか。
現在、社会福祉法人等の利用料減免制度がありますが、事業所負担があるため、実施している事業所は限定的であり、しかも、その対象は「市町村民税世帯非課税であって、特に生計が困難な者」とされ、仮に対象となっても、利用料の4分の1しか減免されません。このため、利用料減免制度の対象の拡充を国に求めるとともに、市町村と協力し府として減免制度を作ることが必要と考えますが、いかがですか。

利用限度額の撤廃を国に強く求めよ

【迫】次に、要介護度によって介護保険から給付される利用限度額が決められている問題です。
 利用料は要介護認定によって上限が決められています。そのため、その方にとって必要な援助であっても、限度額を越えると10割負担となってしまいます。
毎日在宅サービスを受けている86歳・要介護度4の独居の女性は、本来必要な介護を受けると限度額を超え、10割負担をあわせて一か月の利用料が14万円を超える計算になり、とても払えないので、夕方の排泄など身体介護を外さねばなりません。
このように利用限度額があるために、それを超える分については10割負担をしなければならず、利用料が上がり必要な介護を受けられない事態が起こっています。「これまで社会を支え、苦労されてきた高齢者の方に、『認定の結果、あなたはここまでの給付しかないですよ』と通告をして、介護サービスの制限を伝えることは、本当につらい。」と私がお聞きした別のケアマネージャーさんは切々とおっしゃいました。
本来、「必要な人に必要な介護」が当然で、そういう制度に改めるべきです。国に利用限度額の撤廃を強く求めるべきです。いかがですか、お答えください。

国庫負担の増額、保険料引下げ、滞納者へのペナルティ廃止を国に求め、府として減免制度を設けよ

【迫】施設が足りないもとで、在宅で頑張って生活しておられる方が、直面されているこういう事態を本格的に改善することがなければ、行き場のない高齢者を制度の責任で生み出してしまうことになりかねません。
 保険料についても、深刻な事態が起こっています。すでに保険料は全国平均で4160円にも上り、今回の見直しでは5200円となることが示され、誰が見ても限界であることは明らかです。わが党のアンケートでも「介護保険料が高い」「「少ない年金から差し引かれるのは負担が大きい」「介護への経済的な不安が大きい」など、介護保険料の負担を心配している声が数多く寄せられています。
国庫補助の増額を国に強く要求し、保険料の引き下げを実現させることと、府独自の減免制度を設けることを強く求めます。いかがですか。
さらに、保険料を滞納した人に対しては利用料を3倍にするというペナルティが課せられています。年金から天引きされない普通徴収の低所得者の方が保険料を滞納し、介護申請されたら利用料負担1割が3割へと3倍に増える。その結果、「デイサービスが週に2~3回必要な方の利用料が、1回765円から2295円台になり、とてもじゃないが利用料が払えないと利用を諦める方もいる。」とお聞きしました。
本府の普通徴収で、保険料滞納になっている方は5月現在17431名に上ります。払えないのです。さらにこの方々が給付を受けようとすれば自己負担は三倍になるのです。これでは介護給付を受けようがないではないでしょうか。
他の社会保障制度にはない保険料滞納者への給付停止や利用料の3倍化など、介護を最も必要とする人たちが、介護制度を利用できなくなる、厳しいペナルティは廃止するよう国に強く要望すべきです。いかがですか。

介護福祉職員の処遇改善について

【迫】次に処遇改善の問題についてお聞きします。
誰もが安心して利用できる介護保険とするためには、保険料や利用料など負担軽減の対策はもちろんのこと、基盤整備とそれを支えるマンパワーの確保が必要です。
 いま介護現場では、男性職員が3割を超えていますが「男性の寿退社」と言う言葉が言われています。おめでたい言葉ではありません。結婚を前にして、給与が安いのと過酷な労働条件で介護の職場で働きたいけれども生活していけないと退職する青年が増加しているのです。
ある特別養護老人ホームの職員さんにお聞きしましたが、「夜勤は二人で50人のお年寄りを見ており、そのうち30~40人の排せつ介助を一晩に一人に対して4回から5回しなければならず、仮眠どころか休む間もない。行事の準備などでオーバーワーク。本当に丁寧な対応をしたいけれどなかなかできない」と悔しがっておられました。
この10月、全国労働組合総連合が実施し、7855名の介護労働者が回答した「介護労働者の労働の実態」という調査が明らかになりました。 調査結果によると、介護労働者の56.6%は非正規労働者で平均年収は206万8400円、うち52.2%が200万円以下です。これは、以前国税庁が調査した民間企業全体の去年の平均年収である405万9000円を200万円近く下回る結果です。また、不払い残業があると答えた人が37.7%となっています。賃金が低いことで働き続けられず、また、人件費削減の結果として、非正規労働者が介護分野でも急速に増えています。低い賃金で新たなワーキングプアを作り出しているのです。
介護職員に対して定期昇給をきちんと保障した労働対価に見合った報酬を与えない限り、すぐ近い将来に人手不足で介護サービスは崩壊することになるのではないかと多くの方が指摘しています。
 こうした中、これまでの介護報酬の削減が事業所の経営難の原因であることは国も認め、政府は2010年度に介護報酬を3%引き上げ、「介護職員処遇改善交付金」を発足させましたが、恒常的な処遇改善の手段ではないため、ほとんどがベースアップにつながらず「焼け石に水」で深刻な事態を解決するにはまったく不十分でした。介護報酬とは別枠での公費投入を行ない、介護職員の賃金を月4万円以上引き上げることは緊急の課題です。引き上げの実現とともに、介護報酬の見直しは、加算や対象職員を限定するというやり方ではなく介護報酬本体の底上げを当面5%以上の引き上げを図るよう国に求めるべきではありませんか。そのさい、国庫負担割合の引き上げ、利用料の減額・免除などにより、保険料や利用料の値上げにつながらないようにすべきです。見解を伺います。いかがですか。
社会福祉、高齢者福祉の充実は雇用確保に直結します。与謝野町では、わが党の町議が「特養ホームの待機者解消のためにも地域経済の活性化のためにも福祉施設の整備へ町が応援を」という提案を行ない福祉の充実による地域経済の活性化が進められ、高齢者福祉基盤施設の充実が進んでいます。今では福祉関係の雇用が5年前の1.38倍、450人にのぼり、福祉分野で与謝野町の地域経済が支えられています。
今後の高齢化と現在の就職難(有資格者数など)を考えた時、介護労働者の賃金を増やし、雇用を生み出すとともに、介護を理由にした離職をなくす、基盤整備は地域経済の振興にもつながるなど、日本経済にとっても「一石二鳥、三鳥」の効果があると考えます。いかがですか。
以上お答えください。
【知事】介護保険の問題について、今後の高齢化社会を見据えますと、高齢者のみなさまが安心して生活ができる質の高い介護サービスを継続的に利用することができるよう、介護サービス基盤の整備、そして介護職員のみなさま等の人材を十分に確保していくことが重要であると考えています。
 このため、京都府においては平成23年度までに新たに4000人の介護福祉人材を確保することを目指し、市町村をはじめ関係機関、団体と連携しながら、就業相談体制の強化やキャリアアップ支援など、人材の安定的な確保定着に取り組んでいるところです。
 また、同時に従前から介護労働の実態に見合った適切な賃金基準を確保できるよう、報酬額の見直しを求めてまいりました。その結果、平成21年度に介護報酬の3%アップがなされるとともに、それでもまだ不十分だということで、国に対して提案し、国においては昨年10月から一定条件を満たす事業者に対し、介護報酬とは別に介護職員処遇改善交付金を交付しており、介護報酬のアップとこの交付金をあわせて、だいたい一人あたり月額25000円以上の賃金の引き上げが行われたところです。
 しかしながら、介護職員の賃金水準は依然として低く、かつ交付金は平成23年度までの時限的なものであることから、引き続き次期介護報酬改定において介護労働を適切に評価した報酬水準とするとともに、介護報酬の見直しが保険料や利用料に影響することのないように公費負担のあり方や保険料の設定方法をはじめ、制度の抜本的な見直し、利用料の軽減等についてもあわせて求めているところです。
 なお、介護基盤の整備については、雇用の受け皿として、また地域の活性化にもつながるものとして、京都府独自の雇用制度を行っていますが平成21年度からは国の緊急雇用対策に呼応して設置した基金も活用し、小規模特別養護老人ホームをはじめ、地域密着型サービスを提供する小規模介護施設の整備促進等積極的に努めているところです。
【健康福祉部長】介護保険の利用料や保健料等については、介護を社会全体で支えるという制度の趣旨から、国、地方公共団体はもとより、現役勤労世代や高齢者の方も含めて負担する仕組みとされており、制度の安定的・持続的な維持の観点から給付と負担のバランスのもとに、国において全国一律の基準として定められています。
 京都府としては、従来から高齢者が必要なサービスを受けられないことがあってはならないとの立場から、国に対して軽減制度の拡充強化をはじめ、低所得者対策の充実を繰り返し要望するとともに、制度の枠内で精いっぱいの工夫をおこなうべく、保険料の区分を国基準以上に細かく設定することや、社会福祉法人による利用料軽減制度の積極的な活用等について市町村に対して助言・要請してきました。
 この結果、全ての市町村でこれらの対応が行われているとことですが、今後とも国に対し低所得者対策の一層の充実をはじめ、公費負担のあり方や保険料の設定方法等、制度の抜本的な見直しを求めることとしています。
 なお、支給限度額については、昨年の介護報酬改定時に限度額が据え置かれた際には、直ちに国に改善を求める等、高齢者にとって使いやすい制度となるよう繰り返し国に提言・要請をしています。
 保険料の滞納者への対応については、給付の制限については従来から被保健者の個別事情をふまえ、生活実態に見合った適切な運用が行われるよう、市町村に対してきめ細かな対応を助言・要請しています。こうしたなか、納付相談に応じない、又は保険料を支払う能力があるにもかかわらず資力に見合った納付が行われないなど、負担の公平性の観点から真にやむをえない場合の最後の手立てとして実施されているものと考えています。
【迫】利用料についてですけれども、脳内出血で半身まひのため介護申請して要介護度4と認定された方が、リハビリを通じて自分でできることが増えて、その後の更新申請で要介護3という形で認定されました。よくなってきたと評価されたことは本当に喜んでいらっしゃったのですが、今度は介護サービスを利用するのに利用限度額が少なくなるために「要介護4と同様のサービスが受けられなくなるのが心配だ」とおっしゃっています。前と同様のサービスを受けようと思うと10割負担の利用料なのです。だから、一人ひとりの個別事情に合わせたプランを作成して実施できるようにしていくために、利用限度額の撤廃を行うよう国に求めること。あわせて、利用料の減免制度を京都府として市町村と一緒につくっていくべきだ。このことを強く求めます。
処遇改善については、実際に国に対して働きかけていくということですが、介護報酬の改定によって、利用料・保険料が上がらないようにしていくことが大事だと思っています。そういう意味で、別建てとして国費で処遇の改善を行うようにしていくことを国に要望することを求めて次の質問にうつります。

西陣産地の再生について 

【迫】次に私の地元西陣の振興について9月議会でも取り上げましたが、改めて振興にはたす京都府の役割について質問いたします。
知事は私の質問に「京都にとって重要な産業である。西陣織工業組合や京都市とも連携し西陣産地振興対策ビジョンを策定し、具体的に実施している」と十分な対策が打たれているように答えられました。
「消費者本位の安心・信頼の産地づくり」と名づけられた第6次西陣産地振興対策ビジョンは2006年3月に西陣織工業組合によって作成され、現在の西陣振興の基本方向となっています。策定にあたっては、西工の理事長が委員長になっていますが、京都府から当時の商工部の部長が副委員長として名を連ね、ワーキンググループには染織工芸室長が参加しています。そして、行政の役割という項には「西陣産地に対しても明治以降今日に至るまで、国や京都府・京都市は、つねにその経済的・社会的・文化的な面で京都という地域だけではなく、日本全体にとっての重要性から支援策を相次いで適宜、実施してきた。」と書かれています。ビジョンの作成にも直接関わり、西陣の振興に京都府の果す役割はきわめて大きいことを示しておられると思います。この点で府の役割についての知事の認識を伺います。
このビジョンは概ね5年間とされ、今年度は最終年度にあたり、次の第7次ビジョンの検討が始められていると思いますが、本当に西陣の再興につながるために改めて第6次ビジョンで示された内容と課題についてふれながら、府の見解を伺いたいと思います。
ビジョンの内容ですが、そこには「まさしく今、西陣機業は、再生が可能かどうかの岐路に立っている」との認識にたち、「この危機をもたらした具体的要因」として四点の原因を挙げています。第一に和装需要の引き続く減退。第二に複雑・不透明な流通・取引慣行などへの消費者からの不振。第三に帯地だけでなくネクタイなど西陣織と競合する製品の海外からの輸入増大。第四に消費者のニーズからの離反としています。この4つの具体的要因について打開できたのですか。実際は、06年から09年の4年間で西陣の機屋が578社が474社へと104社廃業し、売り上げは帯地で294億円から184億円へ110億円減少、道具類が枯渇し、事態はいっそう深刻になっています。京都府はこの現状をどう認識しているのですか。お答えください。
具体的な対策を進めるために、このビジョンと並行して「京都府伝統と文化のモノづくり産業振興条例」が制定されたと思われますが、そこには「府の責務」として①「伝統と文化ものづくり産業の集積等による振興を図るための補助金の交付」、②「京都府伝統と文化のモノづくり産業振興協議会」設置の二つを明記しています。いま問われていることは、この西陣に危機をもたらせた4点の克服と「条例」が示した責務をどう具体化してきたのかということです。
私が前回の質問で明らかにしたように、西陣織を織っている現場の賃織と言われる業者は高齢化、低賃金等で廃業が増え、生産量は減少しています。さらに、賃織りの織機の設置や部品を直す機料品店も減少し、道具類の枯渇対策やメンテナンス人材の育成は緊急の課題です。京都府は大事な産業だと言いながら予算はほとんど横ばいです。後継者育成は大事だと言いながら、かつて京都府が実施していた一年間のみ20万円の技術後継者支援制度を廃止し復活もしていません。この間技術研修や後継者育成に重要な役割を果たしてきた市の染織試験場の移転や住民や労働者の各種活動の拠点となってきた府の職業能力開発センターの廃止など府と市のとってきた施策は振興とは逆行するものです。
次のビジョンが検討されているときに求められる視点は明確です。府や市が西陣振興のために、業界任せにせずに思い切った振興策を、西陣のすべての知恵と力を集めて作り上げることです。
第7次提言が検討されているいまこそ、府がそのことを明確にすべきではないでしょうか。
私は、9月議会で 西陣振興のために研究者、地域住民、業界、働く人たちの知恵と力を集めて、産業と地域経済を考え実行する「西陣地域経済振興協議会」(仮称)を設置し、抜本的な振興策を実行することが急がれていると提案しました。7次ビジョンに位置付け、行政あげて実施していくべきではないですか。
また、西陣関係者の緊急生活保障、後継者対策や道具類の確保、販売拡大の抜本的対策、さらに地元で計画されている観光振興と結合した西陣再生とまちづくりなどに積極的な財政投入を行うべきです。府は、最高で一社当たり20億円だった企業の誘致の補助金を30億円に増やしてきました。伝統産業の振興にも思い切った財政措置を行なうべきではないですか。京都の和装産業・伝統産業は地域経済に大きな経済効果があります。以上の抜本的な対策を求めますいかがですか。
最後に、緊急の西陣の仕事おこしとして積極的な緊急雇用対策基金の活用や国民文化祭の記念品を西陣織や伝統工芸品で作成することを提案します。いかがですか。
【商工労働観光部長】西陣産地の再生について、西陣織は京都にとって重要な産業であることから、全国でも数少ない「伝統と文化のものづくり産業振興条例」を策定し、匠の公共事業を行う等、「第6次西陣産地振興ビジョン」も十分踏まえ、西陣産地の振興に取り組んでおります。
 重点分野の具体的取り組みについては、「京もの認定工芸士」の制度化や後継者育成等、「匠の技を継承する人づくり」、「京の職人さん仕事づくり推進事業」等、「匠の技を活かした仕事づくりを推進するものづくり」、そして「着物の似合うまち京都づくり推進事業」等、着物の良さをPRし、需要開拓を行う環境づくりを行うとともに、消費者から信頼が得られる取引や道具類確保対策も含めて、中長期的な視点から総合的・体系的に実施しているところです。
 また、観光振興と融合した西陣活性化については、本年6月に海外からも多くの観光客が訪れる西陣織会館内に「京・和装・伝統産業 職人工房」を開設したところであり、同工房における実演を通して匠の技を府民をはじめ多くの観光客の方にご覧頂くとともに、各工房においても製作体験や見学ができる「みやこの手習い」の利用拡大もあわせて伝統産業の魅力を幅広く発信し、観光と産業がともに成長するよう取り組んでいます。
 さらに、緊急の仕事おこしとして、緊急雇用基金を活用した「京の伝統産業・未来を担う人づくり推進事業」を実施するとともに、西陣織をはじめとする京都の工芸品を府の記念品等に活用する職人さんの仕事づくりなども行っており、国民文化祭とも連携をすすめてまいります。
 西陣をとりまく状況は依然として厳しいものがあり、今後も環境の変化に的確に対応していく必要があることから、平成22年度中の策定を予定している「第7次西陣産地振興ビジョン」については、学識経験者や業界のみなさま方と一緒に府も全面的に参画させていただき、今朝の報道にもみられた異業種との連携など新たな活動も十分ふまえ、課題と対策を明確化し、西陣の産地振興に全力で取り組んでまいります。
【迫】いま、お答え頂きましたけれども、西陣の産地というのは本当に大変な状況になっているとの認識をされていると思いますが、その具体的な対策が、本当に、そこで働いておられる方々を援助していくという姿勢がなかなか見えてこないと私は思っています。具体的に西陣の産地に対して支援をしていくという姿勢が見られないというのが、これまで私がみていて思う内容です。
具体的には、国の伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)では、「伝統工芸品産業の振興をはかり、もって国民の生活に豊かさと潤いを与えるとともに、地域経済の発展に寄与し、国民経済の健全な発展に資する」としています。伝統産業の振興を図り、次世代に受け継いでいく、京都府の責任は大きいと思います。
昨日も国民文化祭の質疑の中で「地域の特性を生かした深みのある文化を大切にし、次の若者に引き継ぐ」と言われましたが、京ものブランドが輝き、京都らしさを世界に発信し「伝統・文化、物づくりのメッカ西陣」として次世代へ受け継げるように、京都府が積極的に、中小企業や地場産業を21世紀の地域経済の担い手として位置づけ、施策を実施すべきだと思います。そのことを指摘して質問を終わります。

《他会派一般質問項目》

2010年12月6日

■近藤永太郎(自民・京都市西京区)

1 家庭の問題について

2 府のスポーツ施設のあり方について

3 農地の保全対策について

■佐川公也(民主・京都市西京区)

1 京都経済の国際化について

2 心の教育について

3 京の川づくりについて

■林正樹(公明・京都市山科区)

1 グリーン・ツーリズムについて

2 情報化社会の取り組みについて

3 薬物乱用防止の取り組みについて

■中川貴由(自民・八幡私)

1 農業施策について

2 中小企業、小規模企業の活性化について

3 雇用機会創出について

2010年12月7日

■田中健志(民主・京都市中京区)

1 震災対策について

2 府立高校の現場の課題について

■奥田敏晴(自民・城陽市)

1 がん対策について

2 JR奈良線の複線化事業について

3 教育問題について

4 高齢者の安心・安全の確保について

■佐々木幹夫(創生・綾部市)

1 国民文化祭について

2 京都府の国際交流について

3 府内の都市計画道路について

2010年12月8日

■諸岡美津(公明・京都市右京区)

1 地球温暖化対策について

2 子育て支援について

■中島則明(民主・舞鶴市)

1 舞鶴港の振興について

2 地域医療の再編整備について

3 警察署等の再編整備について

■秋田公司(自民・京都市南区)

 1 産業振興と一体化した雇用政策について

2 ひきこもり若年者の就業支援・雇用対策について