府政報告 1977 10年 明日の京都特別委員会 新井・山内総括質疑、団見解
●2010年10月12日、10月13日の2日間、明日の京都特別委員会書面審査がおこなわれ、12月9日に知事総括質疑がおこなわれました。新井進委員、山内よし子委員の知事総括質疑と答弁の大要と他会派委員質問項目、「明日の京都」に対する日本共産党府会議員団の見解をご紹介します。
もくじ
新井 進総括質疑・・・・・ 1
山内よし子総括質疑・・・・・ 4
他会派委員総括質疑項目・・・ 8
「明日の京都」に対する日本共産党府会議員団の見解・・9
明日の京都特別委員会 知事総括質疑
新井進(日本共産党、京都市北区) 2010年12月9日
構造改革路線をすすめた結果、この10年間の京都経済の落ち込みは深刻
【新井】まず新しい長期計画を作る場合、これまでの長期計画、「新京都府総合計画」の結果、府民の暮らしや地域経済が、どうなったのか、このことを明らかにし、次の計画に生かす。これが本当に大事だと考えます。
新府総は「むすびあい、ともにひらく新世紀京都」と銘打ち、「一人ひとりが生き生きと暮らせる社会」「たくましい地域経済のもとで持続可能な発展をめざす京都」などが掲げられてきました。しかし、現状は「生き生きと暮らせる社会」とか「たくましい地域経済」とは「とてもいえない」と言うのが現状だと思います。この10年間で、京都経済がどうなったか。
府内総生産は2000年に10兆1127億円であったのが、統計が出ている07年で10兆930億円とマイナスになっています。さらに全国の傾向をみると、09年がこれよりも落ち込んでいるから、京都も落ち込んでいるというふうに見ざるをえない。まさに成長が止まって、いまマイナスになっているのが現状です。そこで、ここに主要な経済指標について、グラフにして来ました。ひとつは京都の民営事業所数は96年には15万2千事業所であったのが06年には12万5千と2万7千も減少しているのです。そして小売業の関係も3万6千から2万8千になって24%減、4軒に1軒近くも減少する。販売農家の場合、2万9千戸が2万1千戸、27%減で4軒に1軒以上も減少する。極めて深刻な事態になっています。そこで増えているのは不安定雇用です。97年に29万人であった不安定雇用が、07年には42万人と、約1・44倍、京都では働く人の4割が非正規雇用と高水準になっています。
なぜ、こうした事態になったのか。京都府だけの責任ではありませんが、国が構造改革、規制緩和、さらには強引な市町村合併などをやってきた結果です。しかし、同時に、知事も「小泉改革に同感」といい、京都府政がこれに適切に対処してこなかった。ここにも大きな問題があります。
次期「長期計画」は、この反省に立って、この落ち込んだ京都経済と雇用を立て直すことに力を入れるべきだと考えます。そのためにも、かつての大型開発中心からの転換はもちろん、企業誘致や新産業、ベンチャー支援中心ではなく、京都の経済と雇用を支えている中小企業のものづくりの力を生かした産業振興、さらには大手企業に対し、下請け切りや派遣切り、地域経済と雇用をこわす身勝手な撤退などを許さないルールある経済社会をつくる、そして社会的責任を果たさせる、こうした方向への転換が必要だと思いますが、その点についての知事の認識をお聞かせください。
【知事】構造改革について私は、国から地方へというテーマは賛成だと申し上げたので、問題はその通りなったかどうかということについては、かなり遺憾な状態だと言ったので、その点はしっかりとふまえて答弁したいと思います。京都には強みを持った多くの企業が存在しています。そしてその多様性を維持発展させていくことが未来に向かい京都の中小企業をしっかりと振興していくうえで重要だと考えており、このために京都府中小企業応援条例や伝統文化ものづくり産業振興条例を制定し、中小企業のセーフティーネット対策から成長支援、そして匠の公共事業、企業の流失防止などのトータルな施策を実行してきた。これからもこの計画において、京都の強みや技術力を生かした産業が育つことなど、八つの基本目標の実現をはかることで、多様な中小企業がそれぞれに成長するよう総合的な施策を展開していきたい。雇用においても、ジョブパークをオール京都で立ち上げたけれども、さらに雇用の安定・確保にむけての取り組みを進めていきたい。また、さまざまなルールについては、遵守は当然のこと、派遣法等についても社会保障国民会議の場を通じて、その改正を訴えてきたところです。
倒産・廃業から中小企業を守る支援策が書かれていない「中期計画」
【新井】トータルなやり方、多様な京都の資源を生かしていくことをやってきたと言われましたが、現実には、京都府の場合、これまでの産業政策のなかの大きな一つに企業誘致があったが、企業誘致については1社あたり20億円、今は30億円になりましたが、20億円の助成もするとしてきました。しかし、もう一方で、京都の雇用や経済に大きな影響を与えてきた和装伝統産業のみなさんには、今年度でも年間で2億円程度の予算になっている。さきほども応援条例でやってきたと言われましたが、「応援条例」でも税の減免や独自の補助金など定めているのはあらたな研究開発や創業・ベンチャー支援になっている。私がさきほど述べたのは、こういうやり方から、いま京都の経済と雇用を支えている中小企業が生き残っていける、そして新しい未来が見えてくる、そういう方向に切り替えていくべきだということです。そういう意味で、この点についてはしっかりと、これまでの結果をふまえて今後の対策に生かしていただきたい。
さきほど構造改革について、国から地方へということだと言われたが、構造改革そのものについてみれば、京都府の場合でも知事が就任されて以来、「経営の視点で」ということでやられてきましたし、経営戦略室というのもつくられました。これは全国的に行なわれたいわゆる構造改革路線にそったやり方をとってきたのは事実なわけなので、指摘しておきたい。
そこで具体的に伺います。中期計画で「地域に根ざして京都経済を支える中小企業を守り発展させます」と書いています。数値目標でも「倒産廃業を減少させる」としています。
けれどもいま倒産廃業を減らすためには、一つは、中小企業の仕事確保をどうするかが何より大事です。たとえば、この間私たちが提案してきた住宅リフォーム支援制度や小規模事業者登録制度、公契約条例などをつくって、厳しいなかでも公共事業などの仕事で、中小企業の仕事を確保していくこと。これはスクールニューディールの時にも一括で発注するやり方に対して、業者のみなさんから、これでは京都の中小業者は引き受けられないということで声が上がり、府としても分割発注にしたわけですから、そういうことも含めて、中小企業に対して仕事を確保していくことが大事だと思います。もう一つは、大企業が文字通り身勝手に単価を切り下げたり、下請けを切り捨てる、こういうやり方をとっているのですから、ここに対して規制していく取り組みが必要です。法律的には国が権限をもっていますが、業者の声にこたえて対策が打っていけるように、京都府としても体制をとっていくこと。三つめには、いま仕事がなく、現実には工場家賃やリース料を払わなければならない、これが払えずに廃業や倒産に追い込まれているところがたくさんある。ここへの支援策がこれからいよいよ大事になってくると思いますが、こうしたことについては中期計画に触れられていません。その点について、ぜひ対策を講じる必要があるのではないか、そうでなければ倒産、廃業を減少させるということ自体が絵に描いた餅になると思います。その点についてお答えください。
【知事】私たちは限られた財源を効果的に利用することを経営と言っているので、経営(の視点)というのは当たり前だと思います。それは、大企業を廃止して生産手段の所有も運営も管理も社会化されるというのを目的とされる新井議員、共産党の綱領とは全然私たちはやり方が違うと思っています。雇用問題では、雇用創出と就業支援とを一体的に進めることが必要だと考えており、中期計画においても正規雇用を希望する若年者に対する支援メニューの強化による就業促進とか実践的職業訓練の実施、京都ジョブパークを中心とした就業支援サービスの拡充をはかっている。今回の中期計画においても、「地域に根差して京都経済を支える中小企業を守り発展させます」ということをうたっており、そのなかで各企業の持っている強みというものをしっかりとこれから支えていくとりくみに全力をあげていきたい。国に対しても、私たちは申しているし、企業誘致の補助金についても、正規雇用など常用雇用重視の制度に改正するなど、「働きの安心」をめざして施策を展開している。
【新井】答弁いただきましたが、さきほど言いました、倒産、廃業を減らすための具体的提案についてはいかがですか。
【知事】まさにこの時代にあった形で中小企業の強みを生かし、時代のニーズに合わせた形で、私たちは研究開発から、生産、市場開拓までを一貫して支援する、そしてその中で融資、投資の体系化をはかりながら中小企業を守っていくという施策を提示している。
【新井】いまいろいろ言われたが、具体的に、日々仕事がなくて困っている業者がおられるのだから、こういう方々に対して実際に仕事が回るようにどうするのかということでは、すでに全国的にはさまざまな知恵が出ている。そういう点で私たちは、全国の知恵にも学んで、また中小業者のみなさんの声にも真摯に耳を傾けて、そして京都府がそれに対する対策を講じていくべきだということで具体的提案をしているわけですから、これらについては、ぜひ真摯な検討をお願いしたい。
「常用雇用化」でなく「正規雇用化」を中期計画に明記してとりくむべき
【新井】もう一点、雇用の問題では、実際に中期計画には「働きの安心」とは書かれています。しかし、そのためには、今の派遣や期間工など使い捨てにされるような働かされ方をなくし、正社員が当たり前の社会に切り替えていかなければならないと思います。ところが、今回の中期計画を見た時にも、この「働きの安心」のなかに「常用雇用化」や「多様な働き方」としか書いていません。正社員化をめざしていくということについては触れられていない。この点について、なぜ明確にされないのか。また、雇用のための誘致補助金をだしたジャトコや村田製作所、日本電産など大手の企業では、雇用といっても、派遣労働者など非正規が多数をしめ、いとも簡単に派遣切りを行いました。こうしたことを防ぐ対策が今必要になっていると思いますが、この点についても中期計画の中に定めていくべきだと思いますがいかがですか。
【知事】私たちが、しっかりとこれからつくらなければならないのは、安心、安定的に働ける職場を作りあげていくことだと思います。とくに若い方々が、社会の最初の一歩でつまずくことがないように、そしてそれが京都の将来に向けて力を蓄えることができるようにしていくことが必要だと思っています。中期計画では、正規雇用を希望する若年者に対する支援メニューの強化による就業促進や実践的職業訓練の実施とか、京都ジョブパークを中心とした就業支援サービスの拡充などを進めている。
【新井】少しかみ合わないところがある。いま申し上げたのは、いま非正規雇用がどんどん増えているという社会のあり方でいいのだろうか、ということが問われているのです。その点で、京都府が「働きの安心」というのならば、正規雇用が当たり前の社会にしていくために京都府がリーダーシップを発揮していくことが求められている。いま知事が言われた手立てのなかでも、正規雇用とは書いていない。「常用雇用化」をはかっていくと。正規雇用を求める青年に対して「就業支援などを行なって、常用雇用化をはかっていく」と書いてある。常用雇用の中には、パートも含まれるし、さらに契約社員、期間工も含まれる。期間工などになれば、結局景気が悪くなれば調整弁として首が切られるということが現実に起こっている。だから正社員化をはかっていくという方向に切り替えるべきだという提案をしているのですから、これにかみ合った答弁をお願いします。
【知事】私たちは安定的に働けることを第一としている、正規職員になれれば一番いいことですし、そうでなくとも常用雇用という形でしっかりとした安定した仕事を見つけていく、それをわれわれ京都府は支援していく、それを中期計画に書いていると思います。
【新井】常用雇用でと言われたが、知事も前に「正規雇用が見直されるべき時期が来ている」と言われているわけだから、私は、「明日の京都」というときに本当に府民が安心できる、とりわけ青年が安心できるということでは、京都府内では正規雇用が当たり前の社会をつくっていこうということを、経営者協会などにも呼びかけて、その方向に向かって行政を進めていくということをぜひ柱にしてほしいと求めておきます。
計画のなかに価格保障対策など、農林漁業者が安心して働けるための施策を
【新井】もう一点、地域経済で重要な問題のもう一つは、農林漁業への支援です。
農林漁業の担い手減少の最大の原因は、農林漁業では一生懸命はたらいても「食えない」、生活できないということです。中期計画でも「農林水産業従事者の所得確保・向上が求められています」と書いてありますが、その方策は、6次産業化や再生可能エネルギーの地産地消やそれの売却など書いていますが、肝心の農産物の再生産を保証する価格保障や所得補償についてはこの計画には何もでてきません。これはどういうことですか。
【知事】農林漁業対策についてですが、農林水産業従事者の経営の下支え対策として、国の個別所得保障モデル対策に加えて、野菜、花、豆類の価格低落時に補給金を交付する国や府独自の安定化対策をすでに実施している。そのうえで私たちは、そうした施策の改善を国に対して重ねて要望している。私たちはその上に立ち、農林水産業の従事者の所得向上にむけて、中期計画においては、農林水産物の付加価値を高めるとともに、農林水産業を基軸とした産業を活性化させるために施策を掲げており、こうして農林漁業者が安心して働ける環境の整備を目指している。
【新井】農林漁業者のみなさんが安心して働けるというのは、やはり再生産が保障されるという条件が整わないと「もう辞める」ということになる。現に今年も久御山町は今度の補正予算の中で、米価が暴落するもと、30㎏500円の上積みをするという制度を独自に行ないました。ここには農家のみなさんの、米価暴落に対して「このままでは続けられない」という悲鳴の声があるわけですから、ぜひ京都府としても農家のみなさんが安心できるようにするためにも、価格保障対策を検討していただきたい。
「自治基本条例」には「住民投票」と「府民の知る権利」を明記すべき
【新井】最後に、基本条例について伺います。本来、自治基本条例は、住民自治を発展させ、地方自治体の本来の役割をさらに発揮する方向を示すものでなければならないと考えます。ところが、基本条例案では、「自治の主役は府民」とは書いています。しかしその最大の保障になる住民投票について、府民参画を保障するというのならば、この住民投票の問題をどう扱うか、というのが大きな焦点です。全国的にはすでにその方向に進んでいますが、この点について、なぜ明記されていないのですか。
また、もう一点は、第5条で「府民への説明責任を果たす」としていますが、府民の知る権利の保障については、明記されていません。この点についていかがですか。
【知事】住民投票については、間接民主制を基本とした地方自治制度のなかで、十分議論を要するもので、とくに議会とこれから十分相談したうえで決めていかなければならないと考えており、それについては、その具体的な問題を含めて議論することが適切であると考えています。それから、権利、義務というものを書いていくのかということですけれども、権利、義務というものを書くということより、その前に府政の基本的な方向、方策、理念というものを書いていくということを今回の条例で提案しているということです。
【新井】住民投票というのは、地方自治の住民参画のさらに進んだ形として生まれてきている。だから北海道や神奈川県などでは明確に基本条例の中に明記している。そういう意味では、今後の議論だと言われたので、ぜひ積極的に受け止めて前向きに議論をしていきたいと申し上げて質問を終わります。
明日の京都特別委員会 知事総括質疑
山内よし子(日本共産党、京都市南区) 2010年12月9日
子育て家庭に対する経済的支援について
【山内】日本共産党の山内よし子です。私は、3点について質問します。
子どもの医療費助成制度 通院も小学校卒業まで対象拡大を
【山内】まず最初に子育て家庭に対する経済的支援についてです。
子どもの医療費の助成制度は、京都府内自治体でも独自助成が拡充し、現在では南丹市と伊根町が高校卒業まで通院も無料になりました。宮津市をはじめとする2市3町1村で中学卒業まで、福知山市など2市3町で小学校卒業まで無料です。一番遅れているのが京都市と京都府です。
今日の議論の中でも他党の委員が少子化対策を心配する声がありましたけれども、厚生労働省が今年1月に発表した2008年度の合計特殊出生率は1.37で、人口を維持するのに必要な2.08への回復は依然として困難で、たいへん厳しい状況が続いており、子育て世帯への経済的支援はまったなしです。
中期計画で拡充ということが掲げられていますが、この計画は4年~5年ということで、待ったなしですので、せめて通院についても小学校卒業まで対象を拡げるよう、来年度予算に盛り込むべきと考えますがいかがですか。
【知事】ただいま、ちょっとあまりにも事実とかけ離れたご発言がありましたので、各市町村の行っている子ども医療費助成の、私たちは基礎、財政負担をしておりますので、全てのところがそれに上乗せ、または、3歳までのところは我々の制度を使ってやっている。その上にやっているということですので、京都府が遅れているわけではなくて、京都府の上にどれだけ市町村が独自の制度を乗っけているかだけの話でありますので、その言い方は全く事実とは違うと思います。
なお、私どもの子ども医療費助成については、平成27年3月までの間に達成する目標や具体的な方策等を掲げているわけであり、施策の実施を先送りするものではありません。
【山内】全国的に見ても遅れているのですね。あるお母さんは「4歳になる子どもがぜん息で、夜中に発作を起こすと休日診療所に駆け込むが、医療費が1回3000円以上かかり、給料日前などは一瞬どうしようかと思ってしまう」と語ってくれました。この間大きな運動の中で、子どもからの保険証の取り上げをやめさせるという法改正が実現しましたが、さらに保険証があっても、経済的な理由で医療を受ける権利が侵害されないためには、子どもの医療費助成制度を国の制度として創設させると同時に、府として早急に小学校卒業まで対象を拡充されるよう要望して次の質問に移ります。
国民健康保険の一元化で、保険料は引き下げられるのか
【山内】次に国保一元化についてです。
今、国民健康保険と府民の健康をめぐって、一番深刻な問題は、年々保険料が引き上げられ、払いたくても払えない保険料になっていること、さらに滞納者に対する制裁が強化され、資格証明書や短期証が発行されて、医療にかかれずに手遅れになって重症化、あるいは死亡する方がおられることなど、国民健康保険制度が本来の社会保障の役割を果たしていないことです。
そしてその原因は、もともと高齢者や失業者、零細な自営業者が加入する、経営基盤の不安定な国保にたいして、1974年には国庫負担が最大58%あったものが、2008年度には24%へと大幅に削減されたことです。
知事はわが党の上原ゆみ子議員の代表質問の答弁で、市町村でバラバラの保険料を統一することがナショナルミニマムなんだとおっしゃいました。
あまりにも社会保障に対する認識が不足しているのではありませんか。
そこで伺いますが、国保一元化で保険料が下がって払える保険料になるのかどうか。また、資格証明書や短期証の発行がなくなり、安心して医療にかかれるようになるのかどうか。お答え下さい。
【知事】私が申し上げているのは、住む地域によって国保の料金が違っているというのは、ナショナルミニマムからしてどうであろうかということを申し上げたのです。
そして、国保の一元化というのは制度の安定性の確保を目的としています。私たちは財源については、知事会を通じて国に対して責任を果たすよう求めているところです。
【山内】ナショナルミニマムの意味をご存じないようで、憲法25条で保障された最低限度の健康で文化的な生活をおくる基準がナショナルミニマムなんですね。だから、全国統一の保険料を設定をしたら、それが達成できるのかというと、そうではないわけです。
それで、私の質問にちゃんと答えて頂きたいのですが、国保一元化で、保険料が下がって払えるようになるのですか。資格証明書や短期証の発行がなくなって、安心して医療にかかれるようになるのですか。お答えになっていないので、もう一度お答えください。
【知事】国保の一元化の目的を勘違いされているんですが、国保の一元化の目的は、制度の安定性と、できるだけ公平性を保つことです。
ですから、どうやってみんな保険料を払えるようになるか、これは、私はナショナルミニマムとして国に対して責任ある財源の調達、財源の適切な確保を求めているところであります。
国保一元化ではなく、国庫負担を抜本的に増額することこそ必要
【山内】質問を事前に通告してありますので、きちんと答弁をして頂きたいと思うのですが、保険料を払ったら、最低限度の生活がおくれないというような状況が続いているわけです。安心して医療にかかれない。生活ができないという状況があるということが大きな問題で、市町村ごとに医療資源も医療サービスも違うんです。国保加入者の状況も違います。保険料がバラバラなのが問題ではなく、高くて払えない保険料になっていることが問題なのです。
国の「広域化支援方針策定要領」をみると、「保険料を上げないようにするために一般会計から自治体が繰り入れを行う場合がある」と自治体の努力を問題視し、こうしたことをなくすために一元化を行うんだというふうにおっしゃっています。ここには医療難民といわれる人々、高い国保料を食費を削って支払っている人々、保険証を取り上げられた人々の命と健康をどのように守るのか、憲法25条に掲げられた生存権をどのように保障していくのかという観点が全くないのです。
知事は市町村の繰り入れは住民負担だとおっしゃいました。市町村の繰り入れの財源は税金です。福祉のために税金を投入することを否定する議論で、税の所得再配分機能を否定するものです。
一元化については京都府や大阪府など4府県のみ賛成で、兵庫の知事からは「広域化で問題は解決しない」と構想を根本から否定する意見がよせられ、29県が反対しています。
国の方針通り一般会計からの繰り入れをなくせば、保険料は大幅に値上げになり、京都では1世帯約1万円の値上げになります。そして繰入金を財源として行っている保険料や医療費の窓口負担の減額免除の制度もなくなってしまいます。
国保一元化ではなく、国庫負担を抜本的に増額することが必要と考えますがいかがですか。
【知事】山内議員は先ほどの私の答弁を全く聞いていらっしゃらないみたいなのですけれども、私はずっと、財政的な責任は国にあると言っているわけです。それがナショナルミニマムだと。市町村が財政的責任を果たすということがナショナルミニマムだというふうに山内委員は考えていらっしゃるようですが、私は国が果たすべきだと言っているわけです。
そしてそれを制度的に安定するためには、市町村ごとにバラバラにやっているのではなくて、都道府県単位なり、なんなりでやっていくことが安定化のために必要だと言っているので、よく答弁を聞いて頂きたいと思います。あくまで、これはナショナルミニマムとして国が責任を果たすべきものであるということを申しあげているわけです。
中期計画には「保険料を引き下げ滞納者をゼロにする」こと、「資格書・短期証発行やめる」ことを掲げよ
【山内】今年の7月に、厚労省国保課長が講演をされているのですが、確かに、「保険料を上げる責任から市町村は解放される」と言っているのですが、「広域化を進めるためには保険料を上げていくという必要があるということを住民や議会に説明をしていく必要があるかもしれない」と言っているわけです。また「市町村によっては保険料が大幅に上がったりという大きな変動が生じるので、明日から一気にというわけにはいかない」というふうに言っているのです。
今でも払えない国民健康保険料が上がるということを、全部、国は想定して、今、国保の一元化に向けて走っているわけです。
国保一元化は社会保障である国民健康保険に対する国の責任を棚上げし、さらに自治体の一般会計からの繰り入れをなくして「平準化」の名の下に、国保料を値上げし、ますます住民に負担を押しつけるものです。中期計画には保険料を引き下げて滞納者をゼロにすること、命まで奪いかねない資格証明書や短期証の発行をやめることこそ掲げるべきではありませんか。もう一度お答え下さい。
【知事】もう一回申し上げますが、私は国ではありませんので、都道府県知事でありまして、国に対しては今の制度の改正では不十分だと、知事会を通じて今、文句をいっている立場でありますので、そして、国に対して抜本的な財政責任を果たすように求めている立場でありますので、その点はお含みおき頂きたいと思います。
【山内】京都と大阪など4府県が賛成ということで、京都府の知事は国保の一元化に賛成をするということですけれども、「国保の一元化のバス」に乗って、それで国庫負担を増やせということをおっしゃっているわけですよ。しかし、「国保一元化のバス」の行き先というのは、国庫負担の削減と住民負担の増なんですね。ですから、そこから降りて、そのバスの前に立ちはだかって「社会保障を守れ」と、「国庫負担を増額せよ」、「保険料を低くせよ」ということを声を大にして言って頂きたいというふうに思います。
高校生への修学支援について
【山内】次に高校生への修学支援についてです。
計画にも、修学支援制度を拡充するというふうに掲げられていますが、今年度から公立高校の授業料が不徴収になりました。全日本高等学校教職員組合の調査では、それでもなお、全日制で約19万円、定時制では約10万円の保護者負担が残っています。
本府においても昨年度は経済的な理由で70名の生徒が修学旅行に行けなかったと伺っています。
修学旅行への支援制度も含め、高校生への就学援助制度の創設が必要と考えますがいかがですか。
さらに、現行制度の運用に当たって、質問します。
京都市内に住むBさんの子どもさんは修学支援金を借りて、私学に行きました。しかし在学中に難病になり、厳しい入退院を繰り返し、残念ながら卒業した年の5月に亡くなられました。
修学支援事業については、条例の第6条で「修学資金の貸与を受けたものが死亡または心身の著しい障害により、修学資金を返還することができなくなった時に」免除ができると規定しています。
ところが免除申請は却下され、さらに連帯保証人である父親に請求がくる、父親に支払い能力がないと分かると今度は、相続人のお母さんに請求がくる、お母さんが払えないと、こんどは下の子どもさんが公立高校に合格したが、修学支援金の貸付が受けられないという制裁的な措置がなされました。あまりにもひどいやり方でこうしたことは改めるべきと考えるがいかがか。
【教育長】高校生に対する就学援助制度の創設について、経済的な理由で修学を断念することのないよう、京都府では無利子で貸与する「高校生等修学支援事業」等、全国でもトップクラスの援助制度を設けるとともに、国に対しては、給付型の奨学金制度の創設を提案しているところです。
今後のこうした国における動向を注視するとともに、地方の実情に応じたものとなるように引き続き働きかけてまいりたいと考えています。
中期計画については、こうした中で、高校生に対する修学支援制度等をどのような形で充実していくかは、今後の課題であろうと考えています。
次に、修学支援事業の返還について、いま委員ご紹介の例など、貸与を受けた生徒が死亡した場合などは、民法等の法令もふまえて、保護者の状況も判断して免除の可否を決定しているところです。
この制度は、返還金によりまして、次の修学支援が維持できるものであり、未納が継続している方からさらに貸付の申請がありました場合等については、一時的に貸付を保留して状況を調査しているものであり、決して制裁的な措置をとったというものではございません。
今後とも、そうした制度について周知を図るとともに、個別の相談に丁寧に応じるなど、一人ひとりの状況に応じた修学の支援に努めてまいりたいと考えています。
【山内】その方の場合は、難病になって、長い間の入退院ということで、親御さんが付き添って、経済的にも本当に困窮を極めたわけです。それでも免除の申請が却下をされたということで、きちっとこれは把握をして頂いて、条例にきちんと書いてあるわけですから、免除するべき人は、ちゃんと免除するということをやって頂きたいと思います。
あわせて今、学校を卒業しても就職ができない場合や、就職できても低賃金で不安定な職業につかざるをえない場合もあります。そうした場合にはせめて住民税非課税の場合には、返還の免除や猶予を行うということを検討すべきと思いますが、いかがですか。
【教育長】いわゆる、卒業後の返還猶予については、高校卒業後は半年間、返還を据え置いていますし、それから、大学等に在学中の場合や返還が著しく困難な場合は、状況に応じて猶予を行うとともに、負担軽減のため最長20年の返還期間とするなど、ゆとりのある制度としているところであります。
長期ビジョンや中期計画の「まなびの安心」にも教育機会の確保ということを位置付けておりますので、今後とも生徒が経済的理由で修学を断念することのないよう、個別の状況に応じて丁寧に対応するとともに、総合的な支援に努めてまいりたいと考えています。
【山内】教育委員会は、高校生の就職問題でも、本当にいろいろとご苦労されて、子どもたちがちゃんとした職業に就けるのかどうかということも非常に頑張ってやっているわけです。そういう点では、今の状況の中で、なかなか安定した職業につけないという場合もありますので、そういう場合の猶予等もぜひ検討して頂きたいと思いますし、条例ではその趣旨について、教育の機会均等を図り、もって社会の発展に寄与する人材の育成に資するとあります。憲法で保障された教育権を保障し、さらに現在の若者の就職難、貧困化の状況を考えれば、修学資金の返還免除制度を拡充することもふくめて、修学支援事業を拡充されるよう要望して私の質問を終わります。
《他会派質問項目》
2010年12月9日
■巽昭(自民・京丹後市)
1 地域振興計画について
2 丹後地域の産業振興について(観・環・農・携について)
3 高速道路整備について
4 食の王国構想の「あじわいの郷」の整備について
■石田宗久(自民・京都市左京区)
1 温暖化防止対策について
2 子育て支援について
3 教育問題(少人数教育)について
■多賀久雄(自民・宮津市及び与謝郡)
1 策定に当たっての基本的な考え方について
2 府域の均衡ある発展について
3 生活と産業を支える基盤の整備について
■中島則明(民主・舞鶴市)
1 新府総の総括について
2 基本条例について
3 「明日の京都」の推進について
■田中健志(民主・京都市中京区)
1 子育て・子育ちの安心について
2 スポーツの振興について
■林正樹(公明・京都市山科区)
1「明日の京都」に対する評価について知事
2 青少年の健全育成について関係理事者
3 地域と観光の振興について
■岡本忠藏(創生・舞鶴市)
1 中期計画の数値目標について
2 中丹地域医療再生計画について
京都府長期計画「明日の京都」で、府民の暮らしと京都に明日が開けるのか?
―「明日の京都」に対する日本共産党府会議員団の見解
2010年11月 日本共産党京都府会議員団
京都府はこれまでの10年単位の「総合計画」にかわる京都府の長期計画・「明日の京都」(中間案)を作成し、府民意見の募集や府議会での審議などを行い、11月定例議会で決定しようとしている。
「明日の京都」は、「普遍的な行政運営の基本理念や原則等を示す『基本条例』」「めざす将来(10年~20年後)の京都府社会の姿を示す『長期ビジョン』」「それにむかう4~5年の戦略を示す『中期計画』」「地域資源を活かして特色ある地域振興を進めるための『地域振興計画』」の4つの構成となっている。
これらが京都府と府民が直面する諸課題に適切に対処し、京都府と府民の「明日」を開くものとなるかどうか、日本共産党府会議員団としての見解を明らかにするものである。
1、「新京都府総合計画」のもと、府民の暮らしと地域、地方自治を壊してきた10年。
①「明日の京都」は、これまでの「総合計画」にかわる長期計画として定めるとしているが、「新京都府総合計画」(2001年~2010年)の結果、府民の暮らし、地域経済、市町村は、今どうなっているかの現状分析も、総括もまったくなされていない。
「新京都府総合計画」は、2010年をめざして「むすびあい、ともにひらく新世紀・京都」と題し、「一人一人が生き生きと暮らせる社会」「たくましい地域経済のもとで持続可能な発展をめざす社会」「ゆたかな社会基盤が支える快適でうるおいある社会」「文化・学術を創造し、世界に発信する社会」「人と自然が共生する循環型社会」をめざすとされ、丹後リゾート公園や舞鶴和田埠頭の建設、エコートピア京都三和工業団地、関西学術研究都市開発、福田川ダム、南丹ダム、畑川ダムの建設などが盛り込まれた。南丹ダムや福田川ダム等の計画は、破たんするなど一部中止に追い込まれたが、多額の府民の税金を使って公共投資が行われてきた。
その結果、府の借金残高は、計画策定年次(2000年度末)に一般会計府債残高は1兆542億9700万円余(一般会計比122・1%)であったが、2010年度末1兆6597億3400万円余(一般会計比187・5%)へと6054億円(1・57倍)も増えているのである。
この10年間、この計画に基づいて本府の施策が行われ、「借金」も大きく増やしてきたが、その結果、府民の暮らし、地域経済がどうなったのか、現状分析も、総括もまったくあきらかにされていないのである。これでは、「無責任」な行政運営と言わなければならない。
②この10年間は、政府の「構造改革路線」とそれに「同感だ」とする山田知事のもとで、地域経済も府民の暮らしも深刻な事態に落ち込んできた。さらに、「地方分権改革」の名ですすめられた「市町村合併」や「行政改革」により、地方自治体の暮らしと福祉、地域を守る機能が失われ、病院や診療所の縮小・廃止、国民健康保険証の取り上げなど、住民の命すら守れない事態が生まれている。
いま、求められているのは、破壊された地域経済と府民の暮らし、ふるさとの再生であり、地方自治・住民自治の再生の「計画」である。
2、「基本条例」について
①「基本条例」制定の目的は何なのか。
すでに北海道や神奈川県をはじめ、多くの自治体で「自治基本条例」が制定されている。これらの「自治基本条例」は、「住民自治をどう具体化するか」を定めることを基本としており、全国でもっとも早く作られた北海道・ニセコ町の条例には住民投票が盛り込まれ全国から注目された。「自治基本条例」には、「市民の権利」として「生活権」「参加権」「情報公開請求権」などを規定しているものが多く制定されている。
このように、本来、「自治基本条例」は、憲法と地方自治法をもとに、地方自治の本旨である「住民の福祉の増進」を目的とし、団体自治とともに住民自治をそれぞれの地方自治体でどう具体化するか、を定めることが求められているのである。
ところが、京都府の「基本条例」なるものは、抽象的な理念をならべ、知事並びに行政執行機関の行政運営の「心得」ともいうべきものを「上から目線」で書いているにすぎず、これでは、府民が共有できる「自治基本条例」とはいえない。
②地方自治の本来の目標が抽象化され、あいまいにされている
「基本条例」は、「府政は、府政運営及び地域づくりが次に掲げる基本的考え方(「基本理念」)にもとづきすすめられるように行うもの」として、「府民同士が尊重し合い、つながり、支え合う、人にやさしい社会を実現」「地域の魅力を高め合う自立した社会の実現」「府・市町村、府民、民間団体がともにその役割と特性を生かして、地域の課題を解決するための活動が豊かに展開される社会を実現」としている。
ここには、地方自治体の本来の役割「住民の福祉の増進を図る」こと、具体的には憲法に定められた生存権や幸福追求権、教育を受ける権利、働く権利など、「住民の福祉の増進」にかかわることは何ら明らかにされていない。
そのうえ、それらの課題の解決は「府民同士」や「自立した地域」により実現できるとされている。これは、府民と地域の「自己責任」で解決することを求めるものである。
さらに、「府・市町村、府民、民間団体等が役割と特性をいかして、連携及び協働をし、地域の課題を解決する」としており、これまで府が果たしてきた公的な役割を、市町村や「民間団体等」、すなわちNPOなどのボランティア団体、さらには営利を目的とする経済団体に「民間委託」するなどして、府の公的な役割を縮小しようとするものである。
これは、鳩山前首相の昨年9月の所信表明演説と同じ内容をもつものである。鳩山前首相は「私がめざしたいのは、人と人が支え合い、役に立ちあう『新しい公共』の概念です。『新しい公共』とは、人を支えるという役割を、『官』と言われる人たちだけで担うのではなく、教育や子育て、街づくり、防犯や防災、医療や福祉など地域でかかわっておられる方々一人一人にも参加していただき、それを社会全体で応援しようという新しい価値観です」とのべ、「市民やNPOの活動を側面から支援していくことこそが21世紀の政治の役割だ」と述べている。
基本条例にあるのは、この鳩山演説と同じように、これからの地方自治体の役割を、縮小し、市民やNPOの活動を側面から支援する役割にとどめ、公務を民間企業の営利活動の対象にしようとするものである。
③「自治の主役は府民」はほど遠く、「住民自治」の権利保障はなし
「自治の主役は府民」としているが、住民の府政への参画を保障するものとはなっていない。
一つは、すでに基本条例を作った多くの自治体では「住民投票」について定めているように、住民自治を保障するうえで、重要な課題については「住民投票で決める」というのは当然のことである。ところが、京都府の「基本条例」には、この住民投票についてなんら定めていない。
二つには、府政に関する情報について、「多様な方法で、かつ分かりやすい形で積極的に提供」としている。しかし、住民自治の基本は、住民の側に「知る権利」があり、これを保障する責任が行政の側にある。「基本条例」では、これが行政の側の努力規定にとどまっている。
このように、「自治の主役は府民」と書きながら、その府民の知る権利や決定に参画する権利の保障は、何ら明記されていないのである。
3、「長期ビジョン」について
①特異な時代認識の押し付けによる「自己責任」論
「長期ビジョン」は、現在の社会を「『量』から『質』の時代へ、『もの』の豊かさを追い求めた時代から、人と人のきずなを結び、すべてのものを思いやる、『こころ』の豊かさを求める時代へと向かう歴史的な転換点」としている。
一つは、これは、まったく府民の暮らしとかけ離れていることである。今日、安心して医療や介護が受けられない人たち、失業し、路頭に放り出された人たち、倒産・廃業の危機に直面している多くの業者、住み続けることのできない農山村に暮らす人々等々、こうした多くの府民に「『もの』の豊かさを追い求めるな、『こころ』のゆたかさこそ大事だ」と言い、こうした人々のいのちと暮らし、営業を支える自治体本来の役割を投げ捨てようとするものである。
また、『多くの人々が日々の暮らしに不安を感じ、将来を見通すことができず、社会全体に閉塞感のようなものが漂っています』としているが、なぜ、こうした事態が生まれているのか、何ら原因の分析がされていない。
二つには、知事が講演で、高度成長政策等により「『世界有数のナショナルミニマムを達成した』、これからは『自分で働いて、自分の足で立ってやってください。国は一定の役割を地方に対しては果たしましたよ。』と言わなければならない。」(平成20年7月の内外情勢調査会)と述べているのと同様の考えである。これはなにも山田知事だけの考えではなく、地方分権改革推進会議などでも「ナショナルミニマムはすでに多くの行政分野で達成している」との認識で、今後は、それぞれの地域の「自己責任」で「最適水準」を(「ローカルオプティマム」)定めるべきであるとするものである。ここには憲法が定めた国の責任・役割を放棄し、「地域のことは地域で決める」として、「財源確保も地域の責任。最適水準を高くすれば負担も高くなるのは当然で、自己責任」とするものである。これは、財界が狙う憲法が定めた社会保障や教育など「国の役割」放棄と一体のものである。
「ビジョン」は、「新しい『質』と『こころ』の時代にふさわしい生き方や暮らし方、人と自然のかかわり方や持続可能な経済のあり方を自ら実践し、世界に示していくことが期待されています」とし、「『質』と『こころ』の時代を先導し、世界に発信し貢献する新しい京都の実現に向かって進んでいきたい」としている。このように府民の暮らしや地域経済の深刻な事態をどう切り開くかの展望はなんら示せない「ビジョン」となっている。
4、「中期計画」について
「中期計画」は、「『長期ビジョン』でめざす京都府社会の姿に向かうための中期(~平成27年3月まで)の京都府の基本戦略を目的別に体系化」したものとされている。
「計画」では、「府民安心の再構築」「地域共生の実現」「京都力の発揮」の3分野で、多くの項目が挙げられている。これらの中には、府民の切実な願いにこたえた項目も含まれてはいるが、見過ごすことのできない多くの問題点がある。
第一は、府民の暮らしを守る施策を後退させ、府民に新たな負担を押しつける計画が含まれていることである。
住民の医療を受ける権利を保障する最後の砦ともいうべき市町村国保の「広域化」計画は、国の助成金削減を容認し、市町村一般会計からの繰り入れの負担をなくし、保険料の引き上げ押し付け、皆保険制度の崩壊を進めるものである。
また、「税機構」による徴税の共同化だけでなく「課税業務の共同化」や「クレジット納付」などが挙げられている。これは市町村の総合行政を壊し、納税者・住民の権利を侵害するものである。さらに「クレジット納付」で、借金をさせてでも税金を払わせようとするものである。
「中期計画を推進するために」の項では、「600億円の行財政改革の実施」を掲げ、府民サービスの第一線で働く府職員のひきつづく削減や生活保護世帯や難病患者への一方的な見舞金の廃止のように、「事業見直し」によって弱い立場の人々への施策の打ち切りが進められようとしている。
第二は、府民の暮らしと地域を守る上で、重要な課題が置き去りにされている計画である。
いま、府民にとってきわめて重要な課題となっている「雇用」対策では、不安定雇用をどう解消するのか、何らふれず、「常用雇用化の支援」としているが、これは期間工や契約社員、パートなど不安定雇用を含む「常用雇用」の支援にとどめている。また、これまで不安定雇用拡大の口実になってきた「多様な働き方の導入推進」もかかげている。
「中小企業支援」でも、「高度化や人材育成、技術開発」「産学公連携による研究・技術開発」「中国において試作やエコ、ウエルネスの販路開拓」など、先端技術や新産業などへの支援に限られており、「成果目標」で「倒産・廃業が減ること」としながら、「実現目標」では、「設定水準」「数値目標」は「保留」とされている。本当に、倒産や廃業を減らすというのなら倒産、廃業に追い込まれる中小企業に対する固定費への支援や、大企業による下請け切り、単価切り下げをやめさせるための、効果ある対策こそ求められている。
農林漁業においても、「農業就業人口の減少と、全国を上回る高齢化が進行」としながら、その最大の要因である「再生産すら保障されない」農林水産物の価格対策についてはまったくふれられていない。
第三に、府民の切実な願いにこたえて課題としてあげながら、その具体化を極めてあいまいにした「計画」である。
子どもの医療助成制度の拡充も掲げられているが、その助成対象年齢や実施時期については、なんら示さず、また、「社会的に弱い立場の方などへの医療費助成制度の拡充」とされているが、65歳から69歳までの高齢者の医療費負担を1割に据え置くことや 難病患者の「療養見舞金」の復活などは明記されていない。
また、「24時間医療サービスがより安心して受けられるようになること」を成果目標に掲げているが、北部地域の救命救急の体制や南丹地域や山城地域においても医師不足が極めて深刻になっていることにどう対処するのか、極めて不十分となっている。
このように、「新京都府総合計画」の総括もされず、「長期ビジョン」において、「心の豊かさを求める時代へ向かう歴史的転換点」という特異な時代認識が土台となっているため、「中期計画」は府民の暮らしと地域経済を再生させる計画とは、ほど遠いものである。
5、「地域振興計画」について
山城・南丹・中丹・丹後のそれぞれの「地域振興計画」には、これまで取り組まれてきている地域のとりくみや課題が列挙されている。これらが、真に地域振興に役立つものとなるかどうかは、それぞれの課題について、住民の参加を保障し、住民の意見を反映すること、さらには、財政的保障を行うことなどが求められる。
いま、地域経済と地方自治は深刻な危機のもとにある。第一には、「構造改革」「規制緩和」によって住民の福祉と暮らしが破壊され、中小企業、地場産業、農林漁業など地域経済を衰退させてきた。第二に、この間進められてきた「地方分権改革」で地方自治体のまともな機能を破壊してきた。こうした事態のもとで、京都府に求められているのは、住民のいのちと暮らし、地域経済を守るために、その役割を発揮することであり、そうしてこそ府民にとっての「明日の京都」を切り開くことができる。ところが京都府がいま作ろうとしている「明日の京都」の「基本条例」や「長期ビジョン」、「中期計画」は、こうした地方自治体の本来の役割を投げ捨てる方向に進もうとするものである。
わが党議員団は、府民のみなさんと力を合わせ、憲法と地方自治をいかし、暮らしと地域・ふるさとの再生のため奮闘するものである。
以上