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政策と見解

「京都府児童ポルノの規制等に関する条例」について(見解)

2011/10/12 更新
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2011年10月12日

日本共産党京都府会議員団

 2011年9月定例議会に、「京都府児童ポルノの規制等に関する条例案」が提案され、我が党議員団以外の賛成多数で成立しました。
 我が党議員団は、子どもを性的対象とする児童ポルノは、子どもにたいする最悪の虐待行為であり、その非人間的な行為を絶対に容認することはできず、一人の被害者も出さない社会をつくりだすことは、大人社会の重大な責任であると考えます。
 また、現行法制の元で、児童ポルノそのものの作成・流通・販売と提供を目的とした所特については禁止されており、インターネットなどで出回っている大量の児童ポルノは現行法を厳格に運用することによってなくす必要があります。
 しかし、今回の条例は児童ポルノの単純所持を規制し、刑事罰まで設けようとするもので、我が党議員団は大きな問題をはらんでいるとして反対しました。
 その理由は第1に、「児童ポルノの定義」が曖昧であるためです。
 条例案2条には「児童ポルノの定義」が規定されています。そこには「衣服の全部または一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ、または刺激するもの」という法律で使用されているあいまいな定義が含まれています。被写体となる児童の人権をまもることは当然ですが、一般的な写真や芸術作品など、見る側の「主観」によって禁止や規制対象となることがあってはなりません。
 また、廃棄命令や刑事罰を伴う児童ポルノの定義については、全裸などとしていますが、全裸の幼児期の成長の記録などについては、対象とならない保証はありません。
 京都弁護士会の本条例案に対する意見書にも「罰則を伴う規制法制については、罪刑法定主義の観点から規制対象が明確に定められる必要がある」と指摘されています。

 反対の理由の第2は、単純所持を規制することにより、人権侵害の危険やえん罪の可能性があるためです。
 委員会質疑で「単純所持」について、「警察からの情報提供を得て所持が確実な人を対象として調査」するという答弁かおり、また立入調査を拒否しても「罰則がない」等が示されたものの、「立ち入り調査を拒否できる」ことをどのように伝えるのかについては、一切答弁できませんでした。これでは「任意の立入調査」だとしながら、「所持が確実だ」と最初から疑ってかかり、実質的な捜索が行われる危険性があります。
 また、立入調査の際に「その他関係者にも質問させ、必要な資料の提出を求めさせることができる」こととなっており、審議の中で「その他関係者」とは、「立入調査に必要な場合、職場の上司や雇用主、家主や家族、またそれ以外の関係者も含み、だれにでも質問したり、資料の提出を求めることができる」こと、さらに立ち入る場所については「本人の部屋だけではなく、家族の部屋や職場、本人以外が所有するパソコンなども調査の対象になる」ことが明らかとなりました。これでは、「児童ポルノを所持している疑いをもたれている」ことが家族や職場の同僚や上司にさらには調査に必要ならばだれにでも知られてしまいます。
 調査権や捜査権の乱用の恐れという点でも、個人情報保護の点からも大きな問題であり、大変な人権侵害を引き起こす恐れがあります。
 同時に、存在の証明は比較的容易にできますが、「不存在」の証明は非常に困難で、どこまで徹底的に調査するのか、その歯止めもありません。
 また「廃棄命令」についても、送りつけられたメールに添付されていた児童ポルノ画像や、荷物の中に忍び込まされていた写真などを知らない間に所持していた場合、その根拠を求められても証明は困難であり、誤った「廃棄命令」を受けてしまう可能性があります。これにより、それだけでいわれのない社会的制裁を受ける可能性があります。

 反対の理由の第3は、恣意的な運用がなされる危険があるためです。
 条例案では「児童ポルノを所持・保管していると見られるもの」に対しては立入調査を行うとしています。しかし、インターネットなどによる児童ポルノの流出は、画像を所持した人物を特定することは大変困難です。京都弁護士会の意見書でも「立入調査に名を借りて恣意的に事実上の捜索が行われる危険性すらあり、いたずらに市民生活の平穏を乱す恐れかおる」と警鐘をならしています。
 また、本条例の成立過程について、条例案の骨子がホームページに掲載されたのが7月で、条例案が示されたのが9月の本会議開会の直前でした。これだけ重要な問題は、まだまだ府民的な議論が不十分であり、慎重な審議こそ求められていたものです。
 本府がやるべき事は児童ポルノによる被害児童を1人も生まないため、情報リテラシー教育や性教育、府民への広報啓発などに努力すること、さらに被害児童の支援体制を強化し、人的体制を強化することです。我が党議員団は、児童ポルノの根絶のため力を尽くすものです。

以上