府政報告 2011 12年9月定例会を終えて
●9月定例府議会が10月5日に閉会しました。「2012年9月定例議会を終えて」団長談話を紹介します。
2012年9月定例議会を終えて
2012年10月11日
日本共産党京都府会議員団
団長 前窪 義由紀
9月19日から開かれていた定例議会が10月5日閉会した。
本府議会は、民主党代表選挙や自民党総裁選挙後の民自公による政治の暴走が際立つ中、原発ゼロやオスプレイ配備強行反対など、国民的な運動の広がりの中で開かれた。また、8月に京都府南部を襲った豪雨災害への対応も問われた。まさに、日本の進路や自治体の在り方が問われる議会となった。
我が党議員団は、開会日前日の18日に、「京都府政の今日をどう見るか」「高校教育と入試制度のあり方について府民的な議論をよびかけます」の二つのアピールを発表するとともに、暮らしを守り、住民自治を生かす自治体の役割発揮を求めるとともに、国政の重要問題で日本の進路を問う論戦を行った。
1、9月定例議会に提案された23議案のうち、第1号議案「平成24年度京都府一般会計補正予算(第2号)」および第5号議案「大規模な災害の被災者にかかる手数料等の減免のための関係条例の整備に関する条例の制定の件」は、京都府南部豪雨災害の救援・復興に関するもので、開会日に審議し採決され我が党議員団は賛成した。
8月13日から14日未明にかけて発生した豪雨災害は、甚大な被害をもたらした。我が党議員団は災害発生当日から直ちに被災地域に入り、市町村議員団と連携して被害実態の調査、被災者の皆さんの要望の聞き取り、ボランティアを組織するなど取り組むとともに、二度にわたり知事に申し入れ、各委員会で施策の具体化を求めた。その結果、国制度の対象とならない地域や床上浸水等も対象とする住宅再建への府独自の補助金制度も盛り込まれることとなった。
その後、代表質問や一般質問でも、南部豪雨災害について質した。二度にわたり決壊した弥陀次郎川について、天井川部分の改修だけでも完成年度が平成36年と先送りされるなど、河川改修費が大幅に削減されてきた結果、河川整備率は全国42位となっており、改修計画そのものの抜本的見直しを求めた。また宇治土木事務所を廃止・統合したため、技術職員だけでも49名削減され、今回の初動対応に問題を残した教訓を踏まえ、その責任と土木事務所の再配置や体制強化を求めた。このほか①河川・道路の復旧、安全対策②山林崩落・土砂崩れ対策③被災者の生活再建、農業、中小企業等への支援④災害情報伝達システムの確立等を求めた。
2、初日に採択された2議案および決算特別委員会に付託される5議案以外の16議案のうち、第8号議案「京都府国民健康保険調整交付金の交付に関する条例一部改正の件」、第10号議案「京都府立少年自然の家条例一部改正の件」、第15号議案「1級河川畑川河川総合開発工事請負契約変更の件」の3件に反対し、人事案件も含む13議案に賛成した。
第2号議案「平成24年度京都府一般会計補正予算(第3号)」には、府民的な運動と我が党議員団が求めてきた住宅耐震化への補助戸数を増やすことや、亀岡で発生した事故を踏まえ、通学路の安全対策等事業費が盛り込まれ賛成したが、予算中の「植物園北山通活性化事業費」には反対した。これは、府立植物園の一部にカフェショップを一カ所開設するための整備予算8000万円である。
そもそも、植物園は公立博物館法に位置付けられた専門機関であり、国内で最多の保有植物種類、最も長い歴史をもつ公立植物園として、府民の貴重な宝である。ところが、エンターテイメント性ばかりをすすめる計画となっていることは重大である。審議を通じ、当初の「植物園の整備計画」にはなかったにもかかわらず、カフェショップを北山通り沿いに三カ所募集を行うなど、府民的に知らされないままトップダウンで計画変更が行われたことが明らかとなった。しかも応募がなかったため、年間使用料を当初設定の約半額に引き下げるなど、極めて杜撰なものである。このため、他会派議員からも「アミューズメント化が、トップダウンでやられているような気がする。大木を伐採するなどせず、植物園の本来の魅力を生かしたものにすべき。財政優先ではいけない」とする厳しい指摘も出された。
第8号議案「京都府国民健康保険調整交付金の交付に関する条例一部改正の件」は国民健康保険法の改正により、都道府県調整交付金を7%から9%に増額する一方、定率国庫負担を34%から32%へ減額するものである。調整交付金の増額分は給付費を都道府県単位で負担し合うしくみを強化し、都道府県単位の国保一元化をおし進めるものである。しかもその財源は「年少扶養控除の廃止」にともなう地方税増収分である。定率国庫負担の削減は市町村国保をいっそう困難に追いやるものである。国庫負担は抜本的な引き上げが必要である。
10号議案「京都府立少年自然の家条例一部改正の件」は、府域に二カ所しかない府立の宿泊型社会教育施設の一つである府立南山城少年自然の家を廃止するものである。現在も、府南部地域の小・中・高校の集団宿泊体験や、障害児・不登校傾向にある児童・生徒のためのキャンプ体験など、府内の学校や子どもたちにとってかけがえのない役割を果たすとともに、スポーツ少年団や大学・社会人のスポーツクラブなどの利用も増加しており、「他の施設では替えがたい。ぜひ残してほしい」と、廃止に反対する強い声が上がっている。その施設を、府や教育委員会が「廃止」の結論ありきで、財政と効率を最優先で切りすてるやり方は、あまりにも乱暴である。
第15号議案「1級河川畑川河川総合開発工事請負契約変更の件」は、畑川ダム本体工事で「想定外のもろい地層が出てきた」として、追加工事3億6000万円を計上したものである。我が党議員団は、計画当初から「ダム建設ありき」の過大な人口予測・水需要予測にもとづくもので、治水対策も河川改修で十分に対応でき、さらに莫大な地元負担増を招くものであるとして、一貫して反対してきた。今回の契約変更は、2003年に予定地に断層が発見され、計画変更により40億円の事業費が77億円へと2倍近くにふくれあがったことに続くもので、計画の杜撰さが浮き彫りとなったもので反対した。
なお、東日本大震災の被災地への支援金を議員報酬から支援する条例が今年度いっぱいまで延長されることとなった。
3、我が党議員団は、今夏そろって避難区域解除準備区域となっている福島県南相馬市小高区に調査に入るとともに、福島県議団と懇談し、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故以後の現地の実情と闘いについて聞き取り、それをもとに、大飯原発再稼働やエネルギー政策の転換を求めた。
知事は、政府が閣議決定すらできない「2030年代に原発ゼロが可能となるようなあらゆる政策資源を投入する」(革新的エネルギー環境戦略)という立場を述べた。また知事は「関西においてはこの夏の電力需給を十分に見て、その中で必要性があるかないかを判断することになると思いますけれども、今、私はその機運にはないというふうに判断をしている。」と述べた。これは大飯原発の稼働停止を求めず、原発ゼロに向けた府民の願いに背を向けるものであり、ましてや本府議会に報告された「関西電力管内における今夏の電力需給実績等の検証について」(関西広域連合エネルギー検討会 電力需給等検討プロジェクトチームの報告概要)ですら、原発を稼働しなくても電力は足りていたと述べており、原発依存の姿勢は、極めて重大である。
4、我が党議員団は、中小企業関係団体や京都府保険医協会との懇談を踏まえ、いっそう深刻となる京都経済の実情を示すとともに、消費税増税と社会保障制度改革推進法について、知事の認識を質した。
知事は消費税税率の引き上げについて「問題は使い方」と増税の必要性を述べた上で「国民の理解を得ること、そのために徹底した行財政改革と地方分権改革を進めること、この立場からするとマイナンバー法案が継続審議になったことは、私は非常に残念なことだと思っております。」と答弁した。これは、社会保障給付の引き下げや医療の市場化につながる社会保障抑制策をすすめ、さらに国が国民の管理及び税の捕捉・徴税強化を進めることを目的に提案されている法案の実現を迫るもので、社会保障構造改革をいっそう進めるものである。この立場から社会保障解体宣言である社会保障制度改革推進法にもとづく今後の具体化について「いっそう提起していく」と述べたことは重大である。
一方、府北部で除雪ができる業者が倒産等でなくなる危機感から、公共事業等の最低制限価格の引き上げを厳しく求め、また府中部の疲弊する地域の実情や有害鳥獣の深刻さ等について、改善をもとめる質問が自民党から出されるなど、広がる厳しい現実に、府民の叫びが各地から噴出していることも、改めて浮き彫りとなった。我が党議員団は、与謝野町がまちぐるみ、住民ぐるみで作り上げた中小企業振興基本条例の例や、新たに久御山町が同条例制定を目指していることなどを示し、中小企業振興基本条例の制定をはじめ地域循環型の経済対策への転換を迫った。知事は、「中小企業おうえん条例は、さまざまな応援体制をとるなど、二月議会で抜本的に改めた」と答えたが、力のある企業を応援する条例の性格は変わっておらず、呼び込み型経済対策の転換がいよいよ求められる段階となっている。
5、府立与謝の海病院の法人化・附属病院化について、9月23日に地元社会保障推進協議会と府職員労働組合連合との共催で開かれた「丹後・与謝の地域医療と与謝の海病院を考える懇談会」や、また住民アンケートや開業医・地区医師会の訪問調査等を踏まえ、住民や医療機関への説明も極めて不十分で、北部医療全体のビジョンも示さず、附属病院化されたあとの病院の在り方も責任も明らかでない等から計画撤回を求めた。
知事は「基本的に住民に影響を与えることはございません。これは断言させていただきます。」と述べ、さらに「これからの医療のあり方につきましても、やはり、与謝の海病院単独で高度医療をどれだけできるか。それは二重投資になってしまって府民の皆さんとしては、かえってよくないのではないか」と答弁した。これは、地域や地元医療機関から出されている「丹後地域の医療課題は地域完結型になっていないことだ。」「医療機関が連携して丹後で、他の医療圏によらず、完結で行えるようにすることではないか。」「他の医療圏で助かる命が丹後では助からない命がある」とする願いや不安にまともに答えないばかりか、与謝の海病院の充実を「二重投資」とまで述べ府の医療への責任に背を向けるものである。12月議会にも、府立与謝の海病院の法人化・附属病院化に関連する条例が提案されることが見込まれている。我が党議員団は、法人化・附属病院化ありきの計画撤回と医師確保をはじめとした地域医療充実への責任を京都府が果たすよう、引き続き住民の皆さんと力を合わせ取り組むものである。
6、京都市・乙訓地域の高校教育制度の改正について、発表した「高校教育と入試制度のあり方について府民的な論議をよびかけます」のアピールに基づき、論戦した。本年8月に「京都市・乙訓地域の高校教育制度に係る懇談会」による「まとめ」を踏まえ、府教育委員会から本議会に単独選抜の導入や通学圏を一つにする方向が示された。教育長は「過度な競争主義をとろうとするものでなく、中学校での丁寧な進路指導や受験機会の複数化等のセーフティネットがあれば受験競争の激化や不本意入学の増加にはつながらない」と述べた。しかし、「懇談会」副座長でさえ、文教常任委員会で「学校ごとに入学時の合格最低点の格差は出てくる」「成績が何点以上の子が集まるということが起こりうる」と格差と競争を激化させることにつながると認めている。
今後、おそくない時期に制度の改革案が示されることとなる。我が党議員団は、どの公立高校に進学しても進路を切り開く力を身につけられ、希望すれば地元の高校に通えるようにすることこそ重要で、そのために拙速な結論を出さないこと、当事者や生徒、教職員、専門家等、幅広い府民的な論議を求めるものである。
7、国出先機関のまるごと移管をすすめる法律の行方が不透明となる中でも、積極的にまるごと移管をもとめる関西広域連合を「成長する広域連合」としてすすめることは、道州制への道であり地方自治破壊であることを厳しく指摘した。また、市町村合併や職員削減のもと、府南部豪雨災害や東日本大震災で果たした国の出先機関の役割を踏まえ、広域災害では広域連合では対応できないことなどを明らかにして追及した。
知事は「関西広域連合は逆立ちしても道州制にはなりません」と、現行の制度内で広域連合が道州制に移行することはないと、すでに自明の手続きについて開き直った答弁を行った。さらに、関西広域連合の事務の所掌範囲や出先機関の受け入れ後の在り方などについて「最終目標というのは常に進化していく」などとして、ビジョンも制度設計もないまま、広域連合強化と道州制への道をつきすすむ姿勢を示したことは重大である。
8、本議会では、我が党議員団提案の「関西電力大飯原子力発電所3・4号機の運転停止を求める意見書(案)」「オスプレイの飛行訓練中止と配備計画の撤回を求める意見書(案)」「社会保障制度改革推進法の廃止を求める意見書(案)」「中小企業金融円滑化法の延長を求める意見書(案)」「米国産輸入牛肉の月例緩和に反対する意見書案」「被災者生活再建支援法改正及び運用改善を求める意見書(案)」「B型肝炎・C型肝炎患者の救済に関する意見書(案)」「保護者負担のいっそうの軽減と私学助成の充実を求める意見書(案)」8件に加え、民主・自民・公明会派提案の6件も含め、賛成した。
大飯原発の停止やオスプレイ配備計画撤回など、国民世論の明白な意思が示されているにもかかわらず、我が党提案の意見書(案)にあいかわらず民主・自民・公明らがすべて反対したことは、まさに議会の役割を歪め古い「オール与党」政治の自縄自縛に陥っていることを示した。さらに、民主・自民・公明会派提案の「京都府南部豪雨に伴う災害対策に関する意見書(案)」は、我が党提案の意見書案に背を向けながら、府民の世論を前に、意見書を成立させるためだけに対案として提出したもので、まったく道理がないものである。
いつ行われてもおかしくない総選挙が迫る中、我が党議員団は、総選挙勝利にむけ全力をあげるとともに、京都府公立高校制度改革や府立与謝の海病院の法人化・附属病院化、関西広域連合をはじめ、府民の暮らしと自治体の在り方が問われる重要局面の中、秋の府民的闘いの先頭にたつものである。
以上