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2013年2月定例会意見書・決議案討論

2013/03/26 更新
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2月定例会 意見書・決議案討論
さこ祐仁(日本共産党、京都市上京区)2013年3月26日

日本共産党のさこ祐仁です。議員団を代表して、ただいま議題となっています意見書案12件と決議案1件について、3会派提案の「TPP交渉参加に関する意見書案」と「地方分権の推進を求める意見書案」の2件に反対し他の意見書案および決議案に賛成するものです。

最初に、わが会派提案の「米軍によるXバンドレーダー配備計画の撤回を求める意見書案」についてです。
 日米両政府は2月22日の日米首脳会談を受け、米軍の「ミサイル防衛」の一環である高性能レーダー「Xバンドレーダー」の京丹後市の航空自衛隊経ヶ岬分屯基地への配備計画を発表しました。
これは、京都府域に初めて日米地位協定が適用される在日米軍基地を設置しようとするものであり、わが党は、ただちに配備に反対する声明を発表するとともに、京都府知事、京丹後市長に「日米両政府に対し、Xバンドレーダー基地配備計画に反対するよう」求めました。
この間、開催された京丹後市の地元地区での説明会などでは、防衛省の説明が繰り返し行われてきましたが、防衛省側の説明は住民の心配や質問に十分こたえるものになっていません。住民の中には「米軍のレーダー基地設置により攻撃の標的となり、戦争に巻き込まれるのではないか」との懸念やXバンドレーダー配備による健康や環境への影響など様々な不安が広がっていることが、わが党議員団の現地調査でも明らかになっています。
今回のレーダー配備は、日本を守るためでなく、3月15日アメリカのヘーゲル国防長官が記者会見でのべたように、「北朝鮮の長距離弾道ミサイルからアメリカ本土を防衛するため、防衛体制の強化に取り組む」ものであり、弾道ミサイルを探知し追撃することにより、憲法が禁じている集団的自衛権の行使へつながるものであり、配備計画の撤回こそ求められているのです。
なお、知事は総括質疑でわが党・成宮議員に「一番の問題は北朝鮮だ」「どういう形で防衛態勢をとるのか」などと、Xバンドレーダー配備が当然であるかのような答弁をされました。北朝鮮のミサイル発射や核実験は当然、国際社会から糾弾されるべきものです。同時に軍事的緊張をいっそう高める方向では、憲法に背をむけアジアの平和と安定を勝ち取る道を遠ざけるものになることを厳しく指摘しておきます。

 次に、「TPP交渉参加表明の撤回を求める意見書案」についてです。
安倍首相は3月15日に、環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加を表明しました。安倍首相は、日米首脳会談で、「聖域なき関税撤廃が前提でないことが明確になった」と説明していますが、これは国民を欺くものです。日米共同声明には、「『TPPのアウトライン』に示された...高い水準の協定を達成」すると明記されており、そこには、関税と非関税障壁の撤廃がTPPの原則だとはっきり書いてあるのです。しかも、あとから交渉に参加した国は、すでに参加している国によって決められたルールを変えることはできず、途中で脱退することもできません。
このようにTPPへの参加は、農業と食の安全、医療、労働など国民生活のあらゆる分野に深刻な打撃をあたえ、日本の経済主権をアメリカに売り渡すことにほかなりません。このため本議会にも、京都府保険医協会や農民連など24団体で構成される「TPP参加反対京都ネットワーク」のみなさんが、京都難病連をはじめ7団体、上京東部はじめ8地区医師会など147の医療機関、3人の農業委員の賛同署名をつけて、「国に対しTPP参加の断念を求めることに関する陳情」を提出されています。地方自治体では、TPP参加反対などの意見書・決議を可決したのが44道府県議会、214市町村議会にも及んでいます。
なお、3会派から提案されている「TPP交渉参加に関する意見書案」については、国に情報開示と国民的議論を求めるだけで、結局、TPP交渉参加を容認するものであり、賛成できません。
さらに、3会派提案の「国民皆保険制度の堅持に関する意見書案」については、国民皆保険制度を堅持することは当然であり賛成するものですが、TPP交渉への参加では堅持できないということを厳しく指摘しておきます。

 次に、わが会派提案の「旧日本軍『慰安婦』問題の早期解決を求める意見書案」についてです。
「慰安婦」問題は、日本がおこした侵略戦争のさなか、植民地にしていた台湾、朝鮮、軍事侵略していた中国などでおこなった非人道的行為であり、その数は8万人から20万人以上ともいわれ、その解決のため、わが党は本議会でも何度も意見書採択をよびかけ提案してきました。
1993年、いわゆる「従軍慰安婦」問題について謝罪した「河野官房長官談話」や1995年の戦前の日本の「植民地支配と侵略」を反省した「村山首相談話」などで政府は強制連行の事実を認め、謝罪しましたが、国による賠償はおこなわれておらず、いまだ未解決です。国連やILOなどの国際機関はもとより、海外の議会から、被害女性への公的な謝罪や国による賠償を求められていますが、被害者は高齢化し、亡くなった方もおられ、一日も早い解決が必要です。
ところが、安倍首相は政権発足直後の新聞インタビューで、「村山談話」や、「河野談話」について見直しを示唆し、内外で大きな批判の声が上がっています。NYタイムズ社説は、「犯罪を否定し、謝罪を薄めようとするいかなる試みも、日本の野蛮な戦時支配を受けた、韓国、さらには中国とフィリピンを激怒させる」と指摘しています。
本意見書は、「慰安婦」問題の真の解決のため、国による謝罪・賠償、教科書への記載等をおこなうことを求めるものです。歴史はつくり変えることはできませんが 向き合うことはできます。歴史に誠実に向き合い、誤りは真摯に認め、清算してこそ、日本は、アジア諸国民との本当の心通う友情を確立することができます。
なお、公明党提案の「慰安婦」問題の早期解決を求める意見書案には、安倍首相による歴史の見直しの危険性に触れていないなどの問題があることを指摘しておきます。

次に、「年金2.5%削減の中止を求める意見書案」についてです。
現役世代では、国民年金保険料の未納率が4割に達し、さらに高齢者でも、年金を1円も受給していない人が100万人にのぼり、国民年金の平均受給額が月5万円程度と、無年金・低年金問題は深刻です。
この間年金問題では自民党や民主党、公明党が最低保障年金の創設や年金あんしん100年など、マニフェストの中心問題として掲げていましたが、昨年の税と社会保障に関する密室合意で、国民への公約は踏みにじられました。
削減が実施されると3年間で基礎年金は22,500円、厚生年金は78,000円もの減額になります。しかも2.5%の削減は入り口で、その後もマクロ経済スライドで毎年0.9%以上、少なくとも10年先まで引き下げることが計画されています。
 消費者物価指数が下がったといいますが、下がっているのはテレビやパソコンなど電化製品が中心で、光熱費も食料品やガソリン代等も値上げされており、さらに介護保険料や、医療費、税金などは消費者物価指数に反映されませんが、こうした負担も年々引き上げられているのです。高齢者の生活実態に照らした検討が必要なのです。

次に、「生活保護基準引下げの撤回等を求める意見書案」についてです。
 保護基準の引き下げは、保護受給者を地域社会から一層孤立させることにつながり、子どもが二人いる母子世帯では2万円もの引き下げになりますが、これでは貧困が連鎖するものであります。
また、生活保護基準は、非課税限度額や就学援助、公営住宅の家賃など、各種制度の目安・基準となっており、低所得層全体に大きな打撃となります。
厚生労働省の試算では基準の引き下げにより、介護保険料で112万人の方々が、また介護サービスの負担上限額でも5万人以上、自立支援医療や障害福祉サービスでは7万人以上の方が負担増になることが明らかになっているのです。
 生活保護制度は、「最後のセーフティー・ネット」であり、その水準は、「健康で文化的な最低限度の生活」を規定した憲法25条を具体化したものでなければなりません。
だからこそ、日本弁護士連合会を始めとして、全国43の弁護士会、弁護士連合会も生活保護基準引き下げに反対する声明や意見書を相次いで発表しているのです。
 政府は、「不正受給」のキャンペーンを利用した生活保護制度の改悪・削減を行うのではなく、生活保護水準の引き上げをはかり、「働く貧困層」をはじめ、必要とするすべての国民が利用できる生活保護制度とするため、保護基準や運用、利用方法など抜本的な改善・拡充を行うべきです。

 次に、「BSE全頭検査体制緩和の撤回を求める意見書案」についてです。
 国は4月1日からこれまでの国産牛のBSE対策を緩和して30カ月齢超に緩和し、特定危険部位の除去についても30カ月齢以下であれば除去しなくてもよい、脳を含めて利用も可能にしようとしています。
これまで日本では、2001年に国内でBSE感染牛が見つかって以降、全頭検査を実施してきました。その後アメリカでBSEが発生したのを受け、2003年12月にアメリカからの輸入を禁止しましたが、アメリカの圧力に屈して2005年に20カ月齢以下の輸入を再開すると同時に国産牛の検査体制も緩和し20カ月齢超に緩和したのです。
そもそもアメリカでの検査は、と畜頭数の0.16%程度の少ない検体にもかかわらず、それでも昨年BSE感染牛が発見されています。
現在、日本はアメリカから輸入牛肉の月齢をさらに緩和し、輸入を拡大せよ、と執拗に求められているのです。今回の全頭検査の緩和はアメリカの輸入牛肉と横並びで国産牛についても緩和を迫るものであり、TPP参加の露払いとも言われているものです。
現在京都府を含めて多くの自治体では全頭検査を継続しており、こうした努力があったからこそ食の安心・安全が担保されてきたのです。
  本意見書案は、全頭検査体制緩和の撤回と全頭検査に対する国の助成の継続を求め、さらに特定危険部位の除去についても継続するよう求めるものです。

次に、「特別支援教育の充実を求める意見書案」についてです。
特別支援学校や小中学校の特別支援学級などで学ぶ子どもたちの数は、1999年からこの10年間で約18万人から約30万人に増加しています。なかでも特別支援学級の在籍児は約2倍に増加し、従来から多かった知的障害の子どもに加え、対人関係をうまく結べない情緒障害や発達障害の子どもなど、障害の状態も多様になっていますが、特別支援学級の学級編成基準はこの17年間全く変わっていません。
そのような下で、担任の先生は、一人一人の子どもの課題に合わせた教材づくりと個別指導に加え、身辺自立の難しい子どもがいればその対応に追われ、他の子どもの指導ができなくなることで、子どもと教師との関係作りが困難になっています。特別支援学級で学ぶ子どもたちの学力と発達を保障する上で現在の学級編成基準を8名から6名に改正することは、待ったなしの課題となっています。本議会にも8533名もの京都障害児・者の生活と教育を豊かにする会のみなさんから切実な願いとして請願が出されており、本議会としてこうした声に応えることを呼びかけるものです。

 次に、「地域循環型の経済対策を求める決議案」についてです。
京都府経済の疲弊は、様々な指標が示すように厳しい状況が続いており、さらに円安による原油高騰が追い打ちをかけています。建設業では、倒産数が全産業の約30%を占める深刻な状況です。仕事量の減少と過度な競争の中で、営業利益率の低下、労働者賃金の低下が止まらず、建設業協会からも、「職人不足が深刻」「北部の除雪にも影響が出ている」「このままいけば、下請けへの負担、品質悪化につながる」との声も上がっています。丹後ちりめんの精錬工場では、ボイラーに使用するA重油の値上がりで、年間で1000万円を超える負担増がすでに現実のものになっています。さらに、電気料金の値上げでさらに数百万円規模での負担増となれば、産業は危機的な状況に追い込まれます。
来年度予算にはこうした現状への緊急の対策が求められます。しかし、中小企業支援も極めて限定的なものにとどまっていますし、前年度比133%となった公共事業も、府民の安心安全にかかわる重要なものが含まれる一方、新たな高速道路の建設など不要不急なものも含まれています。
原油や小麦など生活必需品の円安による物価上昇は、国民の暮らしや消費も直撃します。不要不急なものは見直し、全国の自治体でも高い経済波及効果が確認されている、住宅リフォーム助成制度などの実施や、適正な執行を行う上でも欠かせない技術職員など職員の抜本的増員を図り、地域循環型の経済政策で、力強く地域経済の疲弊を打破する道を進むべきです。
以上、わが党提案の意見書案7件と決議案1件への賛同を求めるものであります。

 次に、3会派提案の「子ども・被災者生活支援法に基づく具体的施策の早期実現を求める意見書」案についてですが、わが党も法案成立に努力し、国会でも府議会でも、一刻も早い法に基づく基本方針の制定や公営住宅等の無償入居期間の延長を求めてきたところであり、賛成するものです。

最後に、3会派提案の「地方分権の推進を求める意見書案」についてです。
国出先機関の事務権限の移譲については、市町村長会をはじめ多くの反対でとん挫しているものです。地方を置き去りにする広域連合への権限移譲や財界が狙う道州制につながる動きを押しすすめようとするこの意見書(案)には反対です。
以上で討論を終わります。ご静聴ありがとうございました。