京都府営水道ビジョンの策定について(見解) 2013年3月
京都府営水道ビジョンの策定について(見解)
2013年3月
日本共産党京都府会議員団
1、府営水道ビジョン策定の経緯
京都府営水道事業経営懇談会(水道懇)は、知事の諮問に対する答申「第7次提言(平成22年11月)」で、「水需要の展望、安心・安全への備え、経営基盤の強化、受益と負担」等、今後府営水道が取組むべき課題を示し、その解決に向けた指針となる将来ビジョンの策定を求めました。
この提言を受け本府は、概ね10年後(平成34年)を見通した府営水道の取組の方向性を示す「京都府営水道ビジョン」の策定をすすめています。有識者による府営水道ビジョン検討会を設置するなど検討をすすめ、昨年12月府議会に、府営水道ビジョン(素案)が示されました。パブリックコメント等を経て、平成24年度中の策定を目指しています。
2、府民の運動と願いに応えたビジョン策定を
府営水道ビジョン策定に向けて行われた府民意識調査では、府営水道が府南部10市町に供給していることを、「知っている」との答えが31,3%、「知らない」が68,7%であり、知っていると回答したうち、府の水道事業に「不満」が45,6%、不満の最大の理由に、「料金が高い」が82,2%に上っています。
府営水道については、過大な基本水量(カラ水)、高い水道料金(カラ水料金)の押し付けの見直し等を求めて、長年ねばり強い住民運動が続けられてきました。住民の願いは、美味しい水を安全で安価に安定的に供給をということであり、意識調査結果でも示されています。府営水道ビジョン策定にあたっては、受水市町との十分な意見交換はもとより、何よりもこのような住民の運動と願いに応えたものにすべきです。
3、新たな装いで受益者負担を押し付け、水道事業を「企業団」方式に
料金問題では、過大な水需要予測による現有施設能力の維持を前提に、「基本料金は3水系の『合算算定方式』を段階的に導入」「従量料金を低廉な額で平準化」「基本水量と実供給水量の乖離格差の縮小に向け市町間で調整を推進」「基本水量概念を見直し、用語・基本料金の明示方式を変更」などとしています。しかし、住民からみて「なぜ『カラ水』料金を払い続けなければならないのか」、この疑問や批判にまともに答えていません。
府営水道条例では「受水市町の申請に基づいて基本水量を決める」としているにもかかわらず、大山崎町が住民の実際使う水量に変更して申請してもこれを認めないという、条例に反した態度を府がとり続けることはまったく道理がありません。この見直しこそ必要なのに、今回の「手直し」は、過大な水需要予測にもとづく府営水道事業の「破綻」を、新たな装いで受益者負担として住民に押し付けるものです。
府営水道ビジョン(素案)による将来方向は、住民の願いを「基本水量概念の見直し」等にすり替えながら、結局、受水市町の浄水場の廃止・統合を伴う水道事業の広域化への道であり、府が建設し府の責任で運営すべき水道事業を、あたかも受水市町と府の一体事業であるとする「企業団」方式へと変質させるもので、まったく経過も制度も無視した乱暴なやり方です。
4、さらに府営水給水量をアップ、市町の水量申請権を否定
基本水量のうち受水市町での使用水量は60%程度(23年度決算)に過ぎず、料金に換算すれば約16億円に上ります。この過大な施設整備に伴う赤字は、本来事業を行った府の責任で負担すべきものですが、過大な基本水量と「カラ水」料金の押し付けで、市町の高い水道料金と水道事業会計悪化の大きな要因となっています。
府営水道ビジョン(素案)は、10年後の水需要を予測しています。人口減等の中で受水市町の水需要は1日平均給水量で4,5%減少するのに対し、府営水の給水量は4%増加するとしていますが、これでは府営水の比率が51%から55,6%に跳ね上がります。市町の自己水(地下水)を大幅に減らすことに連動し、人口減等社会的要因による水需要減の「責任」を市町だけに負わせた上、さらに府営水を使えということになります。
これは、府営水道条例に基づく受水市町の水量申請権を事実上否定し、自治権を侵害するものです。市町の自己水(地下水)は、災害・事故時等のライフラインの確保としても重要な役割を担うことから、二水源による給水こそ尊重し支援すべきです。
5、ライフラインの確保、災害対策の事業に、国・府の支援こそ
本府は、3上水道接続・施設の耐震化等の大規模な経費を、独立採算を原則に受益者負担としてきました。しかし、一方で国に「導送水管等施設の耐震化」、「老朽施設の改良、更新」等に対する財政支援の拡充を求め要望活動を行っています。これは独立採算による受益者負担一辺倒では、今日の水道事業が抱える諸課題に対応できないことを表しています。
水道事業の健全化のために、少なくとも下水道事業並の補助制度を国に求めると同時に、府も支援すべきです。3浄水場の接続・施設の耐震化等の事業は、府民のライフラインの確保、災害対策の充実・強化を目的としているものですが、この大規模な投資を受益者負担として、受水市町住民に押し付けることは道理がありません。住民の安心・安全の確保、ましてやライフラインの確保は、府政の重要課題であり、府が一般会計で行うべき事業そのものです。
6、未利用水利権を活用し、天ケ瀬ダム再開発から撤退を
水利権の問題では、府営水道が確保している水利権のうち乙訓浄水場系日吉ダムの毎秒0,285トン、木津浄水場系比奈地ダムの毎秒0,3トンの未利用水利権があります。これを同じ淀川水系の天ヶ瀬ダムに振替えて活用すれば、天ヶ瀬ダム再開発による水利権(毎秒0,6トン)の大半が確保できることになり、再開発から撤退する条件が生まれ、水源費負担の軽減が可能になります。現在、淀川水系4ダム(比奈知ダム、高山ダム、青蓮寺ダム、川上ダム)でも余剰水量が極めて多く、川上ダムの規模を大幅に縮小できる可能性があり見直しが迫られています。
本府は、未利用水利権の「買い上げ」を国に求めるとしていますが、将来ビジョンを策定する今こそ、未利用水利権の振替を国に認めさせ、水源費負担の軽減、水道料金値下げを実現すべきです。
参考
京都府営水道ビジョン(素案)概要版より
府営水道としての取組方策
水道懇提言で示された課題の解決と共に、府営水道を受水している10市町の理解を得ることを重視。1~4の全体を通じ、取組を効果的に進めるため、受水市町と連携した取組を展開。連携を着実に進め、強固な信頼関係を築き、スパイラルアップ
1、将来の水需要に対応した適正規模
受水市町から提供された予測値等を積み上げ、H34年度の府営水道の必要水量等を予測
○府営水は、1日平均給水量で4%アップ(112,618㎥/日)、1日最大給水量は(134,711㎥/日)
○現有施設能力(166,000㎥/日)の維持が必要
○現有施設を前提に府営水道の取り組み方策を推進
2、安心・安全な給水体制の確保
1を前提に、老朽化対策・耐震化等の取組を計画的に推進
○施設の老朽化対策・耐震化
宇治系送水管をH34までに更新・耐震化
府独自の「更新基準年数」をもとに計画的に更新
乙訓浄水場をH28目途に耐震化(宇治・木津浄水場は耐震化済)
○電源喪失への対策
○水質悪化・放射能対策等水質管理の強化
3、経費の抑制と今後の見通し
経費の抑制努力を行いつつ、1,2に必要な今後の費用を推計
○経営努力により、現行水準(H22~24平均経費)以下に抑制(H32~34平均では、現行水準対比△10%を目指す)
○宇治系では、老朽化に伴う更新負担が増大
木津系・乙訓系では、水源費、減価償却費等が減少傾向
4、費用負担のあり方
3の経費動向を踏まえ、経費の10市町の負担のあり方について、京都府営水道ビジョン検討会の意見集約を踏まえ対応
※京都府営水道ビジョン検討会集約意見(H24.10)
水道懇第7次提言を踏まえ、10年先を視野におき、次期料金改定時(H27~31)、次次期料金改定(H32~36)を想定し、今後の方向性について意見を集約
○基本料金のあり方
基本料金は、供給開始年次順に、宇治系43円、木津系75円、乙訓計77円。しかし宇治系は今後老朽化している管路の更新など投資がかさむために料金は上がる一方、減価償却費が減少する木津系と乙訓系は下がり、H32年~33年頃に料金差が最小になると試算。格差が縮小するタイミングを捉え、次期・次次期料金改定時に現在の個別算定方式に代え、3水系の合算算定方式を段階的に導入し、料金を安定させる方式に変えることが望ましい
○従量料金のあり方
従量料金は、宇治系が19円、木津系・乙訓系36円。3浄水場系が接続、広域運用ができる条件が整う(H27.4)ことや従量料金が高いと府営水の利用量が減ることが懸念されることから、次期料金改定時に宇治系と同程度とするなど、平準化を図ることが望ましい
○基本水量と実供給水量の乖離
平準化と合わせ、乖離格差の縮小に向け市町間の調整を推進
○料金に課税せられている消費税の取り扱い
消費税分を明示する方式に変更
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