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政策と見解

2014 年度予算特別委員会審議の開始にあたって

2014/02/19 更新
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2014 年2月 19 日
日本共産党京都府議会議員団

はじめに

 2月7日から始まった2月定例議会は、本日から予算特別委員会が開始され、集中審議が行われる。予算案は、「アベノミクス」が破たんし、京都経済が落ち込んでいる上に、消費税増税や社会保障連続改悪等、さらなる痛みに加え、安倍政権が暴走している中、国の暴走に対峙し、府民の暮らしと京都経済の再生をどうはかるのかが、真正面から問われるものである。
 山田知事は、「安心にまったなし予算」と銘打って、知事選挙前の「骨格的予算」であるものの、「消費税増税の反動減」や「国の農業政策の変更」等があるため、国の経済対策予算を活用し、2月補正予算も含め「14 か月予算」として提案した。
 しかし、安倍政権の暴走と破たんした「経済対策」に追随し、府民の暮らしに寄り添い、落ち込む京都経済再生の願いに背を向ける「不安おしつけ」予算となっている。
 我が党議員団は、4月の知事選挙を控える「骨格的予算案」に対し、審議を通じ、多くの国民の声を無視し暴走を続ける安倍政権と一体に進んできた山田府政の本質的な問題を明らかにするとともに、自治体本来の役割を果たさせる立場から、暮らしと京都経済を守る予算となるよう、全力をあげるものである。

1、四月実施の消費税増税推進で、対策にならない「増税対策」を打ち上げ、いっそう府民に不安と痛みを押し付けている。
 本会議代表質問に対する答弁で、知事は消費税増税について、「税と支出、均衡の問題」と、消費税増税推進の立場を述べるとともに、社会保障の相つぐ切り捨ても推進する国の姿勢をくりかえし擁護した。
 その上、「消費税影響への安心」対策として示したものは、緊急生活支援策として重度障害、重症難病患者等に対し、一人一回きり 3,000 円の商品券を支給するとして1億 4,000 万円を計上したが、これには、NPO関係者からも「単発支給は焼け石に水」との声が出されている。また消費税増税の反動減による売上悪化の対策として、従来秋に行われている商工祭や農林水産業祭開催などのイベントを春に行うもので、「どれだけの消費の反動減に対して効果があるのか」との声も上がっている。また、「制度融資で下支えする」というものの、融資実績は平成 20 年度に24,000 件あったものが、年々下落し、24 年度には 9129 件へと件数も金額も激減している上に、不況業種の対象が減らされるなど、借りたくても借りられない事態がいっそう進んでいる。これでは、消費税増税の直撃をうける中小企業や府民への対策とはとうてい言えないことは明らかで
ある。

2、すでに破たん済みのアベノミクス・政府追随で、大型事業偏重による借金増の一方で、地域密着型の社会資本整備事業がすすまないものとなっている。
 新たに「経済対策」として提案したもののほとんどは公共事業 906 億円(当初 2月補正で 165億)と制度融資 880 億円(預託金)となっている。公共事業の中には、新名神高速道路や天ヶ瀬ダム再開発事業の負担金に加え、「ミッシングリンクの解消」と称し鳥取豊岡宮津自動車道の国直轄事業としての実施を求め、不急の野田川大宮道路建設と結ぶ計画を進めようとしている。
 また、莫大な府民負担を強いる「リニア中央新幹線誘致推進費」を計上し、さらに「国土強靭化」として国直轄事業を増やす等、今後いっそうの不要不急の公共事業推進を経済・景気対策とする破たんした施策にしがみつく一方で、道路改良、橋梁補修、河川改良など地域密着型の社会資本整備費等を軒並み減額している。また、府民公募型公共事業は、府民からの提案により実施するものであるが、今年度は「アベノミクス」経済対策予算を活用して 55 億円に積み増したものの、執行できず災害対策として流用した。予算案では、減額して 25 億円を計上したが、職員削減による執行体制の厳しさや地元建設・土木業者減による影響が反映しているものである。
 もともと公共事業費は昨年2月補正予算後に、予算の積み残しを長期投資準備基金に積み立てる等先延ばし、それを「経済対策」の財源として公共事業に充て、また、これらを執行するため府債発行を増やしているが、これは、公債費が 1191 億円となっていることからも、財政運営上も問題がある。

3、深刻となる京都経済の底上げや雇用対策、農林業支援の願いに背を向けている。
 全国ワースト1となっている事業所減少率(被災地を除く)となるなど、京都経済の落ち込みが激しい責任について、代表質問の答弁で知事は「バーやキャバレーの廃業率が非常に高い」「お米屋さん、酒屋さんも減りましたけれども、コンビニに業態を変えてやっている」などと実態を見ずに責任を転嫁した一方、中小企業地域振興基本条例や住宅改修・まちなかリフォーム助成制度に背を向け続けている。また、公共事業の入札平均落札率が全国 43 位と最も低いクラスとなり、資材高騰が続く中、入札不調となる状況が相次いでいるにも関わらず、最低制限価格の引き上げ等、入札制度の改善や公契約条例の制定も実施しない等、京都の 12 万社すべての底上げのための地域循環型経済対策の道を閉ざしている。
 なお、「中小企業経営安定・改善支援事業」(2億円)は、固定経費削減に必要な機器更新、内装の改装等にも補助する等であるが、極めて限定的となっており、改善が必要である。
 今回、ようやく初めて「正規雇用 8000 人増」の目標を掲げることとなったものの、ブラック企業規制や賃金上昇対策はなく、実効性は極めて不透明である。その上、来年度予算では 25 億円にものぼる人件費削減と 15 名の職員定数削減を示し、社会福祉事業団の職員の人件費削減方針による給与制度の改悪や、消費生活相談員の突然の減員を提案するなど、掲げた目標の前提を壊す施策を進めていることは極めて重大である。
 また政府によるTPP参加を前提とした農村の解体や中山間地の荒廃をすすめる農政の大転換に追随する「農地中間管理機構」を設置する一方で、農山村の過疎対策等として一定の役割を果たしてきた「命の里事業」の新規箇所指定を見送り、減額し、さらに農業技術センター、水産技術センター、栽培漁業センター、畜産技術センターなど試験研究機関への費用がのきなみ削減されており、現場にいっそうしわ寄せとなることは明らかである。

4、社会保障「解体」路線に追随し、社会保障充実、貧困対策、教育充実の切実な願いにこたえていない。
 「社会保障プログラム法」により、昨年に続く年金1%削減の一方、国民健康保険料の値上げ、後期高齢者医療保険料の大幅な値上げ等が計画されている。ところが、知事は、国民健康保険料値上げにつながる国保の都道府県単位の一元化を推進することを重ねて表明し、破たんが明らかな後期高齢者医療制度についても「制度は定着している」と述べた。
 政府が本年4月から 70 歳から 74 歳までの医療費窓口負担を現行1割から2割へと段階的に引き上げようとする中、これに乗じて、65 歳から 69 歳までの医療費窓口負担を1割に軽減している京都府独自の「老人医療助成制度」を「見直す検討を一年かけて行う」と表明した。これは、今年に限り一年限定で新たに 70 歳になる方への1割措置のための予算を計上したものの、マル老制度の堅持や拡充を表明せず、制度改悪に道を開くものである。
 子どもの医療費助成制度は、すでに全国 43%の自治体で通院も中学校卒業まで医療費助成を拡大する中、知事が「市町村の意見も聞く中で検討する」と答弁した。通院も入院も中学校卒業まで無料となるよう求めるものである。
 一方、すべての子どもに対する中学校給食の実現については、「市町村がやること」とのべ、また「高校生等奨学金給付金支給事業費」(2億 6,000 万円)は公立高校授業料無償化廃止法に基づき、所得制限を超えた世帯の高校生から徴収した授業料を国財源3分の1として全国で実施するものであるが、これまでの給付型奨学金が実質縮小することになるのは重大である。
 高校入学制度と高校制度の見直しを強行し、現在、大きな不安の中、初年度の入試選抜が行われている。その結果、すでに実施された前期選抜で 7822 人が不合格体験を余儀なくされるなど、生徒や保護者、学校現場に余計な不安や動揺が広がっているにも関わらず、教育長は「積極的にチャレンジしてくれた結果だ」と述べた。「自由に選べる」としてきた府教育委員会の説明は事実上崩れ、「学校が子どもを選ぶ」「成績順に振り分ける」こととなる格差と競争を助長する制度は抜本的に見直す必要性を浮き彫りにしている。

5、道州制導入など、自治体の役割と住民自治の破壊を進めている。
 「道州制」について、府内 11 町村で道州制反対の決議が上がっているにもかかわらず、この間、研究会を立ち上げ、事実上推進しているが、昨年 12 月内に「中間まとめ」を発表するとしてきたが、いまだ報告はないままである。知事は「道州制研究会での議論はどちらかというと反対意見の方が多い」と述べざるを得なかった。それならば、「まとめ」も提出できないような「研究会」は解散すべきである。
 また、この 12 年間、地域振興局、土木事務所、保健所の統廃合、洛東病院廃止、府立医大病院等独立行政法人化等で 2700 人の削減を行っている事実に対し、知事は「町村会長から、振興局は邪魔だと、実力もないのに口だけ出して、もうこんなものはいらないという話まで出た。」と、市町村を支援する京都府の役割を弱めているにも関わらず、市町村に責任転嫁する言い訳をおこなった。

さいごに

 2月定例議会本会議答弁で、知事は、特定機密保護法について「国が説明責任を果たし、国会が責任持つ」と撤廃の願いに背を向け、さら「国防の問題まで地方自治でやれというのはない」と関西初の米軍レーダー基地建設に協力し、住民の不安や反対の声を押し切り協力する姿勢を重ねて示したことは重大である。さらに、原発再稼働についても「再稼働判断は周辺部、地方公共団体への説明と理解を得ること」と、ずさんな「新規制基準」に基づく、再稼働を容認する姿勢を重ねて示した。
 これらは、提案された予算案とともに、府政転換の必要性をいよいよ浮き彫りとしている。
 我が党議員団は、広範な府民の皆さんに安倍政権の暴走ストップ・府政転換求める運動を呼びかけるとともに4月に行われる京都府知事選挙勝利にむけ全力を挙げるものである。

以上