日本共産党京都府会議員団は、10月31日に閉会した9月定例府議会について、団長談話を発表しました。
全文を紹介します。
2025年11月6日
2025年9月定例会を終えて
日本共産党京都府会議員団
団長 島田 けい子
9月11日に開会した9月定例会は、決算特別委員会をはさみ、10月31日に閉会した。
本定例会は、物価高、資材高騰をはじめ、府民生活への深刻な影響が出続ける中、参議院選挙後、経済対策等行われないまま政治空白が続いたもとで開会した。また公明党が連立離脱し、自民党と維新が政権合意し高市政権が発足するという、激動の中、論戦が行われた。
党府議団は、現場調査を踏まえ、実態を可視化するとともに、自民党型の国地方一体型政治の実態を告発しつつ、転換の必要性を浮き彫りにする立場から論戦に取り組んだ。
1、提案された議案のうち決算関連議案6件は、知事選挙前最後となるもので、西脇府政の問題と課題を明らかにする上で重要な議案である。
党議員団は決算関連議案のうち、第12号議案「令和6年度京都府一般会計及び特別会計歳入歳出決算を認定に付する件」、第14号議案「令和6年度京都府水道事業会計決算を認定に付する件」、および第17号議案「令和6年度京都府流域下水道事業会計決算を認定に付する件」の3件に反対し、他の3件には賛成した。
3件の議案に反対した第1の理由は、物価高で府民や中小企業が苦しみ、医療・介護制度の後退で厳しいもと、京都府の施策が命と暮らしを守るものになっていなかったからである。
府税決算額では、個人府民税が27億円増額したが、その内訳は所得割が約30億円減額の一方、配当割20億円、株式譲渡割30億円の増額となり、格差が広がり続けている。
こうした中、国民健康保険の各自治体からの納付金を過去最高の上げ幅である7.6%上げたことで、各自治体の国保料大幅値上げがもたらされ、また、コロナ禍の教訓から医療体制拡充が必要であったのに体制充実へ支援せず、ベッド削減へ道をつけ、本年、病床適正化支援事業による291床の削減されることとなった。さらに介護現場でも、国の介護報酬改定の影響で、訪問介護事業所の倒産が相次ぎ、京都府内で事業所がゼロという自治体が1自治体、1・2カ所しかない自治体が6自治体になっているにもかかわらず、その支援策が国の範囲以外はないためである。
第2の理由は、子育て支援について経済的負担軽減が施策の柱になっていないなど極めて不十分だったからである。
府が行った対策は風土作りやイベントばかりで、その結果、合計特殊出生率は1.05と、「子育て環境日本 一」の掛け声とは真逆の、全国ワースト5位と大きく落ち込んだままである。
高校生までの医療費助成に踏み出す都道府県は令和6年4月時点で、13府県に広がったにもかかわら ず、 知事はいまだにいつ18歳まで無料にするのか示さないままであり、その結果18歳まで無償化の制度となっていないのは京都市と京都府だけになってしまった。
さらに学校給食無償化は長年の国民の声と運動によって、いよいよ国が無償化について具体化の検討を始 め、青森県は、県内の小中学校へ無償化支援を行い、全自治体が無償化した。これら都道府県の努力と役割を 生かすべき時に、京都府は「給食は市町村が行うもの」と全く具体化しようとしていない。高校通学費助成は利用者が91人にとどまっており、更なる拡充が必要にもかかわらず応えなかった。
第3の理由は、物価高、人手不足、低賃金から、中小企業・農林業者、働く人たちを守り、振興することが施策の柱になっておらず、スタートアップ、フードテックなど一部の成長産業への公金投入が中心となっていたからである。
賃上げのための中小企業への直接支援は喫緊の課題であり、知事は「即効的な効果がある」と認めてきたにもかかわらず、「賃上げができる環境づくりに取り組む」として、直接支援に背を向け続けてきた。一方、産業政策の中心が「産業創造リーディングゾーン」や「スタートアップ」企業支援、フードテックなど成長産業に偏っている。
また、職業訓練や相談などに重要な役割を果たしてきた城南・中丹・丹後の勤労者福祉会館について、存続を求める436件の請願と、1791筆の署名に込められた利用者の声を踏みにじり、「役割を終えた」と廃止を強行した。さらに、府営33施設および3都市公園の使用料について、「受益者負担の適正化」として令和7年度から一斉値上げを強行したが、公共料金を受益者負担とすることは間違っている。
高温、渇水で重大な影響が連続して発生した農業について、災害級の支援が必要であった。ところが、国の農業施策の柱である大規模農業、大型機械化、100ヘクタール農業を推進し、目標とした府内10組織は6組織にとどまる見込みとなり、行き詰まりが明白となった。
第4の理由は、大阪・関西万博事業、学研都市開発、新名神未来都市などの大規模な開発中心の街づくりが進められ、住民が置き去りにされていたからである。
大阪万博に22億円以上の関連イベント予算を計上しながら、職員を職務で何人動員したのか、総額いくらの万博事業費を使ったかも掴めないという状態で前のめりに推進し、舟運事業については京都〜大阪間の就航に必要な淀川大堰閘門(おおぜきこうもん)の改修事業は190億円をかけ、さらに航路確保のための川の浚渫や船着場・護岸整備は、誰一人乗船しなかったにもかかわらず、6年度事業費4億6300万円のうち、府直轄負担金が2億400万円であったことが明らかとなった。また、府内の全ての小学校、中学校、高校、支援学校の児童・生徒約25万人を対象に1人1回参加できるチケット代として債務負担3億3400万円を計上したが、無理な動員により実際の参加は6万人に止まった。
亀岡市の京都サンガスタジアムの建設費用のうち20億円は募金で賄うとしてきたが、2億6千万円しか集まらず、また、今後50年間の施設整備費70億円や大規模改修費用など、建設のツケが府民に押し付けられることも明らかとなった。こうした中、1万人の京都アリーナ(仮称)は、住民説明会を開かず、周辺環境や道路・交通対策をきちんと講じないまま、設計、施工、維持管理、運営の債務負担行為額348億円を決め契約した。しかも、今後の物価変動の影響や、運営費がどれだけ上振れするかも全く不明であり、成長産業、ビジネスモデルと位置付け、集客力優先の全国アリーナ構想のもとで、Bリーグの日程ありきの令和10年開業計画になっており重大である。
さらに北陸新幹線延伸計画について、国の言い分そのままに推進を容認しつづけている。
第5の理由は、官民連携・広域化が各分野で進められ「公共の役割」を歪めてきたからである。
国の方針どおり水ビジネス大企業の儲け口として上下水道一体の官民連携・広域化を推進している。府の3つの流域下水道はすでに包括民間委託され、60歳以上の技術職員が66%となるなど、このままでは将来下水道事業を担うことが不可能になりつつあり、また、府営水道と受水市町の「広域化・民営化」に突き進んでいる。
また「京都府消防体制の整備推進計画」では、「消防広域化重点地域の指定を急ぎ」、府内全域での「消防指令 センターの一体的な共同運用を目指す」としており、府消防広域化方針により、危機管理上問題である京都南部指令センターを浸水想定区域内に令和9年運用開始することは重大である。
2、決算認定議案以外の議案14件のうち、第7号議案「京都府豊かな森を育てる府民税条例及び京都府豊かな森を育てる基金条例一部改正の件」に反対し、人事案件も含め他の議案に賛成した。
第7号議案「京都府豊かな森を育てる府民税条例及び京都府豊かな森を育てる基金条例一部改正の件」は、2025年度で府民の皆さんへの課税期間が終了する「京都府豊かな森を育てる府民税」の課税期間を5年延長し、基金の設置期間も延長するものである。
そもそも本府民税は、森林環境譲与税創設までの暫定的に徴収するとしてきたにもかかわらず、譲与税創設後も徴税を続け、その結果、森林環境譲与税の負担、年1000円に加え、600円の府民税が継続されてきた。
森林整備の必要性は今日緊急性が高いことを理由に、物価高など府民負担が厳しい中、防災対策や木材利用促進は、既決予算で行うべきものを、国の森林や防災にかける予算の増額が見込めないため、特定の施策目的を実施するためなら府民税を徴収するしかないと判断することは、自治体本来の役割を弱めることになり、反対した。
3、代表質問等で、国政も含め重要課題について、その歪みを質す立場から質問したが、西脇知事は、あらゆる問題に対し、国・地方一体で、府民の願いに応えず、むしろ押さえつける役割を果たしていることが明確になった議会であった。
参議院選挙で各党が公約に掲げた消費税減税について、知事は「消費税につきましては、全世代型社会保障に必要なものとして法律で税率の引き上げが行われたものであり、そのあり方につきましては、少子高齢化社会における我が国全体の社会保障財源の問題として、国において検討されるべきものと考えております。」とこれまで同様の答弁を続け、物価高・資材高騰等に苦しむ府民の願いにまったく向き合わない姿勢を示した。
また、北陸新幹線京都延伸計画について、知事は「北陸新幹線につきましては、日本海国土軸の一部を形成いたしますとともに、大規模災害時において東海道新幹線の代替機能を果たし京都府域はもとより関西全体の発展につながる国家プロジェクトであると認識しております。」とこれまでと一言一句変わらない答弁を続け、建設を容認する姿勢を取り続けている。
さらに、祝園弾薬庫の建設や日米共同訓練について、知事は「国におきましては、閣議決定された国家安全保障戦略などに基づき、防衛力の抜本的強化として火薬庫の増設などに取り組まれているものと承知をしております。近畿中部防衛局からは、こうした防衛力の強化は、力による一方的な現状変更を許容しない、との我が国の意思を示し、攻撃に対する抑止力、対処力を高めることで、我が国への武力攻撃そのものの可能性を低下させるものであって、国民の安心安全に繋がるものと伺っております。」と政府の言い分そのままを垂れ流す態度に終始した。
4、決算審議では府民の暮らしや地域の実情と切実な要求を反映し、質問で府への要望が相次いでだされたが、その解決のためには、財源問題も含め、府政の転換が必要であることが明瞭になった。
自民党議員からは「丹後の機械金属や織物が深刻で倒産件数が高止まりしている。府の認識と対策はどうか?」「建設業の人材確保を本格的に。道路の除草や樹木剪定など進めて欲しい」「稲作経営に機械導入は、大規模化前提のため、大規模化しにくい所の面積要件緩和を」などの質問が相次いだ。
しかし、一方で、財政問題の審議では、「今年度の税収の見込みが、ガソリン暫定税率廃止、軽油引取税などへの影響はどう見込んでいるか。厳しい財政状況だが、インフラ整備は進めて欲しい」「実質公債費比率が18%(起債発行に総務省認可が必要となる)になれば、実際の影響がどうなるか」など、これまでの財政運営で、より自由度が無くなってきていることへの不安を示しつつも、「新たな投資は求める」とする質問が行われ、理事者も「時宜にかなった投資は行っていく」との答弁をした。
このため議員団は、「京都アリーナ、北陸新幹線延伸などビックプロジェクトが進むと、府立大学老朽校舎建て替えなど、命にかかわる施策の優先度が先送りにされるのではないか」と質問し、総務部長も「身体の安全にかかわることが優先度が高い」と答えざるを得なかった。
5、これまで党議員団が世論と運動を背景に、いくつかの点で求めてきた事業が一定前進する方向が示された。
補正予算では、今夏の渇水・高温対策として、ポンプの調達や燃料代、給水車の給水活動やスプリンクラーなどへの支援策や、来年度の作付けができるよう水田の生産回復に対する支援策など、市町村議員団とともに農水省交渉等を重ねる中、一定の施策が実施されることとなった。引き続き、災害級の対策とともに、来年度の作付けができるよう特別対策とコメ増産にむけた価格保障・所得補償対策等、農政の転換と、抜本的な対策が求められる。
京都の中小企業支援と人材確保策として、党議員団が拡充を求めてきた「就労奨学金返済一体型支援事業」(正社員1年目~3年目・年9万円、4年目~6年目・年6万円)は、現在315社が導入しているが、他会派からも「さらに拡充を」「周知徹底を」などの意見が相次いだ。この施策の半分は事業主負担であり、その改善も含め拡充を求めるとともに、中小企業支援と一体の賃上げこそ必要である。
京都府立大学の耐震基準を満たさない老朽校舎の建て替えや体育館整備について、学長から「(体育館の整備は)学生の案を基本に進める。まずは校舎整備も含め、(府には)急いで欲しいし、(大学として)急ぎたい」と述べるなど、府立医科大学及び附属病院も含め、施設整備はまったなしの課題であることが共通認識となった。
また、府立学校・支援学校の空調整備、老朽化対策や耐震化、トイレの洋式化について、他会派からも質問が出され、中でも避難所指定されている高校体育館の空調化や、生徒急増に伴う特別支援学校の計画的施設整備についても、急がれる府民的課題であることがいっそう明瞭となった。
加えて、ツキノワグマの目撃情報と被害が全国でも京都でも増え広がっており、府民の安全を守るための緊急対策を求める声が共通して出された。
6、維新議員の質問等が、あまりに酷い上に、国政で連立を組んだことにより、西脇府政にすり寄る姿勢が一段と進んだ議会であった。
党議員団だけが紹介議員となった「京都府議会で、北陸新幹線延伸計画(京都市内の大深度地下の巨大トンネル計画)に反対する決議を上げるよう求めることに関する請願」が提出され、政策環境建設常任委員会に付託され、審議したが、その際、畑本くにえ府議(西京区)が「共産党が紹介議員の請願には賛成できない」(京都民報報道より)と発言したため、府民の請願権を否定する極めて重大な発言として、党議員団は抗議し、その結果、謝罪、発言の撤回をせざるを得なくなった。
また、西山府議(八幡市区)が本会議で「外国人の国民健康保険の医療費未払いについて」質問を行ったが、あまりに外国人のみを蔑視した質問に、理事者も「令和6年度の調査では、未収金総額のうち1.5%が外国人患者によるものであったと公表されておりますが、都道府県別のデータは公表されていない」と答弁した。党府議団は、危機管理・健康福祉常任委員会で、厚労省が示した外国人滞納者の未納率を示した150自治体について、「府内で、外国人の収納率を把握できる、システムで把握できる市町村は4自治体」であり「統計調査ではない」と答弁し、まさに質問の前提に根拠がないことを明らかにさせた。
知事総括質疑では、竹内府議(右京区)が、「京都府子どもの医療費助成制度と学校でケガなどした場合に給付される災害共済給付制度を例に挙げ、重複している場合があるのではないか」と質問したが、知事から「重複はない」「かつて令和3年度に一件あったが、返還された」と答弁した。
さらに、府営住宅に入居されている方について、「パートナーが無くなっても、高齢者がずっと支援を受けており、若い人が入れない」などと分断を煽ったが、理事者から「若年世代の入居比率は約50%」と質問の根拠がないことが明らかとなった。そもそも府営住宅は、所得や家計が厳しい世帯において居住権を保証するためもので、年齢で区分すること自身が間違いである。
また、人事院勧告が公私間格差を埋めるために府職員給与引き上げが提案されたが、これまで職員給与引き上げ議案に反対してきたにも関わらず、決算特別委員会で筆保府議(木津川市・相楽郡区)は「京都府職員給与が全国比較で低くなっている。職員のモチベーションに影響するのではないか」等と質問した。
こうした中、最終本会議の決算特別委員会付託議案討論では、知事提案議案を高く評価するという、一貫性のなさを示しつつ、自民との連立をした影響がにじみ出るものであった。
7、党府議団は、請願を踏まえ「北陸新幹線延伸計画の中止を求める意見書案」、最高裁判決を踏まえ「生活保護基準引き下げの謝罪と被害回復・再発防止策の確立等を求める意見書案」、「賃上げと中小企業等への直接支援策の実施を求める意見書案」および「賃上げと中小企業等への直接支援策の実施を求める決議案」、「食料自給率を引上げ、コメの減産から増産への抜本的な政策転換を求める意見書案」を提案したが、他会派がすべて反対し否決した。
なお、「私学助成の充実強化に関する意見書案」、「公立高等学校の教育環境の充実等に関する意見書案」は、「子どもと教育・文化を守る府民会議」が、毎年、無償化や教育環境・条件整備を求め、秋の請願署名運動を長年にわたり積み重ねてこられたことが力となり、全会一致で可決した。
党府議団は、討論で「私学については、私学助成を経常費2分の1の実現、校舎や耐震など含め、公的助成の拡充が必要」、「府立高校については、大阪のような府立高校統廃合はすべきでなく、少子化などを口実に『府立高校の在り方検討』として、小規模校の統廃合を推し進めてはならない」「『特色化』などの言葉で学校間格差を広げ、受験競争を激化させるのではなく、ICT・タブレットの無償化や、環境整備では、トイレ様式化とともに、特に体育館のエアコン設置が国補助もないため遅れており、早急に対策を」と求めた。さらに「高校無償化という重要な課題が、自民・公明・維新により『国民医療費4兆円削減』と一体で合意されたことは大問題である」と厳しく指摘した。
国会の本格論戦が始まっている。また、維新・藤田共同代表の税金還流疑惑など、早くも新政権の行き詰まりが明らかとなっている。一方、議員定数削減など民主主義を壊す方針や防衛費を25年度補正予算対応でGDP比2%水準に引き上げる方針を明言し、府民にいっそうのしわ寄せを押し付けようとしている。
党府議団は多くの方々との共同を広げて、平和と民主主義、暮らしを壊す政治にストップかけるために全力を尽くすとともに、地方自治と住民自治を守り、府民の暮らしや営業、子育ての切実な願いを実現するため、全力を尽くすものである。









