2012年9月18日
日本共産党京都府会議員団
日本と京都の進路と自治体のあり方のかかった2014年京都府知事選挙
2010年4月に行われた京都府知事選挙から2年余が経過し、山田府政3期目の折り返し点を過ぎた。いま政治はまさに激動といえる時期となっている。2006年4月の知事選挙後、自公政権が進めてきた新自由主義的「構造改革」路線が住民と地域経済に深刻な影響を与え、その転換を求める国民の声により、2009年に民主党政権が誕生することとなった。しかし、「政治を変えてほしい」とする国民の願いは、その後ことごとく裏切られ続け、二大政党の狙いは崩壊している。
2011年3月11日に発生した東日本大震災と東京電力福島原発事故から一年半が経過し、いまだ深刻な事態が続いている。ところが、政府は国民の声を無視して関西電力大飯原子力発電所3・4号機の再稼働を強行し、その後「原発ゼロ」と述べながら、その実現を先送りし、原発に固執しようとしている。さらに民主党・自民党・公明党は談合により消費税増税法案を強行成立させた上に社会保障の根底を歪める改悪をいっそう進めるとともに、大震災の復興を名目に「国土強靭化」の名で、消費税増税を財源にした新たな公共事業投資を進めようとしている。
また、関西広域連合が、国の出先機関の丸ごと移管を受ける準備を、基礎自治体や住民置き去りで進めるなど、関西広域連合の動きは全国的にみて「地域主権改革」で突出した動きとなっている。
2014年4月の京都府知事選挙は、いつ行われてもおかしくない解散・総選挙、2013年
夏の参議院選挙に続く歴史的な局面で実施される、国や自治体のあり方が真正面から問われる重要な選挙となる。
深刻か暮らしと地域経済に背を向けてきた2期8年
地域経済と暮らし・いのちを守るのが、自治体本来の役割である。にもかかわらず山田府政はこの間、「国に物言う」どころか、破綻した新自由主義的な「構造改革」路線を京都に持ち込むとともに、関西広域連合や地方税機構の設立、市町村合併の押しつけ等を推し進めてきた。医療崩壊ともいえる事態のもと、府立洛東病院を廃止し、府立医科大学附属病院を地方独立行政法人化するなど公的責任を投げ捨て、さらに振興局・土木事務所・保健所・農業改良普及センター等の広域的再編や人員削減を強引にすすめてきた。また経済対策、中小企業一雇用対策では、破綻した企業誘致を中心とする「呼び込み型」の対策をすすめ、中小企業への支援は、一部の先端産業やベンチャー企業等を軸とした融資偏重の対応となってきた。補助金をうけた(株)ジヤトコの派遣切りをはじめとした、大企業の撤退や大規模リストラなど相次ぎ、雇用や地域経済に大きな影響を及ぼした。
これらにより、府民生活と地域は疲弊し続け、欠損法人は1996年67.8%であったのが2010年には75.5%へと過去最悪となり、雇用では9万人規模で従業員が減り、3人に1人が非正規雇用に置き換えられた。その結果、府税収入が初めて5年連続で落ち込み、5年間で約1,000億円の減収(2007年度比)となるなど京都府財政にも大きな影響を与えてきた。
その上、「地域主権」改革という新たな装いで、関西財界が狙う「道州制」に道をひらく関西広域連合の強化をめざしている。これでは、いっそうの格差と地域切り捨てを生み出し、根本的な打開と展望を示すことはできない。
京都府は、南北に長く歴史も特色もある地域を有し、裾野の広い中小企業が主役の産業構造を成している。いま求められるのは、「住民が主人公」の立場から市町村や住民と協力し、府民生活でも経済対策でもエネルギー政策でも地域循環型の対策である。
日本の進路と府民の暮らしにかかわる重要問題で国政に追随
消費税増税問題で山田知事は、いっかんして「受益と負担」の立場から「財源をどうするのか」と述べ、「14兆円の負担だけを言い、14兆円の受益をいわない、片面的な議論は経済学上ありえない」と答弁するなど、露骨な消費税増税論者であることは明らかである。その上、全国知事会長として、国と地方消費税部分の調整をしたことを成果であるかのように述べ、法案強行後には「地域主権」改革の突破口-関西財界の狙う道州制への具体化を京都から2010年4月に山田知事は全国知事会長に就任した。その後「国と地方の協議の場」の法制化など「地域主権」改革を積極的に進める立場から様々な提案と具体化を国に求めてきた。また「国出先機関の丸ごと移管」「首都機能バックアップ機能」など、大阪橋下市長が訴える「大阪都構想」の動きや「九州広域行政機構」とも競いあいながら、関西財界の意向である行き詰まりの反動的打開のための「地域主権」改革を関西広域連合で具体化するなど率先して推進してきている。
これらは、これまでの山田府政の特徴である国の路線を京都で進める役割から、民主党政治の行き詰まりと二大政党の破綻のもと、国がねらう「出先機関の丸ごと移管の法制化」が行き詰まりの様相を示す中で、京都府のみならず関西全体を憲法や地方自治そのものを歪める発信・実験場・突破口としての役割を担わせようとしていることを示している。
この間山田知事は、東京一極集中を批判する形で「地域主権」改革を訴え、関西広域連合を設立し運営してきたが、ここにきて「災害がれきの広域処理受け入れ」「節電要請」など設立当初の事務(広域防災、広域観光・文化振興、広域産業振興、広域医療、広域環境保全、資格試験・免許等、広域職員研修)以上の役割を担わせ、さらに3省3機関のまるごと移管を受けいれるために関西広域連合を「成長する広域連合」と位置づけ推進している。
また、「課税自主権の拡大」「特区制度の活用」等を求め、これらをすすめる自治体のあり方を「ハイパー地方自治の時代」と述べている。これは、都市間・地域間競争に勝ち抜ける自治体へと変節させるもので、人員や則源の投資を「選択と集中」することにより、住民自治と自治体の役割を壊す道州制に道を開くもので、関西財界が本格的に「道州制に行くための実験」として関西広域連合を置付けている方向を進めるものである。
3月20日に開催された国出先機関の事務権限の移譲を受ける計画の市町村向け説明会で、近畿市長会会長は「まだまだ基礎自治体の意見が反映される中身になっていない」として出先機関の存続を求めた。また全国では「地方を守る会」が結成され「大規模災害の時に対応できるのか」など、市町村合併による深刻な地域の疲弊に加え、住民・自治体置き去りにした動きに対する批判が高まっている。山田知事は、「確かに(市町村から)いろんな不安がでてきていることは事実」と認めざるをえなくなっている一方、「緊急時の国の権限は担保された」など強弁し、さらに噴出する矛盾を、「国・官僚VS地方」と描くことで、抑え込もうとしていることも重大である。
「日本再生戦略」が閣議決定され、「国土強靭化」の名で新たな公共事業投資が狙われている。7月20日に全国知事会が「日本再生十二ヵ条」を発表したが、ここには「地方自立自治体」を求め、「多重型国土軸」「首都機能のバックアップ体制強化」をはじめ、東日本大震災からの復興を口実に、「地域主権」改革の推進と新たな公共投資を大規模に一気にすすめる狙いが明瞭に示されている。
とりわけ大阪ベイエリアを中心とした再開発の狙いに対し、山田知事は、新名神高速道路の建設再開、学研都市の再開発、リニア新幹線の誘致、天ケ瀬ダム再開発など、関西財界が求める新たな投資を南部に集中し、北部を実質的に切り捨てる方向をより明確に進めていることは重大である。そのために、新たに国土交通省から副知事を任用したことも、今後注視する必要がある。
地者自治体の役割を後退・変質させ、「広域化」「権限強化」をめざす
山田知事は就任以来、厳しい行財政改革をすすめ「選択と集中」を行ってきたが、とりわけこの二年では、中小企業関連団体補助金の削減、指定管理料(施設管理を委託した団体への管理料)のあいつぐ削減、南山城少年自然の家の廃止方針、敬老祝い品の削減等、直接的な支援策をあいついで削減してきた。
また今夏、府南部地域を襲った豪雨災害で、広域再編され職員削減された府士木事務所の初動対応の遅れについて、府民から厳しい指摘がされることとなった。
経済対策では「呼び込み型」と「成長企業だのみ」の方針の下、市町村の厳しい実態やこれまでの施策が行き詰る中、山田知事は「みらい戦略一括交付金」や「地域主導型公共事業費」といった手法を活用し、「京都府は直接行政」などと述べ、「さらに一歩踏み込んだ形の広域行政」を展開していきたいとしている。
こうした立場から「中小企業の育成に主眼を置き施策を重点化」「命の里事業」など「元気な農業・農村づくり」を標榜し、方針転換を図っているかのように述べている。しかし新規目玉事業は、実質3年をメドに削減・組み換えを行うなど、おかれている実態とのはげしい乖離や、施策が「自立支援型」「行政とのパートナーシップ型」など、「補完性の原理」に基づき、府民には「自立・自助」を求め、行政の役割を「公助」から「共助」へと変質させてきている。
その結果、過疎の進行、貧困と格差の拡大と固定化、医療崩壊など深刻な事態、厳しい府民の暮らしや地域済の再生、それを支える市町村支援ではなく、むしろ実質切り捨てるものとなるなど、地域の再生対策、地域経済対策は破綻し、この方向では打開できないことが明らかとなっている。こうした施策の背景には、「ナショナルミニマムは達成した」とする山田知事自身の認識があり、さらに「地域間競争をして政策革新」や「自治体の効率的な運営」が必要とし、その立場から新たな「仕組み作り」を「全国初」として推進しているためである。
また、先の知事選挙で大きな争点ともなった地域医療を守るため「オール京都」で医師確保対策をとること、府立与謝の海病院に脳外科医を配置することについて、わずか半年あまりで脳外科医を不在にした上に、今度は京都府立与謝の海病院を来年度から公立大学法人・京都府立医科大学附属病院化を、住民的な説明や論議ないままに、強引に「法人化・附属病院化ありき」で進めている。これは、法人化・附属病院化すれば医師不足等の解決ができるかのようにバラ色に描き、府北部の基幹病院としての充実の願いに対し、京都府がオール京都で医師不足を行う責任を後退させるものである。
さらに、国民健康保険など社会保険を「支えあいの制度」とする立場から、もっぱら財源を理由として「広域化」や「地域包括ケア」の推進を図ってきている。また、京都地方税機構をより権限強化し、市町村から課税自主権を実質奪う役割を果たしている。これらは「地域主権」改革の動きともあいまった「新しい公共」の京都での具体化である。
「格差と競争」の教育制度の推進
山田府政のもと、長年関係者で作り上げてきた京都の高校教育制度のあいつぐ改悪が行われてきた。すでに破綻した「類・類型」の見直しを利用して、また「保護者と生徒の多様なニーズ」を口実に、山城通学圏の見直し、京都市以北の「類・類型」制度廃止に続き、京都市・乙訓通学圏と選抜制度の再編に見られるように、「格差と競争」へと本格的に改悪しようとしている。
8月10日、京都市・乙訓地域公立高等学校教育制度に係る懇談会の最終「まとめ」が示され、京都市・乙訓を一つの通学圏に再編し、長年の運動により全国で唯一残ってきた総合選抜制度を廃止し、単独選抜制度とする方向等が示され、今後、府教育委員会が具体化をはかり平成26年度入試から変更しようとしている。
しかし懇談会でも「21校を1つの通学圏でまとめれば、希望の少ない学校ができるし、希望の多い学校には入れない。そうなると中学の進路指導は振り分けにならざるを得ず、21のランクわけになる。」「普通科の特色を21校がそれぞれ出せるのか。選ばれない不人気校になった場合の対策は考えているのか」等、現場の方からも批判的意見が出されたほどである。にもかかわらず、こうした声や他通学圏で起こっている格差と競争の実態に目をそむけ、結果として過度な競争に子どもたちを導こうとしていることは、極めて重大である。
きわだってきた府民目線と乖離する結論ありきのトップダウンと責任回避の手法
三期目の折り返し点を過ぎ、その手法の問題も浮き彫りとなってきた。
地域防災計画の原子力防災編の見直し(暫定計画)にあたっては、EPZ(緊急時計画区域)を従来の10キロから20キロ圏に設定変更し「国に先駆けて行った」と述べたが、その後政府が「緊急防諳措置区域(UPZ)」を30キロ圏と示す中で、市町村計画の見直しの基準をどうするのかについて混乱を招いた。さらに関西広域連合で災害がれきの広域処理基準を設け、それを市町村に求める中、ゴミ処理の第一義的責任と権限を有する市町村が混乱した。これらは住民や自治体の実態や意見より、「全国初」等にこだわりそれをトップダウンで行っているためであり、余計な混乱を招いている。これらに自治体からも府職員からも不満が多数だされている。
他方、関百電力大飯原子力発電所の再稼働では、府民の安全を守る立場から再稼働そのものへの見解は述べず、政府に対し「説明責任を求める」と繰り返し求めた。これは消費税問題でも「最終的には権限と責任を有する国で議論、決定されること」と述べたように、府民の切実な声と運動に追い詰められると、責任回避の姿勢をとるという特徴が際立っている。
さらに「高校制度改革」「国保一元化」など府政の重要問題では「有識者会議」「専門家会議」を多用し、自らの所見を述べずに、第三者の意見を根拠とする形をとって、「結論ありき」で当初の狙いを推進している。
「住民福祉の増進」かかげる本未の自治体への転換を
7月16日、東京で開かれた「さようなら原発10万人集会」に17万人が参加するなど国民の怒りは大きな広がりを見せている。日本の「財界・大企業中心」「アメリカいいなり」という政治の根本問題が国民の前に鮮やかに示される状況のもと、「再稼働ゼロから原発ゼロ」「消費税増税は絶対許さない」「危険なオスプレイ配備反対」「TPP交渉参加反対」等、政治の閉塞を打開する立場を超えた協働のうねりは、質的な変化を伴いながら、大きく広がる可能性を示している。
また、前回の知事選挙以降、府民の運動と論戦により「子どもの医療費無料制度の拡充」「あんしん修学支援事業(私立高等学校授業料支援制度)の創設と拡充j「住宅耐震改修助成制度に簡易改修補助」「入札制度改革」をはじめ、自治体本来の役割を果たさせる立場から様々な要求の実現・前進が図られてきた。
また、全国や京都府内市町村では、再生可能エネルギーを飛躍的に普及する努力や中小企業振興基本条例の制定による、地域循環型の経済対策の取り組みなど、行政が軸となった住民と協力した新たな努力が積み重ねられている。
このように、政治の転換を求める国民のうねりのいっそうの広がり、地域経済と住民の暮らしを支える自治体の新たなとりくみ、府民の要求と運動に基づく施策の前進など、大ぎな転換の流れをつくる条件は満ちており、我が党議員団は、府民の皆さんと共同の輪をいっそう広げ府政転換にむけ全力を挙げるものである。
以上