日本共産党京都府会議員団は、2月25日来年度予算案の審議開始日にあたり、声明を発表するとともに「府議会報告・予算要求懇談会」をラボール京都で行いました。報告した内容をYouTubeにアップしましたので、ぜひご覧ください。
★当日の資料はこちらからダウンロードできます。
発表した「声明」の前文は以下の通りです。
2025年度当初予算審査の開始にあたって
2025年2月25日
日本共産党京都府会議員団
団長 島田 けい子
1、2月12日に開会した令和7年京都府議会2月定例議会は、西脇知事の施政方針、代表質問等をふまえ、2月25日から予算特別委員会審査が始まり、予算等をめぐる本格的な論議が3月12日の予算特別委員会知事総括質疑まで行われ、3月19日に閉会予定となっている。
今回は、来年4月に京都府知事選挙が行われるため、西脇府政にとって最後の本格予算となる。西脇知事は、2期目就任に合わせ前倒し改定した「京都府総合計画」をふまえ、令和5年度は「あたたかい京都づくり」を「発進」する予算とし、今年度は「加速化予算」、令和7年度は「実感予算」としている。
しかし現状は自民党政治の行き詰まりがあらゆる場面で噴出しており、緊急対策とともに抜本的な転換が必要であり、そのため消費税減税、緊急対策としての暮らしの支援と中小企業支援と一体の賃上げ、高齢者支援、農家への所得補償等を行い、それによる地域経済の好循環を生み出すため、国とともに、京都府の役割が重要と考える。
わが党議員団は、予算特別委員会の審議にあたり、京都府が府民の暮らしや営業などの実態をふまえ、府民に寄り添い、府民と一緒にすすめる住民自治の構築と一体の府政となるよう、攻勢的な論戦を進めるものである。
2、今回提案された一般会計予算案は、14カ月予算とされ、先議した国の経済対策補正予算を踏まえた補正予算も含め、総額1兆604億9,900万円となり、前年度比105.6%の伸びとなった。
先議した補正予算は、「医療機関等物価高騰対策事業費」や「生産性向上・人手不足対策事業費」など、国の緊急経済対策をもとに全国で一律に行われるものを具体化したもので、府独自の経済対策は実質見られない。
歳入における府税収入では、府民税が国の定額減税の影響が無くなったことに加え、株高による資産増加等により、対前年度比約130億円増収を見込みでいる。しかし、法人事業税が約16億4,900万円増収となる一方で、法人府民税は約5億7,300万円減収となるなど、一部大企業の収益が引きあがるものの、中小事業者などの経営はさらに厳しさをますなど、いっそう格差が広がっている現実は否めない。
府債残高は2兆3,428億5,500万円となり、財源不足対策として、水道事業会計から有利子で20億円の借入を計上するなど、財政の硬直化が進んでいる。その原因として、社会保障関係経費の増加としているが、2028年度から34年間に渡り歳出に計上される予定の京都アリーナ(仮称)348億5,200万円をはじめ、これまでとこれからの箱モノ整備のツケにより、財政の自由度が狭まってきている。また、今年度から始まった「京都府行財政運営方針」を踏まえ、「新陳代謝プログラム」として経年的な事業費を一律に削減することに加え、歳入確保策として33年ぶりに使用料・手数料の見直しを行うことなどが進められている。
このため、来年度当初予算全体が、「あたたかい京都づくり」の「実感予算」とするものの、その内容は、くらしの深刻さなどに寄り添ったものとはなっておらず、国の予算と施策を率先して具体化し、また一つ一つがモデル事業や検討予算など、「やっている感」を演出するものとなっている。一方、産業創造リーディング・ゾーンなどスタートアップ、先端産業にシフトした支援、大阪・関西万博関連事業の大規模な展開、開発型の施策推進など、まさに国の出先機関のような方向がより鮮明になっている。
3、運動と結んだ論戦などによりいくつかの分野で予算が計上された。
コロナ禍以降、府内の様々な地域、団体が取り組んできた「食料提供プロジェクト」への年間を通じた支援策が「生活困窮者等物価高騰対策緊急生活支援事業」8000万円として引き続き予算化された。これは、取り組んでこられた地域や団体からも「公助としての支援策を抜本的に強化」を求める声や運動が大きく広がり行政を動かしたものである。また、府立大学の体育館の整備・建て替えについて、設計や実施が急がれものの、検討費が盛り込まれたことは一歩前進といえる。さらに、子育てに関わっては、あんしん修学支援が、支援額の増額や、きょうだい同時在学の際の上乗せなど一部拡充が予算化されていることも、運動と論戦による前進点といえる。また、能登半島地震を受けて、2024年度と2025年度に限ってではあるものの、これまで我が党議員団が拡充を求めてきた、耐震改修助成制度の補助上限が100万円から150万円に引き上げられている。能登半島地震等で明らかになった避難所の課題を改善することが急がれる中、「避難生活環境改善事業費」1.4億円は、「トイレ」「キッチン」「ベッド」を48時間以内に配備するため、今回、国予算で全国に配備されるものであるが、京都府では府立山城総合運動公園および府立丹波自然運動公園に、使い捨ての段ボールベッドでなく簡易ベッド3,000台、簡易トイレ30基を配備し、調理師等の派遣を行う民間団体との協定の拡充が盛り込まれた。
4、予算も知事姿勢もまさに「国の出先機関」となり、施策や方針の行き詰まりとともに、住民置き去りですすめようとする姿勢が顕著になっている。
―産業創造リーディング・ゾーン推進事業費(5.6億円)など、一部の成長産業やスタートアップ企業の支援が中心になり、地域経済を支える既存の中小零細事業者への支援は、物価高など深刻な状況が広がっているにもかかわらず、経営金融一体型支援事業の「賃上げ枠」は姿を消し、通常モードに戻ってしまっている。
大阪・関西万博に関わっては、来年度予算だけでもイベント関連などに6.5億円を計上し、2022年度以降、これまでに総額22億4200万円もの予算がつぎ込まれている。北陸新幹線延伸は、地下水への影響や莫大な事業費など、もはや府民的な理解を得て進めることは不可能となっているにもかかわらず、「丁寧な説明を求める」などと繰り返しながら、「重要な国家プロジェクト」として推進に固執する知事の異常な姿勢が際立っている。
このように、府政のあらゆる分野で、国の進める施策や事業が開発と一体に推進されている。
―向日町競輪場の建て替えと一体の京都アリーナ(仮称)の整備事業はその典型である。国が進める「スポーツの成長産業化」の柱である「スタジアム・アリーナ改革」の京都での具体化であるが、知事が街づくりの一環と繰り返しながら、地域住民の周辺の道路整備を優先してほしいなどの要望に背を向け、住民の求める説明会も一切開かず、契約手続きだけを進めるやり方に、多くの住民から反対の声が上がっている。さらに、整備・運営に至る事業費348億円の債務負担行為は、今後の財政運営にも深刻な影響を与えることは必至である。
―PFAS汚染問題は、当然国が明確な基準や対策を示すなど対応しないことに最大の問題があることは言うまでもない。しかし、府民の安心安全を考えれば、 必要な調査とその結果の公表を、専門家の意見も聞きながら進めることも検討しなければならない。
―石破内閣が閣議決定した第7次エネルギー基本計画では、福島第一原発事故後に掲げてきた「原発依存度低減」を削除し、原発の「最大限活用」と新たな原発建設を明記し、石炭火力発電所についても2030年以降も温存するとしている。世界が化石燃料からの脱却、脱原発へと歩みをすすめる中で、極めて異常な姿勢となっている。京都府は、原発立地県以外で唯一PAZ(原発5キロ圏)が存在し、UPZ(原発30キロ圏)には約9.4万人が居住する。府民の安心安全からも、温暖化対策が喫緊の課題となっていることからも、府として「原発ゼロ」の立場に立ち切って、国にも関西電力にも働きかける姿勢が求められている。
こうした国言いなりの開発型の施策や事業に加え、来年度予算案の中には、多数の府市連携事業がちりばめられていることも特徴となっている。これまで年に1度行われてきた「市長と知事との懇談会」を「府市トップミーティング」と名称を変え、今年度からは回数を年数回にし、そこで合意したことを早期に実施していくとしている。こうしたやり方に、記者会見では京都市以外との連携はどうするのかとの質問が出されている。知事は、「市町村との連携は当たり前で、わざわざ資料には書かない」と言い訳するが、知事と京都市長の二人で決めたことが、トップダウンで進められることそのものが、住民不在で本来の自治の在り方を歪めるものという認識が極めて希薄で、様々な施策が府民不在となっている根底にあることは明らかである。
このような、国言いなりの開発一体と住民置き去りという知事の姿勢が、施策や方針の行き詰まりとともに、財政の自由度を失い、府民的に必要な事業への予算確保にまで影響を及ぼしている。
4、実態調査を踏まえ、運動をおこし、運動と連帯・連携し、議会論戦にも取り組み、要求実現に全力を挙げてきた。さらに、要求を前に進めるために力を尽くす。
―中小企業支援と一体の抜本的な賃上げは、京都総評の調査でも示されているように、税収増、雇用増など地域経済に好循環をもたらすとともに、持続可能な地域経済のために不可欠である。人手不足や物価高で府民生活も地域経済も深刻な影響を受けている中で、全国にも広がる中小事業者への直接支援を実施し、思い切った賃上げへの府の役割が今こそ問われている。
―子育て支援では、子どもの医療費無償化の取り組みは、一昨年9月に京都府が通院も小学校卒業まで対象を広げたことで、あらたに8市町が高校卒業までの無償を実現し、通院も入院も無償化している府内自治体は19まで広がっている。府が思い切った拡充で全体を押し上げる役割が求められている。さらに、中学校給食は全国的に大きく遅れてきたものが、様々な課題はあるが、ようやくすべての府内市町村で実現の見通しとなった。7市町村では全国で広がっている給食費の無償化が実現するところまで来ている、この点でも全体の背中を押す府の役割がいよいよ重要になっている。
夏の異常な猛暑が当たり前になっている中で、学校生活の安心安全はもちろん、避難所としての機能を考えても、学校体育館への空調設置は喫緊の課題となっている。今回の予算で、特別支援学校2校でのモデル設置が予算化されているが、すべての学校への設置に向けた目途を示すとともに、予算化に踏み切ることが必要となっている。
―府立大学の体育館や老朽校舎の整備では、請願・陳情をはじめ学生や関係者が中心となって、大学整備を求める運動が広がり、党議員団はこうした運動とも連携し、議会などでも何度も知事に迫ってきた。来年度予算案では、府立大学体育館の検討費は計上したものの老朽校舎の整備は全く予算化されないままで、そのメドすら示せないことになっている。
今議会には、学生らの請願署名が出されており、整備のための予算の具体化、整備の目途などを早急に示すことこそ必要である。
―丹後・中丹・城南の3つの勤労者福祉会館の廃止条例が提案されている。廃止の理由として、利用者の低迷や労働者福祉としての役割を終えたことなどが言われている。勤労者福祉会館は、勤労者に交流と文化体育活動の場を提供し、福祉の増進を図ってきた。その土台の上に、近年では、地域住民の文化・教養の向上、自治を育む重要な役割を果たしてきた。そうした会館の果たしてきた大切な役割を引き続き存続させていくことが必要である。
わが党議員団は、幅広い府民との連携・連帯を広げ、とりわけ産業政策の転換をはじめとして、府政転換の必要性を浮き彫りにするという立場で論戦を行い奮闘する。