12月8日、京都府議会12月議会一般質問に立ったばばこうへい議員【京都市・伏見区】の質疑の大要をご紹介します。
<質問テーマ>
●大阪・関西万博工事代金未払い問題の解決と第三次・担い手3法への対応について
●賃上げ支援に関する京都府のとりくみについて
万博工事未払いの実態を掴み、建設業者の被害対策を
【ばば議員】日本共産党の馬場こうへいです。通告に基づき、知事並びに関係理事者に質問します。
まず最初に、大阪関西万博の建設工事代金未払い問題と担い手三法の改正についてお聞きします。
大阪関西万博が10月13日に閉幕しました。大阪府の吉村知事などは「大成功」と強調しています。しかし、一般来場者数が約2557万人と多くの方が訪れたものの、運営費で2百数十億円の黒字の見込みは、警備費255億円や途上国出展支援240億円など、国費に付け替えるなどによるところが大きく、万博協会自身が発表しているように「収支はギリギリ」というのが実態です。
さらに深刻なのは、建設費は約2倍の2350億円にまで膨らんだものの、「間に合わない」と言われた建設工事を間に合わせるために、現場では車などに寝泊まりしての突貫工事を余儀なくされた現場労働者が多数発生するなど、労働基準法を無視した異常な事態が起こり、しかもその工事費では多数の未払い問題が発生しています。
こうした事態を放置して「大成功」などあり得ないのではないでしょうか。当然、開幕を強行した国、万博協会、大阪府・市の責任が極めて重いことは言うまでもありません。しかし、報道されているように、京都府内の建設業者の中にも、未払いの被害にあっている業者や、その影響で「倒産や廃業の危機」という業者まで出ています。常任委員会では、「相談があれば対応するが、相談は来ていない」と言われていますが、抜本的な対応の見直しが必要だと考えます。
私は、未払いにあっている事業者の方のお話をお聞きしました。左京区で大型空調設備などの基礎工事を行う若い事業主の方は、仕事を増やすための飛び込み営業をかけている中で、「万博工事でやってくれるところを探しているところがある」と聞いて、今年2月にブラジルパビリオンの工事約200万円を行いました。しかし、受注した二次下請け業者からの支払いはなく、何度連絡しても「ちょっと待ってほしい」「分割で支払いたい」などと繰り返すばかりで、未払い状態が続いています。一次下請け業者に相談したところ、二次業者への発注は総額約6800万円に上りすでに支払いが終わっていること、本来必要な建設業許可を持っていないこと、他にも未払いの相談があることなどがわかりました。しかも、パビリオン全体の内装や外装に関わる工事にもかかわらず、1次業者が2次業者に発注を行ったのは、2024年11月19日。工期は2025年3月27日までです。
4月13日の開幕日まで半月、展示の準備など含めるとどれだけギリギリの状況で進められていたのかがわかります。ギリギリの工期、人手不足、資材高騰などを背景にして、本来工程管理や支払い状況の確認などに、目を配らなければいけない元請である特定建設業者がまともに機能せず、さらに莫大な税金を投入し推進してきた行政は、本来建設業法に基づく指導や勧告などが必要であったにもかかわらず対応を怠ってきました。結果、現在の深刻な事態に繋がっています。まさに、政治の責任での早期解決が必要です。
そこで伺います。紹介したブラジル館の事例のように報道されていない事案もあり、明らかになっている事案は氷山の一角です。未払いはもちろん、過酷な労働環境の実態など、万博工事でどのような事態があったのかを府として掴むためにも、専用の相談窓口を設置し実態を掴む努力を尽くすべきと考えますがいかがですか。
また、重層下請けや応援など、建設業特有の請負構造や働き方の中で、「民民」の問題としてしまうことで、未払いが連鎖的に広がるなど事業者と労働者に深刻な事態を押し付けることがすでに起こっています。国交大臣が「実態調査は必要」と国会で答弁していますが、実態調査は当然のこととして、根本的な解決のために、国や万博協会に早期解決を強く求める必要があると考えますが、知事のご所見をお聞かせください。
さらに、万博閉幕後の解体工事についても、同様のトラブルが起こるのではないかと現場で懸念が広がっていることが報道されています。地元伏見区で、複数のパビリオンの設備工事に関わった事業者から話を聞きました。この事業者も建設工事期間中に約2000万円の支払いが遅れたことがあり、周りの現場では「遅れている」「払ってもらえない」ということです。そして、万博の閉幕が近づいてきたころ、建設工事の元請け事業者から、「解体でもお願いしたい」との話が来たそうです。しかし、元請けの契約自身が、建設工事に解体工事の費用が含まれた契約となっており、すでに建設工事ですら支払いが遅れるような状況があり、リスクが高いと判断してお断りしたとのことでした。さらに、解体の際にも万博協会が掲げる「SDGSへの貢献」に従い、建材などの再利用が求められ、通常の解体以上に人手も時間もかかる。ところが支払いには不安がある。これでは、どこも手をあげないのではないかとも話されました。
解体工事もタイプAは来年4月13日までに解体し更地にして返還、タイプXなども来年9月末には返還が求められています。そこでお聞きします。工期が迫る中で同じようなことが繰り返されることは絶対に防がなければなりません。対策の必要性をどのように考えているのかお答えください。また、府として、国や万博協会への働きかけ、府内事業者への対応などについてどのように対応されるのか答えください。
適正な賃金を位置づけた公契約条例の策定を
【ばば議員】昨年6月に、三度目の品確法・建設業法・入契法の一体的改正いわゆる第三次担い手三法が成立し、その中核である改正建設業法が今月12月12日から全面施行されます。今回の改正の最大の目的は、「適切な労務費等の確保と行き渡り」を実現することとされています。そして、そのために新たなルールとして、標準労務費が設定され、これを著しく下回る見積もり・契約締結を禁止し、違反した業者は指導・監督、発注者は勧告・公表の対象となります。さらに、実効性を確保する対策として、適正な見積もりの促進、契約時の労務費確保と確保された労務費の労働者への支払い担保の施策の実施、許可行政庁による強制力のある立ち入り調査などの実施と行政指導などが上げられています。
これまでも、設計労務単価が平成24年度比で85.8%も引き上げられている一方で、全京都建築労働組合のみなさんが毎年取り組んでいる賃金アンケートを見ても、現場労働者の賃金との乖離が広がっていることを指摘してきました。今年の賃金アンケートでは、設計労務単価と現場労働者の賃金との乖離率が36.9%と過去最大になっています。まさに、「適正な賃金の行き渡り」が待ったなしの状況です。さらに、万博工事での未払い問題では、未払いを受けている事業者の中にはまともな契約書を交わさずに工事をした事例や追加・変更工事の書面が作られていない事例などもあります。この点では、適正な賃金を要求するためにも、適正な見積もり、適正な契約を徹底することが待ったなしです。改正担い手三法を形だけでなく、実効あるものにする府の取り組みが問われています。
そこで伺います。第三次担い手三法への対応として、公契約大綱の見直しが本議会に提案をされています。しかし、その中身は府の役割として「労務費へのしわ寄せ防止など処遇改善を促進する」との一文が追加されるなどにとどまっています。これは、あくまで基本的な考え方を示すという「大綱」の限界です。これでは、設計労務単価は大幅に上がるが、現場労働者の賃金との乖離が広がるというこれまでの問題を改善し、「適正な賃金の行き渡り」という新たな局面に正面から向き合うものとはとても言えません。府として適正な賃金をしっかりと示し、それを守ることを義務付けた公契約条例を作り、役割を果たすべきと考えますが、知事のご所見をお聞かせください。
【答弁:西脇知事】大阪関西万博の建設工事に関する相談窓口の設置についてでございます。大阪関西万博における一部の海外パビリオンの建設に関しまして、著しく短い工期や請負代金の未払いなどが発生することにつきましては、報道等により承知をしております。建設工事の請負代金は、契約当事者間の合意に基づき適正に支払うべきものであり、仮に未払いが生じた場合は、まず当事者間の協議を通じて解決を図る必要がございますが、解決に至らない場合には企業の経営を圧迫し、引いては労働者の処遇の悪化につながる恐れもございます。
京都府におきましては、万博に限らず建設工事の請負契約をめぐるトラブルの解決の場として、建設業法に基づく建設工事紛争審査会を設置し、その事務局として広く相談を受け付けてまいりました。
審査会では公正中立な立場のもと、専門家により迅速な解決を図ってきたところでございます。万博に関しましては、先月21日の衆議院 国土交通委員会におきまして、金子国土交通大臣が「政府としては海外パビリオンの建設工事にかかる支払いの問題については、「民民」の問題として関与しないという姿勢ではなく、国土交通省の協力のもと主催者である日本国際博覧会協会が中心となって相談窓口を設置し、個別の契約の問題解決に向けた対応を行っている」旨の答弁をされております。
京都府といたしましては、今後とも建設企業や関係団体等へ建設工事紛争審査会の周知を図りますとともに、国や博覧会協会の動向を注視しつつ必要があれば建設業の許可権者である行政庁としての適切な対応を継続してまいりたいと考えております。
【答弁:石井建設交通部長】国や博覧会協会への働きかけと、府内企業への対応についてでございます。海外パビリオンの建設工事に係る未払いにつきましては、国におきましては、「民民」の問題であるため全く関与しないとの立場は取っておらず、博覧会協会等々も連携し個別の契約の解決に向け、取り組んでいるものと承知しております。また、今後の対策につきましては、請負代金の支払いにかかる紛争の背景に契約内容が口頭で取り交わされているなど、関係法令に照らして不適切な契約手続きがあったことも一因と考えられることから、国におきましては、今年9月に建設業関係団体等に対し 契約の書面化など、建設工事の請負契約に関する法令遵守の徹底を求める通知を発出したところでございます。京都府といたしましては、引き続き国や博覧会協会の動向を注視しつつ適切に対応してまいりたいと考えております。
府内企業への対応につきましては、京都府におきましても建設業関係団体に対し下請け契約における適正な工期や請負代金の設定、書面による請負契約の締結、適切な下請け代金の支払い、関係法令の規定に抵触する取引の通報などの徹底を求める通知を繰り返し発出するとともに、各建設企業に対し、建設業許可の更新時などの際に関係法令の遵守について周知を図っているところでございます。
また、建設業法違反にかかる通報を受けるために国が設置した窓口である「駆け込みホットライン」などに、未払い等の法令違反の疑いが通報された場合には、その情報は国等から都道府県等へ情報提供されることとなっております。
京都府知事が許可した建設企業に関する情報提供があった場合には、国とも連携しながら実態の把握と問題の解決に向け適切に対応してまいります。今後とも建設業関係団体への働きかけや京都府知事が許可した建設企業に対する適切な指導監督を通じて、建設工事の請負契約に関する法令遵守が徹底されるよう関係機関と連携して取り組んでまいります。
【答弁:臼井総務部長】賃金条項を含む公契約条例の制定についてでございます。労働者の賃金等の労働条件は、労働関係法令のもとで労使が自主的に決定することとされており、最低賃金法とは別に条例などで賃金の基準を新たに設けることにつきましては慎重に対応することが必要であると考えております。また労働者の賃金問題は公契約のみならず私契約を含めた統一的な見地からナショナルミニマムとして労働法制の中で対応されるべきものと考えております。なお、建設業につきましては昨年6月に担い手三法の改正が行われ、担い手確保を目的に労務費の基準となる標準労務費が示され、公共・民間工事を問わず、それを著しく下回る金額での見積書の提出や契約締結等が禁止されることとなりました。これを受けて公契約大綱の見直しを行い、京都府が発注する工事につきまして、労務費を含む必要経費が見積書等に適切に内訳明示されているか、元請け、下請け関係において適正な請負代金等での契約締結がなされているかなどを確認することとしております。
今後とも公契約大綱に基づき受発注関係のさらなる適正化を図ることで、建設労働者の適正な労働環境の確保にもつなげてまいりたいと考えております。
【ばば議員:再質問】知事からは、万博に限らず紛争審査会の中でやっていくという話がありましたが、一般的な話でないということを理解していただきたいと思っています。先ほども一部紹介しましたけれども、本当に現場で言いますと「一部払ってもらえない」「全体が払ってもらえない」とかそういったことを含めると、どこでもそういう話が聞かれる。さらには、「そんな現場が全くないような現場はないのではないか」「元請けとの関係で泣き寝入りをしているところもある」とこんな話まで聞かれるような状況になっていまして、まさに一部の民間業者間の問題ということではなくて、万博工事の中に広く広がっている重大な問題だという認識が必要で、だからこそ府として実態をしっかり掴んでいただいて、その影響が府内の事業者、労働者に及ばないように、ちゃんと手立てを打っていただきたいということを申し上げています。
1点再質問します。万博工事にかかわる工事で、事業者が倒産・廃業に追い込まれると、労働者が困窮することは絶対に起こしてはいけないと思いますし、そのためには、府内の事業者や労働者について実態を把握するということは必要だと思いますし、同時にその解決のために前面に立っていただきたいというふうに思いますが、いかがですか。
「民民」の問題ではないという立場に立っていただいているというふうな答弁が部長からありました。当初は「民民」の問題だということで突き放してきたということがこの問題を深刻化してきたわけで、今もこういう状況になっていて急いでやらなければいけないと。「対応見ながら適切にどうしていくのかっていうのを考えます」というような時期はもうすでに過ぎているわけですので、早期解決をどうするのか、その前面に立つべきということを考えますが、再度お答えいただきたいと思います。
担い手3法の対応について状況が変わっていると。最低賃金法を超えて規制をするということは慎重でなければいけないということがありましたけれども、今回の建設業法の改正というのは 適正な賃金の行き渡りっていうのが大きな柱になっているわけで、本当にそういった意味ではこの部分がどれだけ府の取り組みの中に入っていくのかということが極めて重要なわけで、大綱の中でこの部分の根本的な部分が触れられていないということが私は大きな問題だというふうに思っています。
新たな局面に入った中で、その認識についてはどう考えているのか、この点についてお聞かせいただきたいということと、衆議院の付帯決議では、デジタル技術の活用などが諸々書かれたうえで、可及的速やかに、全産業平均並の賃上げに労働者の賃金を引き上げていくということが必要だし、必要な措置が書かれているわけです。これまで指摘した実態の乖離を急いで解消することが求められているという指摘だというふうに思いますが、条例が私は最も速やかで確実な対応だと考えますがいかがでしょうか、お聞かせください。
【西脇知事:再答弁】ばば議員の再質問におこたえいたします。従来から、御答弁いたしましたように、工事紛争審査会を通じて相談の窓口を開いております。それから建設業関係団体に対しましても その PR をしておりますが、今回の万博の件は万博という一つの特殊な事案として、国土交通省の協力を得て博覧会協会が総合的な相談窓口を設置しているということでございますので、そこでの対応も注視しながら私どもも必要があればしっかりと対応してまいりたいというふうに思っております。 いずれにいたしましても、「民民」の関係ではありますけれども建設業法に基づくフレームの中で建設工事業者に不当な負担がかからないように、またそれがひいては労働者の処遇の悪化につながらないようにという観点で、」私どももしっかりと対応してまいりたいと思います。
【臼井総務部長:再答弁】2点ご質問をいただいております。1点目は、新たな局面である担い手3法の改正に伴う動きへの対応でございます。まず、担い手3法の改正によりまして、京都府といたしましても建設業における賃金の確保と行き渡りの担保というのは重要な課題だと認識してございます。
そのため、それを受けた今回の公契約大綱を見直すこととしてございまして、この見直しによりまして労務費の基準となる標準労務費が受発注者間、元請け下請け業者間等の請負契約において、適正に労務比較されるような取り組みというものをしっかり行っていくことで、建設労働者の処遇改善に 実効性のある取り組みとして繋げてまいりたいと考えているところでございます。
また条例の制定についてということでございます。建設業の賃上げにつきましては、京都府といたしましても重要な課題と認識してございます。平成24年に公契約大綱を制定して以来、経営体質強化や賃上げができる環境の整備といたしまして、府内企業への発注の原則化、重層的な下請け構造の改善等に取り組んできたところでございまして、今回改めて公契約大綱が改正されたことに伴いまして府としても、資格の取り組みを強化していくことで対応してまいりたいというふうに考えてございます。 一方で条例の制定につきましては、先ほど申し上げましたとおり、ナショナルミニマムの見地でとか最低賃金法の関係であったりとか慎重な対応が必要だと考えているところでございます。
【ばば議員:指摘要望】御答弁をいただきましたけれども、万博の問題は改めてその政治の責任で解決するしかないっていうふうに私は思っているし、その責任が改めてあるということを強く申し上げたいというふうに思います。知事自身も万博を推進してきた立場なわけですけれども、本当にこの解決なしに万博の成功なんていうことは、私は絶対にありえないという風に思うので、そういった意味では、そこは責任持って同時にその責任を自覚していただいてしっかりと対応いただきたいと思います。公共事業の現場労働者の賃金については、設計労務単価の支払いが賃金をしばるものではないんだというというようなことが、前知事時代から答弁をされてきていまして、その結果が今の事態、つまりは設計労務単価がどんどん上がっていくけれども、現場労働者の賃金がそれに追いつかない、どんどん改良していくということが広がってきているわけで、ここにどう踏み込んでいくのかっていうことの私は大きな局面というのが今回の建設業法の中にある適正な賃金の行き渡りというところにあるんだというふうに思います。そういった意味ではやっぱり、賃金情報を含む公契約条例を制定は待ったなしだというふうに思いますので、改めて決断を強く求めて次の質問に移りたいと思います。
物価高騰を上回る賃上げの実現へ 中小企業への直接支援を
【ばば議員】次に、賃上げ支援への本府の取り組みについてお聞きをしたいと思います。
帝国データバンクの調査によりますと、本府の経済状況は、2024年の府内企業の倒産件数が前年比15.9%増の350件と12年ぶりに350件を超え、休廃業・解散が2年連続の増加、前年比14.8%増の1226件と深刻な状況にあります。1年間だけで、府内企業の約4%が市場から消滅した計算になると報道されています。
そうした中で、京都府の最低賃金の引き上げが11月21日から実施され、64円の引き上げで1122円となりました。京都商工会議所の経営経済動向調査では、9月の調査で当面の経営上の問題点として、「原材料高」が引き続きの高止まりしていることと同時に、「人件費負担増大」が前期比6ポイント増の41.2%と大きく上昇したことを報告し、さらに「特に中小企業で閉塞感が強まっている」としています。改正後の最低賃金額を下回る労働者割合である影響率は毎年過去最高を更新しています。これまで最低賃金ギリギリだった事業者の多くが対応を迫られることになります。改めて、急いで直接支援することが求められていると考えます。
10月に岩手県で、賃上げへの直接支援についてお話を伺ってまいりました。岩手県では、賃上げをする県内中小企業に昨年度一人当たり5万円だったものを6万円に引き上げ、一事業所当たり50人、300万円を上限に直接支援をおこなっています。私が話を聞きに行った10月頭の段階で3万人の枠のうち2万7千人分が支給されているということでした。さらに今年度岩手県では、国の目安額を大きく上回る79円の最低賃金の引き上げが答申されたことを受け、議会ではすでに知事が追加の支援策を行う意向を発表されていました。しかし、岩手県中小企業団体中央会など業界団体で話を聞きますと、「これで安心」ということではないこともわかりました。要件が賃上げだけであることや、スピーディーに支給されることなど、最低賃金の引き上げで対応が必要な事業者は利用が進むものの、実際には6万円では社会保険料の負担増など事業主の身出しが必要となり、東日本大震災に匹敵する倒産件数となっている今の地域経済の実態からすると、それでも深刻な状況にあるとのことでした。
そこで伺います。知事は、これまでから賃上げへの直接支援ではなく、持続的に賃上げできる環境づくりのための支援を行っていくとおっしゃってきました。しかし、地域経済の現状は、目の前の賃上げへの対応で倒産や休廃業・解散などを選択せざるを得なくなるところが、多数出かねない深刻な事態です。持続的に賃上げできる支援につなぐためにも、中小事業者を直接支援して賃上げできるようにするべきと考えますがいかがですか。同時に、緊急対策としての直接支援に加え、京都府最低賃金審議会の答申に労使の総意として明記された、「税や社会保険料の事業主負担の減免」などを国に対して強く求める必要があると考えますが、いかがですか。
決算特別委員会の総括質疑で、知事は「賃上げ支援の施策を総動員する」という骨太の方針2025の中身を取り上げて、「国に要望する」と答弁されました。また、記者会見で今年度の最低賃金の引き上げについて「引き上げ幅、レベルについて一定妥当だと考えている」と答えています。ところが、現在開かれている臨時国会では、高市首相は「2020年代に1500円を実現する」として来たこれまでの政府の方針を引き継ぐのかと問われ、明言しませんでした。そこで伺います。これでは、少なくとも賃上げを政府としても施策を総動員して進めるとしてきた、方針そのものを後退させることになってしまうと考えます。知事として国にしっかりと声をあげていただきたいと考えますがいかがですか。お答えください。
【上林商工労働観光部長】賃上げへの支援策についてでございます。賃金の引き上げは、労働者の生活の安定と向上が図られることにより経済の好循環をもたらし、さらには地域経済の活性化にもつながることから重要だと考えております。また賃金の引き上げが持続的に行われるためには、中小企業が原資となる収益を確保できるよう経営基盤の強化を図るための支援を重点的に行うことが重要だと考えております。
このため京都府におきましては、生産性向上への支援や人手不足対策、金融支援と経営支援が一体となった伴走支援など累次にわたり賃上げができる環境整備のための支援を行ってきたところでございます。
令和7年9月定例会におきましてご議決いただきました中小企業経営基盤強化推進事業費補助金におきましては、賃上げを要件としつつ、即効的な経費削減効果がある設備投資等を支援しており、133件の申請がございました。今後とも持続的な賃上げを可能となるような経営基盤の強化に向けた支援を充実させることで、府内中小企業の事業継続を図ってまいりたいと考えております。
また税や保険料などの負担のあり方につきましては、社会経済情勢の変化や給付と負担とのバランスなどを踏まえまして、一義的には国におきまして検討されるべきものと考えております。
次に最低賃金に対する国の姿勢についてでございます。国におきましては、「賃上げこそが成長戦略の要」との考えのもと、最低賃金を2020年代に全国平均1500円とする目標をいわゆる「骨太方針2025」に示され、京都府におきましては、11月21日に最低賃金が64円引き上げられました。
高市総理は先月14日の参議院予算委員会におきまして、「できる限りの賃上げができる環境を作るための努力をする」と答弁されたところでございます。また同月21日に打ち出された総合経済対策におきましても、「物価上昇を上回る賃上げの実現に向けて、税制、補助金など総合的に活用し、賃上げの流れを全国に広げていく」とされており、賃上げに取り組む方針は 従来と変わりないものと認識しております。京都府といたしましては、国に対しまして賃金の引き上げに向けた支援施策の拡充などを要望しているところであり、今後ともあらゆる施策を総動員して賃金引き上げができる環境の整備に取り組んでまいりたいと考えております。
【ばば議員 :再質問】これまで行ってきた対策、この間行ってきたもので133件応募がありましたという話がありましたが、まだ正確な数字は労働局から発表されていませんが、今おそらく今回の最低賃金の引き上げで労働者への影響率は25%以上になるんじゃないかと思うわけですが、そうした状況から見て本当にそれが妥当なのかっていうことはやっぱり見なければいけないし、現状で言いますと中小企業家同友会の調査などを見ましても、やっぱり物価高騰と進まない価格転嫁という元々の経済状況の深刻な状況が改めて書かれているわけで、そこに賃上げが迫られるという状況になっていて、まさに今年の最低賃金の引き上げは、これまでとは全く違う情勢にあるということを見なければいけないと思うんですね。本当に手立てがないと事業者が倒れかねないという事態が広がっているし、そうした危機感が現場からあげられているというわけですから、これしっかりと答えていただく必要があります。
岩手県では先ほど紹介しました、今年に入っての最低賃金の引き上げについて、対策をということを明言していた知事が先日発表した中身は、国の対策がない中で約27億円これを全額、一般財源で措置をして10月以降賃上げする中小企業に1人当たり最大8万円補助するという拡充予算を12月議会に提案をしています。現場から上がっている声にしっかり応えて、対策を取らずに業者がつぶれていくということが起こってしまうことになると、これまさに私は府の責任が極めて重大だと考えます。その点について一体どのように考えているのか、この認識をまずお聞かせをいただきたいと再質問一つと、もう一つは改めて直接支援を急いで実施する必要があると考えますが、この点について再度お答えいただいて、私の一般質問を終わりたいと思います。
【商工労働観光部長:再答弁】厳しい状況にある中小企業への賃上げ支援でございます。物価高の長期化や人手不足の深刻化など、中小企業の環境は厳しい状況が続く中で、中小企業の事業の継続には持続的な賃上げが重要であると考えております。しかし中小企業が賃上げに必要な収益を確保できないと結局は事業を維持することが困難になり、雇用も失われることから、このバランスの中で必要な施策を講じるべきだと思っておりまして、京都府といたしましては中小企業が必要な体力に必要な経営基盤を強化するための支援を重点的に取り組んでまいりたいと考えております。加えまして中小企業への直接支援への対応についてでございますが、賃上げを直接支援する制度につきましては、企業が従業員の賃上げを行う場合に自治体から企業に補助金が支給されてされるものであり、賃上げを一時的に支援する取り組みだと承知しております。京都府といたしましては、賃上げを直接的に補助金で支援し続けるのは困難であり、企業が持続的に賃上げできる体力をつけることに注力することが、財政の使い道といたしましては適切だと考えております。引き続き持続的に賃上げができる環境の整備に全力をあげてまいりたいと考えております。










