93年度京都府予算案について
1993年2月15日
日本共産党京都府議会議員団
団長 西山 秀尚
一、はじめに
10日に発表された93年度京都府予算案は、府民要求の高まりのなかで、乳幼児医療費助成創設など一部に前進した施策があるが、全体としては、極めて貧弱な「不況対策」、大企業本位の開発をすすめる「民活」、福祉・暮らし・教育を切り捨てる「臨調・行革」という、自民党政治の路線を忠実に推進するものとなっている。
今、この自民党政治の行き詰まりのなかで、「改革」「変革」が求められているとき、このような府の姿勢は、府民との矛盾を一層深めざるを得ない。
二、極めて貧弱な不況対策
知事は、「景気対策を重視した」として、融資の拡大や公共事業・府単独事業の伸びを強調しているが、深刻な不況のもとで、要求からは程遠いものと言わざるを得ない。
中小業者の融資についての要求は、担保や保証のいらない低利の特別融資であるが、予算案では、保証の必要な体質強化融資の拡大と、無担保無保証のマル小融資の限度額の450万円への引き上げにすぎない。これらは一定の前進ではあるが、いずれも政府の施策以下のものである。
また、公共事業・単独事業という建設事業も、大手業者への発注が予想される大型事業が多い。建設事業を真に不況対策として実施するためには、今の「大企業への発注を増やす」姿勢を改めることが必要である。中小企業への発注率を、物品等も含め、民主府政時代の83%まで引き上げるだけで100億円以上の仕事が中小企業にまわることになるのである。
そのほか不況から府民生活を守るためには、例えば「暮らしの資金」の貸付限度額の引き上げと通年化、国保料引き下げのための補助の大幅拡大、府の公共料金への消費税転嫁の廃止をけじめ、自治体として可能な対策は多くあるが、これらの対策もほとんど見られない。
三、大企業奉仕、府民犠牲の「民活」「行革」をつらぬく
大企業の宅地開発と研究を支援する「学研都市建設」に、今回も、記念公園建設費50億円など大金を投入している。また、大企業の開発に頼って破綻してきた「丹後リゾート」でも、公園建設を続けようとしている。そのほか、大阪湾ベイエリア開発への出えん金、すすんでいない府内の四大プロジェクトの推進のための費用など大企業奉仕の開発のための予算を組んでいる。
京都高速道路計画の強行、大型店の進出容認などとあわせ、財界の意向に忠実な府の姿勢は、府民との矛盾を拡大するだけである。
一方、福祉・暮らし・教育など府民生活にかかわる予算の多くは、据置き、事実上の減額となっているものが多い。これは、政府が切り捨て、制度改悪をすすめているもとで重大である。
府民の要求の高まりのなかで、一定の改善がはかられたものもあるが、その多くは先進県よりも劣るものである。そして何よりも、乳幼児医療費助成での一部負担金徴収や、医療費抑制のための市町村への補助金増額にみられるように、自民党政府の方針に忠実に従っていることが、特徴である。
四、逆行する同和行政
わが議員団の追及によって、「解同」に屈服した同和行政の乱脈・不公正が明らかになり、是正が必要になっているにもかかわらず、これを是正する姿勢がまったく見られない。今回の予算案でも例えば、不況対策として融資の拡大が求められるマル小融資の枠は据え置いているのに、同和対策融資の枠は5億円も拡大している。
それだけでなく、「差別落書き事件」を契機に一層、「解同」の不当な要求に屈服してきているのである。これでは、差別の解消ではなく、固定化・拡大にしかならないことを強く指摘しておく。
五、府民要求の真の前進のために
今回の予算案のなかには、府民要求の高まりとわが議員団の奮闘で実現したり、前進したものも含まれている。
山陰線園部・福知山間の電化事業費をはじめ、マル小融資の限度額引上げ、乳幼児医療費助成、私学の学費軽減補助の引上げ、府営住宅建設戸数の増、新規就農者への資金貸与、看護婦増員のための施設整備補助、過疎地域の病院整備補助、障害者共同作業所への補助拡大、交通遺児・母子家庭奨学金の引上げ、消防団員激励費の引上げなどがそれである。
しかし、これらは前進とはいえ、府民の要求からすればまだ不十分であり一層の改善が求められるものである。
また、予算案全体では、わが議員団が昨年提出した予算要求や府民の要求からみれば、遠くかけ離れている。
知事などは、不況になって「ためこんでいてよかった」などと言っているが、とんでもない。今回「財源不足」のために、基金を大幅に取り崩しているが、この基金の大半は、生活保護の切り捨て、住宅や高校建設を抑えるなど福祉・暮らし・教育の切り捨てでためこんだものである。そして、このためこんだ金は、主として、大金を要する学研都市建設など大型プロジェクトにまわしているのである。決して府民生活向上のためではないのである。このことは今回の予算案が示している。
府民要求を真に実現するためには、このような自民党政府に忠実な府政の転換がどうしても必要である。わが議員団は、この立場で、府民要求の一層の前進のために、予算審議等を通して奮闘する決意である。
KBS京都「政治を語る」
2月14日放映のKBS京都テレビ「政治を語る」は、「平成5年度京都府予算案に望む」をテーマにおこなわれ、三木一弘議員が出演しました。
相変わらず大企業優先の姿勢
三木一弘議員
まず、予算案全体の評価について討論。三木議員は、「わが党議員団は新しい予算について、府民、各団体のみなさんと懇談し、要望書を提出してきた。しかし、要求の多くは先送りされ、相変わらず学研都市建設や丹後リゾート開発など、大型プロジェクトによる大企業優先の姿勢が貰かれている。大型プロジェクト中心の公共事業でどれだけ地元中小企業に仕事がまわるのか疑問だ。本来縮少していくはずの同和関連予算も増額されている。今回の予算案の中では、府民のみなさんの大きな運動と議員団の粘り強い取り組みの結果、一定の成果も上げることができたが、決して手放しでほめられたものではない」と述べました。
それに対して他の政党の出演者からは、「すばらしい予算」(自民党)、「決め細かい予算として評価」(公明党)、「着実で堅実な施策」(社会党・社民クラブ)などと、手放しで持ち上げる発言が相つぎました。
府民本位の不況対策、府民に手厚い施策の充実を
続いて、不況対策、子育て支援策、担い手育成策などについて討論。三木議員は、「大企業優先を改め、府営住宅、特別養護老人ホーム、共同作業所の建設など、府民生活に密着した公共事業を増やし、また、府民の購買力を高めるためにも固定資産税や都市計画税の減税、高すぎる国保料・税の引き下げを、市町村に積極的に指導すべき。」「マル小融資の300万円から450万円への引き上げ、乳幼児医療費の無料化、新規就農者への月15
万円の資金貸与、私学の学費軽減補助の引き上げなどは、遅きに失したとは言え、府民の取り祖みの成果だが、まだまだ不十分で、さらに拡充を。寝たきり老人、痴呆性老人の介護激励金も一万円に増額せよ」と主張しました。
93年度京都府予算案について[PDFファイル 273 KB]